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労災保険の休業補償 補償期間や金額、請求方法をわかりやすく解説

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最終更新日: 2019年07月02日

労災保険には労働災害で働けない期間の所得保障を目的とした休業補償制度があります。労災事故は非日常の事柄ですから保険の請求方法を知る人事担当が社内にいないこともあります。しかし、労災が発生した場合は迅速に対応しなければなりません。労災保険の休業補償の手続きと会社が行わなければいけない補償について詳しくご説明します。

労災保険の休業補償

車いす画像
労災保険の休業補償

労災保険とは「労働者災害補償保険」の通称です。労災保険は労働者の業務上や通勤途中の疾病・障害・死亡等に対して、被災労働者や遺族に必要な保険給付を行います。その中で、業務(又は通勤)が原因で負傷や病気になり賃金を受け取れない場合に受ける保険給付を休業補償給付(休業給付)といいます。

休業補償給付と休業給付

労災保険による休業中の給付には「休業補償給付」と「休業給付」があります。休業の原因となった災害が業務災害か通勤災害かにより保険給付がことなります。

①休業補償給付:業務災害が原因となった休業の保険給付です。

(例)所定の就業場所で所定時間の業務中・休憩時間中・出張中・作業の準備中・後始末中・開始前の待機中などにおきた労災
※疲労や過労・ストレスが原因で発症した疾病は、業務との因果関係が認められないと労災と認定されません。

業務災害
業務災害 出典:厚生労働省

②休業給付:通勤災害が原因となった休業の保険給付です。

(例)住居と就業の場所との往復で社会通念上合理的と認められる通勤方法の通勤途上でおきた労災
※経路の逸脱や中断は、その間およびその後の往復は「通勤」とは認められませんが、日用品の購入・病気の診療・保育園などの送迎は日常生活上必要な行為として通勤の中断が認められます。また、経路に戻った後は通勤と認められます。

労災保険
労災保険 出典:厚生労働省

休業補償を受けるための要件

労災保険の休業補償を受けるためには労災保険に加入しており①~③の要件をすべて満たす必要があります。要件を満たしたうえで、休業の4日目から休業補償給付(休業給付)を受け取ることができます。

①業務(又は通勤)の負傷・疾病の療養中であること。
※医師の診断書で証明する必要があります。

②療養中のため労働することができない状態であること。

③会社から賃金が払われていないこと。
※通院など一部休業する場合など会社から平均賃金の60%以上の賃金が支払われていると休業補償は給付されません。また、派遣社員は派遣先会社の労災保険に加入していないため、派遣会社の労災保険をつかい休業補償を受けることになります。

休業補償が受けられる期間は?

クレーン画像
休業補償が受けられる期間は?

休業補償はいつからいつまで受けられるのでしょうか。労働災害は内容によっては休業が長期化します。労務不能な期間が長期化すると、その間の賃金収入がなくなるため社員は不安を覚えます。結果、会社側に色々な質問をしてきますので対応しなければなりません。労災保険の休業補償期間だけでなく、会社が行わなければいけない休業補償期間についても詳しくご説明します。

休業補償の期間

労災保険の休業補償を受けられる期間は休業4日目から負傷・疾病が治った日、もしくは1年6ヶ月後の早いほうです。1年6ヶ月時点で完全に災害前の状態になっていなくても、症状が治っておらず傷病等級に該当する場合は「休業補償」が打ち切られ「傷病補償年金」に切り替わります(傷病等級に該当しない場合は引続き休業補償が適用されます)。

1年6ヶ月経っても負傷・疾病が治っていないときは、1ヶ月以内に「傷病の状態等に関する届」を労働基準監督署に提出し労働基準監督署長の判断で傷病補償年金が支給されます。また、休業補償給付と傷病補償年金は併給できません。

