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軒天の役割とは?劣化の症状やメンテナンス方法について詳しく解説

最終更新日: 2024年06月28日

屋根や壁などよく知られている部分以外にも、住宅の安全性と快適性を守る箇所があります。軒天もその1つで、劣化すると外観を損なうだけでなく建物の寿命にも影響する部分です。軒天の役割や主に使われている材質・修繕の方法を解説します。

そもそも軒天とは?

神社の屋根

「軒天(のきてん)」とは住宅のどの部分を指すのでしょうか?軒天が持つ役割を知ってメンテナンスに生かしましょう。近年人気の軒がない家に潜む落とし穴についても解説します。

外側へ張り出している屋根部分

下から家を見たときに、外壁から屋根が張り出している部分が「軒天(軒裏天井)」軒天です。軒天を付けないと、構造部分である「垂木(たるき)」や「野地板(のじいた)」が露出してしまいます。

玄関部分には幅の広い軒天が付けられている住宅が多く、雨宿りできるスペースとして活躍する部分でもあります。外壁周りは玄関よりもせまく作られる場合が多いようです。

軒天がない家も増えている

近年は施工費用の削減やデザイン性の向上を目的として、軒天がない「軒ゼロ住宅」を建てる人が増えています。張り出している部分の長さが25cm以上の場合のみ「軒」と呼ぶため、張り出しの全くない家も軒天が25cm未満の住宅も軒ゼロ住宅です。

長い軒は夏季には強い日差しを遮り、雨季には縁側を空けて通気性をよくします。冬季には日光を取り込み室内に明るさと暖かさをもたらすなど、軒天は快適な生活に大きく貢献する部分です。

しかし現代の住宅は気密性や断熱性が高いため、軒天に効果を求めない人が増えています。

軒天の役割って?

雨の街並み

外壁にかぶさるように設置されている軒天は、外壁を守る役割を果たします。他にも通気をよくしたり火災の被害を抑えたりと、安全で快適な生活に貢献する部分です。軒天を設けると暮らしやすくなる理由を、詳しく見ていきましょう。

雨から外壁や建物を守る

軒天は張り出した部分で壁を雨のダメージから保護すると同時に、屋根と外壁のつなぎ目から雨水が侵入してくるのを防ぐ効果も発揮します。軒が長いほどに結合部が守られるため、雨漏りのリスクは軽減するでしょう。

しかし軒が劣化して壁とのつなぎ目にすき間ができたりひび割れが起こったりしてしまうと、雨水が徐々に侵入してきます。内部に入ってきた水は建材にも染み渡り、雨漏りや建材の腐食を引き起こす原因になるのです。

屋根裏を換気する

軒天に一工夫すれば屋根裏の換気を向上させる働きも持たせられます。屋根裏は湿気を帯びやすいためカビや細菌の発生が心配な部分ですが、通気性を確保すればどちらも繁殖しにくくなるでしょう。

軒天に換気口を併設すると、屋根の通気性を格段に向上させられます。屋根裏の内部結露を防ぐ効果も期待できるのがうれしいポイントです。

軒天に小さな通気穴が空いた有孔板(有孔ボード)を採用するのも効果的です。湿気がこもりがちな屋根裏の空気を外部へと排出できます。

湿度が高く暗い場所はカビやダニ・細菌が好む環境です。増殖すると悪臭の原因にもなるため、軒天に換気できる工夫をして住み着きにくい状態にしておきましょう。

火災被害の拡大を防ぐ

日本の住宅地では数多くの家屋が密集して建てられているケースが多く見られます。隣同士の間隔がせまく、住宅がひしめき合っているエリアも少なくありません。火事が発生しすると次々に燃え移り、被害が拡大してしまう恐れがあるのが難点です。

耐性の高い素材で軒天を作っておくと、火事が起きても燃え広がる範囲を抑えられます。火は下から上へと燃え移る性質があるため、耐火性のある軒天ならば屋根裏まで瞬時に火の手が回るのを防げるのです。

ただし張り出している軒天は、火が燃え移りやすいともいえます。火災の被害拡大を予防したいなら、耐火性能の高い素材を使って安全性を確保しなければなりません。

また軒天が劣化してしまうと、本来あるべき防火性が低下してしまいます。防災機能を維持する状態をキープしておくことが重要です。

軒天に使われる素材の種類

ベニヤ板

住宅の安全性や快適性に貢献する軒天には、さまざまな素材が採用されています。それぞれの特徴を把握して、材質選びに役立てましょう。代表的な軒天の素材を三つ紹介します。

価格が低い「ベニヤ板」

ホームセンターなどでも気軽に手に入るため、とてもポピュラーな材質といえます。価格の低さが大きな魅力の素材です。

ベニヤ板そのものとして使用するのはもちろん、檜(ひのき)調となど模様入りのシートを被せる工夫をすれば外観をおしゃれに演出できます。

安価で作業がしやすく施工費を抑えられるため、初期費用を安く済ませたい人におすすめです。しかし耐久性の面でやや弱さがあり、劣化の進行とともに美観の低下も起こります。ベニヤ板を採用するなら小まめなメンテナンスが欠かせません。

ケイカル板などの「不燃材」

「不燃材」は出火時の安全面を考慮すると、軒天にマッチした建材といえます。実際に現代の新築住宅では広く採用されている種類です。

中でも近年人気なのが「ケイカル板」です。珪藻土(けいそうど)や消化石(水酸化カルシウム)を、水と混ぜて作られる合板を指します。

以前は石綿(アスベスト)を含んでいました。問題になった時期の知識がある人は不安を抱くかもしれませんが、法改正によって現在は建材への使用が禁止されています。近年出回っているケイカル板はノン・アスベストですので、健康被害の心配はありません。

