空き巣の侵入手口の定番「ピッキング」に代わり、近年主流となっている「サムターン回し」。被害を防ぐためには、どんな取り組みが有効なのでしょうか。
この記事では、サムターン回しの手法と必要な対策、賃貸の場合に気をつけることなどを詳しく解説していきます。
サムターン回しとは
サムターンとは、扉の鍵を室内側から開閉するためにつけられた「つまみ」のことを指します。これを外から操作して侵入するのが「サムターン回し」です。
玄関の錠は外側からだと基本的に鍵なしでは開けられませんが、内側からは開けやすい構造になっており、このつくりの弱点をうまくついた手法です。
警察庁によると、サムターン回しの被害は2000年のとき29,211件でした。その頃がピークでそれ以降は全国的に大きく減少し、2018年は30件ほど。被害件数は減少傾向ですが、まだ空き巣手口として有名です。
件数が減少した理由としては、鍵の機能性が上がったことが要因と考えられます。しかし鍵の機能性が上がったとしても、古い住宅だとまだ容易に侵入することができるため注意しましょう。
サムターン回しの代表的な手口5パターン
サムターン回しの手口は様々ですが、おもに上画像のような箇所が破られやすいので注意しましょう。代表的な5つの手口を紹介します。
【手口①】ドアのすき間に工具を入れて開錠
1つ目の手口はドアのすき間に「サムターン回し」という工具を入れてサムターンを開錠する方法です。錠前の種類によっては、ピッキングよりも簡単に鍵を開けられてしまうことがあります。
サムターン回しの工具は、5mmの隙間に入るほど細い棒で、つまみを回せるように先端が曲がっているのが特徴です。
ドアに穴を開けずに侵入するため、痕跡が残りにくく音も出ないのが特徴。鍵を閉めて外出したとき、窓やドアに異変はないのに盗難被害に遭った場合は、サムターン回しによる空き巣の可能性が高いでしょう。
【手口②】ドアスコープから工具を入れて開錠
ほとんどの玄関ドアにはドアスコープ(のぞき穴)が標準装備されています。これを使ったサムターン回しの事例もあります。
ドアスコープは、外側からはカンタンに取り外しできない構造です。しかしスコープとドアの間に特殊な工具挟み、テコの原理で取り外す侵入手口があります。外したドアスコープの穴から、針金のような特殊道具を差し入れてサムターンを回すのです。
ドアスコープを利用したサムターン回しも、音が出ないため侵入に気づかれないことが多いです。
【手口③】ドアポスト(郵便受け)から工具や手を入れて開錠
玄関ドアに設置されているポスト(郵便受け)から器具や手を入れ、サムターンを回して開錠する手口もあります。
ドアに設置された郵便受けは、階下のポストまで行かずとも直接郵便物や新聞などを受け取れるメリットがあります。一方で侵入する手段に使われやすいというデメリットもあるのです。
玄関ドアをこじ開けたり穴を開けたりすることがないので、比較的簡単に実行できてしまいます。防犯対策は鍵周りだけでなく、ドアポストにも行うのが安心でしょう。
【手口④】ドリルで穴を開けて無理やり開錠
最も多い手口が電動ドリルなどを使って玄関ドアに穴を開け、無理やり開錠してしまう方法です。開けた穴から特殊な工具を使って、それをサムターンに引っかけ開錠します。
ドリルを使うときの音で「周囲は気付くはず」と思われがちですが、穴を開けるのにかかる時間は長くても1~2分です。
ほんの一瞬なので音に気づかないことや、音が聞こえたとしても近年流行しているDIYや工事の音と勘違いすることも。家庭用の静音ドリルも販売されているため、意外と周囲に気づかれにくいこともあります。
またドアが薄い銅板製の場合、ハンドドリルで開けてしまうこともあります。ハンドドリルだとさらに電動音がなく、誰も気づきません。
【手口⑤】カバーを焼き破りして開錠
サムターン回しの対策として、サムターンの上からカバーで覆う方法があります。これを突破する手段が「焼き破り」です。
