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個人事業主に必要な印鑑は何?開業時におすすめ印鑑セットを解説!

最終更新日: 2021年01月04日

個人事業主として開業する際に迷いがちなのが印鑑の作成です。そもそも印鑑は準備する必要があるのかわからない、どのような種類の印鑑をいつ使用するのかイメージが湧かないという方は多いのではないでしょうか?

個人事業主として最低限必要な印鑑や使う場面、また適したサイズや素材まで詳しくご紹介していきます。印鑑の準備に迷っている方は、ぜひ参考にしてください。

この記事を監修した税理士

安田亮公認会計士・税理士事務所 - 兵庫県神戸市中央区元町通

1987年香川県生まれ、2008年公認会計士試験合格、2010年京都大学経済学部経営学科卒業。大学在学中に公認会計士試験に合格。大手監査法人に勤務し、その後、東証一部上場企業に転職。連結決算・連結納税・税務調査対応等を経験し、2018年に神戸市中央区で独立開業。所得税・法人税だけでなく相続税申告もこなす。

個人事業主に印鑑は必要か?

個人事業主に印鑑は必要か?
開業すると様々な場面で印鑑が必要になります。

近年、様々な場面で印鑑レスが進められていますが、個人事業主として開業する際に印鑑を準備する必要はあるのでしょうか?

事業用の印鑑を作成した場合、費用の計上方法や法人と同様に印鑑登録が必要かどうかという点についても気になるところですよね。この項では印鑑の必要性から経費としての計上の仕方まで確認していきましょう。

個人事業主の印鑑の必要性

印鑑レスの推進化や電子印鑑の普及により使用する機会が減ってきてはいますが、個人事業主として事業を営むうえでは印鑑が重要な役割を持つことがあります。開業届には捺印が必要な他、助成金や給付金の申請の際にも印鑑は必要です。

事業上の印鑑と個人の印鑑を兼用することもできますが、管理やセキュリティーの面でも分けて作成しておくのがおすすめです。また印鑑の種類によっては作成しておくことで業務の効率を上げることができるものもありますので、開業の際には事業用の印鑑を作成することを検討してみましょう。

個人事業主の印鑑登録は不要

個人事業主は法人の代表者印のように屋号・個人名の入った印鑑を事業用に作成することは可能ですが、印鑑登録は不要となっています。開業しても屋号を定めない場合はもちろん、個人事業主の場合は基本的に個人の実印を代表者印として用いることになります。

そのため個人の印鑑と事業用の印鑑を分けて使いたい場合や、取引先にビジネスとして事業を行なっているというアピールを行ないたい場合には屋号入りの印鑑を作成しておくと良いでしょう。

個人事業主 法人
・代表者印の印鑑登録は不要

・屋号+個人名の印鑑の作成は可能

・代表者印の印鑑登録の必要あり

個人事業主用の印鑑は経費で計上しよう

事業用として購入した印鑑は、印鑑の種類にかかわらず全て経費として計上することが可能です。印鑑は「消耗品費」として計上することが一般的ですが、その際の仕訳は下記の通りになります。

借方 貸方
消耗品費 20,000円 普通預金 20,000円

ただし個人用と兼用する場合は、費用の全てを経費として計上することが出来なくなるため注意が必要です。個人用と併用している場合は按分という処理を行います。按分とは事業用・個人用としてのそれぞれの使用割合を元に事業経費と個人的な支出を分ける方法です。

印鑑の費用を按分する場合は使用割合によっては半々、もしくはほとんど事業用として使用しているのなら90%を経費として計上することも可能です。個人用と事業用をそれぞれ50%で按分した場合の仕訳は下記のようになります。

借方 貸方
消耗品費 10,000円 普通預金 20,000円
事業主貸 10,000円

「事業主貸」とは、事業用のお金を事業に関係ない個人支出として動かすときに使用する勘定項目です。そのため「事業主貸」として処理した支出は事業上の経費としては計上されません。

ただし費用を按分する場合には税務署から指摘を受けた際に合理的な説明を行なう必要があります。そのため支出を按分して計上する際には、あらかじめ税理士に相談しておくと安心ですよ。

個人事業主の印鑑が必要になるのはどんなとき?

