離職票とは退職後にハローワークで失業保険の受給手続きをする際に必要となる書類です。
退職後に慌てないために、離職票がいつ届くのか、もらえない場合はどうしたら良いかをあらかじめ確認しておきましょう。
この記事では離職票に記入する項目、届かない場合の対処法、失業保険を受け取るときの手続きの流れを解説します。
この記事の監修社労士
東京国際社会保険労務士事務所 - 東京都目黒区目黒
離職票とは?
離職票とは退職に関連する書類のひとつで、離職票-1と離職票-2の2枚の用紙があります。離職票は公的な書類で正式名称は雇用保険被保険者離職票です。
退職者から離職票の交付を求められたとき、または退職者が59歳以上のとき、企業はハローワークに申請して離職票を発行してもらい退職者に渡す必要があります。
離職票はいつ交付され、何のために必要な書類か?
離職票は勤務先を退職して失業した人が失業保険の基本手当を受け取るときに必要になる書類です。離職票がないと基本手当の受給手続きができないため、給付を希望する場合は離職票を用意してもらう必要があります。
従業員が退職して離職票の発行を希望があった場合、または退職者が59歳以上である場合、企業はハローワークに離職証明書を提出しなければいけません。提出期限は退職日の翌日から10日以内で、その後にハローワークで離職票が作成されて企業に届き、企業から退職者に送付されます。
そのため退職日から2週間程度で退職者の手元に離職票が届くと考えておけば良いでしょう。
離職票が手元に届くまでの流れ
雇用保険の基本手当を受給できるのは在職中に雇用保険に一定期間以上加入している必要があります。自分が雇用保険に加入していたかを確認しましょう。会社から受け取った給与明細を見て雇用保険料が引かれていれば雇用保険に入っていたことが分かります。
週20時間以上、1か月を超えて勤務しているにも関わらず、雇用保険料が控除されていない場合には、会社が手続き忘れをしている場合もあります。遡り加入も出来ますので、気づいた時点で会社に相談をしましょう。
退職者が会社に離職票の発行を依頼する方法は、会社の担当者宛にメール、または口頭で依頼します。会社ごとに異なるため個別に確認が必要です。企業によっては本人の希望の有無に関わらず全ての退職者に離職票を渡している場合もあります。
離職票の発行は企業がハローワークに離職証明書を提出する必要があります。退職者は離職証明書の内容に間違いがないか確認し、署名捺印を行います。
ハローワークが離職証明書を受け取ると内容を確認して、離職票を作成して企業宛に送付します。企業は受け取った離職票の被保険者分を退職者に渡します。既に本人が退職している場合は郵送するのが一般的です。
離職票は、退職時の住所地にて記載する必要があります。退職後は住所地の管轄ハローワークが失業給付受給に出向く先になるので、退職届を出す際には「退職後の住所の変更有無、変更の場合には退職後住所」「携帯電話番号(離職証明書に必須)」を、企業担当者にあらかじめ伝えておきましょう。
離職票が届いたら記入する項目
離職票-1とは退職者が雇用保険の被保険者資格を取得した日付や喪失した日付、個人番号(マイナンバー)、基本手当等の振込先などを記載する用紙です。離職票-2とは離職日以前の賃金支払状況や離職理由などを記載する用紙です。
離職票が退職者の手元に届いた時点で多くの項目が記入されていますが、一部の項目については退職者自身で記入する必要があります。
「離職票-1」の記入項目
雇用保険の被保険者番号や離職年月日、氏名などはあらかじめ記載されています。情報漏洩のリスクがあるため、個人番号はハローワークに行ってから記入しましょう。個人番号はマイナンバーカードやマイナンバーが記載された住民票を見れば確認できます。
マイナンバーが不明の場合には、在住市町村窓口に身分証明書を持って出向き、「マイナンバー記載ありの住民票の発行をお願いいたします。」と伝えましょう。「マイナンバー記載ありの」という一言を加えないで住民票を発行しますと、自動的にマイナンバーなしの住民票発行となってしまいます。
用紙後半の求職者給付等払渡希望金融機関指定届の欄には基本手当を振り込んでもらう口座を記入します。一部のインターネット銀行・外資系金融機関は振込先として指定できないため、振込先として希望する銀行口座で問題ないか分からない場合は事前にハローワークに確認してください。
