自社の商品やサービスを商標登録する際には、区分の選択は非常に重要なポイントになります。誤った区分を選択してしまうと、商標登録をしても他社から商標を無断使用されたり、商標を模倣されてしまったりと大きなリスクが付きまとうのです。
本記事では商標登録の区分に関する概要から適切な区分選択の方法まで、詳しく説明していきます。
商標登録の区分とは
商標登録の際には、商標の区分も併せて申請しなければいけません。商標登録の申請にあたっては、この区分の選択がひとつの重要なポイントになります。しかし商標登録の区分は、多くの方が間違えやすい箇所です。本項では、商標登録の区分とは何かという基礎から解説。商標登録時の適切な区分の選び方も併せてご紹介します。
商標登録の区分とは
商標登録の区分とは、その商標を使う商品やサービスのカテゴリのことです。商標登録の区分はあらかじめ種類が定められていて、全部で45の区分に分けられています。
たとえば土木工事用のドリルを商標登録するのであれば第7類(土木機械器具など)を、インターネット広告を商標登録するのなら第36類(広告・事業管理・小売など)を選択します。
商標登録を申請する際には、自社の商品・サービスがどの区分に入るのかを検討して選ばないといけません。
商標登録時の適切な区分の選び方
商標登録の区分は、当てはまるものがいくつかあるなら、複数選択もできます。選択可能な区分数に制限はありませんが、申請区分を増やすたびに手数料がプラスされることに注意が必要です。
商標登録時に区分を選ぶときは、まず特許庁が用意している区分表を見ていきます。次項「商標登録の45区分一覧表」に区分表を載せていますので、そちらを参考にしてください。この区分表を見て、自社商品が当てはまりそうな区分があれば、リンクをクリックして特許庁の詳細PDFを確認しましょう。もしPDFを見て自社商品が該当していればその区分を選択、違うようであれば別の区分を探します。
この方法ですぐに最適な区分が見つからない場合は、特許情報プラットフォーム「J-PlatPat」の検索機能を利用してみましょう。「商品・役務名」欄に自社商品・サービスの内容(「音楽ファイル」「ビール」など)を入力して検索します。するとその名称が含まれた過去の出願一覧が表示され、それぞれの区分番号が確認できるように。
自社の商品がどの区分に当てはまるのか判断が難しいときは、この方法を試してみてください。
商標登録の区分の具体例(株式会社ミツモア)
では、実際に商標登録の区分を検索してみましょう。株式会社ミツモアの商標「ミツモア」の区分を検索します。
まず、J-PlatPatのトップページで「商標出願・登録情報」を選択 します。
次に、「検索キーワード」ボックスに「ミツモア」を入力して検索します。
検索結果の中から「ミツモア」をクリックすると、以下のように表示されます。
「ミツモア」の商標は全部で3つの区分に登録されています。「第9類(ダウンロード可能なスマートフォン用のプログラム,ダウンロード可能な携帯電話用のプログラムなど)」「第35類(商品の販売に関する情報の提供,役務に関する消費者情報の提供など)」「第42類(検索エンジンの提供,インターネットにおいて利用者が交流するためのソーシャルネットワーキング用サーバーの記憶領域の貸与など)」です。
このように、商標登録の際は、当てはまる区分を過不足なく申請することが大切になります。
商標登録で区分を選択する際の注意点
商標登録の区分選択を間違えると、商品が模倣されるなど、せっかく商標登録しても大切な権利を守れない可能性が出てくるので要注意です。本項では区分選択を誤ることのリスクについて解説します。また、区分選択は多くの方が勘違いしやすいポイント。区分選択を間違えやすい例もいくつかご紹介していきましょう。
商標登録の区分選択を誤ると大切な権利を守れない
商標登録の区分は、自社の権利を守る上でとても重要なキーポイントです。
たとえば、商品の区分が本来なら「ビール」が含まれる第32類なのに、誤って「焼酎」「洋酒」などの第33類で申請してしまったとしましょう。このまま商標登録の申請が通った場合、申請した商標は第33類にしか適用されません。つまりこの商品はビールなのに、肝心のビール類の分野では商標が認められていないという事態が発生してしまうのです。するとせっかく商標登録したのに、ビール類で堂々と模倣商品が発売されるというようなリスクも出てきてしまいます。これでは商標登録した意味がありませんよね。
商標登録の区分選択は、それだけ大切な意味を持っているのです。
