これまで一度も「鍵」に触ったことがないという人はおそらくほとんどいないでしょう。しかし、身近で使われている鍵の構造や種類については案外よく知らないかもしれません。
この記事では、意外に知らない鍵の構造や、玄関や窓などの住宅まわりで使われる鍵の種類を解説します。さらに国内で購入できる主要な鍵メーカーも紹介しますので、ぜひ鍵選びの参考にしてみてください。
鍵の構造を解説!錠や錠前、シリンダーとは?
日常の会話では、扉についている金具部分も、持ち歩いている小さな道具もまとめて「鍵」と言ってしまうことが多いと思います。
「錠」や「錠前」という言葉を聞いたことはあっても、具体的にどの部分を指すのかよく分からない方も多いかもしれません。
これらがどの部分を指しているのか、図解とあわせて説明します。
錠前(じょうまえ)
「錠」と「鍵」のセット。 |
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錠(じょう)
施錠したい扉側についている金具。鍵を使って、動かないように固定をする。 |
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鍵(かぎ)
錠を開閉するための道具。普段持ち歩くほう。 |
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シリンダー
錠の一部。扉の外側にある、鍵を差し込む鍵穴部分のこと。 |
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サムターン
錠の一部。扉の内側にある、つまみのついた部分のこと。 |
シリンダー(鍵穴部分)の種類
錠前の要ともいえる部分であるシリンダーにもさまざまな種類がありますが、普段自宅の鍵がどんなシリンダーなのか意識することはあまりないかもしれません。
現在、住宅や建物で使用されている鍵はシリンダー錠と呼ばれる錠前が主流で、主に以下の5種類に分けられます。
タイプによって性能が少しずつ異なるので、それぞれの特徴を見ていきましょう。
鍵の種類 | 防犯性 | 使いやすさ | 価格 |
ディスクシリンダー | △ | ○ | ◎ |
ロータリーディスクシリンダー | ○ | ○ | ◎ |
ピンシリンダー | △ | ○ | ○ |
ディンプルシリンダー | ○ | ◎ | △ |
マグネットタンブラーシリンダー | ◎ | ○ | ○ |
ディスクシリンダー
鍵穴が縦に開いているタイプのシリンダーで、鍵穴の形は「く」の字であることが特徴です。
構造が単純で簡単にピッキングできてしまうことから、一時期かなり空き巣被害が多発したため、現在はメーカーにおいても製造廃止になっています。
新しい物件ではほとんど採用されていませんが、古い住宅ではいまだに使用しているところも多いです。防犯性の観点からも、シリンダーごと交換するのが望ましいでしょう。
ロータリーディスクシリンダー
ロータリーディスクシリンダー錠は、ディスクシリンダー錠の後継として開発された鍵です。中にある筒とタンブラーが別々になっており、タンブラーは中間部分のような役割を果たしています。
現在の日本ではほとんど使用されることがないのが特徴です。見た面はディスクシリンダーと良く似ており、スペアキーなども作るのが難しく、防犯性が高いです。
ピンシリンダー
ピンシリンダー錠も、戸建てやマンションで使用されているタイプの1つです。
一列に並んだタンブラーの形がピン状になっているので、このように呼ばれています。片側のみにギザギザの刻みがある点も特徴のひとつといえるでしょう。
現在はピンの形状をピッキングされにくく改良されたものが生産されているものの、防犯性は高くありません。
ディンプルシリンダー
ディンプルシリンダー錠は、ピンシリンダーをより複雑化したタイプです。ピンが複数方向から刺さっていて本数も多く、ピッキングが非常に難しいとされています。
他のシリンダー錠と比べて価格は高いものの、防犯性に優れています。
マグネットタンブラーシリンダー
マグネットキーは、鍵の側面にマグネットを埋め込んでいるものです。
鍵表面にも磁石が入っており、タンブラーとかぎ表面の磁石のすべてが反発することで、内筒が回転する仕組みとなっています。マグネットの配列が1つも合わないと回転しないので、防犯性も高いです。
一方でサムターン回しや鍵破壊といった力ずくの手口には弱く、より防犯性の高い鍵の台頭も重なり、近年では廃盤が進んでいます。
【設置場所別】住宅でよく使われる錠前の種類
施錠したい扉側に設置された金具である錠にはさまざまな種類があり、玄関、窓、ポストなど、施錠したい場所に適したタイプのものが使われています。
防犯性は主に使われるシリンダーに左右されますが、標準で2つのシリンダーが付いているプッシュプル錠などは比較的セキュリティが強固な傾向にあります。
住宅でよく見かける錠の名称と特徴を場所別に解説するので、鍵選びの参考にしてみてください。
玄関扉に使われる錠
鍵といえばまず玄関に使われるものを思い浮かべる人も多いと思います。
玄関に多く使われているのは、扉の中に埋め込むタイプの錠です。ドアノブやレバーと一体になっています。
ドアに錠ケースが埋め込まれた「ケースロック」
