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労働保険の年度更新 手続きの流れや申告書の書き方をわかりやすく解説

最終更新日: 2020年01月14日

労働保険料は社会保険料のように毎月納付するのではなく、原則として毎年6月1日から7月10日までの間に、「年度更新」という手続きによって、当該年度分の納付と前年度分の過不足の精算を同時に行うことになっています

今回は、労働保険の年度更新の手続きの流れや申告書の書き方などについて記入例も参考にしながら詳しく解説していきます。

労働保険とは

労働保険とは
労働保険とは

労働保険とは、労働者災害補償保険(以下、「労災保険」)と雇用保険のことを言います。法人であれば社会保険と併せて加入しなければならず、保険料も発生します。まずは、労災保険と雇用保険がどのようなものであるのかついて説明します。

労災保険

労災保険とは、労働者の業務中や通勤途中における負傷や疾病、障害、また、死亡に対して労働者本人やその遺族のために必要な給付が行われる公的保険です。業務災害があった場合の主な給付には、療養補償給付(診療費などが無料になる現物給付)や休業補償給付、傷病補償年金、障害補償給付、遺族補償給付などがあり、通勤災害があった場合の給付も名称は変わりますが同様です。

労働者を1人でも雇用している事業場(本社、支店、工場などの単位)は原則必ず労災保険に加入しなければなりませんが、適用は事業所単位であり個人単位ではない為、被保険者という位置付けではありません。このため、労働者側に加入手続きなどはありませんし、保険料も事業主が全額負担することになっています。

雇用保険

雇用保険とは、労働者の失業期間中や育児・介護休業中、また、高年齢であることにより賃金が低下した場合などに一定の給付が行われる公的保険です。主な給付には、基本手当(いわゆる失業保険)や再就職手当、また、育児休業給付や介護休業給付、高年齢雇用継続給付などがあります。

労災保険と同様に、労働者を1人でも雇用している事業場は原則必ず雇用保険に加入しなければなりません。雇用保険は労災保険のように災害補償的な保険ではなく、失業の予防や雇用状態の是正等が目的のため、労働者側に週の所定労働時間が20時間以上などの加入要件があり、これに該当する者はハローワークに届け出ることで被保険者となります。

雇用保険料は労働者と事業主とでそれぞれ一定の割合を負担することになっています。

労働保険の年度更新とは

労働保険の年度更新とは
労働保険の年度更新とは

労災保険料と雇用保険料からなる労働保険料は「年度更新」という手続きによって、その額を申告して納付することになっています。「年度更新」とは具体的にどのような手続きであるのか、また、申告書の概要や提出期限などについて説明します。

年度更新とは

労働保険料は社会保険料のように毎月納付するものではありません。労働保険料は毎年1回、6月1日から7月10日までの間に確定保険料と概算保険料の申告、納付及び精算の手続きを同時に行うことによって納付することになっています。この手続きを「年度更新」と言います。

確定保険料の申告・納付(精算)

対象労働者の前年度(4月1日から翌年3月31日)の賃金総額から確定した労働保険料を計算して申告、納付します。算出された確定保険料の額が前年度に納付した概算保険料の額よりも多ければ、当該年度の概算保険料とあわせて追加で納付することになります。一方、確定保険料の額が前年度に納付した概算保険料の額よりも少なければ当該年度の概算保険料に充当するなどになります。

概算保険料の申告・納付

対象労働者の当該年度(4月1日から翌年3月31日)の見込み賃金総額から労働保険料を概算して申告、納付します。ただし、上記の確定保険料の精算によって納付額がさらに多くなる場合や、反対に納付の必要がなくなり還付を受ける場合もあります。

建設業などの年度更新

建設事業や農林水産の事業などは「二元適用事業」とされ、労災保険料と雇用保険料を別々に申告、納付することになっています。また、建設事業のように事業の期間が予定されている事業は、「有期事業」とされ、労災保険料と雇用保険料は事業開始時に納付し、事業終了時に清算することになっています。

