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2022年10月厚生年金の加入条件が拡大~パート・アルバイトは雇用契約を確認

最終更新日: 2021年09月09日

社会保険制度の一つである年金保険。その中にある「厚生年金保険」は会社員や公務員等の人が加入して将来の生活保障の手段の一つとしてとても重要な役割を担っています。

この厚生年金保険ですが、働き方によって加入する条件に制限があり、その制限のために働きづらい社会になっていると言われています。しかし、最近になってパート、アルバイトなど短時間労働者の人も厚生年金保険に加入できる法改正も行われ、将来的な生活保障が受けられる働きやすい社会にするような動きが出てきています。

今回は、厚生年金の制度がどんなものか、厚生年金に加入するメリット、加入手続きなどについて解説していきます。

2022年10月より、厚生年金の加入条件が変更

令和4年10月より、厚生年金の加入条件が変更
2022年10月より、厚生年金の加入条件が変更

2022年年10月と2024年10月に厚生年金保険の加入拡大に関する法改正が施行され、パート、アルバイトなど短時間労働者に対する厚生年金保険・健康保険の加入要件がさらに拡大されることになりました。

ここからは、2022年10月に法改正される加入条件を中心に見ていくことにします。

厚生年金・健康保険の加入条件が拡大

国は社会保険制度における「格差」を是正するため、2016年10月から適用範囲を拡大してきました。しかし、短時間労働者の厚生年金保険加入による将来的な所得保障、働きたい人が働きやすくするという社会的な要請により、短時間労働者の厚生年金保険・健康保険の適用がさらに拡大されることになりました。今後の加入条件の拡大の内容については下記の要件早見表を確認してください。

パート、アルバイト、短期労働者の条件が変更

2022年10月から加入が必要になるパート、アルバイトなどの短時間労働者の条件が、これまでの「雇用期間が1年以上見込まれること」から、通常の被保険者と同じ「雇用期間が2か月を超えて使用されることが見込まれること」に拡大されます。

この変更により、会社は新たに社会保険の被保険者になる労働者を正確に把握し、当該者に新たに社会保険の被保険者になることを説明しなければなりません。

会社の加入条件も見直される

また、同じ2022年10月から、加入が必要になる対象事業所の条件も「被保険者の総数が常時500人を超える事業所」から「被保険者の総数が常時100人を超える事業所」へと拡大されます。

これにより「特定適用事業所」の要件も上記に変更になります。

そもそも厚生年金とは?社会保険制度についておさらい

厚生年金の加入条件が変更
社会保険制度について

厚生年金とは、社会保険制度の一つで、会社員や公務員など組織で働く人たちが加入する公的年金制度になります。

ここでは、厚生年金とはどのような制度なのか、社会保険制度について再確認してみましょう。

社会保険制度とは?

社会保険制度には、広い意味での社会保険(これを「広義の社会保険」といいます。)として、年金保険、医療保険、介護保険、雇用保険、労災保険の5つがあります。その中でも、年金保険、医療保険、介護保険の3つが狭い意味での社会保険(これを「狭義の社会保険」といいます。)と呼ばれています。

厚生年金と国民年金について

公的年金は二階建ての年金制度と言われており、日本国内に居住する20歳以上の人全員が加入する「国民年金(基礎年金)」という一階部分と、会社などに勤務する人が加入する「厚生年金保険」という二階部分の二階建てになっています。

この公的年金制度には3種類の被保険者区分があります。
まず、日本国内に住所がある20歳以上60歳未満の自営業者・農業者とその家族、学生、無職の人などを「第一号被保険者」といいます。
次に、会社員や公務員など厚生年金保険や共済組合の加入者を「第二号被保険者」といいます。
また、第二号被保険者に生計を維持されている20歳以上60歳未満の配偶者を「第三号被保険者」といいます。

