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商標法違反に問われる要件や罰則は?判例を交えて解説!

最終更新日: 2024年06月28日

自社商品の知的財産権を守る、商標権および商標法。そして商標権を侵害すると商標法違反となり、さまざまなペナルティーが科せられます。

「どのような行為が商標法違反に該当するの?」
「違反するとどんなペナルティーがあるの?」
「実際の違反例は?」

商標法違反に関する、このような疑問にお答えしていきます。

商標法違反とは?該当する条件や行為を解説

商標登録 自分でするデメリット
どのような行為が商標法違反に該当する?(画像提供:Liza888/Shutterstock.com)

商標に関する決まりを定めた商標法と、商品やサービスの知的財産権を保護する商標権。それらを侵害すると「商標権の侵害」となり、訴訟の対象となってしまうことも。

本項ではまず商標法および商標権について確認した上で、どのような行為が商標法違反に該当するのかを説明していきます。

商標法とは

商標法とは、商標を保護することで利用者の業務上の信用を維持するための法律です。

商標権を与えることで、企業や個人の商標を保護すると共に、適正な競争を促して産業の発達につなげることが目的とされています。

商標権の効力とは

商標権とは、企業や個人が提供する商品やサービスを、他社からの模倣や無断使用から守るための権利です。作品を生み出した時点で発生する著作権と違い、特許庁に商標登録を申請して認可された際にはじめて発生します。商標権があると、以下2つの効力を持ちます。

  1. 専用権(積極的効力)
    商標登録者が、登録された商標(指定商標・指定役務)を独占的に使用する権利。または他者の商標使用を許可する権利。
  2. 禁止権(消極的効力)
    商標登録者が、登録された商標(指定商標・指定役務)および類似商標の使用を禁止する権利。

また、一般的に、商標権を取得した商品は、取得していない商品に比べて以下の機能が高まるといわれています。

  • 自他商品識別機能
    商標登録された商品やサービス(役務)が、他と識別できるようになる機能
  • 出所表示機能
    商標登録された商品やサービス(役務)の認知度が高まることで、どこが提供しているか明確になる機能
  • 品質保証機能
    顧客に品質に関する安心感を与える保証機能
  • 宣伝広告機能
    商標の世間における認識度が高まることで、商品の売上につながる機能

商標法違反に該当する行為とは

商標法は、商標権を守るための権利です。先述した商標権を侵害した場合、商標法違反になる可能性があります。

具体的には、商標の権利者が許可していない第三者が登録商標を勝手に使用した場合です。

このとき、商標の権利者は裁判所に訴えを起こすことや、警察に処罰を求めることができます。

たとえば、以下のような行為は商標法違反に該当する可能性があるので、注意が必要です。

  • 服のタグに商品権を持っていないブランド名を載せる行為
  • 洋菓子の包装紙に権利を持っていない商標(キャラクターイラストなど)を載せる行為
  • 飲食店で使うビールジョッキに権利を持っていない商標を載せる行為

このように、権利を持っていない商標を勝手に使用した場合には商標権の侵害になります。

また、類似している商標を利用した場合も「商標権侵害の予備行為」と判断されて、商標法に違反する行為です。

したがって、商標を使用するためには、誰かの権利を侵害しないように注意することが大切になります。

商標法違反となるかどうかの基準は

商標を使いたくても、違反となる基準がわからないという方もいらっしゃるかもしれません。

商標権が侵害されているかを判断するには、一定の基準に従うことになるので確認しておきましょう。

最初に基準となるのは、商標の類似性です。

商標を使用した際にすでに登録されている商標と同一か類似しているものだと判断されたら、商標権の侵害に当たります。

このときにポイントとなるのは、商標の商品・役務のいずれかが「非類似」と判断されれば、商標権の侵害にはならないということです。

商標の類似性は、見た目や呼び方、一般的な印象などで検討されるものです。

判断には専門的知識が必要になりますので、弁理士に依頼する方が確実でしょう。

商標法違反を犯した場合の罰則とは

商標違反をした場合のペナルティは?

