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70歳以上の厚生年金保険・健康保険の手続きは?入退社時の届出も解説

最終更新日: 2023年07月12日

会社に勤めている方の多くが加入している社会保険。厚生年金、健康保険は日々の生活と会社に大きく関わってきますね。

会社での手続きは入社、退社、住所や扶養などの変更が代表的なものですが、昨今はそれらに加えて「70歳の手続き」があります。

2019年5月15日、政府は希望する高齢者が働ける環境を整えるよう高年齢者雇用安定法改正案の骨組みを発表。年金の受取額に不安がある方などは働き続ける傾向にあります。

今回は、70歳を迎える従業員の社会保険の手続きについて解説していきます。

70歳と75歳は社会保険の上限年齢

70歳と75歳は社会保険の上限年齢

平成31年4月1日から一部社会保険の手続きが変更になりました。

社会保険に加入している方で70歳を超えている、もしくはこのたび70歳を迎えた方にたいして、特別な手続きをおこなわなければいけません。

また、その手続きは厚生年金保険と健康保険で年齢と対応が異なりますので、注意が必要です。詳しく見ていきましょう。

厚生年金保険は70歳まで

まず厚生年金ですが、加入できるのは70歳までです。正確には、70歳に到達する誕生日の前日に被保険者資格を喪失します。

被保険者資格を喪失するので、厚生年金保険料については、資格喪失日を含む月から徴収が不要となります

例えば、8月15日が誕生日だとすると、資格を喪失するのは誕生日の前日の8月14日です。そして、資格喪失日を含めた月である8月分から厚生年金保険料の徴収を終了します。

ちなみに、1日が誕生日の方についてですが、8月1日が誕生日とすると資格を喪失するのは前日の7月31日です。この場合、保険料の徴収は6月分で終わります。1日生まれの方は前月から徴収が終わるので、注意しましょう。

資格喪失の手続きは、基本的には日本年金機構にて自動で行われます。

しかし、70歳の誕生日と誕生日の前日で標準報酬月額が異なる方は会社で手続きが必要です

健康保険は75歳まで

続いて健康保険ですが、こちらは75歳の誕生日当日に資格を喪失し、同時に後期高齢者医療制度に加入します。どちらも医療制度であることに変わりはありませんが、独立した制度です。

後期高齢者医療制度への加入手続きは自動で行われます。

しかし、被保険者の健康保険の資格喪失手続きは自動では行われないため、会社で手続きを行う必要があります。また、健康保険の資格を喪失するため、75歳に達した従業員の被扶養家族は別途国民健康保険などに加入をしなければ無保険状態になります。

資格喪失日の違いに注意

2019年7月現在は資格喪失日が違いますので、注意しましょう。

保険の種類 喪失年齢 資格喪失日
厚生年金保険 70歳 誕生日の前日
例1)8月15日が誕生日ならば8月14日に資格喪失
例2)1日が誕生日ならばその前月の最終日が資格喪失日
健康保険 75歳 誕生日当日

従業員が70歳になったときの厚生年金保険の手続き

社会保険 70歳
従業員が70歳になったときの厚生年金保険の手続き(画像提供:Leonardo da/Shutterstock.com)

従業員が70歳に到達した場合、原則手続きは不要ですが、会社で手続きを行わなくてはならない場合もあります。

詳しく見ていきましょう。

70歳以上被用者とは

厚生年金に加入していた70歳、もしくは70歳以上の方で、会社で働き続ける人のことです。

【70歳以上被用者の条件】

  • 70歳以上
  • 厚生年金保険の被保険者期間がある
  • 厚生年金保険の適用事業所に勤務している
  • 70歳以上ということを除き、厚生年金保険の適用除外とならない

この70歳で働き続ける方は、厚生年金保険の被保険者資格は失いますが、「70歳以上被用者」という特別枠になります。経営者や役員においても同様です。

70歳になった時の手続き

従業員が70歳になったときは、原則として手続きはいりません。

手続きが別途必要なのは、70歳到達日の標準報酬月額が到達日以前から変わる場合です。

70歳以上被用者該当届(70歳以上到達届)