この記事では、労災保険料と雇用保険料をまとめて申告、納付できる「一元適用事業」、事業の期間が予定されていない「継続事業」の年度更新について説明しています。

年度更新の申告書

年度更新の申告書やその他の参考書類などは、毎年5月下旬に会社宛てに送付されてきます。申告書の作成手続きで必要となるものは次のとおりです。

労働保険年度更新申告書

正しくは「労働保険 概算・増加概算・確定保険料/石綿健康被害救済法 一般拠出金 申告書」と言い、この申告書を提出します。

送付されてきたものには、労働保険番号や事業の所在地・名称、保険料率などがあらかじめ印字されています。また、右上部に「アクセスコード」が印字されており、電子申請の際に入力することで前年度の申告内容などを取り込むことが可能になっています。

領収済通知書

申告書の下部分についている保険料の納付書です。

賃金集計表

正しくは「確定保険料・一般拠出金算定基礎賃金集計表」と言います。申告書に記入する際に用いる賃金集計表で、提出する必要はありません。

労働保険年度更新申告書の書き方

申告書と合わせて送付されてくる申告書の書き方についてまとめている冊子体です。

年度更新の申告・納付期間

年度更新の申告・納付期間は、毎年6月1日から7月10日までです(その年の営業日によって多少異なります)。この期間中に金融機関や管轄の都道府県労働局、労働基準監督署などで申告、納付することになります。

年度更新の対象期間

労働保険は、4月1日から翌年3月31日までの1年間を保険年度としており、労働保険料はこの1年間に労働者に支払った賃金の総額に保険料率を乗じて計算することになります。

ここでいう賃金は、給与の支払い日を基準に整理するのではなく、締め日を基準に整理しなければならないことに注意しなければなりません。具体的には、毎月の給与を月末締め翌月10日支払いにしているような会社では、4月10日に支払った給与は3月分の賃金になるということです。

社会保険料や税金などの計算では、支払い日を基準に整理することが多いですが、労働保険料の計算では、その賃金が発生日を基準に整理することになっています。

労働保険の年度更新手続きの流れ

労働保険の年度更新手続きの流れ
労働保険の年度更新手続きの流れ

年度更新の申告書の作成に入る前に、まずは労働保険の対象となる労働者を確認し、1年間の賃金総額を計算しなければなりません。計算された賃金総額を申告書に記入して提出し、保険料を納付することになります。

年度更新の手続きの流れについて順番に説明します。

①労働保険の対象者の確認

年度更新の申告書を作成するうえでは、ます、労働保険の対象となる者とならない者の範囲を理解し、申告が必要な従業員の数を整理しなければなりません。注意点としては、退職者も申告の必要があるということです(退職するまでの賃金が申告の対象となります)。

労災保険と雇用保険とで対象者は異なります。

労災保険の対象者

労災保険では、労災保険の適用事業所で雇用されている全ての労働者が労災保険の対象者です。なお、役員は原則として労働者とされないため労災保険の対象にはなりませんが、労働の実態があり、その労働に基づいて報酬を得ている場合には労災保険の対象になることがあります。

また、出向者(在籍出向)については、出向労働者が出向先事業組織に組入れられ、出向先事業主の指揮監督を受けて労働に従事する場合は、出向先の対象労働者とし、賃金については、出向先で支払う場合や出向元が継続して支払う場合、また、双方で一定割合を負担する場合などもありますが、いずれにしてもその全額を出向先で賃金総額に含めます。

上記を踏まえ、申告書作成のために事業所の労働者を次のように分類します。

  • 常用労働者(受け入れ出向者、パート・アルバイトなどの雇用保険被保険者)
  • 役員で労働者扱いの者
  • 臨時労働者(パート・アルバイトで雇用保険被保険者ではない者など)

