部屋の中で亡くなられた方の遺体発見が遅れた場合、特殊清掃が必要になります。
遺体の腐敗臭や体液の汚れは一般的なハウスクリーニングでは落とせないので、専門的な機械や薬剤を使った清掃をしなければなりません。その分かかる料金も高額になることが多いです。
特殊清掃にかかる料金の目安や、特に金額が高くなるケースを解説します。
特殊清掃にかかる料金の相場
特殊清掃にかかる料金は、部屋が広いほど高くなります。さらに汚れの状況によって実施する作業が異なり、金額も上下します。
なお、原状回復費用のほか、残置物処理に多額の費用がかかるケースも多くあります。
日本少額短期保険協会孤独死対策委員会が2022年11月に公開した「第7回孤独死現状レポート」によると、残置物処理費用の平均額は23万5,839円、原状回復費用は38万1,111円です。部屋を次の人が使える状態まで回復させるには、おおむね60万円程度の費用がかかる可能性があるということです。
ここでは、原状回復のための清掃費用の相場を詳しく紹介します。
間取り別の料金の相場
間取りごとの料金の目安は以下の通りです。
間取り | 料金目安 |
1R・1K(~28㎡程度) | 7万~30万円 |
1DK~3LDK | 13万~50万円 |
4DK以上 | 20万~70万円 |
作業面積のほか、次に解説する作業内容の違いによっても大きく変わるので、事前の見積もりが必須です。
作業内容別の料金の相場
作業内容ごとの料金の目安は以下の通りです。
作業内容 | 料金目安 |
床の清掃 | 3万円~ |
消臭・除菌処理 | 1万円~ |
オゾン脱臭 | 1日3万円~ |
畳の撤去 | 1枚3,000円~ |
汚物撤去 | 1万円~ |
害虫駆除 | 1万円~ |
亡くなってから発見されるまでの期間や亡くなった場所、遺体の状態によって必要な作業が異なります。
建具や壁紙、フローリングなどのリフォームが必要になった場合、かなり高額になるでしょう。
特殊清掃の具体的な作業内容
特殊清掃で実施する作業の内容を解説します。
- 消臭・除菌作業
- 汚れの除去
- 害虫駆除
- 不用品処分
- 解体・リフォーム
- 遺品整理
消臭・除菌作業
人が亡くなったあとの部屋の臭いは、市販の消臭製品では除去しきれません。体液や血液が床や壁に深くしみついてしまっていると、一度消臭しても数日経つとまた臭いがしてくることもあります。
特殊清掃では、オゾン消臭などの専門的な機械や薬剤を使い、数日かけて臭いの元から徹底して除去します。
汚れの除去
床や壁に付着してしまった体液や血液は、薬品を使って除去します。床下深くまでしみ込んでいる場合には、フローリングや畳をはがして清掃を行い、新しいものに張り替えることも。
汚れがついてしまった家財は片付けて処分します。
害虫駆除
遺体がしばらく放置されていた部屋やゴミ屋敷には、ウジやハエ、ゴキブリなどの害虫が発生しているケースも少なくありません。放置しておくと建物全体に害虫の被害が広がるおそれもあります。
まず近隣の部屋に逃げていかないように対策を行い、薬剤などを使って発生した害虫を完全に駆除します。
不用品処分
特殊清掃では使わなくなった家財の処分も担ってくれます。ただし家財にも体液や血液が染み込んでいる場合は、特殊な方法で撤去する必要があります。
搬出する際は汚染物を外に持ち出すことになるため、梱包または消毒をするなどの配慮が必要です。
また床や壁・天井などを徹底的にクリーニングするため、家財は全て搬出するのが原則です。
遺品整理
特殊清掃作業とあわせて、故人の持ち物を分別してくれる遺品整理を請け負っている事業者も多いです。汚れが付着した遺品も、きれいにしながら整理を進めてくれます。
家族だけで遺品整理をすると、数日かかることも珍しくありません。特殊清掃は部屋全体で行う作業なので、あわせて依頼してしまったほうがスムーズでしょう。
解体・リフォーム
遺体があった部屋では、体液や血液が床下深くまで染み込んでいるケースがあります。表面だけでなく、建物内部の汚れも完全に除去しないと、ニオイや病原菌の発生元が残りやすく、原状復帰ができたとはいえません。
そのため必要に応じて、部屋の解体やリフォームを行います。汚染された部分を新しいものに取り替え、部屋を元の状態に戻します。
内容にもよりますがリフォームを伴う場合は、少なからず追加費用が発生するのが一般的です。
特殊清掃の費用が高くなるケース
特殊清掃の料金は、部屋の広さをベースにどんな作業が必要になるかで大きく変動します。
作業が大がかりになる可能性が高いのは、以下のようなケースです。
- 亡くなってから清掃依頼までに時間がかかった場合
- 気温が高く湿度が高い時期の場合
亡くなってから清掃依頼までに時間がかかった場合
部屋で亡くなってから特殊清掃の依頼までに時間がかかると、その分だけ遺体の腐敗が進みます。遺体の状態が悪くなるほど、体液や血液による汚れの範囲も広がり、害虫の被害も拡大するため、料金が高くなりやすいのです。
さらに作業量が増えると必要な人員も多くなるので、人件費もかさんでしまうでしょう。またオゾン脱臭のような特殊な脱臭処理は、1日当たりで料金が設定されているのが基本です。脱臭に要する日数が多くなることも、費用がかさむ原因になり得ます。
