被保険者整理番号とは社会保険の手続きで使う番号です。健康保険と厚生年金保険に被保険者整理番号があり、被保険者整理番号と似た名称の番号として雇用保険に被保険者番号があります。
3つの番号は混同しやすいので、それぞれの番号が必要になる手続きや確認方法など違いを理解しておくようにしましょう。この記事では被保険者整理番号とは何か、わかりやすく解説していきます。
健康保険の被保険者整理番号とは?
健康保険の被保険者整理番号とは、健康保険の被保険者を識別するために用いる番号です。健康保険に関する手続きを行う際に使います。
人事労務担当者は、健康保険の被保険者整理番号がどのように従業員に割り振られるのかや被保険者整理番号が必要になる手続きとは何か、正しく理解しておくようにしましょう。
いつ?どのように取得する番号?
健康保険の被保険者整理番号とは、従業員が会社に雇われて健康保険に加入するときに割り振られる番号です。一般的に従業員を雇用した順に割り振るため、例えば「5」まで割り振っている場合は次に従業員が入社したときに「6」を割り振ります。
退職者が出た場合でも退職者に割り振られていた番号を次に入社した社員に割り振ることはしません。被扶養者がいる場合は扶養者と同じ番号を使います。
確認方法は?
誰に何番の被保険者整理番号を割り振ったのか、台帳等を作成していればすぐに確認できますが、番号が分からない場合でも従業員の健康保険被保険者証を見れば確認できます。健康保険被保険者証の「番号」欄に記載されているのが被保険者整理番号です。
健康保険の被保険者整理番号が必要になるのはどんなとき?
健康保険の被保険者整理番号が必要になるときとは、例えば次の手続きを行う場合です。
- 健康保険被保険者証の再交付手続き:被保険者証再交付申請書
- 傷病手当金の請求手続き:傷病手当金支給申請書
- 出産手当金の請求手続き:出産手当金支給申請書
- 高額療養費の請求手続き:高額療養費支給申請書
- 立て替えた医療費の払戻し手続き:療養費支給申請書
- 被扶養者に異動があったときの手続き:被扶養者(異動)届
厚生年金の被保険者整理番号とは?
厚生年金保険の被保険者整理番号とは、厚生年金保険の被保険者を識別するために用いる番号です。厚生年金保険に関する手続きを行う際に使います。
被保険者整理番号の割り振り方や番号が必要になる手続きとは何かを理解し、基礎年金番号との違いについても押さえるようにしましょう。
いつ?どのように取得する番号?
厚生年金保険の被保険者整理番号は、従業員が会社に雇われて厚生年金保険に加入するときに割り振られます。一般的に従業員を雇用した順に割り振る点や、退職者が出てもその人の番号を次に入社した社員に割り振らない点は、健康保険の被保険者整理番号と同じです。
健康保険と厚生年金保険で被保険者整理番号を同じにする必要はありませんが、同じにしたほうが分かりやすく管理もしやすいため、同じ番号を採番するケースが多く見られます。
健康保険の場合は、被保険者証を見れば従業員でも被保険者整理番号を確認できますが、厚生年金保険の被保険者整理番号に関しては、一般的に従業員本人は番号を知りません。
そのため「厚生年金保険の被保険者整理番号はどこを見れば分かりますか?」と従業員から照会があった場合は、保管している被保険者資格取得届の控えを確認して番号を伝えるようにしましょう。
基礎年金番号ではないので、注意!
厚生年金保険の被保険者整理番号は日本年金機構が割り振る基礎年金番号とは異なります。どちらも年金手続きに関連する番号ですが、両者は混同しやすいので注意が必要です。
基礎年金番号は一度割り振られると同じ番号を使い続けるため、別の会社に転職しても番号が変わることはありません。一方で厚生年金保険の被保険者整理番号は企業ごとに割り振るため、転職して他の企業に移れば原則として番号が変わります。
厚生年金の被保険者整理番号が必要になるのはどんなとき?
厚生年金保険の被保険者整理番号が必要になるときとは、例えば次の手続きを行う場合です。
- 従業員の入社手続き:被保険者資格取得届
- 従業員の退職手続き:被保険者資格喪失届
- 被保険者の氏名や住所変更手続き:被保険者氏名変更届・被保険者住所変更届
- 被扶養者に異動があったときの手続き:被扶養者(異動)届
雇用保険の被保険者番号とは?
雇用保険の被保険者番号とは、雇用保険の被保険者を識別するために用いる番号で、主に従業員が退職後の手続きで使います。名称が似ているため混同しがちですが、健康保険や厚生年金保険の被保険者整理番号とは異なる番号です。
従業員が退職後に「雇用保険の被保険者番号が分からないため教えてほしい」と照会してくる場合があるので、雇用保険の被保険者番号について正しく理解しておくようにしましょう。
いつ?どのように取得する番号?