焼き破りとは、バーナーやライターなどでサムターンカバーを溶かしてしまうこと。ピッキングができない空き巣犯でも、焼き破りは意外とできてしまう場合があります。
サムターンカバーは基本的にプラスチック製なので、簡単に溶けてしまいます。
サムターン回しの被害を防ぐ5つの対策
近年サムターン回しの被害は減少傾向にあると言われていますが、「確実に安全」と言えるわけではありません。狙われやすい玄関ドアにはやはり防犯対策が必要です。
サムターン回しの4つの対策と、どのような手口に効果を発揮するのかを一覧にしました。
【対策①】サムターンカバーを取り付ける
サムターン部分にカバーを取り付ければ、外部から工具で操作ができなくなり侵入を防げます。カバーを高熱で溶かす「焼き破り」には対抗できませんが、何もしないよりサムターン回しの被害に遭う可能性はグンと低くなるでしょう。
ただ空き巣犯がサムターンのカバーに気づくのは工具を差し込んだ後です。そのため空き巣被害は防げても、ドアに穴が開けられてしまう可能性はあります。
サムターンカバーはホームセンターやインターネット通販で気軽に入手できるので、比較的実行しやすい対策といえます。
サムターンカバーの作り方
サムターンカバーは空のペットボトルを利用して自作することもできます。
ただしペットボトルは薄いプラスチック製なので、市販のサムターンカバーより「焼き破り」には弱いです。また、テープなどで接着しても外れやすく、不安は残ります。あくまで一時的な対応として取り付けるといいでしょう。
自作のサムターンカバーの作り方は以下の手順。
【サムターンカバーの作り方】
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ペットボトルが落ちないように、テープはしっかりと貼りましょう。また自作のサムターンカバーは、あくまで一時的な対策手段です。より丈夫なカバーに付け替えるか、他の対策をあわせて実施しましょう。
【対策②】ドアポスト(郵便受け)に目隠しカバーを付ける
玄関ドアにポスト(郵便受け)が付いていることが多い共同住宅では、目隠しカバーを内側に取り付ける対策も有効です。
ドアポストに受け口がないと、外から簡単に中の様子を覗くことができます。中が見えてしまうと、家にいるかどうか確認され、不在だと空き巣が侵入することも。目隠しカバーを設置して中を確認できないようにしましょう。
ただしドアにネジ留めする必要があるため、賃貸物件の場合はまず家主や管理会社に相談して許可を取りましょう。
ガムテープや板でドアポストを塞ぐこともできますが、手紙などが入れられなくなるので注意してください。
【対策③】補助錠を取り付ける
1ドア1ロックが標準的ですが、1ドア2ロックにすることも効果的です。
ドアの外側に補助錠を付けることで、そもそも見た目の防犯性が高まります。またピッキングをするときも、メインの錠と補助錠を破る必要があり侵入に時間が掛かるため、被害に遭いにくいです。
またドアのサムターンに、シリンダー錠を付ける方法もあります。サムターンにつけると、回すのに鍵が必要となり、空き巣犯は外から工具で回せません。
サムターンのカバー対策だけでは安心できない場合は、補助錠を取り付けることで、不正開錠防犯対策が強化されます。
取り付ける補助錠を選ぶときには、高水準の防犯性能を有すると認められた製品である「CP認定錠」であるかどうかを基準にすると良いでしょう。CP認定錠は、警視庁が認めた防犯性の高い、「防犯建物部品」を示します。
インナー錠もホームセンターや通販で手軽に購入することは可能ですが、取り付けまで行ってくれる業者に相談してみるのも一つの手です。
【対策④】脱着式サムターンに交換する
持ち家の一戸建ての場合、つまみ部分が取り外し可能な「脱着式サムターン」への交換が最も有効な対策のひとつでしょう。サムターンを外してしまえば、内側から開錠することができません。
空き巣犯がサムターン回しをするつもりで内側に道具を差し込んでも、サムターンが見当たらなければ侵入を諦める可能性が高いです。
