台風がおとずれると、強風や大ぶりの雨によって建物がダメージを受けてしまいます。建物の中で、最も台風の被害を受けやすいのが屋根の部分。
特に築10年を超えた家屋ではきちんとメンテナンスをしておかないと、屋根に被害が出てしまうリスクは高まります。
今回の記事では、屋根が受ける様々な台風被害を紹介しつつ、被害を避けるためのメンテナンス方法や、被害を受けてしまった場合の対処法などを解説していきます。
台風による屋根の被害
ひとくちに「台風の被害」とは言っても、いったいどのような被害があるのでしょうか。
台風によって屋根が受ける被害には、以下のようなものがあります。
- ストレート屋根の棟板金(むねばんきん)が変形・飛散する
- 瓦屋根の漆喰(しっくい)が剥がれる
- 屋根本体が飛んでしまう
- 軒天や雨どいなどの部分が破損する
屋根の種類によって台風が与えるダメージが異なったり、屋根本体ではない部分が破損したりと、様々なケースが考えられます。
また自分の家が被害を受けなくとも、他所から飛んできた屋根材などが自宅に二次被害を及ぼすことも。
築年数や屋根の種類に応じて、メンテナンスなどの対策を打っておきましょう。ちなみに屋根のメンテナンスは10年に1回くらいが目安です。
ストレート屋根の棟板金(むねばんきん)が変形・飛散する
棟板金(むねばんきん)とはストレート屋根などにみられる、屋根の頂上部分や四隅の角をカバーする板金のことです。
棟板金を固定している釘は経年劣化によって徐々に緩んでいき、板金が浮いた状態を作り出してしまいます。
その状態で強風や飛来物などのダメージを受けると、飛散してしまう可能性が大いにあります。また台風が来る前は大丈夫だったとしても、台風被害によって変形してしまうことも。
事前に、そして台風が去ったあとにしっかりチェックしておきましょう。
瓦屋根の漆喰(しっくい)が剥がれる
漆喰は、瓦屋根において棟瓦、丸瓦、のし瓦を固定している部分です。瓦と瓦の間を固定する土を守っており、健全な状態では白い漆喰が棟瓦の下部分などにみられるでしょう。
メンテナンスが不十分で経年劣化が進んでいると、強風で剥がれてしまいます。
露出した土の部分から水が染み込んでいくなどの症状が考えられるため、瓦屋根の家では要チェックポイントです。
屋根本体が飛んでしまう
棟板金や瓦などの一部分だけが飛んでしまうケースだけでなく、屋根本体がまるごと吹き飛んでしまうこともあります。
台風の飛来物によって窓が割れたとき、室内に入り込んだ強風や気圧の影響で、内部から屋根を押し上げてしまい屋根が飛んでしまうのです。
軒天や雨どいなどの部分が破損する
軒天とは、外壁からはみ出した屋根部分の裏側(天井)に当たる部分。横殴りの強風によってダメージを受けることがあります。
また雨どいは、雨水を受け流して地面や下水へ流す道のような部分です。詰まったゴミや葉で排水が悪くなったり、緩んだボルトが外れたりして、破損する場合があります。
軒天も雨どいも見逃してしまいがちですが、これらが損傷すると雨漏りなどの重大な欠陥につながります。
雨漏り
普段の弱い雨では気にならなくても、台風の時に雨漏りがひどくなってしまうこともあります。
雨漏りをしてしまう場合には必ずどこかに原因があります。屋根の劣化部分、棟板金の隙間、外壁のひび割れ部分などなど。
雨漏りするときの浸水経路は非常に複雑な場合が多いうえ、跡になってしまったりカビが発生したりという事態にもつながりかねません。
普段から、雨漏りにつながりやすい屋根や外壁、雨どいなどの場所を定期的にチェック・メンテナンスをすることが重要です。
以下の関連記事では、雨漏りの修理にかかる費用相場を場所別で紹介しています。修理業者の選び方についても解説しているので、参考にしてみてください。
二次被害
台風によって屋根などが破損すると、思わぬ二次被害を生んでしまうことがあります。
破損した部分が飛来して外壁や窓などを損傷してしまったり、瓦などが落ちて人や車にぶつかってしまったり……。
自宅が被害を受けないように窓ガラスを補強しておくなどの対策も大事ですが、自宅が破損することによって他人に与えるかもしれない二次被害についても十分に考慮しておきましょう。
台風被害を受けないための屋根チェックポイント
台風被害を受けやすい屋根の特徴
飛来物などによって屋根が損傷を受ける被害は、新築でも起こり得ることです。しかしメンテナンス不足など、自分で気を付けなくてはいけない点はしっかり確認しておきましょう。
- 築年数が30年以上
- メンテナンス不足
上記のような場合にはとくに注意が必要です。台風によって屋根が大きくめくれてしまったり、雨漏りしたりしやすい物件は、築年数が30年以上である割合が高いようです。
とはいえ「30年」はあくまで目安なので注意しましょう。少なくとも築20年くらいの古くなり始めたころから、台風による被害件数が増えるターニングポイントだと自覚し、日ごろから屋根や外壁のチェックをしておくのが吉です。
