自社の社名ロゴや商品を、模倣から守るために必要な商標登録。その手続きは煩雑で専門的な知識が必要な部分もありますが、正しい方法を理解すれば自分で行うことも可能です。
本記事は、自分で商標登録する方法について、解説します。記事の後半では商標登録を弁理士に依頼すると安心な理由についてもお伝えしていきます。
商標登録とは
商標登録とは、特許庁での手続を行うことによって商標権を発生させる行政手続きです。
商標権を発生させておけば、指定した商品についての登録商標を10年間権利者のみが使用できるようになります。
さらに、勝手に自社の商標を使用された場合には、使用の差し止めを請求できるのです。
次項からは商標登録する具体的な方法について、解説していきます。
商標登録を自分で出願する方法
商標登録は自分で出願して行うこともできます。実際に、弁理士に依頼すると費用がかかるので自ら商標登録に臨む個人事業主も多いです。
ただし、商標登録までの道のりは平坦ではありません。商標の調査から出願、審査が拒絶(差し戻し)された場合の対応など、さまざまなステップを踏む必要があるのです。
本項では、商標登録を自分で行う方法について解説していきます。
商標登録の流れ
商標登録を自分で行うには、以下のステップが必要です。
- 商標登録の方法① 出願する商標を決める
- 商標登録の方法② 出願する商標の区分を選択する
- 商標登録の方法③ 商標調査で類似商標の有無を調べる
- 商標登録の方法④ 商標登録の出願書類を作成する
- 商標登録の方法⑤ 特許庁へ出願書類を提出、または郵送する
- 商標登録の方法⑥ 審査で拒絶されたら、補正する
- 商標登録の方法⑦ 審査に通ったら、登録時費用を支払って設定登録する
では、次項からはそれぞれのステップについて、順番に確認していきましょう。
商標登録の方法① 出願する商標を決める
当たり前のことだと感じるかもしれませんが、出願する商標を決めることから商標登録は始まります。たとえば社名のロゴを選択する場合、社名のみを商標登録するのか、ロゴ画像を商標登録するのか、それと社名とロゴの複合で商標登録するのかによって守れる範囲が変わってくるのです。
また、複数の商標を登録したいと考えているなら、それぞれ別々に手続を行う必要があります。
出願する商標が具体的に決まっていないなら、明確に定めることから取り掛かりましょう。
商標登録の方法② 出願する商標の区分を選択する
出願する商標を決めたら、区分を選択します。区分とは商標のカテゴリーのことで、「電気」「化学」「医療」など全部で45の区分に分けられています。
区分は特許庁のホームページで検索すれば、絞り込むことができます。また、ホームページを見てみると、区分の横に説明文が書かれているのですが、商標登録の際にはこの説明文も必要となるのでメモしておきましょう。
ただし、区分の選択は専門家でも迷うケースがあります。自分だけで判断するのが難しいと感じたなら、専門家である弁理士の力を借りると良いでしょう。
商標登録の方法③ 商標調査で類似商標の有無を調べる
商標登録の出願書類を作成する前には、商標調査で類似商品の有無を調べなければなりません。
先に他社に登録されていないかを特許庁のホームページで確認する必要があるのです。
このとき、類似商品があれば他社の商標権を侵害してしまう可能性があるので、必ずまだ登録されていない商標を出願するようにしてください。
商標登録の方法④ 商標登録の出願書類を作成する
出願したい商標について具体的に確認できたら、出願書類を作成していきます。必要な出願書類はWeb上でダウンロード可能です。
書類の提出日は、郵送する場合は郵便局に持っていく日を、特許庁に持参する場合は持参する日を記入します。また、識別番号は初めて出願をするのなら空けておいて大丈夫です。
過去に出願した経験があれば、識別番号が発行されているはずなのでそれを間違えないように書きましょう。
出願書類に記入漏れがあったら登録までに余計な時間を要するので、慎重に作成するのが良いです。
商標登録の方法⑤ 特許庁へ出願書類を提出、または郵送する
商標登録のための出願書類が準備できたなら、特許庁へ書類を出します。
送付方法としては直接持参、または郵送から選ぶことができます。ちなみに、出願書類を提出前に、特許庁に電話などで書類に不備がないかを質問しておけば安心です。
出願書類に自信があるなら良いですが、少しでも不安があるなら解消しておいてください。電話でも不安が解消されないなら、特許庁の窓口に持参して質問すれば確実です。
不安事項を前もって質問し、解決してから提出しましょう。
商標登録の方法⑥ 審査で「拒絶理由通知」が来たら補正する
商標登録の出願をしたら、審査待ち期間(FA期間)を経て審査が始まります。そして審査の結果、商標法上の規定にそぐわない部分があると「拒絶理由通知」という登録を拒否する文書が届きます。
その場合、「意見書」を一定期間内に提出して反論・補正する必要があります。通常は何度かこのステップを踏んだ上で、商標登録が承認されることが多いです。
商標登録の方法⑦ 登録時費用を支払い、設定登録する