侵入は防げますが、サムターンカバーと同様ドアに穴を開けられてしまう可能性はあります。
【対策⑤】ドアスコープの取り替え
ドアスコープの取り替えも、サムターン回しの対策として有効です。サムターン回しの手口としてドアスコープを取り外して、工具を差し込んで開錠する方法があります。ドアスコープが外側から取り外せないものに取り替えることで予防ができます。
「広角空転式ドアスコープ」は、防犯性の高いドアスコープです。外側からは取り外そうとすると空回りして取れないつくりになっています。ドアスコープが取れなければ、工具を差し込むことができず、解除できません。
またドアスコープカバーがあると、外から部屋の中をのぞき見することも不可能です。普段はカバーを閉じて外側からのぞき見できないようにしておき、外の様子を確認したいときはカバーを開けて広角レンズで広範囲を見るのがいいでしょう。
【賃貸の場合】大家さんに相談してドアスコープ、インナー錠、サムターン交換
住んでいる場所が賃貸物件の場合、退去時に原状回復が必要です。設備がグレードアップしたかどうかにかかわらず「住む前の状態に戻さなくてはいけない」ので、勝手に工事をすると余計な費用が発生してしまいます。
インナー錠や脱着式サムターンは、扉に穴を開けずに取り付けられるものが多いです。しかし賃貸物件は貸主の所有物であることから、入居者の判断で勝手に防犯設備を設置することができません。ドアに穴を開ける必要がない防犯設備でも、退去時にトラブルを避けるために、相談しておくのが得策です。
また相談することで防犯設備設置の許可だけでなく、費用を出してもらう場合があります。
賃貸でも使える!工事不要で取り付けできる防犯グッズ
穴あけの必要がない補助錠
空き巣犯人は侵入に「5分」かかると諦める傾向が高いと言われています。それ以上かかってしまうと、誰かに見られて通報される恐れがあるからです。そのため「1ドア・2ロック」は警視庁でも推奨されています。
玄関鍵の増設工事をする方法もありますが、賃貸の人でも使えるように工事不要な補助錠もあります。
ノムラテックの「どあロックガード ダイヤルタイプ」は工事不要で簡単に取り付けることができる補助錠です。またダイヤル式のため、余分に鍵を持ち歩く必要もありません。
穴を開け不要のサムターンカバー
被害に遭いやすいドアは?オートロック・3階以上のマンションでも安心できない!
被害に遭いやすいドア
サムターン回しの標的となりやすいドアは、防犯性がなさそうなドアです。具体的に被害に遭いやすいドアは以下のとおり。
- 1ドア1ロックのドア
- ドアスコープが簡素なドア
- ガラス付きのドア
- 薄い銅板製のドア
1ドア1ロック(扉に鍵が1つだけ)のドアは、空き巣に狙われやすいです。サムターンを1つ回せば侵入できてしまいます。一方で錠が2つ以上あるドアだと、侵入するのに回す必要のあるサムターンが2つあり、犯行に時間が掛かるため被害に遭いにくいです。
侵入するのが容易なドアスコープが付いたドアも注意です。ドアスコープが簡素だと、外側からレンズを取り外し、工具を入れるだけで侵入できます。
またガラスを割ってサムターンを回すことだできるドアや、穴が開けやすい薄い銅板製のドアも注意しましょう。
以下の記事では、空き巣に狙われやすいポイントや、侵入しにくい家、対策についてく詳しく紹介されています。詳しく知りたい方はぜひ参考にしてみてください。
オートロックでも侵入される可能性あり
近年はエントランスにオートロックのドアが採用され、鍵を持っている入居者しか入れない仕組みになっている物件も多くあります。しかし、オートロックが付いているからといって防犯を怠るのは非常に危険です。
オートロック付きであっても、住人や宅配業者が鍵を開けたタイミングに合わせて、入居者を装って中に入ることは簡単です。
中に入ってしまえば、サムターン回しを始めとする手口で玄関から侵入できてしまいます。間違っても無施錠のまま出かけてはいけません。
3階以上の部屋が狙われやすい!
