意匠権は、商品のデザインを保護するために欠かせません。特許庁の厳正な審査を通過して意匠登録を認められるためには、事前の調査が非常に重要です。
本記事ではWeb上に無料で提供されているデータベース「J-Plat Pat」「Graphic Image Park」を利用して意匠を検索する方法を、画面例を交えながら紹介。その上で、弁理士に意匠検索を依頼するメリットについても解説します。
意匠を無料で検索できる2種類のデータベース
私達が店頭で商品を選ぶときに、商品のデザインが購入の決め手となることも多いのではないでしょうか。デザインは商品の価値・購買力に大きな影響を持つ要素であることから、他者が安直に模倣しないように保護する必要があるのです。
そして、容器・電化製品・家具・自動車などのデザインを保護するのが「意匠権」なのです。
新商品を開発した際に特許庁に意匠登録申請をすれば、登録設定から20年間権利を保持することができます。ただし既に登録済のデザインだった場合には、当然のことながら登録することも、意匠権者の許可なく使用することもできません。
そのような事態を防ぐには事前に検索して、登録済の意匠を確認しておくことは非常に重要です。意匠を検索するには、2種類の無料データベースが提供されていますので、それぞれの特徴についてご紹介していきましょう。
「J-Plat Pat」は社名や意匠登録(分類)番号で検索できる
独立行政法人工業所有権情報・研修館が運営するサイト「J-Plat Pat」では、意匠権者である会社名や個人名が分かっていれば、当該会社や個人に関する意匠を検索することができます。
また意匠番号が分かっているのであれば、ピンポイントで該当する意匠に関する情報を検索できます。
さらには意匠の分類番号やキーワードから対象を絞っていく検索方法もあります。
「Graphic Image Park」は画像で意匠検索できる
独立行政法人工業所有権情報・研修館が運営するサイトでは、画像で意匠検索ができる「Graphic Image Park」という画像意匠公報支援ツールも用意されています。
パソコン内から画像を取り込んで検索をすることで、類似性のある意匠が表示されます。
意匠の検索・調査には専門的知識が必要
登録された特定の意匠をターゲットにしている場合は、登録番号や会社名などから検索すれば、対象物に行き着くことは可能です。
しかし自社製品と類似性のある商品が既に意匠登録をしているのかについて検索することは、まるで広大な草原で落とした指輪を探し出すかのように、とても根気のいる作業です。
結論から申し上げますと、残念ながら紹介した2種類のデータベースによる検索だけでは、正確に意匠検索をすることは難しいと言わざるを得ません。なぜなら関連意匠は多岐にわたり、膨大な数の意匠との突合せが必要だからです。
実際に意匠の登録をする際には、意匠に詳しい弁理士に調査を依頼するのが最も確実です。弁理士に依頼をすれば、登録意匠を丁寧にチェックしてもらえるので、高確率で申請前に意匠登録の可否が分かります。
「J-Plat Pat」で登録意匠を検索する方法
「J-Plat Pat」を利用して登録意匠を検索しようとする場合、どのような手順で進めればいいのでしょうか。検索する方法と手順についてみていきましょう。
「J-Plat Pat」で意匠を検索する方法
「J-Plat Pat」で意匠を検索する方法には、以下のような方法があります。
- 登録番号が分かっている意匠の検索……対象となる意匠の登録番号が分かっている場合は、登録番号を入力することで、検索することができます。
- キーワードによる検索……対象となる意匠がキーワードから類型化できるものであれば、対象を絞っていくことで検索することができます。
- 日本意匠分類・Dタームによる検索……日本意匠分類は意匠権調査を効率よく検索するために設けられたもので、物品を形状によって分類しています。日本意匠分類には、さらに細分化したDタームが用意されています。検索は、検索キーワードによって必要な資料を呼び出し、スクリーニングする方式になっています。
「J-Plat Pat」で意匠を検索するメリット
「J-Plat Pat」は意匠の簡易検索をするには、非常に有効なツールです。以下のようなメリットがあります。
- インターネットを通じて、自宅から無料で利用できる
- どのようなデザインであれば審査を通過できるかのレベルが分かる
- 分野別の登録状況を把握することで意匠登録の難易度が分かる
「J-Plat Pat」で意匠を検索するデメリット
一方、「J-Plat Pat」だけでは、意匠検索を完璧に行うのは難しいのも事実。以下のような点には、注意しておきましょう。
- 意匠が審査に合格できるかどうかは、J-PlatPatに登録された意匠権以外にも、新聞、書籍、インターネットに既に公開されているデザインも参考資料になるため、特許庁審査に合格できるか判断ができない
