屋根の葺き替えなど、屋根メンテナンスのときに出てくる言葉が「ルーフィング」です。雨漏りを防ぐためにも、屋根や住まいを長持ちさせるためにも重要なこのルーフィング。
種類による違いや貼り方のポイントなどを知っておけば、その後の屋根メンテの手間やコストに大きな差がでます。施工業者まかせにせず、ポイントを押さえておきましょう!
ルーフィングとは?役割とその重要性
ルーフィングとは、屋根の防水シートのこと。屋根材を支える板「野地板」の上に貼って使用します。その役割にはどんなものがあるのでしょうか。
ルーフィングの役割
雨水から家を守るのは、瓦などの屋根材だけではありません。屋根の下にはルーフィングというシートが貼られていて、屋根の防水効果を高めています。
雨漏りは住まいを劣化させる大きな要因です。住まいを守り、長く快適に住んでいくために、重要な役割を果たしているのがルーフィングなのです。
ルーフィングの重要性
住まいを雨漏りなどの被害から守るのは瓦などの屋根材、というイメージがあるかもしれません。でも、屋根材は強い風や飛来物の影響を受けて、ずれたり割れたりすることもあります。また、壁の中や屋根裏に湿気がこもらないよう、換気するために屋根には隙間も設けられています。
このような隙間からは、台風のときなど雨水が浸入してしまうことも。そんなときでも防水機能があるルーフィングがあれば、野地板に水が染み込み、室内に侵入することは防止できます。実際、雨漏りの原因のほとんどは、屋根材の劣化ではなく、ルーフィングの劣化や破損によるもの、というデータもあります。
最近では雨を通さず湿気を通す、特殊なルーフィングも使われるようになりました。野地板や屋根裏を効率的に乾燥させられるので、室内の換気ができ、結露防止にもつながっています。
どのようなルーフィングが使われているかがわかるのは、新築のときと、葺き替えなどのメンテナンスの時だけ。使われるルーフィングの種類や施工方法について、見積もりや設計の段階で確認しておけば、費用対効果や、その後のメンテナンスの頻度などもわかります。
ルーフィングの劣化の原因
住まいに使われている建材の多くに耐用年数があるように、ルーフィングにも寿命があります。一般的には10年程度といわれており、その後は防水効果が薄れていきます。
ルーフィングが劣化する原因は、屋根という過酷な環境にあることによる伸縮や、施工時に開けた穴からの破損など。雨漏りが発生して初めて劣化に気づくことが多いので、耐用年数を考慮した定期的なメンテナンスが重要です。
ルーフィングの種類とメーカー・価格
一言でルーフィングと言っても、現在では防水以外の機能性を持つさまざまなものが出ています。値段もさまざまですが、その分劣化しにくいなどの特徴もあります。長い目で、コストパフォーマンスが高いルーフィングを選びましょう。
ルーフィングの種類
ルーフィングの種類には、素材や機能性でさまざまなものがあります。
アスファルトルーフィング
もっともよく使われているルーフィングで、アスファルトルーフィング940が正式名称です(940では単位面積あたりの重さを表す)。フェルト状の紙にアスファルトを染み込ませることで、防水効果を高めているものです。
もっとも安価で防水性が非常に高いのですが、耐久性に劣るというデメリットもあります。住宅メーカーや屋根リフォーム事業者が、屋根の保証期間を10年としているのは、アスファルトルーフィングを使用した場合の耐用年数を考慮しているからです。
改質アスファルトルーフィング
アスファルトルーフィングを改良したもので、耐久性、防水性がより高い素材です。使われるアスファルトに改質ゴムアスファルトが使われるためゴムアスルーフィングとも呼ばれます。20~30年の耐久性があり、アスファルトルーフィングより価格が高い素材です。
粘着層付き改質アスファルトルーフィング
改質アスファルトルーフィングの裏面に粘着層を付けたものです。タック付きルーフィングとも呼ばれます。ルーフィングを野地板に貼る場合、通常は固定のためタッカー(ステープラー)を打つのですが、粘着層がついているため、タッカーが不要。ルーフィングに開く穴が少なくなり、防水効果が高まります。
透湿ルーフィング
高断熱住宅や長寿命住宅などでよく使われるルーフィングで、水は通さず湿気は通す、という特徴があります。アスファルトルーフィングに比べ防水性には劣りますが、その分野地板が湿っても素早く乾燥でき、結果的に野地板の劣化を防いでくれます。