従業員が70歳を迎え、働き続ける場合において、70歳到達時点の標準報酬月額相当が、70歳到達日の前日における標準報酬月額と異なる場合は「70歳以上被用者該当届(70歳到達届)」という書類を提出します。

この書類は本来、該当する従業員が70歳を迎える前月に日本年金機構から会社へ郵送されます。万が一紛失したり、手続きを行っていなかった人がいたりした場合は、日本年金機構のサイトからダウンロード可能です。

参考:従業員が70歳になったとき|日本年金機構

提出期限は70歳到達日(誕生日の前日)から5日以内です。

書き方を記入例と共に説明していきます。

70歳到達届 書き方
70歳到達届の記入例 出典:厚生労働省

事業所整理記号、事業所番号:新規適用届が受理された後に交付される「適用通知書」に記載されています。

④被保険者欄:個人番号もしくは基礎年金番号を記入します。

⑥資格喪失欄、⑧被用者該当欄:厚生年金は70歳に到達する誕生日の前日が資格喪失日です。誕生日の前日を記入しましょう。

⑨報酬月額:従業員の総支給額を記入します。手取り額ではないことに注意。

70歳以上被用者の届け出一覧

70歳以上被用者に該当する従業員がいる場合、以下の手続きが必要になります。なお、現在では算定基礎届、月額変更届、賞与支払届に関しては70歳以上被用者算定基礎届と被保険者算定基礎届が同一の用紙になっているので、別途の届け出は必要ありません。

必要書類
従業員が70歳に達した場合 70歳以上被用者該当届(70歳到達届)
※70歳到達日における標準報酬月額が到達日以前と異なる場合のみ
70歳以上の従業員を新しく雇う場合 被保険者資格取得届/70歳以上被用者該当届
70歳以上の従業員が退職する場合 被保険者資格喪失届/70歳以上被用者不該当届
定時決定 算定基礎届
報酬に変更があったとき 月額変更届
賞与を支払ったとき 賞与支払届

従業員が75歳になったときの健康保険の手続き

従業員が75歳になったときの健康保険の手続き

75歳以上は全員が健康保険の加入対象外となり、都道府県の広域連合が運営する後期高齢者医療制度に加入します。保険料は原則として年金から天引きされるため、会社の給与からは控除しません。

加入手続きは自動で行われますが、健康保険の資格喪失手続きは自動で行われないため、会社で「70歳以上被用者不該当届」を提出する必要があります。

70歳以上被用者不該当届の提出

社会保険 75歳 健康保険
70歳以上被用者不該当届

健康保険の被保険者が75歳に到達する前月に「健康保険・厚生年金保険 被保険者資格喪失届 / 厚生年金保険 70歳以上被用者該当届」が日本年金機構から会社に届きます。現在では、「70歳以上被用者不該当届」に関しては様式の変更が行われ、「健康保険・厚生年金保険 被保険者資格喪失届」と同一の用紙になっています。用紙には75歳に到達する被保険者の氏名などの情報が印字されています。内容を確認した後、会社経由で日本年金機構へ提出します。

⑤喪失年月日:この場合、資格喪失日は75歳の誕生日です。

⑥喪失(不該当)原因:「7. 75歳到達(健康保険のみ喪失)」を〇で囲みます。

提出期限 資格喪失日(誕生日)から5日以内
提出先 管轄の年金事務所または年金事務センター
全国の相談・手続き窓口|日本年金機構
添付書類 従業員及びその被扶養者の健康保険証・高齢受給者証、健康保険特定疾病療養受給者証、健康保険限度額適用・標準負担額減額認定証

75歳を迎えた被扶養者の手続き

雇っている従業員の被扶養者がその従業員より先に75歳に達した場合、その被扶養者は扶養から外れることになります。「被扶養者(異動)届」を提出し、扶養から外す手続きを行います。

70歳以上の従業員を雇うときの手続き

チューリップ
書類の⑩に必ず丸をつけましょう!