雇用保険の対象者

雇用保険の適用事業所で雇用される者で正社員などの常用労働者、あるいは、次の両方の要件を満たす者は雇用保険の被保険者となります。

  • 1週間の所定労働時間が 20 時間以上であること。
  • 31日以上引き続き雇用されることが見込まれる者であること。

なお、雇用保険でも原則として役員は被保険者になれませんが、労働の実態があり、その労働に基づいた報酬を得ている場合には被保険者とされることがあります。

また、出向者(在籍出向)については、原則としてその者が生計を維持するために必要な「主たる賃金」の支払いを受けている方で被保険者となることになっています。このため、出向元の方でより多くの賃金を支払っているのであれば、出向元の方で被保険者となりますし、出向先の方でより多くの賃金を支払っているのであれば、出向先の方で被保険者となります。賃金については労災保険のように合算しません。

上記を踏まえて、申告書作成のために事業所の雇用保険被保険者を次のように分類します。

  • 常用労働者(出向者を含む)およびパート・アルバイトの雇用保険被保険者
  • 役員の雇用保険被保険者
  • 免除対象高年齢労働者に該当する雇用保険被保険者

「免除対象高年齢労働者」とは、申告年度の4月1日現在で満64歳以上である雇用保険被保険者のことで、これに該当する者は2019年度までは雇用保険料が免除されることになっています。

②前年度の賃金台帳を用意

賃金集計表を作成するために、前年度の賃金台帳を用意します。

③賃金集計表を作成

算定基礎賃金集計表 書き方
賃金集計表の書き方と記入例 出典:厚生労働省

賃金集計表は申告書を作成する前に、労災保険の対象となる労働者と雇用保険の被保険者の1年間の賃金総額を確認するためのものです。申告書と併せて提出する必要はなく、申告書を提出したあとは申告書の事業控えとともに保管しておきます。

常用労働者や兼務役員、臨時労働者を労災保険の対象労働者と雇用保険の被保険者に区分したうえ、前年度の賃金台帳をもとに、給与については支払った月ごとにその人数と合計額、賞与については支払った月ごとにそれぞれの合計額を記入し、1年間の賃金総額を算出します。

また、厚生労働省が提供している「年度更新申告書計算支援ツール」では、エクセルファイルの賃金集計表に必要事項を入力することで、申告書へ転記する額と転記先が自動で表示されるようになっています。

④年度更新申告書を作成

賃金集計表で確認した賃金総額をもとに申告書を作成します。

申告書の書き方などはこの後詳しく説明しますが、おおまかに説明すると、様式の上段部分には「確定保険料」として労災保険と雇用保険の別に前年度の賃金総額と対応する保険料の額を記入し、中段部分には「概算保険料」として労災保険と雇用保険の別に当該年度の見込み賃金総額と対応する保険料の額を記入します。

これらの記入内容をもとに下段部分には過不足の精算や納付額などについて記入します。

⑤労働保険料の申告・納付

申告書が作成できれば、申告および納付を行います。申告・納付期間は、先に説明したとおり、毎年6月1日から7月10日までです(その年の営業日によって多少異なります)。申告・納付には3つの方法があります。

なお、納付については、確定保険料と一般拠出金は1回で納付しなければなりませんが、概算保険料については、40万円以上(労災保険または雇用保険のどちらか一方のみ成立している場合には20万円以上)である場合には、3回に分けて納付することができます。これを「延納」と言います。

窓口での申告・納付

受付期間中に金融機関、管轄の都道府県労働局または労働基準監督署のいずれかに申告書の1枚目(提出用)を提出するとともに保険料を納付します(口座振替を利用している場合や納付金額がない場合には金融機関に申告書のみを提出することはできません)。

上記の各窓口のほか、年金事務所内に設置されている社会保険・労働保険徴収事務センターでも申告書を提出することができますが、保険料の納付は行えないので、別途金融機関などで納付する必要があります。

なお、第3種特別加入保険料(海外派遣者に係るもの)などの申告を行う事業主は申告書と併せて添付書類も提出することになりますが、添付書類は金融機関と社会保険・労働保険徴収事務センターには提出できません。