なおハローワークで手続きをする際に銀行口座の通帳を持参する場合は金融機関による確認印は不要です。
「離職票-2」の記入項目
賃金の支払状況など用紙の左側は既に記入されています。退職者が記入する必要があるのは用紙の右側の①~④の箇所です。
離職理由のうち自分が該当するものを選んで①の欄に丸を付け、具体的事情記入欄(事業主用)に記載された内容に間違いがなければ、②の具体的事情記入欄(離職者用)に「同上」と記入します。事業主用の欄に記載されている離職理由に間違いがある場合は「会社都合による解雇」など正しい離職理由を記入してください。
③の欄では②の記載内容と揃える形で異議の有り・無しのいずれかに丸を付け、記載した内容に間違いがないことを確認したら最後に④の欄に署名・捺印しましょう。
離職票の退職理由について
離職票で記載する退職理由には「自己都合」と「会社都合」の2種類があります。退職理由がどちらなのかによって失業保険の基本手当の支給期間が変わることが多く、支給期間が変れば最終的に受け取る支給合計額も変わる点に注意が必要です。
離職票の自己都合とは何を指すのか、会社都合とは何を指すのか、正しく理解した上で離職票に記入するようにしてください。
「自己都合」と「会社都合」ついて
自己都合による退職とは本人が希望して退職するケース、会社都合による退職とは本人は希望しないものの退職を余儀なくされるケースを指します。離職票の記載として一般的に多く見られるのは自己都合による退職です。
自己都合退職には退職をしたいと思ってやめる場合や、転職を機に会社をやめる場合や結婚、介護、病気を理由として会社をやめる場合などが該当し、会社都合退職には倒産やリストラ、退職勧奨、賃金の未払いを理由に会社をやめる場合などが該当します。
退職理由による給付制限、支給期間の違い
離職票に記載されている退職理由が自己都合か会社都合かによって、失業保険の基本手当の支給が開始されるまでの期間(給付制限期間)と支給期間の長さが変わります。自己都合退職の場合は給付制限期間が長く、退職後すぐに基本手当を受給できるわけではない点に注意してください。
自己都合で退職した場合
自己都合で退職した場合、基本手当の支給を申請しても最初の2か月と7日の間は支給を受けられません。待期期間である7日間と給付制限期間である2か月間が過ぎた後に支給が開始され、所定給付日数は雇用保険の被保険者期間の長さに応じて以下のように決まっています。
【待期期間・給付制限期間の過ごし方、ハローワークへの申告での注意例】
- 待期期間の7日間において、アルバイトをしてはいけない旨、ご注意下さい。
- 給付制限期間(2か月)はアルバイトを出来ますが、「1日4時間以上」働いた日については、失業給付の対象日ではなくなり、減額はされませんが、働いた日数分、支給開始日が後ろへずれます。受給できる期間は離職した日から1年ですから、先送りにより受給期間が1年を越えてしまうと支給はされなくなります。
- 1日4時間以内のアルバイトの場合でも、一日の基本手当の金額の80%よりも多く稼いでしまうと、支給されなくなってしまいますので注意しましょう。
- 無給のボランティアの場合も申告義務があります。
- 収入を正直に申告しないなどの不正受給が発覚すると厳しい罰則が適用されるので注意が必要です。
- フリーランス、請負などを始めたにもかかわらず、「失業認定申告書」に記載せずに受給した場合は、不正受給と見なされます。
- たとえ名義だけであっても、会社役員に就任した場合は「失業認定申告書」への記載が必要です。事実を隠して受給すると、不正受給です。
- 働く気持ちも、就職できる体調や環境にもないのに、失業給付の受給のみを目的として、虚偽の申告を行うというケースも不正受給の対象です。
(※)給付制限期間は、2020年10月以降、3か月が2か月に短縮されました。
会社都合で退職した場合
倒産や解雇など会社都合で退職して特定受給資格者に該当する場合は、自己都合退職のケースに比べて支給期間が基本的に長くなり、2か月の給付制限期間はないため待期期間の7日間が経過すれば基本手当を受給できます。