個人事業主などの自営業者は第一号被保険者、専業主婦や社会保険の加入要件を満たさない働き方をしている主婦は第三号被保険者にあたります。

厚生年金に加入するメリット

厚生年金に加入するメリット
厚生年金に加入するメリット

厚生年金保険は、被保険者が高齢になったときの生活を支えるための老齢年金、病気や怪我で障害の状態になったときの障害年金、亡くなったときに残った遺族に支給される遺族年金など、年金や一時金の支給を行うことを目的としています。

ここでは、厚生年金保険に加入するメリットについて見ていきます。

年金の3つのメリット

メリットとして、まずあげられるのは、納付する保険料が半分で済む点です。国民年金の保険料は全額自己負担ですが、厚生年金保険料は労使折半ですので、会社に勤務している間は保険料を会社が半額負担してくれます。

2つ目にあげられるメリットは、高齢になったときに受けることができる年金額が増えることです。厚生年金保険料には国民年金の保険料も含まれているため、国民年金だけに加入している第一号被保険者よりも老後に受けることができる老齢年金の金額が増えます。

3つ目のメリットとしては、障害年金の支給適用範囲が広いことです。病気や怪我で障害の状態になったときの障害年金は、国民年金の場合、障害基礎年金の支給対象者は障害等級1級、2級だけですが、厚生年金保険の場合、1級、2級に加えて3級でも障害厚生年金が支給されます。また、3級までに該当しない場合でも、一時金として障害手当金が支給される場合もあり、国民年金だけの場合よりも手厚い保障があります。

医療保険が充実

厚生年金保険に加入することにより、同時に健康保険にも加入することになりますので、配偶者の扶養で働いていた時には受けることができなかった医療保障が受けられるようになります。

例えば、被保険者が業務外の病気や怪我の療養のために会社を休み、その間の給与が得られなかったときに生活保障として給付を請求できる「傷病手当金」や、出産のために会社を休み、その間の給与が得られなかったときに請求できる「出産手当金」などが該当します。

働く時間を制限することがなくなる

これまでは、被扶養配偶者の年収が130万円を超えると、配偶者の扶養から外れてしまい、国民年金や国民健康保険料の負担が新たに発生しましたが、保障の内容には何も変化はありませんでした。

しかし、今回の法改正によって、年収106万円(月額8.8万円)を超える等の各種の要件を満たした場合には、厚生年金保険・健康保険に加入し社会保険料の負担が新たに発生するものの、その分、将来受けられる年金が増えるなど、受けることができる保障が充実しますので、働く時間を制限する必要がなくなるメリットがでてきました。

106万円と130万円で変わること

厚生年金の加入条件
106万円と130万円で変わること

社会保険に加入している人の配偶者がパート等による収入が年間で130万円以上正社員が501人以上の企業で働いている人は106万円以上)になると、配偶者の扶養から外れて自分で社会保険に加入しなくてはならなくなります。

ここでは、配偶者の扶養から外れてしまうことによる影響についてみていきます。

106万円で社会保険加入が適用される条件

2016年10月に社会保険の適用範囲が拡大されたことにより、下記の条件を全て満たした場合には配偶者の扶養から外れて社会保険への加入が必要になりました。

・正社員が501人以上の企業
・所定労働時間が週20時間以上
・雇用期間が1年以上
・収入が月88,000円以上
・学生でない

社会保険の加入により、自身の給与の中から社会保険料を支払うことになるため、手取り額が減ってしまうところはデメリットと言えるでしょう。

2022年10月からは正社員数が101人以上の企業に勤めている場合は社会保険の加入条件が変わりますので、確認が必要となります。

130万円で扶養控除から外れる

年収が130万円を超えた場合は、配偶者の社会保険の扶養から外れることになります。健康保険はお住いの市区町村の国民健康保険か、勤務先の健康保険(加入要件を満たす場合)、年金も国民年金の保険料を支払うか、勤務先の厚生年金に加入することになります。

