庭木の剪定をするとき木を枯らさないために、あらかじめ用意しておきたいのが「癒合剤」です。
癒合剤の基礎的な知識や具体的な役割、利用シーンなどを網羅的に解説していきます。剪定後の利用におすすめの癒合剤も要チェックです。
剪定に使う「癒合剤」とは?
庭木などを剪定(せんてい)する際に使われる「癒合剤(ゆごうざい)」とは、どのようなアイテムなのでしょうか?癒合剤の基礎知識とともに、代用品として使えるものも紹介します。
木の切断面を保護するアイテム
庭木をはじめとする植物は剪定の際に、切り口が大きかったり木が弱っていたりして、表皮にダメージを受けてしまうケースが少なくありません。
しかし癒合剤を使うとダメージを治癒する植物細胞、「カルス」の形成が促されます。カルスは剪定時のダメージを軽減してくれるため、さまざまなトラブルの回避が可能になるのです。
一般的に癒合剤は木の切断面に塗るペースト状のタイプが主流で、殺菌成分が配合された酢酸ビニル系樹脂の接着材が基材になります。中には殺菌剤を含まないものもあるため、目的に応じて使い分けるとよいでしょう。
癒合材の代わりに使えるもの
癒合材と似たような性質を持ち、代用品として利用できるものには次のようなアイテムがあります。
- 木工用ボンド
- アルミホイル
- 墨汁
- 水性ペンキ
それぞれ癒合剤の代わりに使うメリットはありますが、弱点もあるため使用の際には注意しましょう。
木工用ボンドには癒合剤と同じく酢酸ビニルが含まれ、木の表面を保護するのに効果的です。しかし殺菌成分がない上に、水に弱く雨などで流れてしまう可能性があります。
アルミホイルは切断面の固定に利用できますが、すき間が生じたときに害虫が侵入する可能性もゼロではありません。
墨汁は皮膜形成の効果が期待できるニカワが含まれているものの、癒合剤ほどの効果は期待できないでしょう。水性ペンキにも切断面を保護する効果があります。ただ持続できる期間は短めです。
これらの弱点を踏まえると、大切な庭木の保護には癒合剤を使った方がよいでしょう。代用品はあくまでも癒合剤を購入するまでのつなぎと考えるのが無難です。
癒合剤の果たす役割とは
癒合剤が果たす役割とは具体的に何なのでしょうか?代表的な三つの効果について、深掘りしながら解説していきます。「外部から侵入するものから守る」「水分や養分をとどめる」「自己回復を促す」の三つがポイントです。
雨水や雑菌から木を守る
切り口から侵入した雨水は、木を傷つける原因の一つです。さらに傷口へ雑菌が付着してしまうと、病原菌が増殖して木全体が枯れてしまう危険性もゼロではありません。
癒合剤は植物細胞のカルスが形成されるまで、木の切り口を覆う「保護膜」の役割を果たしてくれます。
イメージとしては傷口に貼る絆創膏に近いかもしれません。かさぶたが形成されて切断面を保護できるようになるまで、外部から侵入してくる雨水や雑菌などから木を守るのです。
水分や養分の流出を防ぐ
木に切り口があると水がどんどん流出してしまうため、枝や葉の先まで水が行き渡らなくなる可能性があります。水と一緒に養分が流れ出てしまうのも、剪定後の切り口を放置するデメリットです。
これら水分や養分の不足は木全体が枯れてしまう原因の一つです。水を通しにくい性質を持つ酢酸ビニル系の癒合剤を使えば、切り口をふさいで水分や養分の流出を防ぐ効果を期待できます。
木の自己治癒を促進する
植物細胞カルスの役割は雑菌から木を守ったり、水分の流出を防いだりするだけではありません。木の傷口をふさぐなど自己治癒に関わる働きもあるのです。
カルスの形成を助ける癒合剤を使うと、剪定などで傷ついた木の回復が早くなる効果も期待できるでしょう。
剪定した庭木の回復が長引けば、それだけ枯れてしまうリスクも高くなります。大切な木を枯らさないようにするためにも、特に木が深刻なダメージを負っているときは癒合剤を使用するのがおすすめです。
癒合剤を使いたい場面
剪定時に癒合剤を使いたいのは具体的にどのような場面なのでしょうか?木がダメージを負いやすい状況をチェックして、癒合剤を使うタイミングの見極めに役立てましょう。
太い枝を剪定した後
枝が太い木を剪定すると切り口が大きくなるケースが多いため、切断面がなかなかふさがらずにダメージが大きくなります。雨水や雑菌の侵入・水分や養分の流出が多くなってしまうのも問題です。
