「従業員の給料を上げたから月額変更届を提出する必要があるのかな」
「そもそもどんなタイミングで随時改定すべきなの?」
会社で人事労務を担当しているとこんな疑問にぶつかることはありませんか?
「月額変更届」の提出が遅くなると、後々保険料の差額を精算する必要があるのできちんと提出するようにしましょう。
標準報酬月額の随時改定とは
昇給や昇格などがあると、社会保険の定時決定で決められた標準報酬月額よりも報酬が著しく高くなる場合があります。一方、減給等により、報酬が著しく低くなる場合もあります。
そのようなときは月額変更届を提出し標準報酬月額の変更をしますが、この標準報酬月額の変更のことを随時改定といいます。標準報酬月額の随時改定と月額変更届について解説していきます。
社会保険料はどうやって決められる?
健康保険料や介護保険料、厚生年金保険料などの社会保険料の基準になる標準報酬月額は、社会保険の加入時に標準報酬月額を決定する資格取得時決定のほか、1年に1回、7月1日現在の社会保険の被保険者について4月から6月の報酬を平均する(定時決定)ことで標準報酬月額が定められます。そして、原則そこで決定された標準報酬月額を当年9月から翌年8月までの一年間使用することになっています。
しかし、定時決定で決められた標準報酬月額に対して月々の報酬月額が著しく変化を生じた場合は、社会保険の月額変更届を提出することで標準報酬月額を変更する必要があります。それが随時改定です。
随時改定とは
定時決定では社会保険の被保険者に対し、1年に1回、実際の報酬と標準報酬月額を合わせるために行われます。基本的には社会保険の被保険者の標準報酬月額は定時決定で決定されますが、被保険者や70歳以上被用者の報酬が昇給や昇格などで著しく変化した場合には、次の定時決定を待たずに標準報酬月額を見直します。
このように、定時決定で決定した標準報酬月額を見直しして、新しい標準報酬月額に変更することを随時改定といいます。そして、この随時改定を行うために必要な届け出が「月額変更届」です。
随時改定の条件と時期
被保険者の報酬額に大きな変動があったときに行うのが随時改定です。この見出しでは、実際に随時改定を行わなければならない条件や随時改定を行う時期について説明していきます。
随時改定となる条件
随時改定は、以下の3つの条件全てを満たした場合です。条件を全て満たした場合、月額変更届を提出する必要がありますので、該当する従業員がいないかどうかこまめにチェックするといいでしょう。
(1)昇給又は降給等により固定的賃金に変動があった。
(2)変動月からの3か月間に支給された報酬(残業手当等の非固定的賃金を含む)の平均月額に該当する標準報酬月額とこれまでの標準報酬月額との間に2等級以上の差が生じた。
(3)3か月とも支払基礎日数が17日(特定適用事業所に勤務する短時間労働者は11日)以上である。
引用:随時改定|日本年金機構
各都道府県の標準報酬月額と等級は以下のリンクから確認できます。
固定的賃金の概要と変動要因
随時改定の条件の一つに「昇給又は降給等により固定的賃金に変動があった」があるように、随時改定の条件となる賃金とそうでない賃金があります。随時改定の条件となる賃金を固定的賃金、対象とならない賃金を非固定的賃金と言います。
固定的賃金と非固定的賃金
固定的賃金と非固定的賃金については以下のようになります。上記の通り、月額変更届の提出が必要になるのは固定的賃金の変動があったときのみです。
固定的賃金 | 非固定的賃金 |
---|---|
基本給や通勤手当、役職手当など毎月決まった額が支給されるもの | 残業手当や歩合給(インセンティブ)など一時的に支給されるもの |
ただし、注意が必要なのは、固定的賃金の変動のみでは2等級の差が生じないが、非固定的賃金の変動も併せると2等級以上の差が生じる場合にも随時改定は行われるということです。極端な例としては、基本給の昇給は1円だったが、昇給があった月を含めた3ヶ月間の残業代が大幅に増えて、これまでの標準報酬月額との間に2等級の差が生じた、といった場合でも月額変更届の提出が必要になります。
固定的賃金の変動要因
固定的賃金の変動要因としては以下のような場合があります。
基本給の増加や時給の改定時はもちろん、従業員の引っ越しによる交通費の変動や家族手当、役職手当の支給開始なども固定的賃金の変動となります。
(ア)昇給(ベースアップ)、降給(ベースダウン)
(イ)給与体系の変更(日給から月給への変更等)
(ウ)日給や時間給の基礎単価(日当、単価)の変更
(エ)請負給、歩合給等の単価、歩合率の変更
(オ)住宅手当、役付手当等の固定的な手当の追加、支給額の変更
引用:日本年金機構
随時改定のタイミング
随時改定による社会保険料の改定は、固定的賃金の変動後すぐに行われるわけではなく、変動した月から3ヶ月の標準報酬月額がこれまでの等級から2等級以上変動した後に行われます。つまり、具体的なタイミングとしては変動月から4ヵ月目です。下記の図では10月に固定的賃金の変動があり、4ヵ月目にあたる1月に社会保険料が改定されています。
月額変更届は変動月から3ヶ月目の給与が支給された後、速やかに提出します。上記の図では12月分の給与を支払った後です。
変更された社会保険料を控除するのはいつから?
