カナメモチがなぜ生垣によく使われているか、ご存じでしょうか?赤く色づく葉っぱが人気のカナメモチについて、花言葉や名前の由来などを紹介しながら、正しい育て方をお教えします。病気や害虫から守る、栽培のコツもぜひ参考にしてください!
カナメモチとはどんな木?
カナメモチの特徴や分類、どのようなシチュエーションで楽しめる植物かを紹介していきます。
バラ科の常緑樹
カナメモチは、バラ科カナメモチ属の植物です。日本や中国南部が主な原産地で、常緑樹の多年草に分類されます。
木は小さければ3mほど、大きければ10mほどに育つ場合もあり、頑丈なため扇子の要(骨組みの留め具)に使われることもあるほどです。
5月から6月頃に、小ぶりでかわいらしい、白い花を咲かせます。厚みがあってギザギザした葉っぱと、美しい赤い芽が特徴です。
花や実が楽しめる生垣として人気
園芸に慣れていない方や初心者でも育てやすいのが、カナメモチの特徴です。また、赤い新芽や白い花は人目を引きやすいため、観賞用にも適している植物です。
カナメモチは実も赤く、10月から2月頃までの長い期間実をつけているので、冬の間も鮮やかな色づきが楽しめます。
生垣として育てられるケースも多く、きれいに敷き詰められたカナメモチは高い人気を誇ります。カナメモチという名前自体を知らなかった方も、今まで見た生垣を思い出せば「あれがカナメモチだった」ということもあるでしょう。
名前の由来と花言葉
カナメモチという植物は、どういった理由でその名前になったかをご存知でしょうか?カナメモチの花言葉と併せて、名前にまつわるエピソードを紹介していきます。
モチノキが由来とされる
カナメモチと似た植物に、モチノキがあります。モチノキはモチノキ属ですのでカナメモチとは別種ですが、葉っぱの形や赤い実などが非常に似ており、見分けにくいかもしれません。カナメモチの「モチ」はモチノキから取られたと言われています。
カナメモチの「カナメ」は、先ほど述べた通り扇子の要に使われることがあるため、そこから取ってカナメモチという名前になったようです。
ベニカナメやアカメと呼ばれることも
カナメモチには別の名前もあり、ベニカナメ、アカメモチと呼ばれることもあります。どちらも「紅」や「赤」など色に関する言葉が入っており、これは、カナメモチの葉っぱが由来だとされています。
カナメモチの葉っぱは新葉の頃、赤に色づくことから、ベニカナメもしくはアカメと名づけられたようです。
春にもかかわらず、秋の紅葉のように鮮やかな赤色に染まる姿が、多くの人を魅了しているのです。
花言葉は「にぎやか」
カナメモチの花言葉の由来も、赤い葉っぱから来ているという説があります。カナメモチの花言葉は「にぎやか」で、秋ではなく春に赤色の葉っぱをつける様子がにぎやかだということです。
庭先や生垣で一面が赤く色づく様子はとても鮮やかで、気分も明るくしてくれそうです。花言葉の意味からも、雰囲気を明るくしたい場合にピッタリな植物といえるでしょう。
カナメモチの植えつけ
カナメモチを育てる場合、まず植える場所が大切です。選び方を間違うと生育に影響してしまうため、ポイントを押さえて植えつけを行いましょう。
日当たりと水はけの良い場所を選ぶ
カナメモチの植えつけで大切なのは、日当たりです。日陰でカナメモチを育ててしまうと枝がきれいに生えにくく、花つきも悪くなります。
また、水はけの良い場所を選ぶことも重要です。水が足りなくて乾燥するのも良くありませんが、水はけが悪い場所に植えてしまった場合も、カナメモチの育成に悪影響が出ます。水はけを良くするためには、土づくりに気を配りましょう。
苗植えと土づくり
苗を植える時期は3月から夏が来る前の6月頃までが良いでしょう。あるいは9月から10月頃もおすすめです。苗植えのコツは、苗の2倍から3倍ほどの大きさに穴を掘ることです。カナメモチの根は切れやすい性質を持っているため、注意深く作業を行いましょう。
生垣にする場合は株同士の間隔を50cmほど空けて植え、生えてきた木が倒れないよう支えを用意しておくと安心です。
土づくりに関しては水はけの良い状態を目指しますが、乾燥しすぎている状態よりは土に多少の粘り気がある方が望ましいです。水はけを良くしてくれる腐葉土や堆肥を多少混ぜておくと、ちょうど良いバランスの土がつくれます。混ぜるバランスは、土全体の2〜3割程度を目安にしましょう。
カナメモチ栽培のコツ
無事に苗植えが終わったら栽培をしていきますが、栽培にもコツや注意点がいくつかあります。肥料の与え方や挿し木の方法、注意した方が良い病気・害虫について紹介します。
肥料の与え方
肥料を与えるには、適切なタイミングを知りましょう。おすすめは12月から2月の休眠期です。冬に肥料を与えておくと春の新芽や花の増加につながりますし、この先1年を通して丈夫に育ちます。
