キイロスズメバチの被害は都市部でも多く報告されています。巣を見つけた場合はどのように対処すればよいのでしょうか?この記事では生態や巣の見分け方、駆除の方法を解説します。
キイロスズメバチの巣の見分け方は?
キイロスズメバチの巣はボール型で、短期間で大きくなるという特徴があります。巣の模様が貝殻のようになっているのも見分けるポイントです。
キイロスズメバチの巣は自力で駆除できる?
巣の場所や大きさによっては自力で駆除できます。巣のある場所が高くて閉鎖的な空間な場合や、巣の大きさが10cm以上の場合は業者に依頼しましょう。
キイロスズメバチの特徴
キイロスズメバチはどのような特徴を持つハチなのでしょうか?刺される危険を回避するためにも、生態や危険性を知っておかなければなりません。他のハチとは活動期間が異なる点が大きな特徴です。
活動期間が長いスズメバチ
キイロスズメバチはスズメバチ科に属するハチで、本州から北海道まで広く分布しています。北海道が原産の種類は「ケブカスズメバチ」と呼ばれることもありますが、大きな違いはありません。
名前の通り体全体が黄色の毛に覆われています。黒と黄色のしま模様があるものの、飛んでいるときはほぼ濃い黄色一色のハチに見えるでしょう。
他のハチとの大きな違いは活動期間です。アシナガバチが4〜9月ごろ・ヒメスズメバチやオオスズメバチが4〜10月ごろに活動するのに対して、キイロスズメバチは3月末から11月ごろまで活動します。
主にセミやバッタ・ハエなどの虫をエサとしており、基本的には肉食です。
小型ながら攻撃性が高い
キイロスズメバチの体長は女王バチで約2.5〜3cm弱、働きバチで2〜2.5cmほどしかありません。アシナガバチと同じくらいの大きさで、スズメバチの中ではかなり小さめの種類です。
しかし気性は荒く、オオスズメバチに次いで危険性が高いといわれています。特に刺激を与えると大量の働きバチに刺されてしまうため、小型だからといって油断は禁物です。
一度巣を刺激されると興奮しやすくなり、わずかな刺激でも襲ってくるようになります。
都市部では天敵となるオオスズメバチが少ないため、キイロスズメバチが最も危険なハチにもなり得るでしょう。人工物にも巣作りをする性質があり、巣の中にいる働きバチが1000匹を超えるケースもあります。
キイロスズメバチの巣
キイロスズメバチの巣には、他のハチの巣と異なる特徴がいくつかあります。「成長期間」「営巣場所」「引っ越し」の3つが、キイロスズメバチの巣を見分けるポイントです。
ボール型で短期間に大きくなる
キイロスズメバチは貝殻の模様をしたボール型で、大きいものだと直径1mほどになるケースもあります。短い期間で成長するため、気づいたら大きくなっていたという場合も少なくありません。
巣を作るときはまず女王バチが、働きバチの幼虫を育てる部屋を40~60室作ります。やがて羽化した働きバチが増え、女王バチから巣作りを引き継ぐのが特徴です。
完成する頃にはラグビーボールのような形状になっており、働きバチの数もさらに増えています。巨大な巣を見つけたら不要に近づかないように注意しましょう。
巣ができやすい場所は?