単価が高いのが大きなデメリットですが、耐久性も非常に高く、長い目で見るとコストパフォーマンスが高い素材といえます。
遮熱ルーフィング
表面にアルミ反射層があるルーフィングです。屋根から入る熱を遮ってくれるため、室内の温度を保つ効果があります。ただし、施工時に屋根材とルーフィングの間に隙間を開ける必要があり、屋根材によっては遮熱効果が期待できない場合もあります。
不織布ルーフィング
アスファルトルーフィングの中でも安価なものは紙のシートが使われています。このシートを合成繊維の不織布にし、耐久性を高めたものが不織布ルーフィングです。伸縮性の高いものはストレッチルーフィングとも呼ばれます。温度変化による伸縮に強いので、耐久性が高いのがポイントです。
高分子系ルーフィング
合成繊維のシートに、合成樹脂や合成ゴムなどで防水加工をした透湿性の高いルーフィングです。アスファルトを使っておらず、欧米ではこのルーフィングがよく使われています。耐久性、防水性が高い上、軽量なので、屋根だけでなく、ベランダの防水などにも使われています。
おすすめルーフィング【機能・価格・メーカー】
ルーフィングは販売しているメーカーによって、機能や価格が異なる場合があります、施工時や施工中に商品名を確認すれば、どんな特徴をもった素材が使われているかがわかります。
【アスファルトルーフィング】
- Pカラー (田島ルーフィング)
4,000~5,000円(21m×1m) 耐用年数10年
汎用性が高く、勾配屋根の多くに使われているアスファルトルーフィングです。北海道や東北などの寒冷地に適したタイプも販売されています。 - カッパ23 (日新工業株式会社) 4000円(21m×1m) 品質の高い改質アスファルトを使用し、ルーフィングに合成繊維不織布をラミネートした、高耐久の屋根下葺材です。優れた釘穴シール性を特長とし、改質アスファルトの効果により、釘穴をしっかりシールして雨水の浸入を防ぎます。
【改質アスファルトルーフィング】
- ニューライナールーフィング (田島ルーフィング)
5,000~10,000円(20m×1m) 耐用年数30年
耐久性、防水性に加え、施工性も高いルーフィングとして人気の商品です。不織布シートを使用しており、温度変化を受けにくいため、耐用年数が30年と長いのが特徴。軽量で施工しやすいという特徴もあります。 - サンライトG (常裕パルプ工業)
3,000~4,000円(20m×1m)耐用年数20年
軽量改質アスファルトを使ったルーフィングです。軽く施工しやすいだけでなく、耐寒、耐熱性を高めてあるので、耐用年数も長くなっています。
【粘着層付改質アスファルトルーフィング】
- タディスセルフ (田島ルーフィング)
10,000円(16m×1m) 耐用年数20年
貼った直後なら簡単にはがせるのに、2時間経つと粘着力と防水効果が高まるルーフィングです。固定用釘穴周辺の防水性も高く、雨漏り防止効果があります。 - カスタムライト (日信工業)
7,000~12,000円(10m×1m) 耐用年数20年
合成不織布使用で、施工しやすく、耐久力が高い商品です。温度変化に対応する柔軟性があり、低温時の破損も少ないことから、多くの屋根施工業者に選ばれています。
【透湿ルーフィング】
- タイベックルーフライナー (デュポン)
25,000~30,000円(50m×1m) 耐用年数50年
テフロンなど新素材開発で知られるデュポン社の、高密度ポリエチレン不織布「タイベック」を使用した透湿ルーフィングです。耐久性に優れ。屋根の寿命を延ばす素材として注目されています。
【切り売りしてるものが欲しい場合】
- カラールーフィング 彩 切売1m (シズレキ) 208円(切り売り1m) アスファルトルーフィングの表面に着色をしたカラールーフィングです。外観が美しく、工事中の屋根をモダンに演出します。一般のアスファルトルーフィングに比べて太陽熱の吸収が少なく、また適度のカラーコーティングにより滑りにくくなっております
ルーフィングの貼り方<チェックポイント>
ルーフィングの機能性を最大限に高めるためには、正しい貼り方をすることも重要です。工期を無理に抑えるのではなく、しっかり施工してもらって、雨漏りの発生を抑えましょう。メンテナンスの頻度が削減でき、長期的なコストパフォーマンスが高まります。