夫の年収も変わる

妻のパート収入の増加により夫の扶養から外れた場合、夫への影響はどのくらいあるのでしょうか。

夫が支払う社会保険料には変化はありませんが、妻が扶養から外れることによって税金の優遇が減りますから納付する税金が増えます。また、会社によっては、妻を扶養にしている時には支給されていた配偶者手当が支給されなくなったりして夫の収入が少なくなる場合もでてきます。

加入手続きについて

厚生年金保険の加入手続き
厚生年金保険の加入手続き

これまで、厚生年金保険とはどんな制度か?加入するメリットは何か?などについてみてきました。ここからは、厚生年金保険の加入手続きについて確認していきます。

本人が必要な手続き

通常、加入手続きは会社が行ってくれますので書類を作成する必要はありませんが、会社は基礎年金番号やマイナンバーなど、加入に必要な個人情報がないと手続きができませんので、必要な個人情報を会社に提出する必要があります。

加入の際には会社から必要な情報の提出依頼がありますので、依頼のあった書類を準備しましょう。

事業所が必要な手続き

加入要件を満たす事業所が新規に従業員を雇用することになった場合には、「新規適用届」を日本年金機構に提出します。

すでに適用事業所になっている場合には、従業員を雇用し、厚生年金に加入するときに「被保険者資格取得届」を日本年金機構に提出します。

個人事業主と厚生年金

個人事業主と厚生年金
個人事業主は国民年金に加入する

個人事業主は、事業所としては加入要件を満たした場合には雇用する労働者を厚生年金保険に加入させなければなりませんが、個人事業主自身は加入することができないことはご存じの方も多いでしょう。

ここでは、個人事業主と年金保険の関係性や加入条件など、また、厚生年金保険に加入できない個人事業主には、将来に備えるためにどのような制度が利用できるのかについてみていきます。

個人事業主は国民年金に加入する

個人事業主は、厚生年金保険の加入要件に該当する事業所になった場合には、雇用する労働者を厚生年金保険に加入させなければいけませんが、個人事業主自身は厚生年金保険に加入することはできず、国民年金に加入することになります。

経営している組織を法人化しない限り、個人事業主自身が厚生年金保険に加入することはできないのです。

5人以上の雇用で厚生年金に加入が必要

個人事業主が労働者を雇用することになった場合、法律に定められた16の適用業種に該当し、常時5人以上の労働者を雇用する場合には社会保険(厚生年金保険と健康保険)への加入が必要になります。

上記16の適用業種は、鉱業、建設業、製造業、電気ガス事業、情報通信業、運輸・郵便業、小売・卸売業、金融・保険業、不動産業、学術研究業、広告業、教育・学習支援業などです。

パートやアルバイトの場合でも、通常の労働者のと比較して4分の3以上の労働日ならびに労働時間で働いている人は社会保険の加入対象となりますのでご注意ください。

個人事業主が加入できる年金制度

個人事業主は、会社員が入る厚生年金保険には加入できず、国民年金であることはよく知られています。では、個人事業主は国民年金だけでしか将来に備えられないのかと言うとそうではありません。

まず、国民年金の保険料を納付している時に追加で納付することにより将来の年金額を増やすことができる「付加年金」や「国民年金基金」があります。

その他にも、基本的に20歳以上60歳未満の全ての人が加入できる「iDeCo(個人型確定拠出年金)」、小規模企業の個人事業主が事業をやめた時のための生活資金などのために積み立てる経営者の退職金制度とも言える「小規模企業共済」などが制度としてあります。

税制上のメリットなどもありますので、これらを組み合わせて将来のための生活設計を立てていきましょう。

まとめ)厚生年金の手続きは社労士に相談しよう

厚生年金保険の適用拡大により、会社は新たに対象になる労働者を正確に把握して加入手続きを進めていかないといけないことになります。

この手続きは、労働者の将来の保障に関するとても大切な手続きになります。

手続きの間違いを起こさないためにも、社会保険の専門家である社会保険労務士に依頼して、対象者を正確に把握して手続きを進めてもらうのが安心です。

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