区分選択を間違いやすい例①区分の対象を勘違い
商標登録の選択で意外と多くの方が勘違いしてしまうのが、区分の対象についてです。つまり、「この区分は、何の区分のことなのか」を間違えてしまうん場合があります。
たとえばある会社が化粧品を販売しているとします。この会社が商標登録を申請するとき、選ぶべき区分は当然「化粧品」です。ところが「商標を使うのは名刺とかホームページとかだから」と、間違って名刺やホームページの区分を選んでしまう方が少なくありません。
商標登録の区分は、あくまで「自社が消費者に対して売っている商品/消費者に提供しているサービスの内容」をカテゴライズするもの。「登録した商標を使うモノや媒体」の区分ではありませんので、気をつけてください。
区分選択を間違いやすい例②むやみに多数の区分を選択する
「そんなに区分選択が重要な意味を持つのなら、いっそ可能な限りたくさんの区分を選んでおけばいいのでは?」と考える方もいます。しかしこれもリスクのある選び方です。
区分を何個もたくさん選んだからといって、そのすべての区分において商標登録が認められるわけではありません。審査の結果「A区分とC区分は商標登録が認められたけど、B区分は認められなかった」ということだってあるのです。もしこのとき本来選択すべき区分がB区分だったとすれば、せっかくお金をかけて申請したのに、まったく関係ないA区分とC区分でしか商標が認められないという事態になります。
「必要な区分を選択しない」のも駄目ですが、「不必要な区分までやたらに選択する」のも同様にリスクがあるのです。
区分選択を間違いやすい例③「知識の教授」の乱用
第41類に「知識の教授」という内容があります。この内容は顧客に情報を伝えるという、一見幅が広そうに見える区分ですが注意が必要です。
消費者に情報を伝えるすべてのサービスが、この「知識の教授」に当てはまるわけではありません。たとえばファッション情報の提供は第45類ですし、税務相談などは第36類です。
何らかの情報を提供するサービスの商標登録を行う場合、本当に第41類の「知識の教授」で合っているのか、慎重に検討する必要があります。
商標登録の45区分一覧表
ここまでご説明したとおり、商標登録の区分は全部で45種類です。商標登録の申請を行うときは、この45区分の中から最適なものを選ばないといけません。本項では、商標登録の全45区分を一覧表にしてまとめてました。各区分について詳しく説明した特許庁のPDFへのリンクをご参照ください。
商標登録しようとしている商品やサービス(役務)がどの区分に該当するのか、参考にして頂ければと思います。
区分一覧表① 第1~34類(商品)
第1~34類は、「商品」に関する区分です。
区分 | 主な内容 | 商品例 |
---|---|---|
第1類 | 化学品 | 食品保存用の安竜さんナトリウムなど |
第2類 | 塗料 | 工業・美術用の塗料やサビ止めのグリスなど |
第3類 | 洗浄品・化粧品 | シャンプー・歯磨き粉や化粧水など |
第4類 | 燃料など | 工業用ガソリンや天然ガスなど |
第5類 | 薬剤 | ガーゼ・ばんそうこうやビタミン剤など |
第6類 | 金属製金具 | 合金・鉄製品・ガードレール・マンホールなど |
第7類 | 土木機械器具 | 溶接装置・エアドリル・ケーブルクレーンなど |
第8類 | 手動工具類 | ピンセット・くわ・はさみ・電気アイロンなど |
第9類 | 電気・機械器具 | 水泳用耳栓・防毒マスク・消火器・運転技能シミュレーター・オゾン発生装置など |
第10類 | 医療用機械器具・医療用品 | 低周波治療器・松葉杖・医療用手袋・心臓ペースメーカーなど |
第11類 | 家庭用電熱用品類 | 便器・入浴器具・加熱炉・電子レンジなど |
第12類 | 乗り物など | 貨物船・客船・自動車・人力車やその整備工具など |
第13類 | 火薬 | 重火器・無反動砲・戦車など |
第14類 | 貴金属・装飾品 | ダイヤモンド・衣服用バッジ・カフスボタンなど |
第15類 | 楽器 | ピアノ・三味線・調律用品など |
第16類 | 文房具・紙製品類 | 印刷機・郵便料計器・和紙・シャープペンシル |
第17類 | 化学繊維 | ポリエステル製品・絶縁テープ・プラスチック基礎製品など |
第18類 | かばん類 | ビジネスバッグ・スーツケース・折り畳み傘・毛皮のコートなど |
第19類 | 非金属建築材料 | 工業用セメント・火山灰・レンガ・アスファルト・丸太など |
