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【税理士監修】会社設立時や事業年度開始時の役員報酬の決め方は?

最終更新日: 2020年01月16日

会社を設立したときに頭を悩ませる事柄として、役員報酬の決め方が挙げられます。役員報酬の決め方によっては節税ができることもありますので、金額はしっかり考えて決めましょう。本記事では会社設立時や事業年度開始時の役員報酬の決め方について説明します。

この記事を監修した税理士

多田紘大税理士事務所 – 兵庫県

役員報酬とは?

役員報酬に悩む男性
役員報酬とは

役員報酬を「社長をはじめとした役員がもらえる給与」としか認識していない人も多いかもしれません。しかし、本当にその考え方は正しいのでしょうか?役員報酬の決め方について考える前に、そもそも役員報酬とはどういうものかを知っておきましょう。

役員=経営陣に支払われる給与!

役員報酬とは、会社の役員に対して支給される報酬のことです。役員報酬は役員が貰う給与とも言えますが、厳密には給与とは性質が異なります。給与は労働の対価ですが、役員報酬は労働の対価ではなく、会社の利益の配当のような性質を持つものです。

なお、役員報酬を受け取った役員個人が所得税の申告・納税をする際には、給与所得として申告します。

役員とは?

役員報酬が支払われる会社の役員とは、代表取締役・取締役・監査役などのいわゆる経営陣です。株式会社の役員は法務局で登記されており、登記簿謄本(登記事項証明書)で確認できます。

ただし登記されている役員以外であっても、実質的な決裁権を持っている人に役員報酬を払うことは可能です。たとえば、執行役員は登記されている役員ではありませんが、役員報酬の対象になります。

損金算入できる金額が決まっている

会社が払う税金や社会保険料は、会社の所得によって変わります。税金等の計算の基礎となる会社の所得とは、会社の利益(益金)から経費(損金)を差し引いたものです。

役員報酬は会社の損金になるので、役員報酬をいくらに設定するかで税金や社会保険料が変動します。役員報酬を会社側で自由にコントロールできてしまうと、税金や社会保険料の徴収上不都合が生じてしまいます。そのため、役員報酬については損金算入できる金額を厳格に定めているルールが存在しており、企業はそれを守らなければいけません。

役員報酬と従業員給与の違いは?

役員報酬と従業員給与には、次のような違いがあります。

【役員報酬】

役員報酬は役員という地位に就くことと引き換えに会社から支払われるお金です。つまり、役員報酬は労働の対価というわけではなく、役員に就任することによって会社から与えられる財産上の利益のことを指します。

会社を休んでも、役員の地位についている限り、役員報酬は支払われるのです。また、役員報酬として毎月支払われる金額は決まっており、残業手当や通勤手当などはありません。

労働とは関係なく支払われる役員報酬により税金をコントロールできてしまうと困るため、役員報酬のうち損金算入できる金額は法律により制限が加えられています

【従業員給与】

従業員給与は従業員の労働の対価として支払われるお金です。従業員とは、正社員やパートとして会社に雇用されている人を指します。給与は労働の対価なので、会社を休んだら払ってもらえません。給与の場合には基本給以外の手当も支給されるので、毎月もらえる金額が変わることもあります。

労働の対価として支払われる従業員給与は、全額損金に算入が可能です。ただし、従業員給与が不相当に高額すぎる場合には、通常の範囲を超えている部分については損金算入が認められないことがあります。

役員報酬を決めるときの流れは?

株式会社を設立するときには、役員報酬の金額を決めなければいけません。役員報酬によって会社が納めるべき法人税の金額や社会保険料の金額が変わってくるため、役員報酬の決め方にはルールがあります。ここではその決め方に関するルールや、役員報酬を決めた後に税金や社会保険の届出をするまでの流れを説明していきましょう。

役員報酬のルールを確認!

役員報酬のルールで特に重要なのは次の2点です。

  • 役員報酬は設立から3か月以内に決める
  • 役員報酬は毎月同額を払う必要がある

会社法では、役員報酬は定款または株主総会の決議により定めると規定されています。定款で役員報酬を定めると、変更したいときに定款変更の手続きに手間がかかるので、通常は株主総会の決議で決めることが多いです

株主総会で報酬額を決定

株主総会で役員報酬の総額を決めます。ただし、設立のタイミングでは株主が役員である場合が多いので、その際は役員自身が役員報酬を決めることになるのです。

社会保険加入の手続き

役員報酬が決定後5日以内に、社会保険の加入手続きを行います。事業所の所在地を管轄する年金事務所で手続きしましょう。

役員の居住地に納める住民税の手続き

役員が住んでいる市区町村には住民税の特別徴収に関する届出を行う必要があります。役員報酬から住民税を天引きして支払うのが特別徴収です。役員報酬決定後速やかに届出をしましょう。

役員報酬の決め方の基準!