個人事業主の印鑑が必要になるのはどんなとき?
印鑑の使用は業務の効率化にも繋がります。

個人事業主として事業を営むうえで、どのようなときに印鑑が必要となるのでしょうか?ここでは印鑑が必要となる手続きや書類についてご紹介していきます。捺印する印鑑の種類についても見ていきますので、ぜひ開業準備の参考にしてくださいね。

開業届を提出するとき

一般的に開業届と呼ばれる「個人事業の開業・廃業等届出書」「事業開始申告書」の2種類の書類には、氏名の記入とともに認印が必要となります。また提出時に訂正箇所があれば、その部分にも訂正印として認印が必要です。

開業届や公的な書類の捺印にはシャチハタなどのスタンプ印は使用できないため注意が必要です。認印は三文判と呼ばれるような安いものでも問題ありませんので、必ず準備しておくようにしましょう。

銀行口座を開設するとき

事業用に銀行口座を開設する際に、銀行印の登録が必要となることがあります。要不要は銀行によって異なるので、事前に必要かどうか確認しておくようにしましょう。

銀行印はシャチハタ・ゴム印以外であれば問題なく登録が可能です。しかし安い印鑑を使用する場合、素材によっては熱で変形する恐れがあります。また大量生産品であるために簡単に偽造できてしまうため、セキュリティー上も不安があります。

銀行印は管理の面でも認印などとは別に1本オリジナルで作っておくことがおすすめです。銀行印の大きさに決まりはありませんが、実印よりも小さく男女で定番のサイズがあります。手になじむ大きさで作っても良いですが、迷う場合には参考にすると良いでしょう。

銀行によっては屋号入りの印鑑で登録することも可能です。事業用口座に屋号入りの印鑑を使用したい場合は、登録が可能かどうか問い合わせてみてください。

融資が必要なとき

金融機関から融資を受ける際には実印が必要です。実印は1人につき1本までしか持つことができないため、融資を受ける際など事業上実印を使用する際は個人の印鑑を捺印することになります。

契約書に押印をするとき

契約書に押印をする際に屋号印を使用することで、取引先からの信用度を上げることができます。契約書への押印は個人の印鑑でも問題なく行なうことができます。しかし屋号印は事業として正式に契約を行なっていることをわかりやすく示すことができるため、使用することで相手に安心感を与えることにも繋がります。

屋号印は必ず必要なものではないですが、個人事業主としてハクをつけたい場合には準備しておくのがおすすめです。

請求書、見積書、領収書などの会計書類に押印するとき

事業を営むうえで請求書や見積書、領収書といった会計書類には、書類に対しての信頼度を上げるためにも認印が必要となります。個人の認印でも構いませんが、屋号の入った角印を作成しておくと取引先からの印象も良いのでおすすめです。

角印は代表者印として使用される屋号印とは違い、事業上の認印となります。使用する機会も多いため、開業にあたって1本作成しておくと良いでしょう。

個人事業主におすすめ印鑑セットはこれ!印鑑の種類解説

個人事業主におすすめ印鑑セットはこれ!印鑑の種類解説
開業に向けて印鑑を作成しておきましょう。

個人事業主として開業するにあたり複数の種類の印鑑が必要なことがわかりましたが、具体的にどのような印鑑を作成しておけば良いのでしょうか?個人事業主が作成できる印鑑の種類やおすすめの印鑑セット、法人化を見据えている場合に作成しておきたい印鑑まで詳しく見ていきましょう。

個人事業主が作成できる印鑑一覧【全6種】

個人事業主が作成することができる6種類の印鑑についてご紹介していきます。必ずしも全て必要ではありませんが、作成しておくと書類作成における手間を省いたり取引先に良い印象を与えたりすることができます。

屋号印

屋号と個人名を彫刻した屋号印は、法人の代表者印と同じ役割を持つ印鑑です。契約書やその他重要書類全般に使用されるため、角印のように請求書や見積書といった普段の業務の中で作成する書類には使用されません。

彫刻文字 屋号+個人名
サイズ 10.0mm~13.0mm以内
用途 契約書、その他重要書類全般

銀行印

銀行口座を開設する際に登録する印鑑です。一般的に名字や名前を彫刻しますが、屋号付きの事業用口座の場合、銀行によっては個人名+屋号を彫刻した印鑑を使用できることもあります。サイズに特に決まりはありませんが、重要な印鑑ですので12.0mm~13.5mmで作成するのが一般的です。