現在設置している軒の素材が気になるようであれば、工務店や業者に確認してもらうとよいでしょう。

カバーに使われる「金属」

金属の板をそのまま使用して、軒天を包み込むように施行する方法があります。金属はベニヤ不燃材と比べても、耐久性の高さがある素材です。

軒天は雨水の影響を受ける部分のため、サビの発生を心配する人もいます。しかしガルバリウム鋼板やアルミスパンなど「サビにくい金属」も普及しており、最近の住宅ではサビが発生しにくいタイプの金属を使うのが一般的です。

こんな状態に要注意。軒天の劣化症状

古びた屋根

軒天はどのような状態になると注意が必要なのでしょうか?劣化を知らせるサインを紹介します。普段からよく観察して、不具合を感じたら早めにメンテナンスを検討しましょう。

色あせやシミ、カビ

軒天が劣化すると設置したときの色があせてきます。色が変わってきたと感じたら、小まめに他の不具合がないかチェックするようにしましょう。

下から見上げたときに軒天と破風板(はふいた)の境界部分の色が違っていたり、焦げ茶色になっていたりすると、劣化が進んでいると考えられる状態です。

シミも軒天の劣化を表すサインの1つです。シミの多くは屋根からの雨水が排水されず、軒天部にまで流れてくることで発生します。シミができる状態だと湿気がたまりやすく、家の内部まで不具合が出てしまう可能性があります。

カビも雨水が滞っていると発生する劣化症状です。雨漏りのリスクを減らすためにも。発見したら早めにメンテナンスを考えましょう。

はがれや穴

木材系の軒天材や化粧板が劣化すると、はがれが起こります。ベニヤ板の表面がはがれたり、ささくれて欠けたりする症状が代表的です。

はがれた状態で塗装をしても塗料がうまく乗らず、もろい塗面になりがちです。状態によっては下地まで修理が必要なケースもあります。

雨水などによる腐食が進み、軒天の一部に穴が開くこともあります。侵食が広がるだけでなく、鳥や小動物が侵入して住み着いてしまう危険もあるため注意が必要です。

害虫や害獣は建材の劣化を促進すると同時に、フンや死骸が蓄積すると衛生環境も悪化させてしまいます。はがれや穴を見つけたらメンテナンスの時期と考えましょう。

軒天の修理、メンテナンス方法とは?

屋根職人

軒天に劣化や損傷が生じた場合、どのように対処すればよいのでしょうか?メンテナンスに採用される施工方法の中で、代表的なものを紹介します。軒天は劣化したら放置せず、状態に合った方法で補修しましょう。

機能性に優れた塗料で再塗装

木材系の軒天に効果的な修繕方法です。不燃材系の軒天材にも効果を発揮するでしょう。

再塗装をする際は耐久性や耐水性を重視して、優れた機能性を備えた塗料を選ぶのがおすすめです。性能がよい塗料の塗膜で軒天をコーティングすると、美しい外観がよみがえります。

ただし軒天材の状態によっては、塗装のみでは対応できない場合もあるため事前にチェックが必要です。ひどく傷んだ軒天には、他のメンテナンスも必要になることを理解しておきましょう。

新たな軒天材を張り付ける

既存の軒天材の上から、新たに軒天材を上から張り付けるカバー工法も1つの手です。大がかりな工事にもならず、効率的に状態を改善できます。

ベニヤや合板の表面がひどくはがれているために塗装ができない、木材から不燃材に変えたいなどさまざまなケースに対応可能です。費用面でも比較的手頃な費用で施工できます。

しかし痛みが激しい場合はカバー工法でも修繕できない場合があります。施工方法に迷う場合には、一度業者に点検を依頼して相談するとよいでしょう。

軒天を張り替える

劣化や損傷の度合いがひどい・下地にまで大きな影響が及んでいるといった場合は、軒天の張り替えも検討しましょう。劣化の進行具合によっては、表面的な補修では問題の解決に至らない場合があるのです。

まず損傷した軒天板を取り外してから、土台など内部の傷み具合をチェックします。必要であれば下地部分にも手を加えて、土台に軒天板を設置していくのが一般的です。

建材同士のつなぎ目や接合部分にシーリング処理を施してから、板面を保護するための塗装をすれば施工は完了します。

換気口の取り付けもおすすめ

内部の通気性が確保されていない場合は、メンテナンスの際に換気口を設置するのがおすすめです。

軒天上部に当たる屋根裏部分の空気はよどみがちで、湿気を多く含んでいます。カビやダニ・細菌が好む環境が整っているため、空気が汚れて悪臭の元になりやすい場所です。屋根裏の微生物が原因でアレルギーを引き起こす危険もあります。

換気口設置の他に、多数の穴がある有孔板を建材として採用するのもよいでしょう。風通しをよくして新鮮な空気を取り込めます。

軒天は小まめに点検して補修を

三角屋根

軒天は屋根が外壁に張り出した部分を指します。構造部分を隠して美観を保つ役割だけでなく、外壁や住む人の安全や快適さを守るパーツです。

軒天が損傷すると家屋の機能が低下し、カビやダニ・細菌を引き寄せる原因にもなりかねません。日頃から小まめな点検を心掛けて、不具合を見つけたら早めの対処が大切です。

メンテナンスには塗装やカバー工法・張り替えといった方法があります。軒天の状態に合わせて適した手段を選びましょう。

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