社会保険料を翌月納付している場合は、標準報酬月額改定月の翌月(報酬の変動があった月から5ヶ月目)の給与から改定された保険料が控除されます。また、当月納付の場合は、標準報酬月額改定月の当月(報酬の変動があった月から4ヶ月目)の給与から控除されます。
随時改定とならない例外的ケース
これまでの標準報酬月額との間に2等級以上の差が生じた場合でも、随時改定が行われない2つの例外的ケースがあります。例外的ケースは以下の2つの場合です。
(ア)固定的賃金は上がったが、残業手当等の非固定的賃金が減ったため、変動後の引き続いた3か月分の報酬の平均額による標準報酬月額が従前より下がり、2等級以上の差が生じた場合
(イ)定的賃金は下がったが、非固定的賃金が増加したため、変動後の引き続いた3か月分の報酬の平均額による標準報酬月額が従前より上がり、2等級以上の差が生じた場合
引用:日本年金機構
上記を踏まえて固定的賃金の変動と月額変更届の提出の必要の有無の関係をまとめると以下の表のようになります。
表から分かるように月額変更届の提出が必要なのは、固定的賃金と標準報酬月額の増減が一致したときです。
固定的賃金の変動 | 増 | 増 | 減 | 減 |
2等級以上の差 | 増 | 減 | 増 | 減 |
月額変更届の必要の有無 | ○ | × | ○ | × |
月額変更届の書き方と添付書類
社会保険の標準報酬月額を随時改定するには、月額変更届を記入して提出する必要があります。月額変更届の書き方と添付する書類について解説していきます。
月額変更届の書き方
月額変更届は以下のリンクからダウンロードすることができます。
それぞれの項目に記載する内容
①被保険者整理番号 | 資格取得時の被保険者番号(保険証番号)を記入 |
④改定年月 | 標準報酬月額が改定される年月(給与支払月で記載した3箇月目の翌月の月) |
⑤従前の標準報酬月額 | 現在の標準報酬月額を千円単位で記入します |
⑥従前改定月 | 従前の標準報酬月額が適用された年月を記入します |
⑦昇(降)給 | 昇給又は降給のあった月の支払月を記入し、該当する区分を○で囲みます |
⑧遡及支払額 | 遡及分の支払があった月と支払われた遡及差額分を記入します |
⑨給与支給月 | 固定的賃金の変動が反映した月から3ヵ月分の月について記入します |
⑩給与計算の基礎日数 | 給与支払いの基礎となった日数を記入します。月給者の場合は暦日数、日給・時給者は、出勤日数等報酬(給与)支払の基礎となった日数を記入します |
⑪通貨によるもの | 給料、手当等名称を問わず労働の対償として金銭で支払われるすべての合計額を記入します |
⑫現物によるもの | 報酬のうち、食事、住宅、被服、定期券等、金銭以外で支払われるものについてご記入します |
⑭総計 | 3ヵ月間の⑬合計を総計します |
⑮平均額 | ⑮総計の金額を3で除して平均額を算出して1円未満を切り捨てます |
⑯修正平均額 | 昇給がさかのぼって対象月中に差額分が含まれている場合は、差額分を除いた平均額を記入します |
⑱備考 | 1~3については該当する項に〇で囲みます。2の「二以上勤務」には被保険者が2ヶ所以上の事業所で勤務(ダブルワーク)している場合に〇で囲みます。また、4の「昇給・降給の理由」には、基本給の変更、通勤手当増や役職手当の支給開始といったように具体的な理由を記入します。 |
従業員が70歳以上の場合
70歳以上被用者の方のみ、本人確認のうえ個人番号を記入の上、備考欄に「70歳以上被用者月額変更」と記入します。
添付書類について
月額変更届に添付書類は原則として不要です。
例外として、降給の場合、改定月前4か月分の賃金台帳のコピーが、さらに、事業主の報酬が2等級、または、役員の報酬が5等級以上引き下がる場合には取締役会議事録の写しも必要となります。
月額変更届の提出先や提出期限、提出方法
月額変更届の準備ができれば、事業所を管轄する年金事務所などに提出することになりますが、紙媒体での提出だけでなく電子媒体での提出や電子申請も認められています。
ここでは、月額変更届の提出先や提出期限、提出方法などについて解説していきます。
月額変更届の提出先
月額変更届は、事業所の所在地を管轄する年金事務所に持参するか事務センターに郵送します。
健康保険が全国健康保険協会(協会けんぽ)のものではなく、健康保険組合のものである場合にはその健康保険組合にも提出する必要があります。
月額変更届の提出期限
月額変更届にはいつまでに提出しなければならないという期限はありません。上記で説明した月額変更の対象となる従業員について、報酬の変動があった月から3ヶ月目の給与を支給した後、速やかに提出しなければなりません。
月額変更届を提出し忘れた場合は?