アパートやマンションなどの共同住宅の3階以上に住んでいる場合は、特に注意が必要です。一戸建て住宅と比較すると1.5倍もサムターン回しの被害件数が多い傾向にあり、正面玄関から侵入されるケースが増えています。
築浅の共同住宅はセキュリティー対策を強化している物件が多いですが、費用がかかることを理由に対策していない物件があるのも事実です。
このような背景から、3階以上に住んでいる人は念入りにサムターン回しの対策を行うことをおすすめします。
防犯性の高い錠、どれがいい?
鍵交換を検討しているとき、防犯性の高い錠を検討すると以下がおすすめです。
- 補助錠を追加(1ドア2ロック)
- ディンプルキー
- リモコン式
- スマートキー
- 暗証番号式
サムターン回しの他に、針金やピッキングツールを使うケースがあります。補助錠の追加、サムターン回しだけでなく、他の手口にも効果的です。1つのドアに2つあると、解錠するのに時間がかかるため、狙われることがありません。
また鍵交換を検討している場合は、ディンプルキーもおすすめです。ディンプルキーは鍵山がある一般的な鍵と異なり、左右、上下、斜めにへこみがあります。複雑な形状であるほどピッキングの難易度が上がるので、鍵開けに時間がかかり、空き巣が侵入をあきらめやすくなるのです。
またリモコン式やスマートキー、暗証番号式の錠など「物理的には開錠できない鍵」も防犯性が高くなります。
もしサムターン回しの被害に遭ってしまったらどうすればいい?
実際に空き巣被害に遭ってしまったら、どのように対応すればよいのでしょうか。
明らかな侵入の形跡がないにも関わらず部屋が荒らされていたり、ものが盗まれたりした場合、ドアに傷が残らない方法でサムターン回しが行われた可能性が高いでしょう。
気が動転してしまうかもしれませんが、落ち着いて対処することが重要です。
まずは警察に連絡
空き巣被害に遭ったことに気づいたら、真っ先に連絡すべきは警察です。
まだ室内に犯人が潜んでいる可能性もありますし、片づけをすると指紋や足跡などの犯人の痕跡が消えてしまうかもしれません。110番通報をして警察が到着するまでは、発見当時の状態を維持しておきましょう。
事情調査や現場検証がひと通り終了したら、「盗難届出証明書」「届出受理番号」のどちらかが交付されます。これらは後述する保険の利用や身分証の再発行などの各種手続きに必要なので、しっかり控えておきましょう。
盗まれたものの不正利用を阻止
以下の物品は盗難に遭う可能性が高く、盗まれた場合はそれぞれ使用停止や再発行の手続きが必要となります。普段から連絡先を控えておくと、万が一のときにもスムーズに手続きを進められるでしょう。
- 通帳・キャッシュカード→銀行
- クレジットカード→カード会社
- 印鑑(実印)→印鑑登録のある市区町村
- 印鑑(銀行印)→銀行
- 運転免許証→警察署または運転免許センター
- 健康保険証→会社員の場合は勤め先、自営業の場合は住民票のある市区町村
- パスポート→都道府県のパスポート申請窓口
- スマートフォン・携帯電話→通信会社
住宅の火災保険で損害が補償されるかも
空き巣によって住居が傷つけられたり、家財が盗まれたりしてしまったときのショックは大きいでしょう。そんなときにダメージを軽減してくれるのが火災保険です。
家財を対象とする保険に加入している場合、盗難による被害金額を補償してもらえます。また建物が補償対象になっていれば、空き巣犯によってドアに穴をあけられた場合の修理代も補償を受けられます。
補償範囲は保険によって異なるため、自身が加入している火災保険の補償内容を確認してみましょう。
鍵取り付けのプロ探しはミツモアがおすすめ
サムターン回し対策として、インナー錠や脱着式サムターンの取り付けを検討している方もいらっしゃるかもしれません。これらはDIYすることもできますが、プロに任せれば失敗なく確実に取り付けられます。
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