重ね代の重ね幅が重要
ルーフィングの施工は、1枚をそのまま野地板に貼ればよい、というわけではありません。幅1m程度でロール状になっているので、屋根の面積にあわせてルーフィングを並べ、下から上へと貼っていきます。
貼り方のポイントはルーフィング同士に隙間ができないよう、重ね幅を十分にとること。ルーフィング自体に指定の重ね代がプリントされていますので、指定幅以上の重ね幅をとってもらいましょう。上下100ミリ以上、左右は200ミリ以上が基本と言われています。
棟や屋根の谷間など雨漏りが起こりやすい場所には、二重三重に貼ってもらうことも重要です。
タッカーと釘打ち止め、コーキング処理
粘着層付きルーフィングはそのまま野地板に貼ってしまいますが、それ以外のルーフィングはタッカー(ステープラー)で固定します。通常は30cm感覚でタッカーを打つので、多くの穴が開くのですが、直角にタッカーを打つことで、穴回りの隙間が少なくなり、浸水を防げます。
屋根の葺き替えで、スレートなどの平面屋根を剥がさず、その重ね葺きすることをカバー工法と呼びます。この場合は、ルーフィングをタッカーで留められないので、釘打ちで留めます。タッカーより大きな穴が開くので、釘の上から防水シートを貼ったり、コーキング材でカバーすることで、穴から雨水が浸透しないようにします。
立ち上がり処理、貼り方は経験が重要!
立ち上がりとは、建築用語で平たいところから垂直に立ち上がった部分のことです。ルーフィングでは、下屋根と壁が合わさる部分に立ち上がり処理が必要です。200ミリ以上立ち上げ処理をしておくことで、接合部分からの浸水を防止できます。
立ち上がり部分に隙間ができないようルーフィングを貼るのは至難の業です。経験豊かな職人さんに依頼して、しっかりと防水してもらいましょう。
ルーフィング選び、施工時のポイント
ルーフィングは屋根を葺いてしまえば見えない部分です。建築費用を抑えるために、最低限のルーフィングで施工されることも少なくありません。ですが、屋根の異常はすぐにはわからない上、雨漏りがしたときには家の劣化が始まっていることになります。長い目でコストを考え、ルーフィングや工法を選定するのがおすすめです。
屋根材との組み合わせ
機能性や耐久性を考えてルーフィングを選んでも、その上に置く屋根材との組み合わせがあっていなければ、その性能が無駄になってしまうこともあります。
例えば、屋根からの熱を防ぐために遮熱ルーフィングを選んだ場合、ルーフィングと屋根材の間に隙間がなければ、その効果は発揮できません。スレート屋根や金属屋根は、野地板と屋根材の間に隙間を作らない工法が一般的なので、金属屋根だからと遮熱ルーフィングを使っても、隙間を作る工法にしない限り意味がないのです。
機能性が高く、耐用年数も長い透湿ルーフィングも、湿気を逃がすための隙間が必要です。屋根材と野地板に隙間を作らない屋根材を選ぶ際には注意しましょう。
見積もり時に、品番まで確認する
同じ名前のルーフィングでも、ちょっとした違いで品質が大きく変わります。
例えば田島ルーフィングのPカラーはアスファルトルーフィングですが、PカラーEX+はポリマーを加工した改質アスファルトルーフィングなので、耐久性も防水性も大きく異なります。
どんなルーフィングを使用するのか、見積もり時に品番まで確認しておけば、特徴がわかって安心です。
施工状況を写真で確認
どんなに高性能のルーフィングを使用しても、正しく施工されなければ意味はありません。重ね幅は十分か、立ち上がり処理はされているかなど、施工状況を写真に撮影してもらい、確認できるようにしておきましょう。
できれば、施工した日に状況を確認させてもらうようにすると、気になる点がその場で解決できますね。
ミツモアで屋根葺き替え工事の見積りを依頼しよう!
雨漏りなど屋根のトラブルは、突然発生し、気づいたときに住まい全体の耐久性や価値を低くする原因になってしまいます。そんなトラブルから大切な家を守ってくれるのがルーフィング。新築でも屋根の葺き替え工事でも、適切なルーフィングを正しく施工することで、大切な住まいが守れます。目に見えない屋根の工事だからこそ、信頼できる専門業者に依頼して、住まいを長持ちさせましょう!