従業員の住所に変更があった場合、社会保険の手続きが必要になる場合があります。この記事では社会保険の住所変更手続きが不要な場合、必要な場合から必要な場合の手続き方法についてまで解説します。
社会保険の住所変更手続きが不要な場合、必要な場合
基礎年金番号とマイナンバーの連携によって、昨年3月から従業員の住所変更の届出は不要になりました。しかし、幾つかのパターンでは従来通り届出が必要です。この原則と例外について解説します。
住所変更届が不要な場合・必要な場合
2016年1月から始まったマイナンバー制度。社会保険の領域にもこのマイナンバーとの連携が徐々に進んできました。以前は必要だった年金事務所への届出も、今では住所変更と氏名変更については届出不要です。従業員が市町村に転居の届出をしたら、自動で日本年金機構の登録も変わります。
ただし、これはマイナンバーと基礎年金番号が紐付けされている人のみです。国民は全員マイナンバーを持っているから、みんな紐付けされているんじゃないの? と少し迷いますよね。ここでは住所変更届が不要な場合、必要な場合を詳しくみていきましょう。
◆住所変更が不要な場合
マイナンバーと基礎年金番号が紐付いている被保険者と被扶養配偶者は届出が不要です。
このマイナンバーと日本年金機構が持つ基礎年金番号との連携が開始されたのは、昨年の春。運用は2018年3月5日から始まりました。この時点で日本年金機構が持つ4情報(氏名・性別・生年月日・住所)と地方公共団体情報システム機構(J-LIS)が持つ4情報が合致した人については、マイナンバーと基礎年金番号の紐付けが行われました。以降は月に1度のペースで最新情報に更新され、新たに届出する必要はありません。
◆住所変更が必要な場合
以下の例外にあたる被保険者とその被扶養配偶者については、従来通り日本年金機構へ届出が必要です。具体的には以下の人が対象となります。
なお、被扶養者配偶者がいる場合、「被保険者住所変更届」だけでなく、「国民年金第3号被保険者住所変更届」の提出も必要です。なお、配偶者以外の扶養親族(子供など)に関しては届出は不要です。
●マイナンバーと基礎年金番号が結びついていない被保険者
自動的にマイナンバーと基礎年金番号が紐付いたのは2018年3月5日時点で4情報が合致した人でした。つまり、それ以前に転居していた人で日本年金機構に住所変更の届出をしていなかった場合は、情報が合致せず自動的な連携に至っていません。
●海外居住者マイナンバー制度が始まる前に非居住者になっている方
マイナンバーを有していない海外居住者マイナンバー制度が導入されたのは2016年1月ですが、制度が始まる前(2015年10月5日時点)に海外転勤等で非居住者になっており、引き続き日本に戻っていない従業員はマイナンバー自体を持っていません。このような人が違う国に転居した場合は届出が必要です(日本年金機構では海外居住の厚生年金の被保険者は国名のみが登録されているため、同じ国の中での転居では届出の必要がありません)。
●短期在留外国人従業員の配偶者が短期在留外国人(短期ビザで入国している外国人)
マイナンバーを持っていないため、転居の際には届出が必要です。
●住民票住所以外の居所を登録している方
例えば、住民票は実家にあり、居所(実際の居住地)は異なる場合や単身赴任でお父さんだけが住民票と居所が違う場合などが該当します。ねんきん定期便を居所に配送を希望する場合は、住所変更の届出をしましょう。また、居所登録している人が新たに転居する場合も届出が必要です。
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健康保険組合に加入している場合は住所変更手続きが必要な場合も
会社で加入している健康保険が、協会けんぽ(全国健康保険協会)の場合は、届出は要りません。協会けんぽでは住所の収集はしておらず、日本年金機構のデータベースを使用しています。
しかし、加入しているのが協会けんぽではなく健康保険組合の場合、紙での届出が必要な場合があります。健康保険組合は、各々の独自の規約により運営を行っています。よって多くの健康保険組合では被保険者の住所管理をするために、紙で住所変更届の提出を求めています。ただし、そもそも住所の収集をしていない健康保険組合や、前述したJ-LISにより自動的に情報収集をしている健康保険組合もあります。1度加入している健康保険組合のホームページ確認をしてみましょう。
住所変更に関する実務上のよくある疑問
ここでは住所変更に関してよく受ける質問や対応方法をご紹介します。
マイナンバー連携がされていない従業員の対応について
2018年3月に始まったマイナンバーと基礎年金番号の紐付けですが、当時4情報(氏名・性別・生年月日・住所)の一つでも合致しなかった人については、自動的な連携が出来ませんでした。そこで、日本年金機構では、2018年8月下旬に紐付けが出来なかった人の一覧(未収録者一覧)を事業所に発送し個人番号登録届の提出を求めました。この書類を提出していれば連携が完了していますが、今のところ新たな一覧の発送は予定されていないようです。
現在の登録状況を確認するためには、日本年金機構から「住所一覧表」の取り寄せを行い、定期的に確認するとよいでしょう。
マイナンバー連携されていて、昨年から自動的に変わるって聞いていたのに、年金定期便が古い住所に届いた。何故ですか?