雇用保険の被保険者番号は、従業員が会社に雇われて雇用保険に加入するときに割り振られます。一度割り振られると原則として同じ番号を使い続けるため、転職などで勤務先が変わっても番号は変わりません。
ただし退職して雇用保険の適用を受けない状態が7年以上続くとその番号は抹消されるため、7年以上経過してから再就職して雇用保険の適用を受ける場合は、改めて番号が割り振られます。
確認方法は?
雇用保険の被保険者番号は雇用保険被保険者証を見れば確認できます。雇用保険被保険者証とは、従業員を雇用したときに会社が雇用保険の加入手続きを行うと交付される書類です。
被保険者証は従業員の在職中には会社が保管・管理するケースが多く、紛失を防ぐ目的から従業員の在職中は一般的に本人には渡しません。通常は退職するときに従業員に渡し、必要な場合には退職後に従業員が被保険者番号を使って手続きを行います。
ただ退職後に従業員が被保険者証を紛失した場合は、被保険者番号が分からずハローワークでの手続きなどができません。そのため退職した元従業員から「雇用保険の被保険者番号を教えてほしい」と問い合わせが来ることがあります。
この場合の対応方法ですが、退職時に従業員に渡す離職票にも雇用保険の被保険者番号が記載されているので、まずは離職票を確認するように伝えましょう。ハローワークで手続きをすれば被保険者証を再発行できる旨も案内してください。
また台帳等を作成していて退職済の元従業員の番号が分かる場合は、被保険者番号を確認して伝えましょう。
雇用保険の被保険者番号が必要になるのはどんなとき?
雇用保険の被保険者番号が必要になるときとは、例えば次の手続きを行う場合です。
- 従業員が退職後に教育訓練給付金を受給する場合:雇用保険被保険者証が必要
- 従業員が転職先企業で雇用保険の加入手続きを行う場合:雇用保険被保険者番号が必要
退職した人がハローワークで教育訓練給付金の受給手続きをする際には雇用保険被保険者証の添付が必要です。また転職する場合は転職先企業で雇用保険に入る際に被保険者番号が必要になります。
マイナンバーの違いと使い分け方
社会保障で使われる公的な番号としては被保険者整理番号のほかにマイナンバーもありますが、マイナンバーは被保険者整理番号とは異なる番号です。マイナンバーが何なのか正しく理解して、被保険者整理番号と混同しないようにしましょう。
マイナンバーとは?
マイナンバーとは、日本に住民票があるすべての人に割り振られている12桁の番号です。外国人も含めて1人に対して1つのマイナンバーが割り振られ、原則として同じ番号を使い続けます。
社会保障・税・災害対策の3分野において、複数の機関に存在する個人の情報が同一人の情報であることを確認できるようにして、情報の共有や個人の特定、事務処理をスムーズにできるようにマイナンバー制度が導入されました。
マイナンバー制度の導入以降は、一定の手続きをする際にマイナンバーの提示や申請書類へのマイナンバーの記入が義務付けられ、現在では様々な行政手続きでマイナンバーが使われるようになっています。
マイナンバーが使われるようになった手続き
社会保険に関する手続きのうち、例えば次の手続きを行うときにはマイナンバーの記入が必要になります。
- 雇用保険の被保険者資格に関する手続き:資格取得届・資格喪失届
- 健康保険の給付申請手続き:育児休業給付金支給申請書・高年齢者雇用継続給付金申請書
それぞれの番号を正しく理解し管理することが大切
人事労務担当者が普段の業務で目にする番号には、健康保険と厚生年金保険の被保険者整理番号や雇用保険の被保険者番号、マイナンバーなど、様々な番号があります。
社会保険関係の手続きをする際に申請書に間違えずに記入し、従業員から照会があったときに適切に回答できるよう、それぞれの番号について正しく理解しておくことが大切です。
監修社労士のコメント
ドラフト労務管理事務所 - 大阪府大阪市東成区中道
まとめ)社会保険の手続きは社労士に相談しよう
被保険者整理番号とは健康保険と厚生年金保険の手続きで使う番号で、社会保険の手続きをする際に使います。また被保険者整理番号と似た名称の番号である被保険者番号は雇用保険で使われる番号で、退職した従業員が転職先で雇用保険の加入手続きをする際などに使う番号です。
社会保険の手続きでは専門的な知識が必要になるので、必要な手続きをミスなく終えるためにも社労士に相談しましょう。社会保険の専門家である社労士に手続きを任せれば、自分で申請書類を作成したり提出したりする手間がかからず手続きをスムーズに終えられます。
この記事を監修した社労士
ドラフト労務管理事務所 - 大阪府大阪市東成区中道