待機期間中は会社が休業補償を行う

業務災害発生から3日間の待機期間は労災保険の休業補償給付が給付されませんので会社が平均賃金の60%以上の休業補償をします。負傷や疾病が軽度で待期期間中に労務可能となった場合でも休業日分の休業補償は会社が行います(通勤災害の場合は待期期間の休業補償は必要ありません)。

休業1日目の数え方は業務災害が発生した時間が所定労働時間内か所定労働時間外で異なります。

○所定労働時間内は当日が休業1日目
所定労働時間の一部について労働することができないため。

○所定労働時間外は翌日が休業1日目
残業中に労災が発生し、翌日から労働することができなくなるため。

また、待機期間に会社の所定休日がある場合は所定休日も1日として数えます。
(例1)金曜日の所定労働時間中に業務災害が発生した → 金曜・土曜・日曜が待機期間
(例2)金曜日の残業中に業務災害が発生した → 土曜・日曜・月曜が待機期間

特定社会保険労務士からのコメント

上野社会保険労務士事務所 - 福岡県筑紫野市天拝坂

待機期間中の休業補償を会社が行う場合、平均賃金の60%以上を支払うための給与計算の手間や被災労働者の気持ちを考えて、平均賃金の100%を補償するのが一般的です。特に月給制の場合はそうです。
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休業補償の金額は?

薬と水
休業補償の金額は?

労災保険の休業補償でもらえる金額はいくらくらいなのでしょうか。休業補償は平均賃金の80%です。休業補償は非課税所得ですので手取り金額を考えると通常給与の80%よりも多くなります。それでも、休業期間の生活を維持できるか気になるところです。休業補償の金額について詳しく解説します。

休業補償の給付額

休業補償の給付額は休業補償給付と休業特別支給金をあわせた金額となります。休業特別支給金は、負傷や疾病による療養のため労働することができず賃金を受けられない日の4日目から支給されます。申請は休業補償給付と同時に行います。

休業補償の給付額の計算方法

①休業補償給付 =(給付基礎日額の60%)× 休業日数
②休業補償特別支給金 =(給付基礎日額の20%)× 休業日数

休業補償の給付額の具体的な計算例

(例)給付基礎日額5,000円の社員が業務災害で20日間休業した場合
①休業補償給付:5,000円×60%×(20日-3日)= 51,000円
②休業補償特別支給金:5,000円×20%×(20日-3日)= 17,000円
給付額は(①51,000円)+(②17,000円)= 68,000円

給付基礎日額

休業補償の給付額の計算につかう給付基礎日額は平均賃金相当額と決まっています。業務災害の発生した日、または直前の賃金締日から直前3ヶ月の賃金をその期間の暦日数で割って計算します。

また、労災保険における給付基礎日額は年齢階層区分により最高限度額を超えるときおよび最低保障額が決められており、給付基礎日額が最高限度額および最低保障額に満たないときに適用されます。

平均賃金資料
平均賃金資料
平均賃金算定内訳表
平均賃金算定内訳表

TOKYOはたらくネット:平均賃金の説明はこちらからダウンロードできます

給付基礎日額の年齢階層別最低・最高限度額一覧表はこちらからダウンロードできます

休業補償の手続き

<strong>休業補償の手続き</strong>
休業補償の手続き

休業補償の手続きは被災労働者が労働基準監督署に請求して労働災害と認定を受けて支給が決定されます。あくまでも請求者は被災労働者であり、会社は事業主証明欄に記入するだけです。しかし、被災労働者が手続きできる状況にない場合もあり会社が手続きの流れを把握しておくのは当然ですし、一般的に会社が段取りをしています。

休業補償請求までの流れ

休業補償の請求の流れは①~⑤となります。労働災害は緊急性が高く、手続き前に病院で診療受けることも多いと思いますが労働災害の治療は健康保険の対象外です。病院には「労働災害による負傷である」と伝えて治療を受けてください(この場合は病院経由で療養補償給付(療養給付)の請求をします)。