また台風被害を受ける物件の特徴として、やはりメンテナンス不足も挙げられます。一般的には、屋根は10年に1回程度のメンテナンスが必要とされています。
棟板金が浮いていたり、瓦に隙間が空いていたりしたときには、きちんとメンテナンスを行っておきましょう。
屋根の状態チェックポイント
屋根や家屋が劣化していると台風被害にあいやすくなりますが、特に注意すべきは以下のような状態です。
- 築年数が20~30年を超えている
- 前回のメンテナンスから10年以上たっている
- 屋根材のズレや反り
- 屋根材のひび
- 屋根表面のコケや色あせ
- (とくに金属屋根の)錆び
- (瓦屋根の)漆喰が剥がれ土が見えている
- 釘やフックの緩み、欠如
- 雨どいの詰まり
こうした屋根材の異常は目視で確認できる異常もありますが、屋根に上らないと確認できない異常も多くあります。
日ごろあまり気にしない部分だからこそ、定期的なメンテナンスが必要です。とくに台風前にはきちんと修繕しておきましょう。
瓦屋根は特に注意
屋根材の中でも、瓦は特に注意が必要です。
他の屋根材と違い、瓦は桟木(さんぎ)という角材にひっかけてあるだけなので、非常に外れやすくなっています。
しかも瓦は金属板やスレートより重量があるため台風で飛んでしまった時の被害は甚大です。
- 瓦がずれている
- 瓦に隙間がある
- 瓦が割れている
こうした瓦の異常があると被害が大きくなりやすいので注意しなければなりません。
もし屋根が台風被害にあってしまったら
実際に屋根が台風被害にあってしまったらどうすべきでしょうか。いずれ修理を依頼するにしても、目の前の修理箇所をそのままにはしておけないですよね。
屋根の応急処置は自分でできる?
結論から言うと自分で屋根の応急処置をするのはおすすめできません。理由は大きく分けて2つ。
- 屋根の修理は危険性が高い
- 素人の処置ではすぐにはがれる
おもな応急処置の方法として、屋根の上からブルーシートをかけるなどがあります。
しかし慣れない高所での作業は非常に危険なうえ、素人にはうまくブルーシート等をかけるのは難しく、すぐにはがれます。うまく持っても1ヶ月でしょう。
ブルーシートなどがはがれてしまった場合、近所の家に飛んでしまいトラブルになることが考えられます。また電線に引っかかると停電になってしまうおそれも。
台風などの大規模災害が起こった後は、屋根専門の修理職人に依頼するのがベストでしょう。
屋根専門の修理職人に依頼できない場合は、緊急時は自治体職員や消防団、ボランティアが応急処置をしてくれるケースもあります。
雨漏りしたときは?
自分で屋根自体の応急処置はできないとはいっても、台風による大きな被害状況を放っておくわけにもいきませんよね。
とくに業者を待っているうちに、雨漏りがひどいときには居ても立っても居られません。そこで雨漏りの被害をある程度抑える対処法を紹介します。
1.落ちてくる水滴をバケツなどで受け止める
天井などから水滴が落ちてくる場合には、まずバケツなどで受け止めましょう。水分に弱い床や家具を守るためです。
心配であれば、バケツの中に雑巾などを敷いてはねないようにしたり、ブルーシートを広げた上にバケツを置きましょう。
2.窓やサッシを確認
また窓やサッシ部分から雨が侵入してくることもあります。そのときにもまずは雑巾やペット用のトイレシートなど、吸水力の高いものを敷いて雨水を受け止めることを考えましょう。カーテンなどを外しておくとより安心です。
3.手が届く範囲ならブルーシートを張る
屋根にブルーシートを張ることはおすすめできませんが、雨漏りしている部分が1階の外壁や窓などであれば、ブルーシートを張ることはおすすめです。
手の届く範囲であることを確認したうえで、安全に注意しながら対処しましょう。ブルーシートが無い場合は、ゴミ袋などで代用できます。
業者に応急処置を依頼する際の費用相場
業者に応急処置を依頼した時の費用相場は3~10万円です。具体的な費用相場は以下の通り。
板金修理 | 3~4万円 |
屋根をブルーシートで覆う作業 | 5~6万円 |
応急処置はあくまで一時的な手段のため、落ち着いたらきちんと点検・補修してもらう方がよいでしょう。
台風被害にあった屋根は保険金・補助金が下りる可能性も
台風被害で壊れた屋根の修理費用は火災保険でまかなえる可能性が高いです。
「火災」保険と名前が付いていますが、火災以外にも家のトラブル全般を扱っている保険なのです。
屋根修理業者の見積もり書と被災写真が必要なので、屋根修理業者の見積もりを探してから保険会社に確認するとスムーズです。
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台風などの大規模災害時は助成金や補助金、融資や税金の納税猶予などの支援策が自治体から受けられる場合があります。
3年以内の被害であれば遡って適用できる可能性もあります。自治体のホームページなどをチェックしましょう。
修理を請け負ってくれるのはどの業者?
