チェーンソーを安全かつ効果的に使用するためには、刃を研いでメンテナンスする「目立て」が必要です。とはいえ「目立てって何?」「目立ての方法がイマイチわからない」といった方も多いのではないでしょうか。
この記事ではそんな方のために、目立ての基本手順からおすすめアイテムまで徹底紹介します。正しい目立てで、チェーンソーの鋭い切れ味を保ちましょう。
チェーンソーを使うなら目立ては必須
チェーンソーを効果的に使用するためには、目立ては必須作業です。正しい目立てで、チェーンソーを安全かつ長期間にわたって使えるようにしましょう。
そもそも目立てとは
目立てとは、消耗してすり減った刃を研ぐメンテナンスのことです。チェーンソーには、チェーン部分に刃が付いています。この刃部分は、ずっと同じ切れ味をキープできるわけではありません。使用していくうちに切れ味は鈍くなっていきます。
もちろん、チェーンが経年劣化したら新品に買い換えるという方法もあります。しかし、当然余計なコストがかかってしまうでしょう。そんなとき、チェーンの目立てをすることで切れ味が復活し、買い換えによる出費を抑えられます。
チェーンソーにはバッテリーで動くタイプや、コンセントを挿してそこからの電気で動くタイプ、ガソリンで動くタイプなどいくつかの種類があります。しかしいずれの場合も、この目立てはスムーズに作業する上で大事な工程です。
目立てをするタイミングは?
切れ味が悪くなったと感じたら、目立てを行うタイミングです。目安としては、次のようなタイミングで目立てをするとよいでしょう。
- チェーンが切り口に挟まってしまったとき
- 切れ方が曲がっているとき
- 切っている最中に切り口から煙が出るとき
エンジンタイプのチェーンソーならば、オイルを補給するたびに一緒に行います。またバッテリーで動くタイプなら充電前後などに行えば、快適な作業環境を整えられるでしょう。
チェーンソーの目立てに必要な道具
目立てを行うときには、さまざまな道具が必要です。目立て用のヤスリやデプスゲージジョインターと呼ばれるアイテム、ほかにもあると役立つ道具がいくつかあります。
適切なサイズの目立てヤスリ
目立てにはヤスリが必要で、チェーンソーを研ぐための丸ヤスリと、デプスゲージ調整のための平ヤスリの2種類を使います。デプスゲージとは、刃が深く切りすぎないためのパーツです。
丸ヤスリについては、チェーンソーごとに推奨されているサイズがあるため、取扱説明書を読み、どの型番・サイズの丸ヤスリを使えばよいのか確認しましょう。
目立てゲージやデプスゲージジョインター
目立てゲージは、ヤスリを使いやすくするためのサポートをしてくれる道具です。目立てゲージに沿わせる形でヤスリを使うと、角度のミスが起こりにくくなります。
また、デプスゲージジョインターという道具も必要です。デプスゲージを調整するための道具で、平ヤスリと併せて使います。チェーンに取り付けて、デプスゲージジョインターからはみ出た箇所に平ヤスリを使います。
この2つの道具が一緒になっている製品もあるため、道具をあれこれ買い足すのが手間だという方はそちらも選択肢に入れてみてはいかがでしょうか。
その他に用意しておきたいもの
チェーンソーには刃があるため、作業時に素手の状態だと危険です。防刃性のあるグローブを用意しておくと、安心して作業に望めるでしょう。安いものであれば1,000円前後で購入できます。
作業時に便利な道具として、パーツクリーナーもあります。油分を取り除いてくれるアイテムで、チェーンを使用していくうちに付着する木くずなどを取り除くことが可能です。500~1,000円前後で手に入ります。
ほかには、ガイドバーと呼ばれる部分を固定するための目立て専用クランプ、作業時に安定させるための作業台などもあると、より安定した環境で目立てが行えるのでおすすめです。
目立ての基本手順を学ぼう
目立てはいくつか手順があり、正しく行うことでチェーンソーを長持ちさせられます。セッティングや研磨作業、デプスゲージ調整などの工程がありますが、それらの作業をどんな順番でどう行えばよいのか説明していきます。