- 形状を保護する意匠を文字で検索するにはDタームを正確に把握する必要があり、難易度が高い
- 審査中のものは公開されないので、類似品が審査中であれば検索結果に表示されない
「Dターム」から意匠検索をしていく手順
それでは実際の検索手順を説明していきます。
本項では、形状から登録意匠を検索する方法である、日本意匠分類・Dタームによる手順に絞ってご説明します。
今回は、下図のようなおもちゃの家を意匠出願する場合を想定して、検索をしていきます。
まずは、このような形状の商品が、どの意匠分類・Dタームに所属するのかを調べます。「意匠」のタブをクリックするとメニューが表示されますので、「意匠公報テキスト検索」をクリックします。
次に、「意匠公報テキスト検索」で「おもちゃ 家」を入力します。あるいは下の枠を利用して「おもちゃ」AND「家」と入力しても検索できます。この場合下段の検査項目は「意匠の説明」に変更します。
検索結果として、類似した意匠一覧が表示されます。そのうちの類似している意匠をクリックします。
意匠の詳細を見ると、意匠分類が「E1-71」であることが分かります。Eグループには「趣味娯楽用品及び運動競技用品」が分類されており、E1-71は「屋内おもちゃ」を示します。
トップページに戻り「意匠」のタブをクリックするとメニューが表示されます。
「日本意匠分類・Dターム検索」をクリックします。
「検索式」にDターム「E171」と入力します。ハイフンは不要です。さらに対象を絞るために登録日や出願日を入力します。
ヒット件数が表示されるので件数をクリックします。
類似した意匠の一覧が表示されます。
「Graphic Image Park」で意匠を画像から検索
もうひとつの検索ツールである「Graphic Image Park」についても、検索方法をご紹介していきましょう。登録番号やDタームなどの文字情報から意匠を検索する「Jplatpat」に対し、画像から関連意匠を検索できるのが「Graphic Image Park」の特徴です。
「Graphic Image Park」で意匠検索するメリット
画像から意匠検索できる「Graphic Image Park」には、以下のようなメリットがあります。
- 画像を入力するだけで検索ができる
- インターネットを通じて、自宅から無料で利用できる
- 形状や色彩が近いに順に照会することができる
- 検索結果がサムネイルで一覧表示されるので、デザインを効率良く照会できる
「Graphic Image Park」で意匠検索するデメリット
「Graphic Image Park」は、2015年10月にスタートした比較的新しいサービスです。現段階では画像認識機能に改善点があり、ピンポイントで探すのが非常に難しいのが現状です。
「Graphic Image Park」で意匠を検索する手順
それでは「Graphic Image Park」で実際に検索する手順をみていきましょう。
検索したい画像を自分のパソコンのファイルから呼び込みます。
画像が入力欄に表示されます。
検索をクリックすると、自動車に関連する画像として、スピード計測器やタイヤなどの自動車関連部品までさまざまな登録意匠が表示されます。
ディスプレイや計測器など、自動車に関するさまざまな関連意匠が表示されています。ただし、「Graphic Image Park」は導入されてから日が浅く、画像認識性能には改善の余地が多くあります。
現状では望んだ検索結果を得るのは少々難しいと言えるでしょう。
意匠の調査は弁理士に任せた方が安心
登録された意匠の検索は、インターネットを通じ自宅からでも気軽に行うことができます。しかし正確に検索するとなれば、経験の浅い人であれば膨大な時間を費やすことになります。効果的に登録意匠を調査して、自分が捜索したデザインを堂々と使用するためには、どのような方法を選択するべきなのでしょうか。
弁理士なら意匠登録前に正確な調査が可能
上述した通り、Graphic Image Parkで登録意匠を探すのは、画像認識能力の点から非常に困難です。またJ-Plat Patmも分類を絞り込んでいけばある程度検索は可能ですが、膨大な量の検索をしないことには正しい検索をすることはできません。
また意匠が審査に合格できるかどうかは、J-PlatPatに登録された意匠権以外にも、新聞、書籍、インターネットに既に公開されているデザインも参考資料になるため、不慣れな人では特許庁審査に合格できるかの判断ができないのです。
意匠登録の可否は、商品を販売するうえで非常に大きな問題です。販売を開始した途端に意匠権を侵害していると訴えられたら、取り返しのつかない事態になってしまいかねません。
重大な失敗を未然に防ぐためにも、専門知識を持って正しく意匠調査をしてくれる、弁理士に相談するのが最善の方法なのです。
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