実は今この質問をよく受けます。先程からご説明している通り、連携が始まったのは2018年3月5日。それ以前に転居した人は、自動的な住所変更が行われていません。従業員の住所変更はしていたものの、被扶養配偶者の住所変更を忘れていたパターンが非常に多いようです。従業員から申し出があったら、早めに届出を行いましょう。ちなみに従業員の住所変更は電子申請が可能ですが、被扶養配偶者の住所変更は紙での申請のみとなっています。
過去の住所変更を忘れていたから、今から届出をしたい。
今の住所は正しいが、以前の変更の届出を忘れていたという質問もよくあります。これについては残念ながら届出は出来ません。日本年金機構の被保険者の住所は、過去の履歴は保存しておらず、常に住所は上書きされる仕組みなのです。
社労士コメント:その他のよくある質問
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住所変更届の書き方・提出先
マイナンバー連携が進んでも、住所変更届の提出が必要になるケースはあります。具体的な書き方や提出先を説明します。必要な書類は以下の日本年金機構のページからダウンロードできます。
住所変更届の書き方
住所変更届は日本年金機構のホームページにエクセルとPDFの書式があります。いずれかをダウンロードし、見本に沿って作成しましょう。下段に事業所の捺印が必要です。
被扶養配偶者がいる場合
従業員の配偶者が社会保険の被扶養者になっている場合は、2枚目の「国民年金第三号被保険者住所変更届」の提出も行います。右下段に配偶者の署名と捺印をします。先述したように、配偶者以外の扶養親族(子供など)については、届出の必要はありません。
なお、被保険者が厚生年金保険に加入しているかどうかで年金事務所への提出書類が以下のように異なります。
※1枚目とは「被保険者住所変更届」、2枚目とは「国民年金第3号被保険者住所変更届」を指します
住所変更届の提出先・提出方法と期限
住所変更届を作成したら、事業所を管轄している年金事務所へ持参するか、または管轄する年金事務センターへ郵送します。添付書類は特にありません。提出期限は「速やかに」、社内の登録と合わせて手続きを進めましょう。
まとめ
マイナンバー制度の導入から早くも3年が経ちました。現在は様々な社会保険手続きの際にマイナンバーを記載する必要があり、基礎年金番号との紐付けは確実に進んでいます。これにより住所変更や氏名変更は原則届出が必要ありません。
ただし、居所で届出をしている場合等は、自動的な変更はされません。ねんきん定期便はこの登録された住所地に発送されますので、常に正しい住所登録が必要です。事業所としては原則と例外を覚えておかないと手続き漏れが起こりがち。
手続きごとに例外を覚えておくのは、案外大変です。簡単な手続きでもプロに任せるのが一番簡単で確実。是非ミツモアで専門家を探して、手続きはお任せしてしまいましょう。
この記事を監修した社労士
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