第20類 | 家具 | 輸送用コンテナ(非金属)・まくら・机・マネキン人形 |
第21類 | 家庭・台所用品 | 鍋・コップ・寝室用簡易便器・化粧用スポンジ |
第22類 | 原料繊維 | 登山用ロープ・ハンモック・テントなど |
第23類 | 綿糸・絹糸 | 毛糸・綿糸・ガラス繊維糸 |
第24類 | 織物 | フェルト・タオル・レザークロスなど |
第25類 | 被服 | 洋服・コート・靴類・空手着・サーフィン用シューズなど |
第26類 | 裁縫用品 | テープ・リボン・ミシン針・刺繍用レース |
第27類 | 敷物 | 畳・人工芝・体操用マット |
第28類 | おもちゃ・運動用具 | 家庭用TVゲーム・ビー玉・虫取り網・日本人形・野球用品など |
第29類 | 動物性食品 | 食用樹脂・ソーセージ・卵など |
第30類 | 植物性食品 | コーヒー・和菓子・米・餅など |
第31類 | 野菜・花類 | 海藻・果実・家畜用飼料など |
第32類 | 清涼飲料 | ビール・コーラ・乳性飲料 |
第33類 | ビール以外の酒類 | 日本酒・紹興酒・養命酒・梅酒など |
第34類 | 喫煙用具 | たばこ・マッチ・ライター・電子タバコなど |
区分一覧表② 第35~45類(サービス)
第35~45類は、「サービス(役務)」に関する区分です。
区分 | 主な内容 | 商品例 |
---|---|---|
第35類 | 広告・事業管理・小売 | インターネット広告・求人情報提供・自動車販売 |
第36類 | 金融・不動産・保険 | 預金・貸付・不動産情報の提供・信用調査業など |
第37類 | 建設・設置工事 | 建築・足場工事・船舶修理・自動車整備など |
第38類 | 電気・通信 | テレビ放送・通信機器リースなど |
第39類 | 輸送・旅行 | 鉄道輸送・航空機輸送・旅行企画・電気供給など |
第40類 | 加工業 | エアコンリース・金属加工・グラビア本製版など |
第41類 | 教育・娯楽・スポーツ | 生け花教室運営・セミナー企画・サッカー指導・映画製作など |
第42類 | コンピュータ・ソフトウェア | アプリ開発・地質調査・医薬品研究・農業研究 |
第43類 | 飲食物提供・宿泊施設提供 | ホテル業・レストラン運営・会議室レンタルなど |
第44類 | 医療・美容・農業 | 銭湯運営・マッサージ施設運営・医療器具リースなど |
第45類 | 冠婚葬祭・警備 | 社会保険手続き代行・探偵業・占い・結婚式場運営など |
商標登録の正しい区分は弁理士に相談を!
ここまで見てきたように、区分選択を間違えると、せっかく商標登録しても大事な商品を模倣されてしまうリスクがあります。商標登録において、区分選択は「自社の権利を守れるかどうか」を左右するかなり重要なポイントだと言えるのです。ところが商標登録の区分選択は、多くの方が間違えやすい難しい箇所でもあります。そこでおすすめなのが、専門家に相談することです。
弁理士に相談して商標登録の区分を正しく把握しよう
商標登録の区分選択について専門家のアドバイスがほしいときは、弁理士に相談しましょう。弁理士は商標登録に関するエキスパート。弁理士に相談すれば、自社商品・サービスにマッチした正しい区分選択をしてくれます。区分選択を間違えると申請しても大事な権利が守れませんし、場合によっては再度商標登録の申請をしなければなりません。再申請するには、また相当な手数料と時間的コストを犠牲にする必要があります。
はじめから弁理士に相談しておけば、区分選択で間違えて時間とお金を無駄にしてしまうということがありません。後々のリスクのことを考えれば、かなりの安上がりだと言えるでしょう。それに弁理士に相談することで、区分選択以外にも様々なアドバイスをもらえます。どうやったら商標登録の申請が通りやすくなるかなど、弁理士は商標登録の豊富なノウハウを持っているのです。
専門家に頼らずに自分だけで商標登録の申請を行うというのは、多大な手間がかかるだけではなく、区分選択などで決定的な間違いを犯してしまうリスクもあります。これから商標登録の申請をしようと考えている方は、ぜひ弁理士への相談を検討してみてくださいね。
弁理士を探すならミツモアで
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商標登録の区分選択は、会社の権利を守るための一大重要ポイント。あとで後悔しないためにも、弁理士への相談がおすすめです。商標登録を検討中なら、試しに一度ミツモアで弁理士の無料一括見積もりをしてみてはいかがでしょうか?