巣作りを始める4〜5月ごろにはまだハチの数が少ないため、樹木の穴や床下・屋根裏などの閉鎖的に空間に巣を作ります。ゴミ箱の中や看板の裏・橋の下など、都市部の環境でも営巣できるのが特徴です。
働きバチの数が増えて巣の拡大が必要になると、出入りのしやすい場所に巣を引っ越します。移動先としてよく選ばれるのは、軒下や木の上などです。
最も危険といわれるオオスズメバチは山林部の土や木にしか巣を作らないため、活動場所も限られます。一方でキイロスズメバチは環境や素材を選ばずに営巣するため、日常生活の中で遭遇する確率が高いといえるでしょう。
巣を引っ越しする時期は夏
巣の引っ越しはキイロスズメバチの大きな特徴です。春に作り始めた巣が大きくなる7月頃に、引っ越しを行います。働きバチが羽化して増えると居住空間が足りなくなるため、より大きな巣を作れる場所が必要になるのです。
大量の働きバチが巣を作るので、あっという間に転居先が完成します。「今まで巣がなかったのに、急に大きなハチの巣ができた」と不思議に感じる場合の多くは、キイロスズメバチの引っ越しの習性によるものです。
数m程度の近場に引っ越す場合もあれば、100m以上離れた場所に移動するケースもあります。巣の場所を移す夏は働きバチが活発化しており、うかつに近づくと非常に危険です。
巣を見つけたときの注意点
キイロスズメバチは不用意に刺激すると、刺されるリスクが高まります。巣を見つけたときはあわてずに対応しましょう。対処のポイントと刺された場合の応急処置を紹介します。
騒がずに静かに離れる
巣を見つけても大声を出してはいけません。音が刺激になってキイロスズメバチを興奮させてしまいます。ハチ自体を見つけた場合にも、手で払うと余計に刺激を与えてしまうため落ち着いた対応が必要です。
刺激を与えるとフェロモンで仲間を呼ばれ、襲われる可能性が高まります。警戒心を抱かせないためにも、大きな音を立てないように気を付けて巣から10m以上離れましょう。
ただしキイロスズメバチが休眠している12~2月までは、巣の中が空っぽなので離れる必要はありません。
自力で駆除できるか確認する
自力で巣を駆除できるかどうかを判断するポイントは、時期や巣の大きさ・場所です。キイロスズメバチが活動していない12~2月までは、巣の中が空っぽなので刺されるリスクを冒さずに駆除できます。
巣の大きさが10cm以下であれば働きバチの数はそれほど多くないため、駆除するときの危険も大きくありません。しかし10cmを超えた巣には働きバチが多く住んでおり、駆除する際に襲われる危険が高まります。
駆除に使うスプレーを風上から吹きかけられる場所かどうかも、確認しておきましょう。風の力を利用して離れた場所から安全に噴霧するためです。
巣がある場所の高さや建物の造りも、よくチェックしておく必要があります。屋根裏など高所で閉鎖的な空間だと、万が一襲われたときに逃げ場がありません。自力で駆除できる条件に当てはまらない場合は、無理せず業者に任せましょう。
もしも刺されてしまった場合は
キイロスズメバチに刺されてしまったら、できるだけ早く病院に受診するのが基本です。吐き気や腹痛・呼吸困難などの症状が出て、命に関わる危険もあります。
もしもすぐ病院にかかれない場合は、応急処置を施しましょう。ハチが居る場所からただちに離れ、刺された部位の毒液を絞り出すように水で洗い流します。口で吸い出すと体内に毒が入ってしまうため、指で絞るのがポイントです。
傷口に針が残っている場合は毛抜きで抜き取ったり、指で払い落としたりしましょう。水で洗い流した後は、毒が体内を回らないように患部を冷やします。
自力で駆除するときのポイント
巣の大きさや場所によっては、自力での駆除も可能です。注意点を押さえて安全に作業しましょう。必要な道具や駆除に適した時間帯、当日に気を付けたいポイントを解説します。
事前に道具を準備しておく
ピレスロイド系の成分が入っているハチ専用の殺虫剤と、巣を落とすのに使う長い棒は巣の駆除に必須です。