この傾向は木の枝が太くなれば太くなるほど、顕著に表れます。太い枝を剪定する際には、できる限り癒合剤を用意してから作業を始めましょう。親指の太さを超えるような枝を切る場合は、癒合剤が必要という基準が一般的です。
菌に弱い樹木を剪定したとき
園芸用の樹木の中には他と比べて菌に弱く、こうやく病やてんぐ巣病・胴枯病(どうがれびょう)などの病気にかかりやすい種類のものがあります。
例えばサクラの木や果樹のなる木は特に菌に弱いため、他の樹木よりも剪定に注意が必要です。菌に弱い種類の樹木を剪定するときには、細い枝を切った後も癒合剤を使いましょう。
また樹木の生長が活発な時期に菌が侵入してしまうと、全体に病気がまん延する可能性があります。サクラの木であれば葉が落ちきった11月ごろの剪定がおすすめです。
癒合剤は切断面にまんべんなく塗る
癒合剤を使用するときは、ヘラなど平らな道具を使って少量を切断面に塗り付けます。塗り残しがあると、そこから菌や虫が侵入する可能性もあるため、切り口の角までまんべんなく塗りましょう。
癒合剤を塗ろうとしている切り口に樹液がしみ出しているときは、事前にきれいな布などで拭き取っておくと癒合剤を塗りやすくなります。
また切り口が大きいと1~2カ月が経過した時点で、ひび割れが発生するケースも少なくありません。表面が割れてきたら重ね塗りを行います。ただし商品によって使用方法が異なる可能性もあるため、事前の確認は必要です。
剪定後におすすめの癒合剤
癒合剤には多くの種類があります。剪定後のケアにはどの商品がよいのでしょうか?特徴の異なる3アイテムを紹介しますので、癒合剤に求める機能や使いやすさを考慮して自分に合う商品を選びましょう。
殺菌剤を含まない「富士商事 カルスメイト」
自然で目立ちにくいこげ茶色をしているため、切り口の見た目が気になる盆栽にもよく使われています。他の癒合剤と同じく塗り込む前の切断面にすでに虫がいる場合は、事前に駆除してから塗布しましょう。
ひび割れを防げる「キヨナール工房 新キヨナール」
緑色のペーストは粘り気が強く、切断面に塗り付けた後もしばらくは乾燥しません。湿り気がある状態ではひび割れを起こしにくく、木を傷つけるリスクを減らせます。盆栽をはじめとして木の美しい外観を保ちたい人には、特におすすめの癒合剤です。
病気予防に役立つ「住友化学園芸 トップジンMペースト」
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殺菌成分が含まれている癒合剤です。切断面を病気や菌から保護したい場合に、大きな効果を発揮します。菌に弱いサクラや果樹を育てている人には、特におすすめです。
剪定後の病気予防だけでなく、すでに感染してしまった木の回復にも役立ちます。病気になっている枝のみを切り落とし、傷口に塗っておけば全体に感染が広がるのを止められるのです。
ハケなどを使って何度でも塗り付けられる粘度の低さも、トップジンMペーストが持つ特徴の一つです。ただしチューブから液だれしやすいため注意しましょう。ペーストの色はオレンジと目立ちやすく、外観が気になる人には向いていないかもしれません。
癒合剤の特性を理解して正しく使おう
剪定後の木は傷口から雨や雑菌が侵入して病気になったり、水分や養分が流出したりと、枯れやすい状態になります。
枯れる原因から木の切断面を保護して、回復を早めるのが癒合剤の役割です。使い方は簡単で切り口にまんべんなく塗り付けます。特に枝が太い木や菌に弱い園芸用の木などを剪定した後は、癒合剤でケアしておくと安心でしょう。
癒合剤は商品によって性能や木の外観に与える影響などが異なるため、目的に合わせて最適な商品を選ぶことがポイントです。癒合剤の特性を理解してトラブルから木を守りましょう。
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癒合剤は庭木を健康に育てる為に必要な手順です。プロに依頼すれば、美しく剪定してくれるだけでなく、雨や雑菌の被害からも守ってくれますよ。
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