対象となる従業員の月額変更届を提出し忘れた場合には、そのことに気付いた時点で年金事務所などに連絡のうえ速やかに提出します。連絡、提出時期によっては、現状の標準報酬月額によって計算された保険料を納付している可能性もあるため、その状況も確認しておくことが必要です。
なお、これまでは月額変更届を標準報酬月額の改定月(報酬の変動があってから4ヶ月目)の初日から60日以上経過して年金事務所などに提出する場合には、3ヶ月分の出勤簿や賃金台帳の写し(該当者が役員である場合は取締役会の議事録など)を添付しなければなりませんでしたが、2019年4月以降は不要になっています。
これは、行政手続コストの削減のため、事業所調査実施時に確認する取扱いに変更されためです。
月額変更届の提出方法
月額変更届は、紙媒体での提出だけではなく、電子媒体(CDまたはDVD)での提出や電子申請も認められています。
電子媒体で提出する場合には、指定のフォーマットで作成する必要があります。また、電子申請についても利用までには一定の手続きがあります。詳しくは下記のホームページでご確認ください。
月額変更届の電子申請
月額変更届の提出を上記で説明した電子申請で行う場合には、政府のポータルサイト「e-Gov(イーガブ)」を利用することになります。
電子申請を利用することで年金事務所などに行くことも少なくなりますし、郵送料も削減できますが、導入にあたっては電子的に身分や所属組織を証明する「電子証明書」を取得しなければならず、その費用(年間で1万円程度)もかかります。
このように電子申請の導入にはある程度の手間や費用がかかりますが、政府は行政手続コストを削減するために電子申請の利用促進を図っています。
【電子申請の流れ】
- 電子証明書の取得
- パソコンの環境設定
- 申請データの作成
- 申請
また、現在はe-Gov電子申請システムからの月額変更届の提出は署名が必要な手続のため電子証明書が必要ですが、2020年4月より電子証明書がなくても手続できるようになります。益々利便性があがると思われますので検討されてはどうでしょうか。
2020年4月から電子申請が義務化
2020年4月から、次に該当する法人が月額変更届や算定基礎届など一部の社会保険・労働保険に関する手続きを行う場合には、電子申請で行うことが義務化されることになっていますので注意が必要です。
- 資本金、出資金または銀行等保有株式取得機構に納付する拠出金の額が1億円を超える法人
- 保険業法により、保険会社のみに設立が認められている「相互会社」
- 「投資信託及び投資法人に関する法律」により、特定の資産への投資・運用を目的として設立される「投資法人」
- 「資産の流動化に関する法律」により、資産の流動化に係る業務を行うために設立される「投資目的会社」
当面は大企業や一部の法人のみが対象になっていますが、今後はその対象も拡大していくことが予想されますので、まだ電子申請に対応していない場合には準備を進めておくことが必要です。
随時改定に関する留意事項
前項まで随時改定や月額変更届について解説してきましたが、留意しなければいけない場合があります。例えば、短時間労働者の随時改定や、休職の場合に随時改定はどのようにすれば良いのかなどです。
本項では、これらの随時改定に関する留意事項について解説をしていきます。
短時間労働者の随時改定
短時間労働者が随時改定する場合は、3ヵ月ともに支払基礎日数が11日以上あることが条件です。
健康保険や厚生年金保険などの社会保険における短時間労働者の定義は以下になります。
(1)一般社員の所定労働時間および所定労働日数の4分の3未満であること
(2)週の所定労働時間が20時間以上あること
(3)雇用期間が1年以上見込まれること
(4)賃金の月額が8.8万円以上であること
(5)学生でないこと
(6)常時101人以上の企業(特定適用事業所)に勤めていること(申出により、適用される場合もあります)
上記の条件に該当する従業員の随時改定を行う場合、月額変更届の⑱備考欄の「3. 短時間労働者」を〇で囲みます。
遡及昇給があった場合
遡及して昇給があり昇給差額が支給された場合は、まず差額が支給された月を変動月とします。そして、差額を差し引いた3ヵ月間の平均月収と現在の標準報酬月額の間に、2等級以上の差がある場合に随時改定が行われます。
遡及昇給の計算例と月額変更届への記入
<例> 10月に8月に遡及昇給、月給につき20,000円の昇給の場合
差額40,000円(=20,000円/月×2ヶ月)が支給された10月を変動月とします。