防護服は自治体で貸し出している場合もあるので、一度問い合わせてみましょう。作業服や厚手の服でも代用できますが、首回りなどの厚着しにくい場所を狙われることがあるため注意が必要です。
頭はハチ駆除用のネットで守るか、準備できない場合は帽子やヘルメットを着用します。ゴーグルで目を・タオルで首の隙間を防護しておくのがポイントです。毒針を通しにくい皮の手袋や厚めの軍手で手を守り、長靴を履いて裾の上からひもで縛ります。
日中の駆除は避ける
日中に駆除すると働きバチが巣に出入りしており、襲われやすくなるため避けた方が安全です。日が暮れれば活動が鈍くなり外にいた働きバチも戻ってきているので、安全かつ効率的に駆除できます。日没後2~3時間の間に作業しましょう。
ただし暗くなると巣の位置が把握しづらくなるため、日中に巣の位置を確認しておきます。懐中電灯の光はキイロスズメバチを刺激してしまうので、明かりが必要なら赤いセロハンをライト部分に貼り付けてから使用しましょう。
服の色やにおいに注意
スズメバチには黒色に反応して襲ってくる習性があります。作業するときは白や淡い色の服を選びましょう。
またスズメバチは甘い香りに寄ってくるため、香りの強い柔軟剤や整髪料・香水を付けていると危険です。ジュースやお菓子のにおいもハチを引き寄せてしまうので、甘い物を口にした後は駆除を避けます。
スズメバチは汗のにおいにも反応するため、駆除を行う前にはシャワーを浴びておくと安心です。
巣を駆除する手順を確認
駆除するときに正しい手順を守らないと、刺されるリスクが増大します。安全に作業するためにも、適切な駆除の方法を知っておきましょう。作業後の注意点も解説します。
巣に殺虫剤をかける
まずは2~3m離れた場所から、巣の表面に殺虫剤をかけます。殺虫剤に反応したハチが出てきても、そのまま続けましょう。
2~3分ほど続けてハチの動きが鈍ったら、巣の中にも殺虫剤をかけます。ハチは素早く動けなくなっていますので、動いていても落ち着いて噴霧を続けます。
3~5分たってハチが飛び出てこなくなったら、巣の中にいるハチが動かなくなるまでスプレーし続けるのがポイントです。
巣を落としてゴミ袋に入れる
殺虫剤をかけてハチの動きが止まったら巣を落とします。万が一キイロスズメバチが向かってきても、あわてる必要はありません。すでに弱っている状態のため、勢いよく襲ってくることはありません。
落とした巣はゴミ袋に入れ、念のためもう一度殺虫剤をかけてから袋の口を縛りましょう。巣を入れたゴミ袋は燃えるゴミとして処分します。
スズメバチが落ちてしまった場合はむやみに触ってはいけません。死んでも1日ほどは針の部分が動いて刺される危険があるため、一晩寝かせてからホウキとチリトリを使って回収します。
戻りバチに注意
駆除のとき巣にいなかったハチや、逃げ出したハチが戻ってくる現象を「戻りバチ」といいます。
戻ってきたハチは住み慣れた場所に再度巣を作ることがありますので、巣があった場所に1週間程度は殺虫剤をかけておきましょう。小まめに殺虫剤をかけている場所には巣を作られにくくなります。
雨が降ると殺虫剤の効果が下がるため、晴れた後に再度かけるのが巣の再発を予防するコツです。
ただし戻りバチの数が多いと危険が伴います。まとめて駆除する自信がないなら、最初から業者に依頼する方が安全です。優秀な業者であれば駆除だけでなく、作業後の戻りバチにも対応してくれます。
自力での駆除には十分な注意を
キイロスズメバチは都市部でも大きな巣を作ります。攻撃性が高いため十分な警戒が必要です。
活動時期である3~11月に大きな巣を見つけた場合、近寄らずに自力で駆除できる巣かどうか見極めましょう。10cm以下の巣や低く開放的な場所にある巣なら、自力でも取り除けます。
駆除する際は十分な準備をした上で、手順を守って作業します。ただし巣を刺激する駆除作業では、刺されるリスクをゼロにはできません。戻りバチへの対応も必要なため、少しでも不安を感じる場合は業者に任せましょう。
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