新しく70歳以上の方を雇用した際には、「被保険者資格取得届/70歳以上被用者該当届」を提出します。なお、平成30年に書類の様式が大きく変わり、現在「70歳以上被用者該当届」は「健康保険・厚生年金保険 被保険者資格取得届」と同一の用紙となっています。

提出先は管轄の年金事務所です。ほとんどの方は郵送で申請を行いますが、窓口に持参しても受け付けてもらえます。

70歳以上被用者該当届の提出

70歳以上被用者該当届
70歳以上被用者該当届

事業所整理記号、事業所番号:新規適用届が受理された後に交付される「適用通知書」に記載されています。

被保険者欄:従業員の情報を記入します。

⑩備考:「1. 70歳以上被用者該当」に〇をつけましょう。

必要書類 健康保険・厚生年金保険 被保険者資格取得届 / 厚生年金保険 70歳以上被用者該当届
添付書類 なし
提出先 年金事務所
提出期限 資格取得日から5日以内

70歳以上の従業員が退職するときの手続き

花の画像
⑥⑧に必ず記入をしましょう!

70歳以上の従業員が退職をしたり亡くなったりした際には、日本年金機構に「被保険者資格喪失届/70歳以上被用者不該当届」を提出します。

参考:従業員が退職、死亡したとき|日本年金機構

提出先は管轄の年金事務所です。ほとんどの方は郵送で申請を行いますが、窓口に持参しても受け付けてもらえます。

添付書類として、従業員及びその被扶養者の健康保険証・高齢受給者証、健康保険特定疾病療養受給者証、健康保険限度額適用・標準負担額減額認定証を併せて提出します。健康保険証を紛失したなどの理由で提出できない場合は、「健康保険被保険者証回収不能届」を添付します。

参考:被保険者証の添付を必要とする届書提出時に添付ができないとき|日本年金機構

70歳以上被用者不該当届の提出

70歳以上被用者不該当届
70歳以上被用者不該当届

事業所整理記号、事業所番号:新規適用届が受理された後に交付される「適用通知書」に記載されています。

被保険者欄:従業員の情報を記入します。

喪失年月日:資格喪失日は退職日の翌日を記入します。

⑧70歳不該当:「70歳以上被用者不該当」にチェックをしたうえで、退職日を記入します。

必要書類 健康保険・厚生年金保険 被保険者資格喪失届
添付書類 ①本人及び被扶養者の健康保険証
②高齢受給者証、健康保険特定疾病療養受給者証、健康保険限度額適用・標準負担額減額認定証
※②については、交付されている場合のみ
提出先 年金事務所
提出期限 資格喪失日(75歳の誕生日)から5日以内

まとめ)70歳以上の社会保険の手続きは要注意!

社会保険の70歳以上の手続きは複雑で、厚生年金と健康保険では届出の年齢も異なるため、処理ミスが起こりやすくチェックするにも専門知識が必要です。

また、75歳以降も在職老齢年金の支給調整に必要な標準報酬や賞与支払いに関する届出を継続して行わなければならず、事務処理の負担は大きなものとなります。

手続きに自信がなかったり負担が大きかったりする場合は社労士に依頼するのも一つの選択肢です。

この記事を監修した社労士

ドラフト労務管理事務所 - 大阪府大阪市東成区中道

社会保険労務士資格を取得後、人材派遣会社の本社勤務を9年経験。 その後、「問題を解決するためのドラフトを提案する」という理念を基に独立開業し13年目を迎える。前職の経験を活かし、派遣元責任者講習の講師を担当。派遣元・派遣先の双方の立場など派遣業界の仕組みを理解しての講義には定評がある。同一労働同一賃金・ハラスメントのセミナーも年間数十回実施。また、海事代理士事務所を併設することにより陸上労働者のみならず海上労働者の働き方改革にも従事している。 ●重点取扱分野 労務相談/過労等の疾病・過労死の労災申請・障害年金申請代理 派遣元責任者講習講師/労働局・労働基準監督署等の監査立会業務 派遣業・職業紹介業の許可申請業務 ●働き方改革推進支援センターアドバイザー/教えて!goo・Yahoo!知恵袋 認定専門家/経済産業省後援ドリームゲートアドバイザー。 ●ドラフト労務管理事務所 代表社会保険労務士 鈴木圭史 〒537-0025 大阪市東成区中道 JR玉造駅から東へ徒歩3分

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