屋根には実にさまざまな形式がありますが「越屋根」とは、日本に古くから根付く屋根の形の名称です。
伝統的な建築物にも採用されており機能性にも優れているため、和風のお家を建てたい方はぜひ検討してみましょう。越屋根の概要をはじめ、メリットやデメリットについて解説します。
越屋根とは?
「こしやね」と読むこの形式は、日本でも古くから採用される屋根の1種です。由緒ある建造物でも採用されており、見映えをよくするだけでなく生活面をサポートする機能も備えています。
しかし優れた性能を有していながらも、どのようなものか分からないという人も少なくありません。これからマイホームの建設を検討する人ならば、ぜひ知識として備えておいてほしい建築様式です。
屋根の上にある小さな屋根
一言で表すならば、「屋根の上に乗っている、さらに小さな屋根」です。一般的なタイプとして、左右に向かって「へ」の字型に傾斜を持つ「切妻屋根」の上に、もう一つ小さな切妻屋根が乗っているものです。
小さな屋根を設けることで、立ち上がりの部分に採光窓を設置できます。そのため採光を住居内に取り込めるのです。
見た目により迫力が生まれる点も見逃せません。存在感や風格が備わることを期待して施工する人も多い型式です。
上部が左右に傾斜する切妻型で、下部が四方への勾配を持つ寄棟(よせむね)と合体した「入母屋屋根」と並び、日本における伝統的な屋根様式といえます。
越屋根が使われている建物
「競進社模範蚕室」は、埼玉県本庄市に建てられた有形文化財です。養蚕のための建物で、内部には炉が設けられているため、吸気・排気のための通気口として越屋根が採用されました。
同じく有形文化財の「旧杉山家住宅」は、大阪府富田林寺内町にあります。かつては商家が多かったこのエリアでは、繁盛した商家の建物がいくつか現存しています。茅葺きから瓦へと変わりつつあった江戸時代以降、商家でも越屋根が数多く採用されるようになりました。
「旧大家倉庫」は、北海道小樽市の歴史的建造物として登録されています。この地域は運河を有していたことから、輸送の拠点として繁栄しました。明治時代に建造された倉庫の中に越屋根が見られ、当時は財力の象徴として施工されることが多かったようです。
越屋根のメリットとデメリット
屋根が重なったような見た目の越屋根には、どのような利点や欠点があるのでしょうか。それぞれについて見ていきましょう。
通気性と採光に優れている
住宅内の空気を新鮮に保つためには、換気が欠かせません。通気性を確保した設計で、常に室内の空気が循環していることが大切です。
通気口は、高い場所にある方が高い効果を得られます。屋根の部分に風が通る部分を設けられることで、通気性をしっかりと保持できるのです。
日当たりをいかに確保するかも、建物の設計においては重要です。越屋根では屋根の立ち上がり部分に採光窓を設置できるため、室内に光をたっぷりと取り入れられます。
天窓も採光には効果的ですが、劣化が早いことが難点です。それに対して越屋根は、立ち上がり部分に窓を設置するため、雨風に直接さらされないことから劣化を遅らせることができます。
雨漏りのリスクとコスト
屋根の種類は実に多様ですが、工法が複雑になるにつれ雨漏りのリスクは高まります。建物の最も上部にある屋根において、結節部やつなぎ目が多いほど、雨水が浸透しやすくなるのです。
越屋根も立ち上がりで多少保護されるとはいえ、頂上部分での施工部が増える型式です。従って雨水の浸透リスクについては、留意が必要といえます。
見た目からも複雑さが分かる越屋根は、建設費用に加えメンテナンスにもコストがかかる点がデメリットといえるでしょう。外観がスッキリとした切妻屋根などに比べると、どうしても工事費がかさむ傾向があります。
越屋根によく使われる屋根材と特徴
屋根が二重になったように見える越屋根では、どのような建材が用いられるのでしょうか。代表的な屋根材について解説します。
和風の屋根に多い日本瓦
最も多く使用されるものが「日本瓦」です。歴史的にも古い工法である越屋根では、同じく古くから伝わる日本瓦がとても適しており、ビジュアル的にも似合います。
日本の古民家では、茅葺き屋根に天窓を設けることもありました。江戸時代以降、瓦が一般的になってからは、建設時も修繕の際も手間がかからない瓦を使い、1年を通して快適に過ごせる環境づくりの一環として、越屋根を設えるケースが多かったといわれます。
一方日本瓦は丈夫である分、重量には考慮が必要です。通常の構造にプラスされた越屋根の重量に、耐えうる耐震構造であるかも慎重に検討しましょう。
安いが劣化しやすいトタン
「トタン」は、屋根材として用いる際に安価な点が最大の魅力といえます。亜鉛でメッキ加工を施した、とても薄い鉄板素材のことです。
軽量なため、住宅の基礎や土台に負荷を与えず、耐震性も高い利点があります。工事費も大幅に抑えられるでしょう。
一方で錆に弱く劣化も速いため、建材としての耐用年数は短いといわざるを得ません。劣化することで外見に影響が出やすいのもデメリットです。断熱性や防音性も十分とはいえません。夏は暑く、冬の寒さを防ぎ機能も弱い素材であることは留意が必要です。
近年人気の高いガルバリウム鋼板
ガルバリウム鋼板は、屋根材としても近年人気が高まりを見せています。鋼板素材で亜鉛とアルミニウム、シリコンによってメッキ加工されたものです。
軽量で耐震性が高い金属でありつつ、水気に強く錆びにくい性質を備えています。複雑な形状にも対応する素材でありながら、価格的にも手頃な点が評価され、広がりを見せました。
ただし傷が付きやすいため、定期的なメンテナンス塗装が必要です。防音性についても高いとはいえない点も注意しましょう。
光と風が取り込める越屋根を検討しよう
マイホームの設計を検討する上で、屋根の形状は全体のイメージを印象付けるため意識を向けるべき部分です。屋根のタイプによって、生活に与える影響が異なります。
採光と通気性は、快適な暮らしに欠かせない要素です。両者を同時に得られる点で、越屋根はおすすめの型式といえます。
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