妊娠や出産のため職場を一時離れる際に利用できる制度や社会保険料の支払い、職場復帰時に必要な手続き等々。自分がその立場になってから初めて調べたという方は多いのではないでしょうか?
今回の記事では妊娠や出産を迎える方のために、出産育児一時金や出産手当金、社会保険料の手続きについて解説します。
出産育児一時金・出産手当金とは?
はじめての出産。心配のタネのひとつに、収入の変化があります。職場を離れることで収入は減少。出産にあたって様々な費用がかかるため、そのためのお金も準備しなければなりません。そのような時に利用できる給付金として出産育児一時金や出産手当金があります。
出産育児一時金とは
出産の費用負担を軽減するために健康保険が出産費用を助成してくれるという制度が出産育児一時金です。出産育児一時金は妊娠4カ月(85日)を経過している方で、健康保険に加入しているか、配偶者の被扶養者となっている人女性が対象になります。妊娠4カ月(85日)経過していれば、流産や死産であっても、出産育児一時金の受給対象です。
出産育児一時金はいくら支給される?
基本的に、出産育児一時金は赤ちゃん1人に対して42万円支給されることになっています。
特殊なケースとして、産科医療補償制度加算対象でない病院で出産した場合や、22週未満で出産した場合、支給額が40.4万円になることがあります。出産育児一時金に加えて、付加給付金を支給している自治体もあります。付加給付金の制度の有無や、ある場合の支給額は自治体によって異なりますので、居住している自治体に確認が必要です。
出産育児一時金の直接支払制度
出産育児一時金には直接支払制度というものがあります。出産時、病院や助産院に支払う金額は高額です。この制度を利用すると、健康保険から直接、病院や助産院にお金を支払ってくれるため安心です。直接支払制度を利用するためには出産する医療機関で直接支払制度合意書を記入する必要があります。配偶者の扶養に入っている場合は、配偶者の署名も必要になっているということにも注意が必要です。
出産手当金とは
出産のために会社を休業し給与がなくなると、家計が苦しくなってしまいます。そのような時でも休業中、生活に必要となるお金を健康保険から支払ってくれるという制度が出産手当金です。
出産手当金が支給される期間
出産手当金の支払い対象となる期間は「出産日以前42日(双子以上の多胎である場合は出産日以前98日)から出産の翌日以後56日までの範囲に会社を休んだ期間」と定められています。出産手当金は対象期間中に会社を休んだ期間のみ支払い対象となることに注意が必要です。
支給額の計算式
出産手当金の受給金額は「標準報酬日額の3分の2に相当する金額」と定められています。標準報酬日額とは、出産手当金の支給以前1年間の報酬額を平均した金額となっています。具体的には、出産手当金の支給日以前12カ月の標準報酬月額の平均を30日で割った金額が標準報酬日額となります。ちなみに10円未満の金額は四捨五入になります。その標準報酬日額の3分の2に相当する金額が、出産手当金の受給金額になります。ちなみに1円未満は四捨五入です。
もしあなたが出産手当金としてもらえる金額を知りたいのであれば、会社の給与支払いを担当している総務課などに標準報酬月額などを確認してみると良いでしょう。ちなみに出産手当金の受給対象となっている期間に有給休暇などの給与が発生する休暇を取得している場合は、受け取る給与の日額が出産手当金の日額よりも少ない場合に限り、その差額が健康保険から支給されることになっているので注意が必要です。
社労士コメント:出産手当金の金額
ドラフト労務管理事務所 - 大阪府大阪市東成区中道
育児休業中に支給される育児休業給付金の金額は?
育児休業中に収入が無いと生活に困ってしまうため、その間の収入を確保する必要性が出てきます。このような場合に育児休業給付金を受給することで、生活費をまかなうことが可能になります。
育児休業の期間は?