正しい手順の目立てで、チェーンソーの切れ味を復活させましょう。
チェーンソーの準備やセッティング
まずは、チェーンソーの刃部分の掃除を行います。前回使ったときの木くずなどが付着していると、しっかり目立てを行えません。掃除しながら、破損箇所がないかなども確認しておきましょう。
掃除と点検が終わったら、専用クランプでチェーンソーを固定させます。なお目立てを行う際は、刃部分を強めに張りましょう。弱めに張ってしまうとヤスリがけの際、カッター部がぐらついてしまうためです。これで準備とセッティングは完了です。
カッターを一刃ずつ研いでいく
目立て作業時は研ぐ箇所が偏らないよう、満遍なく研いでいく必要があります。そのために、作業開始時に印を付けておきましょう。どこから研ぎ始めたかを分かりやすくしておくことで、同じ箇所を研ぐ失敗を避けられます。
次に研ぎ方ですが、チェーンの種類によってヤスリを入れる角度が異なります。ガイドバーに対して90度でヤスリがけするのが基本ですが、チェーンには「チゼル型」「セミチゼル型」「マイクロチゼル型」などの種類があるため、使用しているものがどの型かを確認し、取扱説明書に記載されてある角度に従いましょう。
ヤスリのかけ方としては、カッターの内側から外側へ、削るのは前にヤスリを動かすときだけです。前後にずっとヤスリをこするのはやめましょう。くすみがとれ、表面がきれいに磨かれたのが確認できれば大丈夫です。
デプスゲージの高さを調整する
丸ヤスリで削り終えたら平ヤスリに持ち替え、デプスゲージの高さを確認してから調整を行いましょう。
デプスゲージに調整ゲージをかぶせて、はみ出ている箇所があればヤスリをかけます。削る際は、デプスゲージの前の方にある角が丸くなるようにしましょう。間違って丸ヤスリのまま作業しないよう注意してください。
調整を終えたら、刃の部分をオイルに漬けて粉を落とします。パーツの消耗を早めないためにもしっかりと行いましょう。
適切な目立てを行わないとどうなる?
もしも目立てをやらなかったり、正しい方法で行わなかったりしたら、チェーンソーはどうなるでしょうか。切れ味が悪くなるだけでなく、ほかにもさまざまな問題が発生します。
切れ味が悪くなる
目立てを適切にしないと、刃の角度が正常な状態でなくなり、切れ味が悪くなります。作業効率が悪くなるだけでなく、強く刃を押し込まなければいけなくなるため、思わぬ怪我を招く恐れもあります。
角度が正常な状態でない、というのはバックスロープ型と呼ばれる形に刃が変形することです。ヤスリのサイズが合っていなかったり、ヤスリを高い位置でかけすぎたりが原因で起こる現象なので、使用するチェーンソーに合ったサイズのヤスリにするのが大切です。
キックバックが起こりやすい
刃の進みが通常とは逆側に跳ね返ってくることをキックバックといいます。このキックバック現象が起こりやすくなるのも、目立てを適切に行っていないことが原因で発生します。
チェーンソーが跳ね返ってくるため、作業している本人だけでなく、周囲にとっても危険です。フック型と呼ばれる形に刃がなってしまうと起こりやすくなります。ヤスリのサイズ違いや、低い位置でヤスリをかけすぎるとフック型になりやすいです。
対処方法としては、サイズの合うヤスリを使う、ガイドバーを使って目立てを正確に行うなどがあります。
曲がったり切り口に刃が挟まったりする
刃が曲がる、切り口に挟まるなども起きやすい症状です。カッターの長さが不揃いなときに起こりやすくなります。
不揃いになる理由としては、ヤスリがけする場所が均等ではない点が挙げられます。印を付けずに目立てを始めるとヤスリがけにずれが生じやすいため、最初に印を付けましょう。
既に不揃いな形になってしまっている場合は、カッターの中で短くなっている箇所を見つけ、そこに合わせるように目立てを行いましょう。
おすすめの目立て工具セット2選
目立てに必要なアイテムが一式揃っている、目立て工具セットも販売されています。その中から、おすすめのアイテムを2点、紹介していきます。