郵送による申告

申告書と添付書類は、管轄の都道府県労働局宛てに郵送することもできます。ただし、この場合には別途金融機関などで保険料を納付する必要があります。申告書の2枚目(事業主控え)に受付印が必要な場合には、返信用封筒(切手貼付)の同封が必要です。

電子申請による申告・納付

e-Gov(イーガブ)を利用した電子申請による申告も可能です。電子申請を行なうことで、申告だけでなく保険料の納付も電子納付で行うことができますが、従来の領収済通知書(納付書)による納付を選択することもできます。

電子申請に利用にあたっては事前に一定の手続きが必要になります。これについては後の見出しで詳しく説明します。

労働保険料の計算方法

労働保険料の計算方法
労働保険料の計算方法

申告書を作成するうえでは、労働保険料の計算方法が具体的にどのようになっているのかが理解できていればミスも少なくなります。

ここでは、労働保険料の計算のもとになる賃金にはどのようなものが含まれるのか、また、労災保険料率と雇用保険料率についても確認したうえで、確定保険料や一般拠出金、概算保険料の計算方法について説明します。

労働保険における賃金とは

労度保険対象賃金の範囲
労度保険対象賃金の範囲 出典:厚生労働省

労働保険料は対象労働者の賃金総額に労災保険料率と雇用保険料率を掛けて算出しますが、そもそも労働保険における賃金が何を指しているのかについて理解しておく必要があります。

労働保険における賃金とは、事業主がその事業に使用する労働者(年度途中の退職者を含む)に対して賃金、手当、賞与、その他名称を問わず労働の対償として支払うすべてのものを指し、税金その他社会保険料等を控除する前の支払総額のことです。なお、保険年度(4月1日~翌年3月31日)中に支払いが確定している賃金があれば、この期間中に支払われていなくても賃金総額に算入しなければなりません。

賃金は労働の対償として支払うものであるため、役員報酬や退職金(前払いの場合を除く)は賃金とはなりませんので注意が必要です。

労災保険料率と雇用保険料率

労災保険料率と雇用保険料率は、それぞれ事業の種類ごとに定められています。労災保険率はそれぞれの業種における過去3年間の災害発生状況などを考慮し、原則として3年ごとに見直しされることになっており、雇用保険率も政府の財政状況などに照らして毎年度見直しが行われることになっています(結果として前年度と同率になることもあります)。

労災保険料率

労災保険料率表
労災保険料率表(平成30年4月1日施行) 出典:厚生労働省

2019年度の労災保険料率は事業の種類ごとに上記のように定められています。災害が発生する可能性が高い業種ほど保険料率は高く、2.5/1,000から88/1,000まで細かく定められています。

雇用保険料率

平成31年度の雇用保険料率表
平成31年度の雇用保険料率表 出典:厚生労働省

2019年度の雇用保険料率は事業の種類ごとに上記のように定められています。農林水産・清酒製造の事業や建設事業でなければ、2019年度の保険料率は9/1,000(労働者負担分と事業主負担分の合計)になります。

確定保険料の計算方法

確定保険料の計算方法ですが、労災保険の対象となる労働者と雇用保険被保険者の賃金総額が同額の場合と異なる場合とで分けて説明します。

労災保険の対象者と雇用保険の対象者の賃金総額が同額の場合

免除対象高年齢労働者がおらず、かつ、パート・アルバイトなどの臨時労働者がいる場合にその全員が雇用保険被保険者であれば、労災保険の対象となる労働者と雇用保険被保険者の賃金総額は同額になります。この場合の確定保険料は次のように計算します。

確定保険料(1円未満の端数は切り捨て)= 前年度の賃金総額(千円未満は切り捨て)×(労災保険料率+雇用保険料率)

労災保険・雇用保険対象者の賃金総額が異なる場合

免除対象高年齢労働者がいたり、パート・アルバイトなどの臨時労働者がいる場合にその中に雇用保険被保険者でない者がいれば、労災保険の対象となる労働者と雇用保険被保険者の人数が異なるため賃金総額は異なります。このような場合の確定保険料は、次のように労災保険料と雇用保険料を別に計算した合計額になります。