基本給 | 通勤手当 | 残業代 | 昇給差額(2ヶ月分) | 総支給額 | |
---|---|---|---|---|---|
10月 | 22万円 | 15,000円 | 10,000円 | 40,000円 | 28万5,000円 |
11月 | 22万円 | 15,000円 | 25,000円 | 26万円 | |
12月 | 22万円 | 15,000円 | 20,000円 | 25万5,000円 |
具体的な計算式は、
(10月の総支給額:28万5千円ー差額:40,000円+11月の総支給額:26万円+12月の総支給額:25万5千円)÷3 = 253,333.333… |
となります。1円未満の端数は切り捨てなのでこの場合の平均月額は25万3,333円となります。
月額変更届の⑧遡及支払額欄には「10月40,000円」と記入し、上記で算出した平均額を⑯修正平均額欄に記入します。
なお、月額変更届の⑮平均額の欄には通常の方法で算出した平均額を記入しておきます。
その他いくつかの注意点
その他いくつかの随時改定に関する注意点があります。
休職の場合
休職給を受けた場合は固定的賃金の変動には該当しないため、随時改定は行われません。
一時帰休の場合
一時帰休(レイオフ)により継続して3ヵ月を越えて通常の報酬よりも低い休業手当が払われた場合は、固定的賃金の変動とみなされ随時改定が行われます。また、一時帰休が解消されて、継続して3ヵ月以上通常の報酬が払われた場合も随時改定が行われます。
標準報酬月額等級表の上限又は下限にわたる等級変更の場合
標準報酬月額等級表の上限又は下限にわたる等級変更の場合は、従前の標準報酬月額との間に2等級以上の差がなくても随時改定が行われます。
随時改定の保険者算定(年間平均による随時改定)
これまで説明したように標準報酬月額と実情が合わなくなると、随時改定をする必要があります。しかし、通常の随時改定の算出方法で健康保険や厚生年金保険などの社会保険の標準報酬月額を決定しても、現実とは不当の標準報酬月額になる場合があります。
このような場合の標準報酬月額の算出方法として、保険者算定で求めることが可能になりました。本項では、随時改定の保険者算定について詳しく解説していきます。
保険者算定とは?
定期昇(降)給月と繁忙期がちょうど重なってしまった場合、変動月から随時改定を行うと著しく不当な標準報酬月額になってしまうケースがあります。このような事態に対応するため、平成30年10月1日から標準報酬月額として年間平均を用いることとした随時改定を行うことが可能になりました。
このことを随時改定の保険者算定と言います。
年間平均を用いた随時改定の条件
年間平均を用いた随時改定の条件は日本年金機構によると以下のようになっています。
下記(2)の差が、業務の性質上例年発生することが見込まれ、かつ、報酬月額の変動(※)も、業務の性質上例年発生することが見込まれることが前提であり、また、被保険者が同意していることが必要となり、そのうえで、次の全てを満たした場合に、年間平均による随時改定の対象となります。
※ 固定的賃金の増加(減少)も、例年発生していること(定期昇給など)が条件となります。
例えば、定期昇給とは別の単年度のみの特別な昇給による改定、例年発生しないが業務の一時的な繁忙と昇給時期との重複による改定や、転居に伴う通勤手当の支給による改定等は、年間平均による随時改定の対象外です。
(1)随時改定の保険者算定は、被保険者の同意書を添付した申し立てがあった場合に限り認められます。また、保険者算定が行われるには、以下の要件を満たす必要があるのです。
現在の標準報酬月額と通常の随時改定による標準報酬月額(昇給(降給)月以後の継続した3か月間の報酬の平均から算出した標準報酬月額)との間に2等級以上の差があり、
(2)また、次の①と②との間に2等級以上の差があり、
①通常の随時改定による標準報酬月額
②昇給(降給)月以後の継続した 3 か月の間に受けた固定的賃金の月平均額に、昇給(降給)月前の継続した9か月及び昇給(降給)月以後の継続した3か月の間に受けた非固定的賃金の月平均額を加えた額から算出した標準報酬月額(年間平均額から算出した標準報酬月額)
(3)現在の標準報酬月額と年間平均額から算出した標準報酬月額との間に1等級以上の差があること
引用:日本年金機構
上記は少々わかりづらい面がありますので、以下で具体例を挙げて説明します。
キーワードは繁忙期? 具体例を用いてわかりやすく説明!