屋根の修理は屋根専門の修理業者に依頼するのがベストです。大きく分けて瓦屋根専門の業者とそれ以外の業者が存在します。
瓦屋根は瓦葺(かわらぶき)工事会社に
瓦屋根の修理を専門とする業者は瓦葺(かわらぶき)工事会社です。瓦葺をする職人を瓦葺工(かわらぶきこう)と呼びます。
瓦は焼き物のため、ひとつひとつ大きさや形が微妙に異なり、専門の職人でないとまともな施工はできません。
伝統的な瓦屋根が台風被害を受けた場合はまず瓦葺工事会社を探しましょう。瓦葺工事会社かを見極めるには、社名に「瓦」が入っているかが1つの目安になります。
なお瓦葺工事会社は「全日本瓦工事業連盟」に加盟していることが多いのでこちらのサイトから調べるのも手かもしれません。
瓦以外の屋根は板金(ばんきん)工事会社に
瓦以外の中でも、ガルバリウムやトタンなどの金属屋根を扱うのが板金(ばんきん)工事会社です。瓦屋根を金属屋根に葺き替える工事も板金工事会社の領分です。
板金工事会社かどうかを見極めるときは、社名に「板金」が入っているかが1つの目安となります。「日本建築板金組合」に所属しているかをチェックするのもよいでしょう。
近年は屋根素材としてコロニアル(スレート)やアスファルトシングルを使うメーカーや工務店も増えてきましたが、その場合は施工が簡単なため、瓦葺工と板金工のどちらでもかまいません。
大規模な台風の場合は自治体の紹介業者が安心
とくに大規模な台風が起こった場合は、自治体の紹介業者が安心です。悲しいことに大規模災害のあとには、需要の大きさに応じて悪徳業者が増えてしまいます。
その点、自治体が紹介する業者は一定のレベルをクリアした業者のため、信頼性が高いのも大きな魅力。
ただ自治体の紹介は「リフォーム業者」とひとくくりになっているケースが多く、屋根専門の修理業者が探しにくいのが難点です。
もちろん工務店や設計会社、リフォーム会社などに依頼しても屋根修理は行ってもらえますが、下請けに回すことになり費用が余計に発生します。
屋根工事の費用はいくら?
屋根工事の費用相場をざっくりと紹介します。被害の度合いや周囲の環境、高さなどによって費用は変わりますので参考までに。
瓦屋根の修理費用
工事内容 | 費用相場 |
瓦屋根の部分修理・葺き替え | 約1万~20万円(使用枚数による) |
瓦屋根全体の拭き直し | 約140万円 |
瓦屋根から瓦屋根への葺き替え | 約280万円 |
当たり前ですが、部分修理よりも全面的な葺き替え(ふきかえ/既存の屋根を取っ払って、張り替えること)の方が高額です。
瓦が半分以上飛んでしまった場合は全面的な葺き替えをするしかありませんが、瓦が数枚飛んだり一部だけなくなってしまったりした場合は部分修理で問題ありません。
金属屋根の修理費用
工事内容 | 費用相場 |
金属屋根の葺き替え | 約130万円 |
金属屋根の棟板金の交換 | 約20万円 |
金属屋根は部分修理があまりおすすめできません。
屋根の取り付け方にもよりますが、金属屋根の性質上、部分的に修理しようとすると全面的に屋根を取り外さねばならないケースが多いためです。
とくにトタン屋根は非常に錆びに弱く、穴などの欠陥が無い部分もほとんどがかなり古くなっていることが多く、全面張り替えしたほうがよい可能性が高いです。
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今回は、台風被害で屋根が損傷したときの対処法や、事前のメンテナンスなどについて紹介してきました。
屋根は一般的なメンテナンス時期が10年ほどでおとずれるため、台風の前後かどうかにかかわらず、定期的に点検・メンテナンスをすることが大事です。
家の築年数が20~30年を超えていたり、10年以上メンテナンスをさぼっていたりしている方は、まず屋根の修理業者に相談してみましょう。
雨漏りなど屋根のトラブルは、突然発生し、気づいたときに住まい全体の耐久性や価値を低くする原因になってしまいます。信頼できる専門業者に依頼して、住まいを長持ちさせましょう。
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