労災保険分の確定保険料=労災保険対象労働者の前年度の賃金総額×労災保険料率

 

雇用保険分の確定保険料=雇用保険被保険者の前年度の賃金総額×雇用保険料率

※賃金総額からは免除対象高年齢労働者の賃金を除きます

一般拠出金の計算方法

一般拠出金とは、「石綿による健康被害の救済に関する法律」の規定に基づいて、石綿(アスベスト)健康被害者(労災補償の対象にならない方)の救済費用に充てるために、労災保険の適用事業主が負担しなければならない費用で、確定保険料と併せて計算します。

一般拠出金の計算方法は次のとおりです。

一般拠出金=労災保険対象労働者の前年度の賃金総額×一般拠出金率

概算保険料の計算方法

概算保険料は、本来であれば上記の確定保険料の計算式に当該年度の見込み賃金総額を用いて計算しますが、見込み賃金総額が前年度の賃金総額と比較して2分の1以上2倍以下である場合、前年度の賃金総額を見込み賃金総額として使用します。

ただし、経営上の問題などがあり、見込み賃金総額が2分の1未満あるいは2倍超となることが見込まれるのであれば、実際の見込み賃金総額で計算することになります。

年度更新申告書の書き方と記入例

年度更新申告書
年度更新申告書

年度更新の申告書の作成は慣れれば難しくはありませんが、賃金総額から各保険料を計算し、最終的に納付額を記入することになりますので、確認しながら慎重に進めていかなければなりません。ここではこれまで説明したことも踏まえて、年度更新の申告書の書き方について主なポイントを説明します。

都道府県労働局から送付されてくる申告書にはあらかじめ労働保険番号や事業所情報、保険料率などが印字されています。また、申告書に同封されている「労働保険年度更新申告書の書き方」には詳しい解説がありますので、細かな部分についてはこちらで確認できます。

年度更新申告書 書き方
年度更新申告書の書き方 出典:厚生労働省

確定保険料・一般拠出金の記入

確定保険料と一般拠出金の記入方法について、労災保険の対象労働者と雇用保険被保険者の賃金総額が同額の場合と異なる場合について説明します。ここでは、前年度の賃金総額を当該年度の見込み賃金総額とする場合(当該年度の見込み賃金総額が前年度の賃金総額と比較して2分の1以上、2倍以下)の例で説明しています。

労災保険・雇用保険対象者の賃金総額が同額の場合

免除対象高年齢労働者がおらず、かつ、パート・アルバイトなどの臨時労働者がいてもその全員が雇用保険被保険者である場合には、労災保険の対象労働者と雇用保険被保険者の前年度の賃金総額は同額になります。

例えば、労災保険の対象労働者の前年度の賃金総額と雇用保険被保険者の前年度の賃金総額が共に78,083,000円である場合には、労災保険料と雇用保険料を個別に計算して記入する必要はなく、「確定保険料算定内訳」欄には次のように記入します。

「確定保険料算定内訳」欄の記入例
「確定保険料算定内訳」欄の記入例

確定保険料とあわせて一般拠出金も計算して記入することになりますが、詳しい計算方法は次のとおりです。

確定保険料の計算方法

前年度の賃金総額:78,083千円×12/1,000(労災保険料率3.00/1,000+雇用保険料率9.00/1,000)=936,996円

一般拠出金の計算方法

前年度の賃金総額:78,083千円×一般拠出金率:0.02/1,000=1,561円

労災保険・雇用保険対象者の賃金総額が異なる場合

免除対象高年齢労働者や雇用保険の被保険者ではないパート・アルバイトなどがいれば、労災保険の対象労働者と雇用保険被保険者の前年度の賃金総額は異なります。例えば、以下の場合、次のように労災保険料と雇用保険料を個別に計算して「確定保険料算定内訳」欄に記入します。