気温や湿度が高い季節の場合
気温や湿度が高い夏場は、「遺体の腐敗が早い」「害虫が発生しやすい」「臭いが強くなる」といった理由から、部屋の状態があっという間に悪くなってしまいます。なので遺体を発見してから特殊清掃を依頼するまでの時間が同じであっても、涼しい季節と比べると夏場のほうが料金は高くなりやすいのです。
一方で、夏は熱中症や脱水症状などによる孤独死が増加するので、特殊清掃業者への依頼が多く舞い込む時期でもあります。
特殊清掃を依頼する流れ
実際に特殊清掃が必要になった場合、業者に依頼して作業を行ってもらう流れは以下の通りです。
- (集合住宅の場合)管理会社に連絡
- 警察に連絡
- 特殊清掃業者を探して問い合わせ
- 現場にて見積もり・依頼
- 業者による作業
警察の検証が終わったら特殊清掃業者を探す
部屋で亡くなっているのが見つかったら、まずは警察に連絡をします。賃貸物件の場合はまず大家さんや管理会社に連絡をして、その後の対応について判断を仰ぐのがスムーズでしょう。
警察が遺体をいったん引き取って現場を検証し、事件性の有無や死因を調べます。警察の許可が下りたら現場に立ち入りできるようになります。
自分で特殊清掃の手配をする必要がある場合、まずは対応してもらえる業者を探して問い合わせをしなければなりません。タウンページで探す、知人に紹介してもらう、インターネットで検索するといった手段があります。
依頼が遅れるほど汚れが沈着し、料金も高くなります。身近な方が孤独死してしまった場合ショックが大きいかもしれませんが、清掃はできるだけ早く手配するのがおすすめです。電話で依頼する際は、臭いや汚れなど、部屋の状況を詳しく業者に伝えましょう。
現場にて見積もりを出してもらって正式に依頼
特殊清掃の料金は現場の状況によって大きく異なり、業者側で必要な作業も変わります。そのため現場を訪問して状態を確認してから見積もりを出すのが一般的です。
このとき1社ではなく、できるだけ複数社へ見積もりを依頼するのがおすすめです。1社だけでは比較対象がなく、料金が適切かどうかや、業者の対応の良し悪しが判断しにくいからです。
見積もりの内容に納得できれば正式に依頼となり、日程を調整して作業を行ってもらいます。
特殊清掃の業者を選ぶポイント
特殊清掃は頻繁に依頼するものではありません。しかし故人に対して敬意を表してくれる、優良な業者を見つけたいものです。特殊清掃を依頼する際に必要な、業者選びのポイントを押さえておきましょう。
過去の実績を確認する
業者の良し悪しを見極める際に、実績や利用者の口コミは大きな判断材料に役立ちます。業者のホームページで実績を公開しているか、口コミがたくさん寄せられているかをチェックしましょう。
特殊清掃では使用する薬品や清掃方法などを、現場によって変更するケースもあることから、多くの経験が求められます。そのため実績が豊富な業者なら、安心して依頼できるでしょう。
また参考として、事件現場特殊清掃士という資格の有無を確認するのも1つの方法です。民間の資格ながら業界での認知度は高く、実力を測る1つの指標となるでしょう。
どんな作業に対応しているのか確認する
一口に特殊清掃といっても、どの作業がサービスに含まれるかは業者によってさまざまです。消臭や害虫駆除・清掃・不用品処分は特殊清掃の基本ですが、各工程でも細かく作業が分かれています。
依頼後に認識の違いを生まないために、見積もりには作業内容を細かく明示してもらいましょう。
また遺品整理や遺品供養・ハウスクリーニングなど、ほかの作業を依頼できるかもチェックするのがおすすめです。それぞれ別の業者に依頼すると、料金が高くなるだけでなく、日程調整などの手間もかかるためです。
見積もりの内訳に不明瞭な点がないか確認する
ホームページや見積もりに、料金の詳細が明確に示されているかどうかも重要なポイントです。業者の中には「もろもろの作業を含めて〇〇万円」と、内訳をあいまいにして高額な費用を請求するケースもあります。
とはいえ極端に安い料金を提示する業者には注意が必要です。特殊清掃は特殊な技術や薬品を使うため、極端に安い料金では請け負えるものではありません。そのような業者は作業を開始したあとに、何かと理由を付けて追加費用を請求してくる可能性も考えられます。
料金が相場通りか、明瞭になっているかを確認する意味でも、複数の業者に見積もりをした方がよいといえます。
監修者のコメント
福岡特殊清掃の掃本さん - 福岡県福岡市東区香椎照葉
特殊清掃業者は複数の見積もりを比較して決めるのがおすすめ
特殊清掃の料金は、部屋の大きさや作業内容によって異なります。自分で金額を推測するのは難しいので、正確な金額を知るためには業者による見積もりが欠かせません。
適正な価格で依頼するためにも、複数の業者から見積もりを取り、比較検討することが重要です。さらに料金だけでなく、事業者が対応してくれる作業の範囲や、その事業者の仕事に対する評判もチェックしておきたいところです。
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この記事の監修者
福岡特殊清掃の掃本さん - 福岡県福岡市東区香椎照葉