例えば、普段は残業がほとんどない会社ですが、7月から9月までの繁忙期は多くの残業があるとします。また、1年に1回の昇給月も7月にあります。
この場合下記Aさんを例に随時改定の保険者算定について解説していきます。
月 | 10~6 | 7 | 8 | 9 | 10 |
---|---|---|---|---|---|
固定的賃金 | 30万円 | 31万円 | 31万円 | 31万円 | 31万円 |
非固定的賃金 | 0円 | 11万円 | 11万円 | 11万円 | 0円 |
標準報酬月額 | 300千円 | 300千円 | 300千円 | 300千円 | 随時改定(保険者算定) |
通常の随時改定(イ)410千円(27等級)での計算方法
7月、8月、9月の固定的賃金の平均310千円 + 7月、8月、9月の非固定的賃金の平均110千円 = 420千円
この金額を東京都の保険料額表に当てはめると410千円(27等級)になります。
年間平均を用いた保険者算定での計算方法
年間平均を用いた随時改定の条件として、まず、
現在の標準報酬月額(ア)と通常の随時改定による標準報酬月額(昇給(降給)月以後の継続した3か月間の報酬の平均から算出した標準報酬月額)(イ)との間に2等級以上の差があること
が挙げられます。
上記の表から見て、Aさんの(ア)は300千円(22等級)で、(イ)は410千円(27等級)のため、2等級以上の差があります。
次に、
①通常の随時改定による標準報酬月額(イ)
②昇給(降給)月以後の継続した3か月の間に受けた固定的賃金の月平均額に、昇給(降給)月前の継続した9か月及び昇給(降給)月以後の継続した3か月の間に受けた非固定的賃金の月平均額を加えた額から算出した標準報酬月額(年間平均額から算出した標準報酬月額)(ウ)
の間に2等級以上の差があること
Aさんの(イ)は410千円(27等級)で、(ウ)は340千円(24等級)のため、2等級以上の差があります。
最後に、
現在の標準報酬月額(ア)と年間平均額から算出した標準報酬月額(ウ)との間に1等級以上の差があること
Aさんの(ア)は300千円(22等級)で、(ウ)は340千円(24等級)のため、1等級以上の差があります。
よってAさんの標準報酬月額は本来なら10月から通常の随時改定(イ)の410千円(27等級)になるのですが、上記の条件をすべて満たしているため保険者算定による随時改定が行われます。そのため、Aさんの標準報酬月額は、10月からは(ウ)の340千円(24等級)になるのです。
このように、通常の随時改定で計算してしまうと標準報酬月額を過大評価してしまうため、被保険者の負担が実情に比べて重くなってしまいます。そのため、随時改定の保険者算定で年間平均を用いた方が、実情に近い標準報酬月額が算出されるのです。
年間平均を用いた随時改定時の手続き
年間平均を用いた随時改定を行う場合月額変更届への記入と別途書類の提出が必要になります。
月額変更届への記入
⑯修正平均額欄に上記の方法で算出した年間平均の額を記入します。
⑱備考欄の「6. その他」を〇で囲み、「年間平均」と記入します。
別途提出が必要な書類
下記の2種類の書類が必要となります。また、場合によっては賃金台帳などが必要になる場合もあります。
- 年間報酬の平均で算定することの申立書(随時改定用)
- 健康保険 厚生年金保険 被保険者報酬月額変更届・保険者算定申立に係る例年の状況、標準報酬月額の比較及び被保険者の同意等(随時改定用)
書類は以下のリンクからダウンロードできます。
社会保険の月額変更届について:まとめ
このように、社会保険の標準報酬月額の随時改定は、従業員それぞれパターンが違いますので大変に難しい作業です。また、随時改定を行うそれぞれのケースについてわからなければ、すべて自分で調べる必要があるため手間もかかります。
このように難しく手間もかかる作業は、社会保険の手続きのプロである社会保険労務士に依頼してみてはいかがでしょうか。プロにまかせれば精度の高い月額変更届などの書類が作成できますし、時間の短縮にもなりますのでおすすめです。
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