※実際には納付しませんが、免除対象高年齢労働者に係る雇用保険料の記入も必要です。

  • 労災保険の対象労働者の前年度の賃金総額:56,765,000円
  • 雇用保険被保険者の前年度の賃金総額:54,151,000円
  • 免除対象高年齢労働者の前年度の賃金総額:7,840,000円
「確定保険料算定内訳」欄の記入例
「確定保険料算定内訳」欄の記入例

確定保険料(労災保険分)の計算方法

労災保険の対象労働者の前年度の賃金総額:56,765千円×労災保険料率:3.00/1,000=170,295円

確定保険料(雇用保険分)の計算方法

雇用保険被保険者の前年度の賃金総額:54,151千円-免除対象高年齢労働者の前年度の賃金総額:7,840千円=保険料算定賃金:46,311千円

保険料算定賃金:46,311千円×雇用保険料率:9.00/1,000=416,799円

確定保険料の計算方法

労災保険料:170,295円+雇用保険料:416,799円=587,094円

一般拠出金の計算方法

労災保険の対象労働者の前年度の賃金総額:56,765千円×一般拠出金率:0.02/1,000=1,135円

概算保険料の記入

概算保険料欄の書き方は、一般拠出金の計算がないだけで確定保険料欄の書き方と変わりません。確定保険料と同様、労災保険の対象労働者と雇用保険被保険者の賃金総額が同額の場合と異なる場合について説明します。

労災保険・雇用保険対象者の賃金総額が同額の場合

労災保険の対象労働者の前年度の賃金総額と雇用保険被保険者の前年度の賃金総額がともに78,083,000円である場合には、「概算・増加概算保険料算定内訳」欄に次のように記入します。

「概算・増加概算保険料算定内訳」欄の記入例
「概算・増加概算保険料算定内訳」欄の記入例

労災保険・雇用保険対象者の賃金総額が異なる場合

以下の場合には、労災保険料と雇用保険料を個別に計算して「概算・増加概算保険料算定内訳」欄に記入します。

  • 労災保険の対象労働者の前年度の賃金総額:56,765,000円
  • 雇用保険被保険者の前年度の賃金総額:54,151,000円
  • 免除対象高年齢労働者の前年度の賃金総額:7,840,000円
「概算・増加概算保険料算定内訳欄」の記入例
「概算・増加概算保険料算定内訳」欄の記入例

延納の申請

「延納の申請」欄の記入例
「延納の申請」欄の記入例

延納する場合には、申告書の「⑰ 延納の申請」欄に「3」と記入します(一括納付する場合には「1」と記入します)。

差引額・充当意思

確定保険料の額が前年度に申告した概算保険料額(申告済概算保険料額)を下回る場合には、その差額を当該年度の概算保険料や一般拠出金の納付額に充てることができます。これを「充当」と言います。

充当には次の3つのパターンがあります。

①労働保険料にのみ充当する

労働保険料に充当して余りがある場合でも一般拠出金は7月10日までに納付しなければなりません。申告書に記入する充当意思は「1」になります。

②一般拠出金にのみ充当する

一般拠出金に充当して余りがある場合でも労働保険料は7月10日までに納付しなければなりません。申告書に記入する充当意思は「2」になります。

③労働保険料および一般拠出金に充当する

労働保険料および一般拠出金に充当して余りがある場合には今期の納付は必要ありません。ただし、申告書の提出は必要です。申告書に記入する充当意思は「3」になります。

どのように充当するのかについて、申告書の申告書の「㉚ 充当意思」欄に上記の番号を記入することになりますが、基本的には労働保険料と一般拠出金の両方に充当できる「3」とします。例えば、以下の場合には次のように記入します。

  • 申告済概算保険料額:900,000円
  • 確定保険料額/概算保険料額:587,094円(申告済概算保険料額との差額:312,906円)
  • 充当意思:労働保険料および一般拠出金に充当する
「差引額」「充当意思」欄の記入例
「差引額」「充当意思」欄の記入例

「⑳ 差引額」の「(イ)充当額」欄には、申告済概算保険料額900,000円から確定保険料額587,094円を差し引いた312,906円を記入し、「㉚ 充当意思」欄には「3」と記入します。なお、都道府県労働局から送付されてくる申告書には、「⑱ 申告済概算保険料額」のみ額が印字されています。