また男女で定番のサイズがあるため、作成の際の参考にするのも良いでしょう。

彫刻文字 個人名、もしくは個人名+屋号
サイズ 男性:13.5mm~15.0mm

女性:12.0mm~13.5mm

用途 口座の開設

角印

角印とは屋号が彫刻された四角い印鑑のことです。事業用の認印として使用されるため、同じ屋号が彫刻された屋号印と比べると印鑑自体の重要度は下がります。請求書、見積、領収書、納品書といった業務の中で日常的に作成する会計書類に対して押印されるため、使用頻度が高い印鑑であると言えます。

彫刻文字 屋号
サイズ 18.0mm、21.0mm、24.0mm
用途 請求書、見積、領収書、納品書

住所印

住所印は屋号や住所、電話番号などが横型のゴム版に彫刻してある印鑑で、領収書やチラシの作成、封筒の記入などに使用されます。

住所印は、屋号・氏名・住所を彫刻する場合は60.0mm×18.0mmが一般的な定番サイズとなっています。ただしFAX番号やURLといった情報まで彫刻する場合や文字の大きさによっては60.0mm×20.0mm程になることもあります。

彫刻文字 屋号、氏名、住所、電話番号、FAX番号、URL
サイズ 60.0mm×18.0mm~20.0mm
用途 領収書、チラシ作成、封筒

実印

実印とは役場で印鑑登録を行ない、印鑑証明によって確かに自分のものであると証明された印鑑のことです。正式に証明を受けた印鑑なので、融資や不動産契約、ローン契約といった重要な契約の際に使用します。

実印には個人名が彫刻されたものを使用します。重要な契約の際に使う印鑑ですので、作成する場合は13.5mm以上とするのが一般的です。

彫刻文字 個人名
サイズ 13.5mm以上
用途 融資、不動産契約、ローン契約など

認印

認印は個人名の彫刻された印鑑で、開業届や確定申告、見積書の担当欄の他荷物の受け取りなど様々な場面で頻繁に使用します。実印よりも重要度は低いため、一般的には実印よりも小さめの10.5mm、もしくは12.0mmで作成されます。

彫刻文字 個人名
サイズ 10.5mmもしくは12.0mm
用途 開業届、確定申告、見積書

個人事業主が最初に作成するおすすめ印鑑セット【3種】

個人事業主が最初に作成する際には、下記の3点がセットになったものを購入するのがおすすめです。個人認印以外は必ず必要というわけではありませんが、事業として取引や契約を行なう際に使用することで相手からの印象や信頼度を上げることができます。

最初に準備しておく印鑑の種類に迷ったら、こちらの3点セットを基準に選ぶと良いでしょう。

  • 個人認印
  • 屋号印
  • 角印

印鑑によく使われる5つの書体

印鑑によく使われる5つの書体
印鑑の種類によって書体を選び分けましょう。

印鑑の種類によって適している書体は異なります。この項では印鑑によく使われる5つの書体について、それぞれの特徴と適している印鑑の種類についてご紹介していきます。

吉相体(きっそうたい)

別名「印相体」と呼ばれている書体で、文字と枠が接触している部分が多いのが特徴です。漢字の書体の一種である「篆書体(てんしょたい)」をベースに、強い流れの線が外へ向かって上下・左右・斜めと八方に広がっているため「八方篆書」とも呼ばれます。

可読性が低いため重要な印鑑に使用されることが多く、実印や銀行印におすすめです。また、枠に接していない細めの書体と比べて欠けにくいメリットもあります。

古印体(こいんたい)

日本の漢字をもとに、独特の進化によって生まれた印章用の書体。隷書体(れいしょたい)を基本に丸みを帯びており、味わい深い線の強弱や欠け途切れが特徴です。

印章用の書体として可読性が高く馴染みのある書体なので重要な印鑑には使用されず、認印で多く利用されています

隷書体(れいしょたい)

秦の時代に作られた歴史の古い書体で、横長のバランスが特徴的な筆体です。篆書体を直線的かつ簡略化しているため読みやすく、身近なところでは1万円札など紙幣にも使用されています。

可読性が高いため実印など重要な印鑑には使用されず、読みやすさが重視される認印として利用する場合が多い書体です。

篆書体(てんしょたい)

古来中国から伝えられた書体であり、重厚で風格ある印影が特徴の書体です。印章用書体としては歴史ある文字で現代文字と形状が異なっており、紙幣やパスポートなどでも利用されています。

可読性が低く偽造されにくいため、重要度の高い印鑑に使用される場合が多く、実印や法人の代表者印としておすすめの書体です。

楷書体(かいしょたい)