健康保険をつかって治療すると労災への切り替え手続きが必要になります。また、健康保険の傷病手当金は業務外の休業を補償するものですから、業務上の理由により給付される労災保険の休業補償とは併給できませんので注意してください。

休業補償請求の手順

① 会社が休業補償給付支給請求書(様式第8号)と平均賃金算定内訳の事業主欄を記入し証明する(休業給付の場合 様式第16号の6)。
② 被災労働者が医師に労務不能の証明をしてもらう。
※①②は会社と医師のどちらが先に証明しても問題ありません。どちらの証明欄も休業補償給付支給請求書(様式第8号)にあります。
③ 被災労働者が労働基準監督署へ休業補償給付支給請求書と平均賃金算定内訳を提出する。
④ 労働基準監督署が被災労働者に支給決定通知書で支給・不支給の通知をする。
⑤ 労災認定され支給の場合は被災労働者の口座に休業補償が振り込まれる。

休業補償請求までの流れ
休業補償請求までの流れ 出典:厚生労働省

注意点

・休業補償給付の時効は1日ごとに発生します。請求権は賃金を受けない日ごとに発生します。請求権発生の翌日から2年以内であれば請求可能です。
・派遣社員の受け入れ中に派遣社員が業務災害をおこした場合は派遣会社の労災保険をつかっています。よって、休業補償給付については派遣先事業主が証明することはありません。療養補償給付を請求する場合は派遣会社と派遣先事業主の両方の証明が必要となります。

休業補償の請求に必要な書類

休業補償の請求は①~④の書類を労働基準監督署に提出します。休業が長期にわたる場合は1ヶ月ごとの請求が一般的です。

① 休業補償給付支給請求書(様式第8号)(休業給付の場合 様式第16号の6)
※事業主・医師の証明のあるもの
② 平均賃金算定内訳
※事業主の証明のあるもの
③ 同一の負傷・疾病よって、障害厚生年金、障害基礎年金などの支給を受けている場合は支給額を証明する書類
④ 通院などで所定労働時間の一部について休業した日が含まれる場合は休業補償給付支給請求書(様式第8号(別紙2))

休業日に一部労働した場合
休業日に一部労働した場合

休業補償給付支給請求書(様式第8号) と平均賃金算定内訳のダウンロードはこちらから

休業補償給付支給請求書(様式第8号(別紙2))のダウンロードはこちらから

受任者払い制度

受任者払い制度
受任者払い制度

受任者払い制度は会社が休業補償を被災労働者に立て替え払いし、被災労働者にかわり休業補償を受け取る制度です。休業補償を労働基準監督署に請求しても、すぐに支払われるわけではありません。最短でも1ヶ月ほどかかります。大きな労災事故ですと労働基準監督署の調査にも時間がかかりますから被災労働者が無収入にならないための選択肢の1つです。

受任者払いってどんな制度?

受任者払い制度とは、会社が平均賃金算定表で証明した給付基礎日額をもとに休業期間の休業補償額を計算して労災保険の休業補償を立て替え払いし、労災保険から被災労働者へ振り込まれる休業補償を会社が受け取る制度です。

被災労働者は休業している期間の給与がありませんから、休業補償が支払われるまでは収入がなく生活の安定を図るのが難しい状態となります。それを解消するための有効手段です。

本来、休業補償は被災労働者に直接支払われるルールですが、労働基準監督署に届け出することにより会社が受け取ることができます。

受任者払い制度に必要な書類

① 労災被災者本人の委任状
② 受任者払いに関する届出書
※①②の様式フォーマットは都道府県によりちがいますので労働基準監督署に問い合わせしてください。

受任者払い制度の流れ

① 会社が休業補償額を被災労働者へ支払いする。
② 被災労働者に「労災被災者本人の委任状」「受任者払いに関する届出書」を記入してもらう。
③ 休業補償給付支給請求書(様式第8号)と①②を一緒に労働基準監督署に提出する(休業給付の場合 様式第16号の6)。
※必ず被災労働者に休業補償を支払った後に必要書類に記入してもらってください。