納付額

どのように納付するかは、一括納付なのか延納なのかなどによって決まるため、様々な記入方法があります。ここでは例を2つ挙げて説明します。

労働保険料および一般拠出金に充当・延納あり・還付なし

例えば、以下の場合には次のように記入します。

  • 申告済概算保険料額:900,000円
  • 確定保険料額/概算保険料額:587,094円
  • 充当額(申告済概算保険料額と確定保険料額との差額):312,906円
  • 一般拠出金額:1,135円
  • 延納申請:「3」(3期納付)
  • 充当意思:「3」(労働保険料および一般拠出金に充当)
「期別納付額」欄の記入例
「期別納付額」欄の記入例

基本的に、各記入欄内に記載されている細かな指示に従えば記入できますが、ポイントは次のとおりです。

  • 延納する場合、充当することにより第2期以降で納付額がなくなる場合でも、まず、各期の納付額195,698円(=587,094円÷3)を「㉒ 期別納付額」の(イ)(チ)(ル)欄に記入する。
  • 充当意思が「3」(労働保険および一般拠出金に充当)の場合には、まず、第1期分労働保険料から充当する。
  • 充当額から第1期分労働保険料の額を差し引いた額を一般拠出金、第2期分以降の労働保険料の順番に充てていく。

労働保険料および一般拠出金に充当・延納なし・還付あり

例えば、以下の場合には次のように記入します。

  • 申告済概算保険料額:2,385,774円
  • 確定保険料額/概算保険料額:587,094円
  • 充当額(申告済概算保険料額と確定保険料額との差額):1,798,680円
  • 一般拠出金額:1,135円
  • 延納申請:「1」(一括納付)
  • 充当意思:「3」(労働保険料および一般拠出金に充当)
「期別納付額」欄の記入例
「期別納付額」欄の記入例

この場合のポイントは次のとおりです。

  • 一括納付の場合には、全期としての納付額「587,094円」を「㉒ 期別納付額」の(イ)欄に記入する。
  • 還付額は、申告済概算保険料額:2,385,774円-確定保険料額:587,094円-(概算保険料額:587,094円+一般拠出金額:1,135円)=1,210,451円になりますが、還付額がある場合、「⑳ 差引額」の「(ロ)還付額」欄にも記入する。

なお、還付額がある場合、年度更新の申告書とは別に「労働保険料・一般拠出金還付請求書」を管轄の都道府県労働局または労働基準監督署に提出することになっています。

2020年からの年度更新の電子申請義務化について

2020年からの年度更新の電子申請義務化について
2020年からの年度更新の電子申請義務化について

現在、政府全体で行政手続コスト削減のために電子申請の利用促進を図っています。厚生労働省では、2020年4月から特定の法人が年度更新を含む一部の社会保険・労働保険に関する手続きを行う場合には電子申請で行うことを義務としました。

これにより、電子申請を導入していない該当法人は早急に対応することが求められています。

電子申請が義務化される法人

2020年4月から電子申請が義務化されるのは次の法人であり、基本的には大企業であるか、一定の責任を有する特殊な法人ということになります。

  • 資本金、出資金または銀行等保有株式取得機構に納付する拠出金の額が1億円を超える法人
  • 保険業法により、保険会社のみに設立が認められている「相互会社」
  • 「投資信託及び投資法人に関する法律」により、特定の資産への投資・運用を目的として設立される「投資法人」
  • 「資産の流動化に関する法律」により、資産の流動化に係る業務を行うために設立される「投資目的会社」

なお、上記に該当する法人でも、電子申請が困難と認められる場合には通常の紙ベースでの届け出も認められることになっています。

年度更新を電子申請する方法

年度更新に限りませんが、電子申請を利用するためには一定の手続きが必要になります。

電子申請は、現状においては「e-Gov(イーガブ)」または「外部連携APIに対応したシステム」を利用することになります。また、電子申請に対応している社会保険労務士に依頼する方法もあります。

e-GOVを利用する

「e-Gov」とは、各府省が提供する行政情報や各府省に対するオンライン申請・届出などのサービスを提供している政府のポータルサイトです。これを利用することによって、専用のアプリケーションを用意することなく電子申請が可能になります。