出産後の休業には産後休業と育児休業があります。産後休業は女性労働者を勤務させる上で、体に負担をかけないようにするために設けられた休業制度です。出産した女性を産後8週間は勤務させてはならないと使用者に義務づけられています。それに対して育児休業は、父親や母親が出産した子どもを育児するために休業することを目的とした制度です。
基本的に育児休業は、子どもが1歳に達するまでの期間休業することが可能となっています。しかし、2017年3月に育児介護休業法が改正され、保育所に子ども入所させることができなかったり、配偶者の病気や離婚などで育児を行う事が困難になったりした場合に2歳まで育児休業を延長することが可能になりました。
育児休業給付金とは
育児休業中に給与が支給されない場合に支給される給付金が育児休業給付金です。
育児休業給付の支給要件は「育児休業を開始した日前2年間に1か月の期間に被保険者期間が12か月以上」と定められています。しかし、受給者に疾病があるなど特別な理由がある場合は支給要件が緩和されることがあります。
支給額の計算式
育児休業給付金の支給額は育児休業を開始してから180日までが、
休業開始時賃金日額×支給日数の67%
となります。180日を超えると支給金額は休業前の給与水準の50%となることに注意が必要です。
支給額の具体例
たとえば毎月の額面給与が25万円の場合で10カ月育児休業をすると、受給できる育児休業給付金は約150万円です。育児休業を2年間(2歳の誕生日の前日まで)取得するとなると、約300万円の受給金額となります。額面給与と休業期間によって受給額は変わってくるので、あなたの給与と休業期間の場合はいくらもらえるかということをあらかじめ計算しておくことが安心です。
社労士コメント:育児休業給付金の金額
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産前産後や育休中の社会保険料の免除
産前産後休業や育児休業を取得する前は社会保険料を毎月収めていますが、休業中の社会保険料はどうなるのでしょうか。実は産前産後休業や育児休業中には社会保険料が免除されるという制度があるのです。
産前産後休業取得者申出書
産前産後休業取得者申出書は、産前休業や産後休業を取得する女性全員が対象となる書類です。産前産後休業を取得することを被保険者が事業者に申し出ることで、事業者が書類を記載し日本年金機構に提出します。この書類を提出することで、被扶養者の産前産後休業中の厚生年金や健康保険料の納付が免除されることになるのです。
育児休業等取得者申出書
産前産後休業取得者申出書と同様に、育児休業を取得する被保険者はそのことを事業者に申し出ます。その後、事業者は育児休業等取得者申出書を日本年金機構に提出します。それにより被保険者の健康保険料や厚生年金の支払いを免除してもらうことが可能になるのです。育児休業を取得するのは母親のみでなく、父親の場合もありますので、忘れずに手続きを行うようにしておきましょう。
職場復帰する場合
産前産後休業が終了した方が職場復帰する際にも、社会保険上の手続きが必要となります。
産前産後休業終了時報酬月額変更届
産前産後休業が終了した場合は、産前産後休業終了時報酬月額変更届を提出することができます。産前産後休業終了後に職場復帰し、休業前よりも低い賃金となる事例は少なくありません。標準報酬月額が休業前よりも1等級以上変化がある場合は、産前産後休業終了時報酬月額変更届を日本年金機構に提出することで、保険料の見直しをしてもらうことが可能になります。それにより納付する社会保険料が休業前よりも安くなる場合があるのです。
育児休業等終了時報酬月額変更届
育児休業等終了時報酬月額変更届も産前産後休業終了時報酬月額変更届で述べた時と同様に、育児休業を終了した方が社会保険料を見直してもらうために必要な書類です。育児休業前よりも標準報酬月額の等級が1等級以上変化する場合は社会保険料が安くなる場合があります。産前産後休業とは異なり、母親のみでなく父親も対象になることから、申出があれば忘れずに手続きを行うようにしましょう。
まとめ
今回の記事では産前産後にもらえる給付金や休業の種類や期間、社会保険に関する手続きについて解説してきました。ここで解説した内容を参考にして、安心して出産や育児に専念できるように準備しておきましょう。
この記事を監修した社労士
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