屋根にはさまざまな種類があり、形状によって外観や家の機能性が大きく変わります。どのように選べばよいのでしょうか?代表的な屋根の種類ごとに異なる特徴や屋根材の選び方、メンテナンス・形状変更をする場合のポイントを紹介します。
適した屋根の形状を選ぼう
屋根は災害から家を保護したり、見栄えの印象を変えたりとさまざまな役割を持つパーツです。こだわりを持った屋根選びをするために、確認したいポイントを紹介します。
屋根の形で家の外観が変わる
屋根は雨や突風から家を守るだけでなく、外観を保つ役割も担っています。スタイリッシュな洋風の屋根から神社のような風格を感じさせるものまで、形状や材質の種類はさまざまです。
色や形・素材によって印象が大きく変わるため、家のデザインを重視する人にとって大きなポイントになります。好みの色や形で屋根を選ぶ方法もありますが、周囲の景観や家全体のバランスも考慮しないと、浮いた印象になってしまうでしょう。
外観だけでなく機能面にも優れた屋根にすれば、メンテナンスの費用を抑えられます。形や素材ごとの特徴を知った上で、屋根のデザインを選択するのがおすすめです。
形状と屋根材の組み合わせを確認
屋根の形状によっては、好みの屋根材を選択できない場合があります。屋根材には雨漏りを防ぐために、瓦やスレート・金属といった素材ごとに最低勾配が決まっているためです。
形状が違うと屋根の勾配も変わるため、採用できる屋根材が限られてしまいます。厚みのある瓦屋根の場合、瓦を重ねて設置するために勾配の角度を緩やかにしなければなりません。
どの素材でも使える最低勾配は、4寸勾配(約122mm・約21.8度)以上となっているので、事前に確認しておきましょう。
また屋根材ごとの組み合わせによって、機能面にも差がでます。例えば風に強い形状の「招き屋根」と地震に強い「石粒付ガルバリウム鋼板」を組み合わせれば、災害に強い屋根を作れます。
気候や雨漏りのリスクも要チェック
屋根形状の性質を知っていれば、気候や雨漏りのリスクを考慮しながら屋根を選択できます。雨漏りのしにくさを重視したい場合は、屋根形状が単純なものを選びましょう。
素材を接合するつなぎ目が増えるほどすき間が空いてしまうため、複雑な屋根形状にするほど雨漏りのリスクは高まります。
また雪や突風が多いなど土地の気候が影響する場合は、勾配を考えて屋根の形を選びましょう。角度のある屋根を選べば雪はけや水はけがよくなります。角度の緩い屋根なら突風の影響を受けにくいため、海沿いの地域では重宝されるでしょう。
雨漏りしにくい形状の屋根
雨漏りのリスクを低減できる屋根は、構造がシンプルなのが特徴です。どの形状の屋根が該当するのでしょうか?代表的な種類を三つ紹介します。
シンプルで普及率の高い「切妻屋根」
切妻(きりづま)屋根は、日本でも主流となっている形状の屋根です。本を開いて上から被せたような形が特徴で、「三角屋根」とも呼ばれています。
2枚の板を合わせて作られているため、雨漏りの原因になりやすいつなぎ目は1カ所しかありません。傾斜が付いていて水はけがよいのも、雨漏りが少ない理由の一つです。
構造が単純なため施工のコストを抑えられる点もメリットです。新築時はもちろんメンテナンスやリフォームの際も、工数が少ない分だけ費用も下がります。
ただし建物の4面のうち2面にしか軒ができないため、外壁が雨風や日光にさらされて劣化しやすいのがデメリットです。多くの家に採用されており構造がシンプルなだけに、個性が出しにくいという問題もあります。
耐候性が高い「寄棟屋根」
寄棟(よせむね)屋根は、切妻屋根と同じく日本で多く見られる形状の屋根です。頂上の「大棟」と呼ばれるつなぎ目から、4方向に傾斜しています。
四つの屋根面がお互いを支えているため、耐風性が高く外壁への負担も少ない点がメリットです。形状的に水はけにも問題がなく、台風や嵐に強い屋根といえます。ただし切妻屋根と比べるとつなぎ目が四つ多い分、雨漏りのリスクはやや高いでしょう。
屋根裏のスペースを広く取りたい・ソーラーパネルを付けたいという場合には、一つひとつの屋根面がせまいため向きません。
正方形の家に適した「方形屋根」
方形(ほうぎょう)屋根は四角錐(ピラミッド)の形状をしています。四つの屋根面が頂点から下方に傾いており、雨や雪を分散できる点がメリットです。
寄棟屋根と同じく四つの屋根面がお互いを支えあっているため、雨風に強い構造となっています。雨漏りのリスクはつなぎ目が4カ所あり切妻屋根よりは高いものの、つなぎ目が5カ所の寄棟屋根に比べると低いのが特徴です。
ただし方形屋根は正方形の建物にしか設置できません。三角形の屋根面で構成される造りから、ソーラーパネルを付けたい場合も向かないでしょう。
美しい外観を作る形状の屋根
近年は機能性だけでなくデザインを重視して屋根を選ぶ人も増えています。美しい外観を実現できる屋根の形状には、どのような種類があるのでしょうか?