商標法違反になったとき、逮捕や罰金などの罰則があるのかが気になる人も多いのではないでしょうか。

具体的な判例を見ていく前に、商標権を侵害したらどのようになるのかの全体像を確認しておきましょう。

商標法違反には、「商標権侵害行為」に該当した場合、「商標権侵害の準備行為」に該当した場合、法人が商標法に違反した場合の3つがあります。

「商標権侵害行為」に該当した場合

商標権侵害行為については、商標法第78条に規定があります。

商標権を侵害した人には、10年以下の懲役もしくは1,000万円以下の罰金が課されます。懲役刑と罰金刑の両方が処されることもあります。

したがって両方が適用されると、10年の懲役と1,000万円の罰金ということにもなりえるのです。

商標権を侵害することはないように、細心の注意を払いましょう。

「商標権侵害の準備行為」に該当した場合

商標権侵害の準備行為については、商標法第78条の2に規定があります。

商標権侵害の準備行為をした人には、5年以下の懲役もしくは500万円以下の罰金にするという規定です。こちらも懲役刑と罰金刑の両方が処されることもあります。

たとえば、使用を許可されていない商標を無断で使った商品を、販売するために所持していたというケースです。

このように、まだ売っていない段階でも「商標権侵害の準備行為」と判断されて処罰の対象になってしまいます。

商標を使用する場合は、許可を取れているのかを十分に確認するべきです。

法人が商標法に違反した場合

法人が商標法に違反した場合については、商標法第82条に規定があります。実行した人の処罰とあわせて3億円以下の罰金刑が科されるというものです。

法人が商標法に違反した場合には、個人よりもはるかに罪が重くなるので注意しておかなければなりません。

商標法違反に関する実例と判例

商標法違反
商標法違反の実例を紹介(画像提供:polkadot_photo/Shutterstock.com)

商標法違反についての罰則を理解したところで、実例や判例を見ていきましょう。

商標侵害の事例を見ることで、どのようなケースで商標法違反となるのかを知ることができます。

今回見ていく事例は、以下のようなものです。

  • 有名ブランドのパロディー「aJides」は商標法違反?
  • 秋田名物「いぶりがっこ」使用は商標法違反にならず
  • iPhone「脱獄」で商標法違反に

それぞれの商標法違反についての事例を確認していきましょう。

有名ブランドのパロディー「aJides」は商標法違反?

楽天市場より

事件の概要としては、有名ブランドである「adidas」のパロディーTシャツとして「aJides(アジデス)」という商標のロゴを販売していたお店が摘発されたものです。

大阪府警によって、このアジデスをはじめとするパロディーTシャツを売っていたお店の、経営者や従業員が逮捕されることになりました。

そこでは、本物である「adidas」とは違うとわかった上でのパロディー商品であり、コピー商品とは違うことが争点となったのです。

コピー商品ではないとは言え、パロディー商品は本物の商標の知名度を使って商売をしています。

したがって、商標権で保護されるべき宣伝公告機能を許可なく使用していると判断されました。

また、パロディー元の商品よりも著しく安価で商品を販売していた場合、品質保証機能も侵していると考えられます。

以上のような理由で、パロディー商品の販売は摘発・逮捕につながるという前例になったのです。

秋田名物「いぶりがっこ」使用は商標法違反にならず

秋田名物「いぶりがっこ」
秋田名物「いぶりがっこ」使用は商標法侵害ではない

事件の概要としては、秋田名物の漬物である「いぶりがっこ」の商標権が争われたものです。

秋田県内の業者同士で争われ、特許庁によって判断がくだされました。

この事件では、特定の業者は早い段階で「いぶりがっこ」の商品名で販売をしていたところ、他の複数業者も「いぶりがっこ」の名称で売ることができるように特許庁に判定を求めていたのです。