ただし、画面上で手入力が必要になることや、複数の書類がある場合にまとめて申請することが難しいこともあり、現状においてはあまり使い勝手がよいものであるとは言えません。

外部連携APIに対応したシステムを導入する

外部連携API(ソフトウェアの機能を共有する仕組み)に対応したシステムを導入すれば、そのシステムで作成した申請データをそのままe-Govに送り込めるようになり、再入力などの手間が省けます。

この機能を活用するために自社で対応システムを構築することも不可能ではありませんが、一般的にはこの機能に対応している市販の労務管理システムなどを導入することになります。一定の費用はかかりますが、より簡単に電子申請が利用できるようになります。

社会保険労務士に依頼する

電子申請の導入が手間ということであれば、電子申請に対応している社会保険労務士に申請手続き自体を依頼するのも選択肢の一つです。電子申請の導入サポートをしている社会保険労務士もいますので、自社で対応するのか任せるのか相談してみてもよいかもしれません。

電子申請には電子証明書が必要

電子申請を利用するためには、まずは「電子証明書」というものを取得する必要があります。電子証明書とは、電子申請の際に申請者が送信する電子データの安全性を確保するためのもので、電子申請上の実印のようなものです。

電子証明書を発行している機関を「認証局」と言いますが、この認証局は民間も含めて多数あります。認証局によって電子証明書の取得手続きも異なりますし、e-Govに完全に対応しているとも限りません。また、取得や利用にあたっては、年間1万程度の費用もかかります。

どのような認証局があるのかについては、以下のe-Govのホームページでご確認下さい。

労働保険の年度更新は社労士へおまかせ

労働保険の年度更新は社労士へおまかせ
労働保険の年度更新は社労士へおまかせ

労働保険の年度更新については毎年、申告書を提出し、保険料を納付しなければなりません。全労働者と雇用保険の被保険者の賃金総額を算出するだけでもかなりの手間ですし、パート・アルバイトや免除対象高年齢労働者が多い会社であれば、さらに複雑になります。年度更新はどの会社でもできればアウトソーシングしたい手続きの一つです。

年度更新については、社会保険の専門家である社会保険労務士に依頼することができます。社会保険労務士に任せれば、法令に則って誤りなく短時間で整理してくれます。年度更新と同時期に手続きが必要な「算定基礎届」の作成、提出もあわせて依頼してみてはいかがでしょうか。

労働保険の年度更新手続きを社労士に依頼した場合の相場は?

ドラフト労務管理事務所 - 大阪府大阪市東成区

継続事業の場合、相場は次のようになります。 1~9人:30,000円 10~19人:40,000円 20~29人:45,000円 30~39人:50,000円 40~49人:50,000円 50人以上:協議 年度更新を自社でやる場合も社労士事務所へ依頼する場合も1年度分の賃金台帳や、労働者の雇用形態・年齢等の情報が必要となります。年度更新は毎年必要な手続きです。書類がすぐ準備できるよう一定の場所に保管しておきましましょう。 労働保険料の申告や納付を怠ると、遅延金や追微金が課せられます。申告・納付を忘れないように注意しましょう。また、還付請求には、時効があります。
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この記事を監修した社労士

ドラフト労務管理事務所 - 大阪府大阪市東成区

鈴木圭史社会保険労務士 1974年生。大阪府出身。ドラフト労務管理事務所代表社会保険労務士/働き方改革推進支援センター相談員。人材派遣会社の本社勤務後、大阪玉造に事務所を設立して12年目を迎える。同一労働同一賃金や労務問題の改善に尽力。派遣法(派遣先均等均衡・労使協定方式)が専門で派遣元責任者講習の講師を担当。
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