傾斜がない「陸屋根」
陸(りく・ろく)屋根は勾配がない形状をしています。集合住宅の屋根に採用される場合も多く、スタイリッシュで近代的な外観を実現できる屋根です。
屋根面が水辺で屋上のスペースを有効利用できる点がメリットです。敷地面積の関係で庭がない場合でも代わりとして屋上を使えるため、プライベートな庭園・家庭菜園を作れるでしょう。
しかし平らな形状は雨漏りのリスクを高めます。水が流れずにたまってしまい、定期的に排水をする必要がある点が陸屋根の弱みです。
片側だけ傾斜している「片流れ屋根」
片流れ(かたながれ)屋根は、屋根面が一方向にだけ傾いた形状をしています。シャープなデザインに仕上がる点がメリットで、洋風の新築で需要が高いタイプです。
構造がシンプルで工事が簡単なため、新築時だけでなくリフォームの工事費用も安く抑えられます。また屋根全面が大きく一方向に向く性質から、ソーラーパネルの設置に適しています。
しかし片流れ屋根では1面に雨や風が集中するため、他の屋根とダメージを受けやすい点はデメリットです。負担が大きいほど雨漏りや破損といったトラブルが発生しやすいので、定期的なチェックが必要になります。
伝統的な景観をつくる「入母屋屋根」
入母屋(いりもや)屋根は、寄棟屋根と切妻屋根を組み合わせたような形をしています。日本の伝統的な屋根形状で屋敷や神社にも使用されており、重厚な美しさを持つ屋根形状です。
構造的にも耐風性や断熱性・通気性に優れており、強風に動じることなく屋内の空気の流れを快適に保ちます。しかし造りが複雑で扱える職人が少ないため、工事単価が高額になるでしょう。
また複雑な構造の分だけつなぎ目が多くなり、雨漏りの危険性は高まります。定期的なメンテナンスが必要になりますが、不慣れな業者に任せるのおすすめできません。
通気性に優れた形状の屋根
湿気が多い気候の日本では、通気性も重要な性能です。通気しやすい形状の屋根を2種類紹介します。
段違いになった「招き屋根」
招き屋根(差しかけ屋根)は、屋根の高さが段違いになっている形状の屋根です。中間に外壁を挟んで上下の屋根があるため、外壁に窓を設置すれば下になる屋根を同じ視点から確認できます。
通気性や断熱性に優れており、上に来る屋根の部分に屋根裏部屋を作れば冬も夏も快適に過ごせるでしょう。
二つに分かれた屋根が風を分散させる構造から、耐風性に優れている点もメリットです。切妻屋根と似てシンプルな造りのため工事費用が安く、ソーラーパネルの発電効率が高いのも魅力です。
ただし設計を綿密に行わなければ、雨漏りが発生してしまうという問題があります。また二つの屋根を挟む外壁の接合部分から雨が侵入する恐れがあるため、丁寧な防水工事が必要です。
小さな屋根が別に付く「越屋根」
越(こし)屋根は、切妻屋根の上にさらに小さな切妻屋根をのせた形状をしています。最頂部にある屋根の主な役割は、通気や採光・煙抜きです。
開口部が高い位置にある分だけ通気性がよくなるため、熱気を抜きたいときに便利です。自然の風を取り入れられる越屋根を採用すれば、エアコンを使う頻度が下がるでしょう。
ただし最頂部にある屋根の部分から、雨漏りしやすい造りはデメリットです。また形状が複雑で職人の技術に仕上がりが左右されるため、工事やメンテンナンスには高額な費用がかかります。
屋根材の選び方もチェック
屋根を作るときは形状だけでなく、材質にも着目しましょう。素材ごとの特徴とメンテナンス性を考えて選ぶと、長期的に損をしてしまうリスクが減ります。形状と材質の組み合わせも重要なポイントです。
屋根材の種類