晴れて審査に合格して商標登録されることになったら、審査に通った証である「登録査定」が届きます。そして、登録時費用を支払って設定登録をすることで商標権が発生します。
登録料の支払い時には、特許印紙を購入して出願書類に貼り付ける必要があります。出願費用は、3,400円に区分数をかけ合わせたものです。
たとえば、登録する商標の区分数が3なら、以下のようになります。
3,400円×3=10,200円
特許印紙は扱っていない郵便局もあるので、事前に確認してから行きましょう。
以上が、商標登録を自分でする流れでした。
商標登録を自分でするデメリット
商標登録を自分でするとき、知っておくべきデメリットがあります。
- 商標登録の準備に手間がかかる
- 商標登録調査や区分選びでミスすると大変なことになる
- 商標の審査に通らないと余分な費用と手間がかかる
- 商標登録後も対応を要する事項がある
これらのデメリットを知っておかなければ、商標登録の手続を行ってから後悔する可能性が高いです。
事前にどのようなデメリットがあるのかを知った上で、納得できる商標登録を行ってください。
それでは、どのようなデメリットがあるのかを順番に確認しておきましょう。
商標登録の準備に手間がかかる
商標登録には準備が必要です。申請を決めてから実際に出願するまで1月以上の準備期間が必要になることが多いです。
また、多くの方が初めての商標登録申請になると思いますので、一つずつ調べながら進めることになり大変な労力です。
その点、弁理士に依頼すれば費用はかかりますが、登録したいものを伝えて簡単な受け答えをするだけで、調査などは全てお任せできるので、費用と手間のバランスを考えるとデメリットと考えられるほど労力が必要なことが多いです。
商標調査や区分選択でミスすると大変なことになる
商標調査や区分選びに失敗すると、商標登録に成功したとしても、他社による商標侵害から守れないかもしれません。
たとえば肉も酒も扱うスーパーマーケットが、自社製品のロゴを商標登録するケースで考えてみましょう。第29類(食品・乳製品など)でロゴを登録した場合、食品販売会社によるロゴの無断使用は防げます。ところが、第33類(酒類)について商標登録をしておかなければ、酒店による無断使用には対抗できないのです。
せっかく時間やお金というコストをかけて失敗するのはもったいないですよね。区分選択は専門家でも迷うケースが多いので、少しでも迷いを感じるなら調査段階から弁理士におまかせした方が良いでしょう。
自分で商標出願すると審査に通らないことも
商標登録は、書類を提出すれば必ず合格するわけではありません。
もしも商標の審査に通らなかった場合には、意見書の提出で反論する必要がありますので余分な費用と手間がかかってしまいます。
そして反論・補正しても基準に満たない場合は、商標登録は認められません。そうなると、かけた時間やコストが無駄になるので注意が必要です。
トータルで見れば最初から専門家に頼っておいたほうが得だったということもありえます。
少しでも不安があるなら、自分だけで行おうとせずに専門家に相談しましょう。
商標登録後も対応を要する事項がある
商標登録を行ってからも、権利侵害をされたときの対応には常に気を使わなければなりません。
もしも登録商標を無断で他社に使用されていた場合、差止め請求や損害賠償請求をして、商標侵害をやめさせる必要があります。
一般的にはいきなり訴訟をするのではなく話し合いで合意に至ることが多いのですが、専門的知識がなければ有利に話し合いを進めるのは難しいでしょう。
そして、こうした権利侵害に関するトラブル時に初動対応を誤ると、事態が長引いてしまうことに。
また、逆にこちらが商標登録した商品が、意図せずに他社の商標侵害をしてしまうケースもあります。この際も、相手からの差止め請求や話し合いに対応しなければなりません。
自分だけでこれら全ての対応を行うのは難しいので、専門家にアフターフォローまで依頼しておくのが安心です。
商標登録は弁理士に依頼しよう
前項までで、自分で商標登録をする煩雑さやリスクをご理解して頂けたかと思います。商標登録は専門家である弁理士に依頼するのが良いでしょう。弁理士なら、商標確認から書類作成、出願などのさまざまな手続を行ってもらえます。
本項では、弁理士に依頼するメリットや探し方を解説していきます。
弁理士なら商標登録出願から登録後のケアまで安心
弁理士に依頼すれば、商標登録の出願から登録後の侵害などへのケアまでトータルで任せることができます。
弁理士は商標についての専門家です。あなただけでは答えが出せないようなことも、専門的な視点からアドバイスしてくれます。
「弁理士に相談するのは依頼料がかかるから抵抗がある」という方もいらっしゃるかもしれません。しかし、弁理士に相談することでスムーズに商標登録を行え、登録後も安心して経営していけると考えたら得だと言えます。
商標登録の審査に合格するには、専門的な知識が必要です。自分でやろうとして、何度も失敗してばかりでお金や時間がかかるだけという人もたくさんいます。
早い段階から弁理士に相談して、迅速に商標登録を行いましょう。
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