楷書体は漢字でもっとも基本的な字体。日本の書体としては比較的新しい字体ですが、印刷書体としても利用されているなど日常的に使われる馴染みのある書体です。

可読性が高くすっきりとした読みやすい字体であるため、重要な印鑑として使用されず認印として多く利用されています。

書体 特徴 用途
吉相体(きっそうたい) 可読性が低く文字と枠が接触していため欠けにくい 実印・銀行員
古印体(こいんたい) 丸みを帯びた線の強弱や欠け途切れが特徴で読みやすい 認印
隷書体(れいしょたい) バランスに優れ読みやすく可読性が高い 認印
篆書体(てんしょたい) 重厚で風格ある印影が特徴で可読性が低く偽造されにくい 実印
楷書体(かいしょたい) 基本的な字体で日常的に使用している読みやすい字体 認印

印鑑の代表的な材質4選

印鑑の代表的な材質4選
材質ごとに値段や耐久性が違います。

印鑑は材質によって価格や見た目が変わってきます。耐久性や再加工の可否といった点にもそれぞれ違いがありますので、これから使用していくうえでふさわしい素材を選びたいですよね。印鑑に使われる代表的な材質の特徴について詳しく見ていきましょう。

牛角(うしのつの)

ウシの角から作られる飴色の印材。茶色や黒い模様がまったくない「純白」と、縞模様が入っている「色付き」の2種類に分かれます。

純白は個体によって美しさにムラがあるものの、透明度の高い飴色が特徴です。希少性の高い高級印材であり、実印や銀行印として人気。落下などの衝撃にも強く耐久性に優れているため、一生モノとして使用できる印材です。

色つきは、純白にない縞模様が味わい深い印材で、模様の大小や濃淡はそれぞれ異なります。純白同様、衝撃に強く大切に扱えば一生使用できるため、実印や銀行印、屋号印など重要度の高い印鑑の素材として最適です。

黒水牛(くろすいぎゅう)

黒水牛は水牛の角を加工した印材。黒のつやが特徴的で高級感があるため、個人用はもちろん事業用としても適しています。牛角と同等の耐久性を持ちながら、比較的価格が安いのも人気の理由です。

地の色は黒ずんだ灰色で人工的に染めているため、何十年という長期間の使用では色褪せる可能性があります。使用には問題なく、朱肉が馴染みやすくきれいな印影が特徴で実印や銀行印としておすすめです。

象牙(ぞうげ)

象牙はワシントン条約によって輸入が禁止・制限されており、希少価値の高い最高級印材として人気の素材。白より少しくすんだ薄いベージュ色でやわらかいため加工しやすく、朱肉が馴染みやすいのが特徴です。

きめの細かさは見た目にも美しく、屋号印など大切な印鑑におすすめします。ただ、やわらかい素材で落下など衝撃に弱く耐久性にやや難があるため、取り扱いには注意が必要です。

また、彫り直しできるのも象牙の特徴。使用しなくなったら受け継いで新たな印鑑として使えるほか、使い込むにつれて光沢感が増し、象牙ならではの味が出てくるのも魅力です。

本柘(ほんつげ)

本柘は古くから愛用されている天然木材の印材で、木目のきめが細かく手触りの良さが特徴です。比較的安く購入できますが、中には「薩摩本柘」と呼ばれる高級品もあります。木材独特の風合いに魅力を感じる方におすすめです。

象牙や牛角よりやや耐久性は劣りますが、一般的な使用においては問題ありません。ただ、朱肉が染み込んで劣化したり使用頻度によっては摩擦で傷んだりと、一生モノとしては不向きです。また、彫り直しもできません。

監修税理士コメント

安田亮公認会計士・税理士事務所 - 兵庫県神戸市中央区元町通

コロナの影響によって働き方も変わり、印鑑が使わ れる場面も減っていくことでしょう。 ただ、印鑑の使用が全く無くなるということは無い でしょう。 開業時に印鑑を一式揃えることで安心して事業を始 められるようにしておくことがおすすめです。

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税務処理に不安がある場合は専門家に相談しましょう。

契約や公的な書類を作成する際には必ず印鑑が必要となります。個人事業主として開業する際や先々法人化を検討している場合には、ぜひオリジナルの印鑑を作成しておきましょう。開業すると様々な場面で税務上の処理が発生します。ミツモアでは複数の税理士から無料で見積もりを取得することが可能です。開業にあたって税務上の手続きに不安がある方は、一度顧問税理士に見積もりを依頼してみると良いでしょう。

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