受任者払いのメリット

受任者払いのメリットは被災労働者が無収入になる期間をなくすだけでなく、会社側にもメリットがあります。会社の口座に休業補償が振り込まれるため被災労働者から立替金を回収する手間が省けます。

被災労働者の休業期間の社会保険料や住民税は給与引きすることができず、本人負担分を会社が立て替えして納付します。業務災害にあって感情的になっている被災労働者から立て替えした社会保険料などを回収するのは難しいものです(予め給与控除分の処理方法と立替額と給付額の精算方法を決めて文書を取り交わしておくなどの対応が宜しいでしょう)。

感情のもつれから労働基準監督署に通報されると大きな騒ぎになります。業務災害が発生しただけでも大変なのに、それ以上のトラブルになりかねません。被災労働者の生活の安定に注力している姿勢をみせるためにも有効な方法です。

まとめ

労災保険の休業補償請求の手続きは長期間におよぶうえに、被災労働者との感情的なやり取りや、被災労働者の家族からの叱責など精神的なストレスの多い業務です。また、対応を誤れば、被災労働者やその家族が労働基準監督署に駆け込むリスクもあります。

長期に労務不能な状態であれば、会社側の責任や賠償の話になることもあります。そうなると、通常の人事担当者で対応するのは難しく専門的な知識をもった社会保険労務士に相談することになります(安全配慮義務違反・使用者責任を問い損害賠償請求する事案)。

しかし、騒ぎは大きくなってからでは社会保険労務士が相手でも被災労働者や家族の感情が収まるとは限らず、労働基準監督署が立ち入り調査にはいる状況になってからでは、「時すでに遅し」です。

ミツモアでは労災に詳しい社会保険労務士が、業務災害が発生した緊急事態でも迅速に対応しますので安心してご相談ください。

特定社会保険労務士からのコメント

上野社会保険労務士事務所 - 福岡県筑紫野市天拝坂

労働保険は国の強制保険です。労災保険に加入未加入に係らず、不幸にも被災労働者となった場合には当然に保険が適用されます(但し請求がないと何事も始まりません。情報がないと国も助けようがありませんよね)。 未加入事業主の「保険加入していない」とか「知らなかった」とかの弁明は通用しませんし、法令に則って処分が進められます。保険料の遡及請求・ペナルティの請求等、資金繰りに直結する事態が起きてしまいます。 労災保険は「保険料が安く、給付内容が充実しているとても良くできた保険だ」というのが専門家の共通認識です。労務管理で労働保険加入は1丁目1番地・経営者の常識です。労働者を雇用していて未加入の事業主様は要注意です(大切な資金を捨てることになり兼ねませんね)。 また、労災適用後でも事業主の安全配慮義務違反・使用者責任を問い損害賠償請求される事案が増えていますので、これまで以上のリスク管理が求められているのが現状です。
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この記事を監修した社労士

上野社会保険労務士事務所 - 福岡県筑紫野市天拝坂

こんにちは!特定社会保険労務士の上野です。 【医療労務コンサルタント・介護事業労務アドバイザー・ワークスタイルコーディネイター】 弊所では、手続業務から社内諸規定作成見直し、給与計算、コンサル業務まで労務管理のワンストップサービスに注力しています。 ①労務コンサルティング (法令対応で労務リスク対策) ②雇用保険助成金申請代行 (助成金活用で人材確保・資金効率化) ③労務管理業務のアウトソーシング (高セキュリティのシステム活用で 事務の省力化)  ASPソフトの活用 (台帳・給与計算等クラウドで 情報共有・現場業務の省力化) ④個別労働関係紛争解決代理業務・ ハラスメント防止コンサル ⑤【働き方改革】対策 (法改正/賃金・評価制度/助成金の 対応で時流適応) 期待される成果を明確にしたサービスを提供します。
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