「屋根の勾配」は住宅設計において非常に重要なポイントです。外観だけでなく機能の面でも、完成したマイホームの出来を大きく左右します。


しかし「うちにはどんな勾配が合っているんだろう?見た目も機能も最適な角度を採用したい」と悩む方も多いですよね。
そこでこの記事では勾配の決め方を説明していきます。微妙な傾きによってどんな違いが出るのか、それぞれのメリット・デメリットを解説。「こんな人にはこういう勾配が向いている」といったことを具体的に説明するので、ぜひ参考にしてください。
屋根の勾配とは?表記や計算のしかた

勾配とは「傾きや角度」のこと。屋根の場合は勾配の数値によって「なだらかなのか・とがっているか」が決まります。
以下のように表記されることがあるので、簡単に確認しておきましょう。
- 尺貫法勾配(○寸勾配と表記されます)
- 分数勾配(○/10と表記されます)
- 角度勾配(○°と表記されます)
建築業界でもっとも一般的に使われるのは、1番上の尺貫法勾配です。これは「比」の考え方で、屋根の幅を10とした場合の高さを「○寸」の部分に当てはめます。高さ:幅=4:10の時は、4寸と表記されます。数字が大きいほど屋根の勾配も急です。
2番目の分数勾配もまったく同じ考え方。4寸勾配なら「4/10」のように、表記が少し変わるだけです。
最後の角度勾配は誰にでも分かりやすい表記に思えますが、建築業界ではほとんど使われていません。
勾配の種類は3つ!それぞれのメリットとデメリットを解説

屋根の勾配は数値の大きさによって以下の3種類に分けられます。
- 急勾配:傾きが大きい
- 緩勾配:傾きが小さい
- 並勾配:傾きが普通くらい
それぞれの良さや注意点を把握しておきましょう。
①急勾配の特徴
傾きが6寸勾配より大きい屋根を「急勾配(きゅうこうばい)」といいます。
屋根の上に雨水がたまらないため雨漏りの心配がないことや、デザイン性の高さが大きなメリットです。
ただ面積が広いせいで強風や突風には弱く、施工や修理の際にかかる費用も高くなってしまいます。傾きが急なため、足場がなければ屋根の上に上ることも困難です。
②緩勾配の特徴
傾きが3寸勾配未満の屋根は「緩勾配(かんこうばい)」と呼ばれます。
屋根の面積が小さいため風の影響を受けにくく、建築・メンテナンスの手間や費用が抑えられます。
しかし雨水やゴミが流れずにたまりやすいことや、屋根材の制限・デザイン性の低さが少しデメリット。基本的に急勾配と正反対の性質を持っています。
③並勾配の特徴
3~6寸勾配の屋根は「並勾配(なみこうばい)」といいます。一般住宅の屋根として広く普及しており、屋根材の変更にも対応しやすいでしょう。
急勾配と緩勾配の中間であるため、両者のデメリットをうまくカバーしています。つまり比較的風に強く、雨もたまりにくいということですね。
デザイン面では没個性的になりやすいのですが、機能面で目立つ欠点は特にありません。並勾配はさまざまなポイントをまんべんなく押さえています。
【勾配3種類の比較】
| 急勾配 | 緩勾配 | 並勾配 | |
| 雨への耐性 | ◎ | △ | ○ |
| 風への耐性 | △ | ◎ | ○ |
| デザイン性 | ◎ | △ | ○ |
| 施工・修理費用 | △ | ◎ | ○ |
勾配(角度)の決め方!何を基準にすれば良い?