ケースロックはドアに錠を彫り込むタイプの錠前であり、箱型の錠ケースにデッドボルト(鍵、サムターンで操作するかんぬき)、ラッチボルト(ドアノブを回して操作する仮締り)、シリンダー、サムターン、レバーといった部品が一体になっています。
ドアの表面にはレバー、シリンダー、サムターンのみが露出しており、非常にすっきりした見た目です。
マンションやアパート、オフィスビルのドアに多く採用されており、最もオーソドックスな錠前の1つといえるでしょう。
鍵交換の際はシリンダーのみを取り外して交換することができるタイプが多いです。
ドアノブとシリンダーが一体になった「インテグラル錠」
インテグラル錠はドアノブとシリンダー・サムターンが一体になった錠前です。ケースロック同様、錠ケースにはデッドボルトとラッチボルトの両方がついています。
新しい建物にはあまり採用されていませんが、主に古い住宅の玄関や勝手口、トイレによく見られ、現在でも広く使われています。
シリンダーとドアノブが一体になっているため、鍵交換の際にはドアノブごと交換しなければなりません。
ハンドルを押し引きして開閉する「プッシュプル錠」
プッシュプル錠は、ハンドルを押したり引いたりする動作でラッチボルトを操作して開閉するタイプの錠前です。
従来は①レバーハンドルを下げたりドアノブを回したりしてから②ドアを押し引きするという2つの動作が必要でしたが、プッシュプル錠は①ハンドルを押し引きするだけでドアが開閉できるため、操作がしやすいのが魅力です。
新しい戸建住宅の玄関ドアに多く採用されています。シリンダーが2つ付いた「1ドア2ロック」の製品が多く、防犯面も安心です。
大半の種類がシリンダー(鍵穴)のみ交換することができます。
突起部分を下げて開閉する「サムラッチ錠(装飾錠)」
サムラッチ錠はレバーの上にある「サムピース」という突起を押し下げてラッチボルトを動かす錠前で、凝った装飾が施されたものが多いことから装飾錠とも呼ばれています。
新築住宅ではほとんど採用されないものの、かつては玄関ドアによく使われる錠前の1つでした。現在でも古い住宅で使われています。
シリンダーのみの交換が可能なタイプと、錠前ごと交換しなければならないタイプがあります。
室内側に錠ケースが露出している「面付箱錠」
面付箱錠は錠ケースがドアの室内側に露出した錠前です。錠ケースが完全に室内側に入っており、デッドボルトがドアのすき間から見えないため、バールなどによる破壊開錠に強いのが特徴です。
マンションなどの集合住宅の玄関ドアに多く採用されています。
鍵交換の際は、大半の種類においてシリンダーのみ交換することが可能です。
引き戸に使われる「引戸召合わせ錠」
引戸召合せ錠は、2枚の引き戸が重なる部分を固定するタイプの錠前です。
古い戸建て住宅に多く見られます。
多くの引き戸にはガラス入りドアが使用されているため、ガラスを破ってサムターン回しをされるリスクが高いことに注意しなければなりません。対策として、このような手口に強い引き戸錠に交換するか、戸先側にも鍵を取り付ける方法があります。
室内(窓、浴室、トイレ)で使われる錠
室内の扉に使用される錠は、主にプライバシー確保を目的として設置されます。鍵はなくサムターンやレバーによって施錠し、扉の片側からしか開閉できないような仕組みになっているものがほとんどです。
クレセント錠
アルミサッシなどの室内側に取り付けられる鍵で、回転させる部分が半円系であることから、クレセント(三日月)錠と呼ばれています。
形状や性能もシンプルなものが多く、元々防音など窓ガラスの密閉度を高める目的で付けられた鍵であり、防犯性などは考慮されていませんでした。そのため、錠付近の窓ガラスを割ったり穴を開けたりすれば簡単に解錠できてしまい、空き巣に狙われやすい部分ともいえます。
これに対しては、クレセントが回らないようにロックする鍵や、窓枠に取り付ける補助錠などで、防犯性を補うことが可能です。
間仕切り錠・表示錠
間仕切り錠・表示錠は、サムターンなどで内側から施錠ができるようになっている錠です。
両者の違いは、「外から開閉の状態が分かるかどうか」です。トイレなど、中に入っているかどうかが一目見て判断できた方が良い部屋の鍵には、開いているか閉まっているかが分かる表示錠が使われます。
倉庫、金庫、ポスト等で使われる錠
南京錠
可動式の掛け金がついており、錠前本体を取り外すことができる錠です。鍵を使って解錠するものと、本体についたダイヤルロックの番号を合わせるダイヤル式のものがあります。
玄関ドアなどの鍵としては心もとないものの、力任せに開錠してものを盗むような犯罪をある程度抑止できるため、ロッカーや鞄、金庫といったアイテムの鍵として使われることが多いです。
ダイヤル錠
数字の刻まれたダイヤルを左右に回し、解錠する仕組みの錠です。
内部には溝のついた円盤が数枚と棒が設置されており、「右に7を2回、左に4を1回」といった要領で特定の数字(溝がある部分の数字)を印(棒の部分)に合わせるように回すと開くようになっています。
集合住宅のポストや金庫によく使われています。
雑貨等に使われる錠
古代から使われている形状の錠は、作りが単純であることから防犯性という意味では現在は実用性がないものの、見た目の良さなどから今でもアンティーク雑貨などに使われています。
ウォード錠
ウォード錠は「鍵」と聞いてイメージする形状のもので、古代ローマの時代にはその原型が作られているとされる歴史の古い錠です。