ハスクバーナ 目立てキット
ハスクバーナから発売されている、目立てキットです。ヤスリハンドル、コンビゲージ、丸ヤスリが2本、平ヤスリが1本入ったセットで、メンテナンスをこの一つでカバーしてくれます。
チェーンの規格に応じて、種類がいくつかあります。使っているチェーンソーの規格を確認してから購入するようにしましょう。
バローべ チェンソー用 目立てキット
バローベから発売されている、チェンソー用目立てキットです。ヤスリハンドル、ヤスリホルダー、丸ヤスリと平ヤスリ、デプスゲージジョインター、バークリーナーがまとめられています。
収納用の袋は丸めてコンパクトにできるため、持ち運びやすいのが特徴です。ヤスリの種類が2種類あるため、購入前にヤスリのサイズを確認しましょう。
自分でうまく目立てができないときは
目立てがうまくできない、目立てをきれいにできる自信がない、という場合には、自力ではなくほかの手段で目立てを行うやり方もあります。どんな方法か、説明していきましょう。
業者やホームセンターに依頼する
目立ては専門の業者に依頼することもできます。業者に頼む場合は、チェーンソーメーカー代理店、もしくは金物屋などへ依頼することになるでしょう。またはホームセンターでも目立てをやってくれる店があります。
専門の業者に目立てを依頼した際の料金は、1,000円前後が相場です。ただし、刃の数が多かったり、形状が特殊だったりした場合、2,000円ほどかかるケースもあります。
またホームセンターで目立てを行ってくれるかどうかは、店舗に確認をしておきましょう。ホームセンターに頼む場合の料金も、業者と同じで1,000〜2,000円のところが多いです。
便利な目立て機を使う
目立てのための道具として「目立て機」があります。こちらを使うことでヤスリの角度などが固定できるため、初心者でも楽に目立てが行えるはずです。
目立て機には手動タイプと電動タイプがあり、手動は片手用と両手用の2種類があります。片手用はコンパクトで価格も安価ですが、両手用より安定感に欠けます。両手用は安定性があり、本体が頑丈なのが特徴です。
電動タイプの目立て機はヤスリが電気で動くため、ヤスリを自分の手でかけるのが苦手な方向けです。ただし価格が手動より高く、コンセントがないと使えないデメリットはあります。
また、目立て機で使うヤスリにも種類があり、耐久性は低いものの研磨する力が強い「ダイヤモンド砥石」と、価格が高い代わりに耐久性・研磨する力が共に優れている「超硬ビット」があります。
おすすめの目立て機2選
目立て機はさまざまな商品が出ていて、いざ買おうとしても、どれを選べばよいか悩む人もいるでしょう。特におすすめの目立て機を二つ、紹介していきます。
オレゴン パワーシャープ スターターキット 14インチ用 541652
オレゴンの「パワーシャープ スターターキット」はパワーシャープ・チェーン、ガイドバー、砥石、シャープナーが一つになっているのが特徴です。
シャープナーをガイドバーに取り付け、そのまま硬い場所へ押しつけるだけで楽に目立てができます。
ニシガキ 刃研ぎ名人チェンソー プロ林業家仕様 N-823
ニシガキの「刃研ぎ名人チェンソー プロ林業家仕様」は軸付きダイヤモンド砥石、スパナ、替えのカーボンブラシ、25度角度調節ネジ・ワッシャ、デプスゲージガイドが揃った商品です。
ガイドを右側に押して、研磨したい箇所に砥石を当てれば、あとは適した角度で目立てを行ってくれます。角度調節ネジを使えば角度を変えることも可能です。
こまめな目立てで鋭い切れ味を保とう
目立てを行わないと、切れ味が悪くなったり、チェーンソーの部品が傷みやすくなったり、安全面でもキックバックで危険が及んだりします。
正しい目立てには道具を揃える・手順を覚えるなどが必要ですが、こまめに行うことで切れ味をキープできるでしょう。苦手な人や初心者は、業者に頼む、もしくは目立て機を使うのも手です。
目立てをこまめに行なって、チェーンソーの鋭い切れ味を保ちましょう。