商標登録をすると企業にとってどのようなメリットがあるのでしょうか?加えて商標登録の基礎知識や注意点についてもみていきましょう。出願前に必要な準備や登録までの流れ、手続きを依頼すべきかという点についても紹介します。
商標登録についての基礎知識
商標登録をするとどのような権利を得られるのでしょうか?利点や手続きを理解するために、まずは基礎知識を確認しましょう。
商標とは?
身近な商品に付いているマークやネーミングのことを「商標」といいます。独自のデザインにより他社の商品やサービスと区別する機能を持つものです。
ほかにも同じ会社の商品であることや同一の品質を保っていることを、分かりやすく示す役割もあります。お客様が安心して商品を買える証しともいえるでしょう。
また消費者に商標が浸透すれば広告としても働き、宣伝にも役立つはずです。例えばお店の看板に付いているロゴマークは、広告の役割を担っています。
特許庁に登録をすると商標権が与えられる
マークやネーミングは手続きなしに使えます。オリジナルの商標を考えれば、今日からでもすぐに商品に付けたり店舗や社屋の看板に使用したりすることが可能です。
ただしそのままでは、自社で作成したにもかかわらず第三者に使われる恐れがあります。そこで行うのが特許庁への登録です。手続きを行い登録されると「独占権」を得られます。
独占権を得た商標を第三者が利用することは認められていません。また先に登録が完了していれば、類似した商標を使っている他社から権利を主張される心配もないでしょう。
マーク・ロゴ・文字などが登録可能
商標権を得るには、必ずマークと商品・サービスのセットで登録します。このとき登録できものは商標法第二条第一項で定められており、具体的には下記に挙げる9種類を指します。
- 文字商標:文字のみで構成される
- 図形商標:写実的なもの、図案化されたもの、幾何学模様などでできている
- 立体商標:立体的な形状や、立体と平面をあわせた形状でできている
- 結合商標:二つ以上の文字や図形などの組みあわせで構成される
- 動き商標:文字や図形などが時間の経過とともに変化する
- ホログラム商標:ホログラフィやそのほかの方法で文字や図形が変化する
- 色彩のみからなる商標:単色・もしくは複数の色の組みあわせでできている
- 音商標:音楽・音声・自然音など聴覚で認識される
- 位置商標:図形などを商品のどの位置に付けるか決まっている
商標登録をするメリットと注意点
登録しなくても商標としての利用はできますが、登録することでメリットを得られます。ただし登録することによる注意点もあるため、あらかじめ確認しておくと安心です。
自社ブランドが保護できる
まず挙げられるメリットは「ブランドを保護できる」点です。商標は会社や商品を代表する顔としての役割があり、イメージが重要なものでもあります。
第三者に利用されると、自社のブランドとして認知されないことや、イメージを壊されてしまうことが起こり得ます。このようなとき登録してあれば「差止請求権」を行使可能です。
ブランドとしての価値やイメージの保護につながります。また損害が発生していれば損害賠償請求も可能です。
商標権のライセンスによる対価
財産権の一種である商標権は「ライセンス」による収益化も可能です。ライセンス契約で利用を許諾する代わりに、使用料を受け取ります。
他社にライセンスを渡すと、自社だけで商標を使うよりもブランドをより広い範囲で市場に浸透させられるかもしれません。認知度を高めるためにも有効な方法です。
また商標権の譲渡による売却益も期待できます。
海外では保護されない
ただし「海外では保護されない」点には注意が必要です。商標権が効力を発揮するのは登録した国に限られます。そのため日本で登録した商標の権利を主張できるのは日本国内のみです。
今後海外での展開を計画しているのであれば、進出しようとしている国での登録も行わなければいけません。手続きが後手に回ると、第三者に先に登録されてしまう可能性があります。
実際に第三者の出願により、海外進出がスムーズに進まないケースも発生しています。早めの対策が欠かせません。
登録までの期間や費用に注意