このとき与える肥料は速効性のあるものではなく、緩効性のものを選びましょう。種類が分からない場合は、ホームセンターや園芸店で尋ねると確実です。肥料の撒き方は、根元に植えるだけなので簡単です。
冬に肥料を撒いたあと、6月頃にもう一度同じ緩効性の肥料を撒くと、より育ちやすくなります。
注意すべき病気と害虫
カナメモチがかかりやすい病気として挙げられるのが「ごま色斑点病」です。
4月頃に発病し、その名の通り灰色をしたごま粒のような斑点が葉っぱに現れます。一度できた斑点は翌年以降も同じタイミングで同じ場所に発生する、という特徴を持っています。
見た目も悪くなるうえに、カナメモチが枯れてしまうリスクのある病気です。ごま色斑点病にかかっている葉っぱを見つけた際は、ほかの枝葉に感染しないよう素早く取り除きましょう。予防として春前に薬剤を撒いておくのも手です。
病気と併せて、害虫にも注意が必要でしょう。カナメモチにつきやすい害虫は「ルリカミキリ」です。
夏前に発生することが多く、卵を植えつけられたカナメモチは内側から食べられてしまいます。数が少なければただちに影響は出ませんが、複数箇所を食べられた場合はカナメモチが枯れる恐れがあるため、注意を払いましょう。
ルリカミキリの発生は、幹や枝から繊維の形をした木くずが出ているかどうかで判別できます。
夏頃に挿し木で増やす
カナメモチを増やして育てたいときは、挿し木という方法を用います。伸びた枝を15cmほどの長さに切り、挿し木用の土に挿す方法です。
カナメモチは夏頃に剪定を行う必要があり、そのときに切った枝を使うと良いでしょう。直射日光を避けた明るい場所で、養生しながら挿し木を育てます。20~30cmほどに育ったら植え替えましょう。
挿し木で増やすメリットは、カナメモチを種から育てるよりスピーディーに増やすことができる点です。たくさん並んだカナメモチを早く見たい、という場合は挿し木がおすすめです。
剪定時期と方法
カナメモチを剪定するときは、間違った方法や時期に剪定を行わないよう注意が必要です。正しい手入れの仕方を頭に入れましょう。
年数回の剪定や刈り込みが必要
カナメモチの美しい樹形を保つためには、定期的な剪定が必要です。剪定は少なくとも夏と秋に1回ずつ行うと良いでしょう。夏の剪定は、カナメモチが成長する春の間に過度に育った枝を切るための剪定です。
秋の剪定は、枯れた枝や内側に伸びて邪魔をしている枝を切るための剪定です。これにより風通しが良くなり、ごま色斑点病やルリカミキリを予防する効果が期待できます。
秋に剪定すると冬でも赤い葉を楽しめるようになりますが、花芽も切ってしまうため翌年に花が咲かなくなります。花を咲かせたい場合は夏の刈り込みを強めにして、秋の剪定を最小限にとどめましょう。
下から上へ刈り込むのが基本
刈り込みにはコツがあり、間違った順番で刈り込むと形がきれいに仕上がりません。正しい順番は、まず側面を刈り込み、下から上へ刈り込んでいくやり方です。上から下へと刈り込むと必要以上に刈ってしまい、下の枝を枯れさせてしまう恐れがあるため控えましょう。
刈り込みは一気に行うのではなく、少しずつ行った方がきれいに仕上ります。上まで刈り込みが終わったあとは、上面を整えます。水平に整えるため糸を張るなどして、でこぼこにならないよう気をつけましょう。
刈り込みの際は「刈り込みばさみ」という専用の道具を用います。専用のバリカンを使う手段もありますが、バリカン自体の重さがあるため長時間の作業には不向きです。
庭木の手入れはプロにおまかせ
刈り込みばさみを使う場合も、専用のバリカンを使う場合も、技術や体力が必要です。未経験者では大変なケースが多いため、プロの業者に依頼するという方法もあります。業者に頼めば、安全かつきれいに手入れできるでしょう。
料金はカナメモチの高さや占有面積によって変動します。一般的には、職人1人あたりの作業時間・日数で支払う場合と、カナメモチ1本あたりの料金で支払う場合に分かれるでしょう。
前者の場合、職人に1日依頼したときの相場は安くて1万5,000円ほど、高い場合は3万円ほどかかるようです。後者の場合、対象の木のサイズによって金額が上下します。3m以下なら3,000円ほど、5m以下なら7,000円ほど、7m以下なら1万5,000円ほどが相場です。
庭木の数が多い場合は職人1人に対しての支払い体系、少ない場合は木1本あたりに対しての支払い体系にすると費用を抑えられるでしょう。
華やかなカナメモチは生垣にピッタリ
春に赤く葉っぱが色づくカナメモチは、剪定や刈り込みの必要はありますが、手入れをきちんと行えば美しい景観を生み出します。
生垣にすることでより存在感が増し、通りを歩く人の目を引くでしょう。カナメモチで生垣をつくり、にぎやかな眺めを手に入れてみてはいかがでしょうか?