スレートはセメントと繊維を混ぜた屋根材です。耐震性・耐火性に優れており、シンプルな見た目と価格の低さから人気を集めています。水はけが悪い屋根には不向きですが、比較的どの形状にも合わせやすいでしょう。
粘土瓦は粘土を素材として作られた屋根材です。和瓦・洋瓦の2種類があり、和風・外国風と外観の印象を変えられます。落ち着きのある仕上がりになるため、入母屋屋根や越屋根と相性がよい素材です。
ガルバリウム鋼板は金属が配合された屋根材で、外観はシンプルに仕上がるため屋根の形状は問いません。
アスファルトシングルは防水シートの役割を持っており、雨漏りのリスクを抑えられるのが特徴です。また風を分散させやすい形状と組み合わせれば、耐風性高い屋根に仕上がります。
メンテナンス性も考えて選ぶ
耐用年数が長く頻繁に塗装しなくてもよい屋根材を選べば、長期的にかかるコストを抑えられます。機能やデザインとメンテナンス性のバランスを考えて、屋根材を選びましょう。
日本瓦は100年もの耐用年数を誇り、日光による色落ちがないため再塗装の必要がありません。アスファルトシングルも耐久性に優れており、定期的なメンテナンスは必要なものの頻繁な塗装は不要です。
ガルバリウム鋼板は外壁にも使用されるほど耐候性に優れているため、塗装メンテナンスは15年に1回程度で済みます。
一方でスレートやセメント瓦などセメントが含まれているものは、10年周期で再塗装が必要になります。材質の中では安価な部類ではありますが、ランニングコストを抑えたい人には向きません。
屋根のメンテナンスや形状変更
屋根の形を変えるリフォームやメンテンナンスをする際、事前に知っておきたい注意点があります。工事費用にも大きく関わりますので、ポイントを押さえておきましょう。
定期的な点検、補修を
屋根の形状や屋根材の性質によって雨漏りのリスクは異なります。しかし年数が経てばどんな屋根でも経年劣化による雨漏りが起こる確率が高まるため、定期的な点検は必須です。
新築を立てた後は屋根の耐用年数に合ったメンテナンスが必要になります。屋根材の劣化具合と経過年数を確認して点検を行いましょう。
日本で採用されている屋根の多くは10~15年で、メンテンナンスが必要な時期を迎えます。築10年ほどたったら目立った劣化がなくても、一度業者に相談してみるのがおすすめです。
形状変更の相場と注意点
違う形状の屋根にリフォームする際の相場は200〜700万円ほどで、形状によって開きが出ます。どの形に変更する場合も足場の設置が必要で大がかりな工事になるため、高額になることを覚えておきましょう。
リフォームする際は、法律の問題にも注意しなければなりません。多くの場合では不要ですが、屋根の最高部分が高さ制限に関わる場合には確認申請が必要なケースもあります。
申請費用として追加で25〜30万円ほど必要になりますので、事前に確認申請が必要がどうかを施工会社に確認しておきましょう。
最適な屋根を選んで住みよい環境を
屋根には家の機能性を保つだけでなく、外観を整える役割もあります。納得のいく家に仕上げるためには、雨漏りのリスクや耐候性・デザインなどさまざまな観点から検討しなければなりません。
屋根の形状ごとに特徴が異なるため、それぞれのメリットとデメリットを把握した上で適したものを選びましょう。屋根材との組み合わせによっても、耐候性や耐久性・耐震性などが変わります。
家を建てた後も屋根を違う形に変える・メンテナンスをするといった対応が必要です。10年ごとを目安に状態を点検し、違う形に変えたい場合はあらかじめ確認申請が必要か・どの程度の費用がかかるのかを業者に確認しておきましょう。
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