役員報酬の決め方の基準
役員報酬の決め方の基準

初めて役員報酬を決めるときには、何を基準に考えれば良いのかが全く分からないかもしれません。役員報酬の決め方は、税金や保険料にも影響してきます。役員報酬の決め方の基準とすべきことを知っておきましょう。

利益の予測を立てて報酬額を決める

役員報酬を決めるためには、1年間の売上を予測しなければなりません。売上予測にもとづき、粗利や固定費を計算すれば、どれくらいの利益が出るのか推測可能です。

利益のうちどれくらいを役員報酬に回すかは、経営方針によります。会社の経営を安定させたい場合には、役員報酬を少なめにし、会社に利益を多く残しておけば良いということです。

役員の欲しい額を基準に決める

経営者が一人なら、個人の都合で役員報酬を決めることもできます。たとえば、生活費として月に25万円必要なのであれば、1か月25万円で計算するという方法です。

税金や保険料を基準に決める

役員報酬を少なくした場合、会社に多くの利益が残ることになり、会社が納税する法人税が高くなりがちです。一方で、役員報酬を多くすれば、個人が納める所得税や住民税が増えてしまう傾向にあります。また、社会保険料は会社と個人の双方折半により負担しますが、役員報酬が高くなるほど高額な保険料が必要です。

会社と個人が負担する税金や保険料のバランスを考えながら決める方法もあります。詳しくは、下記の【応用編】役員報酬の決め方のシミュレーションをご参照ください。

役員報酬を決めるときのルール

役員報酬を決める男性
役員報酬の決め方のルール

役員報酬の決め方にはルールがあります。ルールに従わずに役員報酬を決めた場合、ペナルティが課されることになるため注意が必要です。役員報酬の決め方のルールについて押さえておきましょう。

役員報酬の決定は会社設立から3カ月以内!

会社を設立したときには、原則として設立から3か月以内に役員報酬を決めなければなりません。なお、役員報酬は毎年決めるものなので、設立の翌年度以降は事業年度開始日から3か月以内に決めることになります。

期間内は毎月定額

役員報酬の毎月の支払い額は、同一事業年度の間は同じでなければなりません。この定期同額給与については、全額損金に算入できます。役員報酬のうち毎月同額でない部分については、損金に算入できません。

賞与(ボーナス)は別途申請が必要!

役員に定期同額給与以外に、賞与(ボーナス)を支給することも可能です。ただし、役員に対して賞与を支給するには、あらかじめ税務署に事前確定届出給与として届出する必要があります。役員の賞与に関する届出は、設立から2か月以内、2年目以降は期首から4か月以内に行わなければなりません。

税務署に届出したとおりに役員賞与を支給すれば、賞与も全額損金に算入できます。税務署に届出していない賞与については、損金算入はできません

役員報酬は株主総会で決定

会社法上、株式会社の役員報酬は、定款または株主総会の決議で定めるものとされています。定款で役員報酬を定めると定款変更の手続きが面倒なので、株主総会の決議で決めるのが通常です。なお、役員報酬は事業年度ごとに決める必要があります。

株主総会で決めるのは、役員報酬の総額です。個別の役員に支払われる報酬の決定は、取締役会や代表取締役に一任するのが一般的と言われています。

役員報酬を決める際の注意点

役員報酬を決める際の注意点
役員報酬を決める際の注意点

役員報酬の決め方は適当でいいわけではなく、法律で定められています。ここで、役員報酬を決める際の注意点を確認しておきましょう。

変更期間外に役員報酬を増減するのはNG!

役員報酬の決め方で最も注意しておかなければならないのは、役員報酬を決められる期間が会社設立から3か月以内、2年目以降は事業年度開始から3か月以内と決まっていることです。3か月経過した後は、役員報酬を変更することは基本的にできません。

もし3か月経過した後で役員報酬を変更した場合には、ペナルティが設けられています。役員報酬を増額したときには、増額した部分は損金算入できません。役員報酬を減額したときには、減額後の役員報酬を基準として考えるため、減額前の超過部分が損金不算入となります。

資金繰りが厳しい場合のみ減額が認められる

事業年度開始から3か月経過した後で役員報酬を減額した場合、減額前の超過部分については損金不算入というペナルティがあります。ただし、やむを得ない事情がある場合には、臨時改定事由として役員報酬の減額が認められます。