商標権は出願してから審査結果が通知されるまでに「約12カ月」も時間がかかります。書類を提出してすぐに登録できない点に要注意です。
できるだけ早く権利を得たいなら「商標早期審査・早期審理制度」を利用しましょう。一定の条件を満たす必要がありますが手数料不要で申請できます。
また出願するときには「商標登録出願費用」を支払わなければいけません。金額は「3,400円+(商品・サービスの区分数×8,600円)」です。
加えて審査に通過すると登録料として「区分数×28,200円」もかかります。さらに商標権の維持にかかる更新登録申請登録料「区分数×38,800円」が必要です。
商標登録の仕方や流れをチェックしよう
自社の商標を登録するには、具体的にどのような手続きが必要なのでしょうか。事前準備や手続きの流れを紹介します。
まずは同一・類似の商標がないかを確認
出願前には必ず、同じ商標や似ている商標が登録されていないか確認しましょう。法律では第三者の登録商標は登録できないと定められています。
加えて第三者の商品やサービスと区別しにくいものも登録できません。このようなケースでは出願しても登録不可能です。
そこで出願が無駄にならないよう、公報の調査を実施します。特許情報プラットフォーム「j-platpat」を利用してもよいでしょう。
出願・審査・登録
事前準備で似通った商標がないと分かったら出願します。書類を作成し提出する場合には、特許印紙を貼った上で特許庁へ提出しましょう。電子化手数料の納付も必要です。
インターネットでの出願もできます。電子証明書と専用ソフトウエアを用意し、オンラインで提出する方法です。インターネット出願では書類が電子化されているため、電子化手数料はかかりません。
出願後は審査が実施される段階です。このとき実体審査の結果によっては「拒絶理由通知」が届く可能性があります。
通知が届いた場合には、拒絶理由を解消すれば登録されるかもしれません。意見書や手続き補正書を提出し、拒絶理由の解消に努めます。
登録手続きは自力か依頼か?
商標登録の手続きは自社で行うことも依頼することも可能です。どちらの方法もメリット・デメリットがあるため、自社の状況にあわせた方法を採用しましょう。
自分で行う場合
自力で登録の手続きを実施すると、費用を節約できます。必要なのは出願や登録にかかる費用のみで、手続きの依頼先へ支払う費用はかかりません。
ただしその分、手間と時間がかかります。商標登録について専門知識がない状態なら、勉強から始めなければいけません。勉強が不十分な状態では、出願前の調査をしても正しく判断できない可能性があります。
また拒絶理由通知への対処がうまくできないことも考えられるでしょう。たとえ審査に通過したとしても、取得すべきだった権利範囲をカバーできないかもしれません。
これではせっかく出願しても無駄になってしまいます。もし社内に十分な知識を持つ担当者がいれば、自力でも対応できるでしょう。
弁護士や特許事務所に任せる場合
弁護士や特許事務所など専門家へ任せれば、拒絶されるかどうかを事前調査の段階で判断できます。そのため出願が無駄になりにくいはずです。
仮に拒絶されたとしても、適切なアドバイスにより拒絶理由の解消につなげられます。依頼するだけですむため、自力で手続きするときと比較すると手間が圧倒的にかかりません。
その分費用はかかります。登録する商標が1区分であれば110,000~150,000円が相場です。区分が多いケースや拒絶理由通知が届くと、料金体系によっては追加費用を求められます。
業務範囲や費用は依頼先によって異なるものです。事前にミツモアで比較すると、予算にあった依頼先をみつけやすいでしょう。
商標を先に取られる前に行動を
商標登録しなくても自社で作ったマークやネーミングは使えます。ただし商標権を得て独占的に使うには登録が必要です。
登録してあれば第三者に商標を使われ、ブランドの価値を傷つけられる恐れはありません。何かしらの損害が発生すれば、損害賠償請求もできます。
また他社に先に登録されると後から出願しても商標権は取得できません。自社の商標を守るために、早い段階で手続きしましょう。
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