退職理由の異議申し立てについて
退職理由として企業側が離職票に記載した内容と退職者本人が思っている退職理由に相違がある場合は、まずは企業担当者に相談してみましょう。
ただ企業側と話し合っても認識の相違が埋まらない場合もあるため、そのようなケースでは離職理由として退職者自身が考えている内容を離職票に記入し、異議の有無で「有り」に丸を付けてハローワークに相談する場合もあります。
退職者が異議を申し立てた場合は、企業・退職者それぞれが記載した内容のうち退職理由としてどちらが正しいのかハローワークが最終的に判断します。
離職票が届かない、紛失した場合の対応
退職後すぐに離職票が届いてハローワークで手続きできる場合がある一方で、実際には離職票が届かずいつもらえるのか不安になったり、受け取った離職票を紛失してしまい困ったりするケースが少なくありません。
そこでここでは離職票が届かない理由とは何か、届かない場合の対処法、紛失したときの再発行の方法について見ていきます。
退職した会社に問い合わせる
離職票の発行を希望する旨を会社に伝えたにも関わらず届かない場合、届かない理由としては「そもそも企業担当者が発行手続きを忘れている」「発行申請はしているがハローワークが繁忙期で時間がかかっている」「退職者に送付したが引越先の住所が分からず宛先不明で企業に戻ってきている」などが考えられます。
そのため離職票がいつ届くのか気になる場合は、まずは退職した会社に問い合わせて状況を確認しましょう。また退職時には離職票の発行を希望しなかったものの、必要になった場合も退職した会社に連絡するようにしてください。
ハローワークに相談する
会社に依頼をしたものの離職票をもらえない場合や、退職するときに会社と揉めてしまい直接依頼できる状況にない場合もあるはずです。そのような場合はハローワークに相談すれば対応してくれることがあります。そのため困った場合には早めにハローワークに相談するようにしましょう。
紛失の場合はハローワークで再発行手続きをする
離職票を紛失した場合はハローワークで再発行手続きが可能です。手続きはどこのハローワークでもできますが、会社がある地域を管轄しているハローワークで手続きをしたほうが早く発行できます。
手続きをする際には再交付申請書や本人確認書類などが必要になるため、あらかじめ必要書類等をハローワークに確認した上で再発行手続きを行ってください。
なお離職票の再発行に期限は特にありません。ただし離職票の使い道は基本的に失業保険の受給手続きのためであり、失業保険の受給は原則として退職後1年以内であるため、離職票の再発行手続きは通常退職してから1年以内に行います。
妊娠・出産等により退職した人は、ハローワークに失業給付の受給期間の延長申請をすることで、育児が落ち着いたあとや子どもを預ける準備が整ったあとで再就職の活動を行い、その求職活動中に失業給付を受け取ることができます。 この受給期間は最長で離職日の翌日から4年以内まで延長できます。
ただし、申請期間内であっても、申請が遅い場合は、受給期間延長を行っても基本手当の所定給付日数の全てを受給できない可能性がありますので、ご注意ください。
失業手当受給のためにハローワークに提出する書類と手順
ここまでは離職票とは何かや記入方法、離職票の取得方法や再発行の仕方について解説しました。続いて、ハローワークで失業手当を受給するまでの流れを解説します。
手続きをしてから実際に基本手当が振り込まれるまで日数がかかるため、必要書類の準備や受給手続きは早めに行うようにしましょう。
ハローワークに提出する書類
ハローワークで失業給付の受給手続きをする際、次の書類の提出が必要になります。
- 雇用保険被保険者離職票-1
- 雇用保険被保険者離職票-2
- 個人番号確認書類
- 身元(実在)確認書類
- 写真(最近の写真、正面上半身、縦3.0cm×横2.5cm)2枚
- 印鑑(認印可、※スタンプ印不可)
- 本人名義の預金通帳又はキャッシュカード(インターネットバンク・外資系金融機関不可、ゆうちょ銀行は指定可)
個人番号確認書類とはマイナンバーカード、通知カード、個人番号の記載のある住民票(住民票記載事項証明書)のいずれかです。
身元(実在)確認書類とは以下の1のうちいずれか1種類、1の書類を持っていない人は2のうち異なる2種類の書類(コピー不可)です。