事件の争点として特許庁は、「いぶりがっこ」が秋田の郷土食として幅広い人に知られていることを挙げました。

そして、特許庁に判定を求めていた複数業者に対しても、「いぶりがっこ」の名称で販売しても商標権侵害にならないと結論づけたのです。

このように、すでに多くの第三者が使用して普通名称に近くなったものは、商標権侵害にならないこともあります。

iphone「脱獄」で商標法違反に

脱獄iPhoneは商標法違反
脱獄iPhoneは商標法違反

事件の概要としては、Apple社が出しているiPhoneを「脱獄」した状態で売っていた業者が逮捕されたというものです。

脱獄というのは、Apple社が公式に認めていない不正改造のことを指します。

正規のルートで購入したiPhoneだとしても脱獄したら逮捕されるのかどうかが問題となりました。ここで重要なのが、商標権の持っている品質表示機能です。

登録された商標が付いている商品を許可なく脱獄という改造行為を行うことで、商標が保護している品質表示機能を失わせていると考えられます。

iPhoneを改造せずにそのまま転売する場合には問題とならなくても、脱獄をして商標権を侵害してしまうと逮捕されることにもなりえるのです。

商標法以外にも違反に注意したい法律

商標法 弁理士
商標法以外にも気を付ける法律は?(画像提供:maroke/Shutterstock.com)

ここまで商標法について見てきましたが、商標法以外にも違反に注意しておくべき法律があります。

たとえば、不正競争防止法や詐欺罪、関税法などです。

商標法違反の罰則や判例をおさえることは重要ですが、それ以外の法律も知っておいたほうが安心できます。

それぞれの法律について、順番に確認しておきましょう。

模倣品を販売すると不正競争防止法違反になる

模倣品(デッドコピー)を販売すると、不正競争防止法違反になります。

他社が作って売っている商品を模倣した商品を作って売ることは、商標権侵害だけではなく不正競争防止法に違反する行為です。

それぞれについて刑事罰も規定されています。商標権侵害は、10年以下の懲役もしくは1,000万円以下の罰金、またはその両方です。

不正競争防止法違反は、5年以下の懲役もしくは500万円以下の罰金、またはその両方となっています。

模倣品を売って手軽に収入を得ようという、安易な考えは許されないということですね。

偽ブランドと知って販売すると詐欺罪になる

インターネットオークションなどで偽ブランドと分かった上で販売するのは、詐欺罪になります。

詐欺罪は、偽ブランドを相手に本物だと偽った場合に問われる罪です。詐欺罪が適用されると10年以下の懲役刑となります。

詐欺罪は罰金刑がないため重い罪です。インターネットオークションなどは取り引きの履歴が残り、詐欺罪がバレやすくなっています。

軽い気持ちで偽ブランドの販売に手を出してしまうと、大変なことになるということです。

商標権を侵害する物を輸入すると関税法違反になる

商標権を侵害している商品を海外のネットショップなどから輸入すると、関税法違反になります。

関税法違反が認められると、10年以下の懲役もしくは1,000万円以下の罰金です。

関税法違反は商売として輸入していることが条件となります。

ただし、自分で使用する目的だと主張しても、大量に輸入していれば税関には関税法違反だと見なされるのです。

海外で安価で売られているコピー品を、転売目的で輸入するのは絶対にやめましょう。

事前の弁理士への相談で商標法違反を防ごう

商標法違反を予防するなら弁理士に相談を

今回ご紹介したように商標法違反を犯すと、多大なペナルティーを負うことになります。

しかし、商標法は専門性が高いので、自分だけでは商標法違反かどうかがわからないことも多いと思います。

逮捕されることになってからでは遅いため、事前に商標法のプロである弁理士に相談するべきです。

商標登録違反にならないか弁理士へ相談を

商標を使用するには、既に商標登録されている商標を調べる「商標調査」をしっかりしなければ、意図せずして商標法違反を犯してしまう恐れがあります。

また、商標登録した自社の商品が商標権を侵害に遭った場合には、警告や訴訟といった対応をして商標権を守らねばなりません。

弁理士に依頼すれば、販売する商品が商標法違反にならないかを判断してくれますし、商標権侵害への対応もしてくれます。

商標権について少しでも不安があるのなら、弁理士に依頼しましょう。

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