鍵穴の内部に、対応する鍵の形に合った障害が作られており、それ以外の鍵を使うと引っ掛かるという仕組みになっています。
装飾が施されたものや見た目がおしゃれなものが多く、かばんや南京錠、アンティーク雑貨の錠としては現役です。
レバータンブラー錠
鍵穴が前方後円墳の形をした錠で、鍵はアクセサリーのモチーフにも使われるようないわゆる「鍵」らしい形をしています。
外部との境目になる扉には向きませんが、家の中の扉やアンティーク雑貨に使えばおしゃれで雰囲気が出るでしょう。
電子錠の種類
電子錠は電子的に施錠を行う比較的新しいタイプの錠前の総称です。オフィスや商業施設を中心に使われていますが、近年では住宅の鍵として採用されるケースも増えています。
ピッキング、サムターン回しなどの物理的な解錠が不可能であり、一般的に防犯性が高いといわれています。一方で、設置費用は比較的高めで、暗証番号忘れや漏洩、カードの破損といったリスクがあることはおさえておきましょう。
電子錠と一口に言っても様々なタイプがあるため、代表的なものを紹介します。
カード式
カード式の電子錠は、カードが鍵の役割を果たし、磁気やICチップなどで認識して解錠する錠前です。カードを差し込んだり近づけたりして開けるタイプがあります。
ホテルやオフィスビルで多く使われていますが、住宅にも導入することが可能です。
鍵交換の際は機械ごと交換しなければならないため、費用は高額になる傾向にあります。
暗証番号式
決められた暗証番号をテンキーで入力して解錠するタイプの錠前です。番号さえ覚えておけば鍵を持ち歩く必要がないため、鍵をなくす心配がありません。
暗証番号を知られない限りは第三者による解錠ができないため、防犯性も高いです。
オフィスビルをはじめ、比較的新しい住宅でもよく使われています。
生体認証式
生体認証錠は、指紋や静脈、虹彩など、身体の一部の情報を鍵として施錠・解錠を行う錠前です。鍵を持ち歩く必要も、番号を覚えておく必要もないため、鍵の管理がとても楽です。
ただし、指紋認証式であれば指先の乾燥や怪我など、個人の識別に支障が出る状況になった場合にうまく開けられなくなってしまうリスクがあります。
サムターンの種類
「サムターン」は錠の一部で、ドアの内側にあるつまみがついた部分のことで、玄関扉に使用される錠タイプには大抵ついています。
外側からは鍵を使用しないと開閉できませんが、内側からは手でサムターンを回すだけという仕組みです。
様々なサムターンの種類
サムターンにはシリンダーほどのバリエーションはありませんが、防犯性に優れた機能を持ったものなどがあります。
標準サムターン
特殊な仕組みのない通常のつまみがついたタイプ。
脱着式サムターン
つまみ部分が取り外し可能になっており、サムターン回し対策に有効なタイプ。
偏荷重サムターン
片方から力がかかる=偏荷重がかかると回らないタイプ。つまみ部分を持って力を均等にかけることで動く。
工具で力をかけても回らないため、サムターン回しができず防犯性が高い。
空転サムターン
つまみ部分を普通に回しても空転して施錠ができないタイプ。押しながら回して閉める。
サムターン回しという不正開錠に注意
空き巣の手口というとピッキングや窓ガラスの破壊を思い浮かべがちですが、工具やドリルを使用して外側から玄関の錠のサムターンを回し、正面から侵入するパターンがあることにも注意が必要です。
脱着式サムターンや偏荷重サムターンは防犯性が高いといわれていますが、現在使用している錠自体を交換することが難しい場合や、手軽に対策を行いたい場合は、以下の記事も参考にしてみてください。
おさえておきたい有名鍵メーカー10選
新しく取り付ける鍵を選ぶにあたって、技術と実績のある有名メーカーはおさえておきたいところです。
代表的な鍵メーカーとその特徴を詳しく紹介していくので、ぜひ参考にしてください。
美和ロック |
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ゴール |
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ユーシン・ショウワ |
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HORI |
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ウエスト |
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ALPHA |
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川口技研 |
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ドルマカバジャパン |
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タキゲン |
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CLAVIS |
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