- 運転免許証、運転経歴証明書、マイナンバーカード、官公署が発行した身分証明書・資格証明書(写真付き)など
- 公的医療保険の被保険者証、児童扶養手当証書など
参考:雇用保険の具体的な手続き
失業手当受給の流れ
まずはハローワークに行って離職票等の書類を提出し、失業手当の受給申請を行います。ハローワークの窓口が開いている時間は平日の8時30分~17時15分です。
ハローワークで書類の確認等が行われて受給資格が決定すると説明会について案内されます。説明会では雇用保険受給資格者証や失業認定申告書が渡されるため、指定された日時の雇用保険受給者初回説明会に必ず出席してください。
※受給のための説明会はコロナ感染拡大防止のために、一部のハローワークでは実施されていません。オンラインでの動画視聴での対応となっている場合があります。
その後、求職活動を行い失業の認定を受けると指定した金融機関の預金口座に基本手当が振り込まれます。
失業の認定を受けるためには指定日に管轄のハローワークに行き、失業認定申告書に求職活動の状況等を記入して雇用保険受給資格者証とともに提出しなければいけません。失業の認定は原則として4週間に1度です。
離職時に発行されるその他の書類について
離職時には離職票のほかにも様々な書類が発行されます。離職に関係する書類の中には離職証明書のように名称が離職票と似ているものがありますが、離職票とは異なるため混同しないように注意が必要です。
離職証明書・退職証明書・雇用保険被保険者資格喪失届の3つの書類は退職に伴う手続きの中でその名称を目にする機会も多いため、それぞれの用途や離職票との違いを理解しておくようにしましょう。
離職証明書は会社がハローワークに提出
離職証明書は企業が作成してハローワークに提出する書類です。退職者から離職票の発行を求められた場合に企業が作成する書類であり、退職者自身が作成したり受け取ったりするものではありません。退職を証明する点では離職票と同じですが退職者が受け取る離職票とは異なります。離職票と離職証明書は名称が似ているため混同しないように注意してください。
退職者は退職証明書の発行を請求できる
退職証明書には一般的に会社に在籍していた期間や業務内容、役職、賃金、退職理由などが記載されています。離職票と同じく退職を証明する書類ですが、公的な書類である離職票とは異なり退職証明書は各企業が作成する私的な文書です。
退職者が退職証明書の発行を企業に請求できる期間は退職時から2年以内で、企業は退職者から退職証明書の発行を請求された場合、速やかに作成して交付しなければいけません。退職証明書の使い道としては、転職先企業に提出する場合や離職票が手元にない場合の代替書類として使う場合が挙げられます。
離職票や退職証明書がないと再就職ができないわけではありませんが、退職済であることを転職先企業等が確認するために退職証明書の提出を求めてくることがあるため、退職後に転職予定の場合は退職時に退職証明書の発行を依頼しておくと良いでしょう。
雇用保険被保険者資格喪失届とは?
雇用保険被保険者資格喪失届は企業が作成してハローワークに提出する書類です。退職者が雇用保険の被保険者でなくなったことを届け出るための書類で、退職日の翌日から10日以内にハローワークに提出します。この届を企業が手続きすることにより、「離職票-1」が」出来上がります。
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離職票とは雇用保険に関する失業給付の受給手続きで必要になる書類で、発行を希望する旨を退職時に企業に伝えていれば遅くとも2週間程度で届くのが一般的です。離職票が届かずいつもらえるのか不安な場合は退職した会社に照会を行い、対応してもらえないなど困った場合にはハローワークに相談しましょう。
また労働保険・雇用保険・社会保険に関する手続きは専門家である社労士に相談するのも選択肢のひとつです。専門家に依頼すれば必要な手続きを漏れなくスムーズに進められます。社会保険関係の手続きで何か困った場合には社労士への相談をぜひ検討してみてください。
この記事の監修社労士
東京国際社会保険労務士事務所 - 東京都目黒区目黒