臨時改定事由となるのは、職制上の地位が変更された場合売上が予測を大きく下回るなどし、資金繰りが悪化した場合です。多少売上が減ったくらいでは認められませんので注意しましょう。

【応用編】役員報酬の決め方のシミュレーション

役員報酬のシミュレーション
役員報酬のシミュレーション

役員報酬の決め方によって、会社や個人が支払う税金や社会保険料が変わることはお分かりいただけたと思います。利益をどのように配分すればトータルの支出を減らせるかについて、具体的にシミュレーションしてみましょう。

法人利益が100万円の場合

法人利益が100万円の場合、100万円までの範囲内で役員報酬を決めることができます。

利益を全額会社に残して役員報酬を0円とした場合と、利益を会社に残さず100万円全額を役員報酬とした場合との比較してみましょう。

個人に関しては所得が0円の場合には所得税も住民税もかかりませんが、法人の場合には利益0円でも法人住民税の均等割はかかってしまう点に注意が必要です。また、役員報酬を0円にすれば、会社の負担する社会保険料も0円で済みます。

法人、個人の支出の概算(※具体的な金額は条件によって変わります)は以下のようになり、役員報酬を0円にした方がトータルの支出は少なくて済むでしょう。

(単位:千円) 役員報酬
0円 100万円
【法人支出】
法人税等 294 70
社会保険料 0 157
法人支出合計 294 227
【個人支出】
所得税・住民税 0 5
社会保険料 0 157
個人支出合計 0 162
法人・個人支出合計 294 389

法人利益が500万円の場合

法人利益が500万円の場合、役員報酬を100万円ごとに比較してみると、次の表のようになります。

(単位:千円) 役員報酬
0円 100万円 200万円 300万円 400万円 500万円
【法人支出】
法人税等 1,217 933 675 415 158 70
社会保険料 0 157 304 464 607 732
法人支出合計 1,217 1,090 979 879 765 802
【個人支出】
所得税・住民税 0 5 88 170 260 382
社会保険料 0 157 304 464 607 732
個人支出合計 0 162 392 634 867 1,114
法人・個人支出合計 1,217 1,252 1,371 1,513 1,632 1,916

法人利益が500万円の場合にも、役員報酬を0円にするのがトータルの支出は最も少なくなりますね。

法人利益が1000万円の場合

法人利益が1,000万円の場合、役員報酬を100万円ごとに比較すると、次の表のようになります。

(単位:千円) 役員報酬(0円~500万円)
0円 100万円 200万円 300万円 400万円 500万円
【法人支出】
法人税等 2,701 2,274 1,888 1,600 1,315 1,035
社会保険料 0 157 304 464 607 732
法人支出合計 2,701 2,431 2,192 2,004 1,922 1,767
【個人支出】
所得税・住民税 0 5 88 170 260 382
社会保険料 0 157 304 464 607 732
個人支出合計 0 162 392 634 867 1,114
法人・個人支出合計 2,701 2,593 2,584 2,638 2,789 2,881
(単位:千円) 役員報酬(600万円~1,000万円)
600万円 700万円 800万円 900万円 1,000万円
【法人支出】
法人税等 768 507 261 70 70
社会保険料 893 1,054 1,149 1,197 1,252
法人支出合計 1,661 1,561 1,410 1,267 1,322
【個人支出】
所得税・住民税 511 686 931 1,190 1,447
社会保険料 893 1,054 1,149 1,197 1,252
個人支出合計 1,404 1,740 2,080 2,387 2,699
法人・個人支出合計 3,065 3,301 3,490 3,654 4,021

法人利益が1,000万円の場合には、役員報酬200万円のときにトータルの支出が最も少なくなります。

監修税理士のコメント

多田紘大税理士事務所 – 兵庫県

役員報酬を決める際は、会社の翌期の所得の見込み、役員自身の必要資金、会社及び役員の税金・社会保険の負担水準等を総合的に勘案して決定する必要があります。継続的に事業をするうえでは、翌期以降の利益・資金繰りを正確に計画することが重要になるうえ、併せて役員報酬の支給水準も正確に計画していくことが重要になります。

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この記事を監修した税理士

多田紘大税理士事務所 – 兵庫県

大手監査法人で多様な業種、規模の上場企業、非上場企業の監査業務に従事。併せて、同じ監査法人でコンサルティング業務(決算早期化支援、内部統制構築支援、システム導入支援等)を実施してきました。その後、大手監査法人を退所、独立開業。独立開業後は中小企業、個人事業主を中心に税務に関して全般的にサービスを提供しています。