屋根の勾配はさまざまなメリット・デメリットを持っています。決め方に迷った際は、以下のようなポイントを参考にしてみましょう。
- 屋根材ごとの最低勾配
- 地域の気候
屋根材ごとの最低勾配を満たす
屋根に用いる材料は、それぞれ必要最低限の傾斜をつけるよう決められています。したがって「この屋根材を使いたい!」という希望がある場合は、その屋根材に適した勾配を選ばなければなりません。
よく使われる屋根材の最低勾配は以下の通り。
| 屋根材 | 最低勾配 |
| 金属屋根 | 1寸勾配 |
| スレート屋根 | 3寸勾配 |
| 瓦屋根 | 4寸勾配 |
もしこの基準を破って勾配が足りない屋根にしてしまうと、たとえ並勾配の屋根でも雨や風の悪影響を受けるリスクが高まります。
ちなみに日本の家屋で最も使われているのは「スレート屋根」です。

そのため多くの住宅が、最低でも3寸以上の勾配がなければいけないということですね。
希望の屋根材を使うことができても、屋根としての機能を果たせなければ意味がありませんよね。外観やデザインにこだわりたくても、屋根材ごとの最低勾配だけは必ず守るようにしましょう。
雨や風など、地域の気候を考慮する
気候に特徴がある地域では、それに適した勾配にすることも視野に入れましょう。例えば豪雨や台風が発生しやすい地域に家を建てる場合、雨風に強い緩勾配を選んでおくと安心です。
積雪の多い雪国では、屋根の上に積もった雪が落下しやすい急勾配が向いています。ただ建物の周辺に雪を落とせるスペースがない場合はあえて緩勾配にし、軽くて頑丈な金属屋根の上に留めておく手もあるようです。
プロに相談することも忘れずに
とはいえやはり素人の判断だけで屋根の勾配を決めてしまうのは危険です。最終的には担当の施工業者に相談の上、決定してもらいましょう。
建物の高さによっては屋根のデザインが建築基準法で制限されてしまうこともあります。プロの判断のもと、無理のない範囲で設計してもらうのがもっとも賢明です。
もちろんこだわりや希望があればきちんと伝えておきましょう。「機能も大事だけれど、カッコイイ見た目になる勾配数にしたい!」という場合は、その勾配数で建てられた家の実例などを見せてもらっても良いですね。
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おすすめの傾斜は「並勾配」の4寸勾配

以上の点を踏まえた上で、もっともおすすめできる勾配は「並勾配」です。並勾配は急勾配・緩勾配で生じるデメリットがほとんど問題になりません。さらに4寸勾配であれば、金属・スレート・瓦の全てを屋根材として用いることができます。
並勾配は住宅の屋根としてもっとも一般的。勾配を決められずに迷っているなら、とりあえず4寸勾配を選んでおけば間違いないでしょう。
太陽光発電をする場合は、太陽光を直角に受けるような角度に
並勾配は太陽光発電をする際にも適しています。一般的に「太陽光パネルを設置できるのは3~10寸勾配の屋根」と規定されているからです。
その中でも以下の勾配だと、太陽光パネルの発電効率が年間を通してもっとも高くなります。
- 東日本:6~7寸
- 西日本:5~5.5寸
太陽光発電システムの導入を考えている場合は参考にしてみると良いかもしれません。ただしこの場合も、業者に相談した方が安心です。
工場や倉庫には折板屋根を0.3寸の勾配で

新たに建設する建物を工場や倉庫として活用する場合は、「折板屋根」を用いることが多いでしょう。折板屋根は金属製で凹凸がついており、水はけの良さが大きな強みとなっています。
工場や倉庫では内部の空間をより広く確保するため、勾配のない陸屋根を選びたい方がいるかもしれません。しかし折板屋根にも「0.3寸(3/100)」という最低勾配が決められているので覚えておきましょう。
そもそも勾配は絶対に必要?傾斜のない陸屋根じゃダメ?

最近ではモダンな外観から、勾配のない平らな「陸屋根」も人気を集めています。陸屋根はデザインの良さ以外にも、屋上として活用できるところ・室内に開放感を出せるところが大きなメリットです。
しかし勾配のない屋根は雨漏りの危険性が高まる上、夏場は最上階に熱がたまりやすくなってしまいます。防水や断熱の工夫が必要になるので施工費用も高額に。建物が木造の場合特に不向きです。
「どうしても陸屋根にしたい!」という強いこだわりがない場合は、やはり少しでも勾配のある屋根にしておくのが良いでしょう。
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