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年度更新手続きをわかりやすく!労働保険料の納付に関するポイントを解説!

最終更新日: 2023年01月06日

令和になって初めての年度更新の時期となりました。この記事では、年度更新手続きについてわかりやすく解説していきます。特に、労働保険料の納付については、口座振替や分割納付(延納)など、いくかのパターンがありますので、よりくわしい解説を行います。

年度更新手続きの一環!労働保険料を納付しよう!

年度更新手続きの一環!労働保険料を納付しよう!

「労働保険」とは、労災保険と雇用保険を総称した言葉です。労災保険と雇用保険は別々の制度ですが、保険料の徴収に関しては「労働保険」として一体のものとして扱われます。「年度更新」はその保険料の納付手続きのことです。労働保険料の納付方法についてわかりやすく解説していきますので、ぜひご参考になさってください。

労働保険料の年度更新手続きとは?納付期限はいつまで?

労働保険料の年度更新とは、確定した前年度の労働保険料(確定保険料)と、今年度の概算保険料を併せて申告および納付する手続きのことです。原則として、6月1日から7月10日までの間に、労働基準監督署、都道府県労働局および金融機関等で手続きを行います。今年度は6月1日、2日が土日のため、手続き開始は6月3日からです。手続きが遅れると、政府が保険料の額を決定し、さらに追徴金(10%)が課されることになりますので、確実な納付をしましょう。申告書類は5月末頃に郵送で送られてきますので、そちらを使用します。また、7月に入ると、窓口が大変混雑してきますので早めの申告、納付をお勧めします。

労働保険の年度更新手続き【新規適用事業の場合】

4月以降に労働保険関係が成立した事業については、保険関係成立の日から50日以内に、概算保険料を申告および納付します。前年度分の確定保険料は当然ありませんので、概算保険料のみを支払います。

労働保険料を計算しよう!計算期限・計算方法は?

労働保険料は、毎年4月1日から翌年3月31日までの1年間(保険年度といいます)を単位とし、その間のすべての労働者に支払った賃金の総額に、事業の種類ごとに定められた保険料率を乗じて算定します。

 「賃金」は、名称の如何を問わず、労働の対償として事業主が労働者に支払うすべてのものをいい、賞与や現物給与も含まれます。現物給与としては、食事で支払われる報酬等や住宅で支払われる報酬等がありますが、都道府県別にその評価額が決められています。例えば東京で見てみると、1人1月当たりの食事の額は21,000円、1人1月当たりの住宅の利益の額は、畳1畳あたり2,590円などと決められています。平成31年4月1日から、食事の評価額が一部改定されていますのでご注意ください。

厚生労働大臣が定める現物給与の価額の一部を改正する件の概要|厚生労働省

 保険料率は、労災保険分と雇用保険分で分かれています。労災保険の保険料率は、事業の種類ごとに決められています。雇用保険料率は、一般の事業は1,000分の9、農林水産、清酒製造業は1,000分の11、建設業は1,000分の12となっています。

 確定保険料は、前年度に実際に支払った賃金総額をもとに算定します(3月31日時点で支払うことが確定している賃金も含みます)。継続事業の場合、申告書「⑧保険料・一般拠出金算定基礎額」欄において、賃金総額に1,000円未満の端数がある場合はその端数は切り捨てます。実際の支払いについては、昨年度支払った概算保険料との精算をする形で行います。昨年支払った概算保険料が確定保険料より多かった場合は、確定保険料の支払いはなく、別途還付請求書を提出することで余分の金額が還付されます。または、余分の金額を今年度の概算保険料および一般拠出金に充当することもできます。昨年支払った概算保険料が確定保険料より少ない場合は、その不足分を支払います。

 概算保険料については、今年度の賃金総額がまだ確定していませんので、賃金総額の見込み額をもとに、概算払いをします。ただし、申告年度の賃金総額の見込み額が前年度の賃金総額の2分の1以上2倍以下である場合は、前年度の賃金総額をそのまま申告年度の賃金総額の見込額として使用できます。多くの事業所はこのケースに当てはまるのではないでしょうか。端数処理は確定保険料と同様です。

また、年度更新の際に、合わせて「一般拠出金」も納付することになっています。一般拠出金とは、「石綿による健康被害の救済に関する法律」に基づき、石綿(アスベスト)健康被害者の救済費用にあてるためのもので、労災保険適用事業所のすべての事業主が対象になります(特別加入者や雇用保険のみ適用事業主は対象外です)。料率は1000分0.02で、昨年度の賃金総額に料率を乗じて算定します。

労働保険料を申告納付する場合!提出先別に解説!

労働保険料を申告納付する場合!提出先別に解説!
労働保険料を申告納付する場合!提出先別に解説!(画像提供:PIXTA)

ここからは、労働保険料の申告および納付方法について、提出先別に詳しくみていきます。また、来年からは一定の条件を満たす法人については、電子申請が義務化されます。電子申請についてもわかりやすくまとめていますので、該当する事業所の事業主の皆様は特にご参考になさってください。

労働保険料の納付に必要な書類

労働保険料の納付には、まずは都道府県労働局から送られてくる「労働保険概算・確定保険料/石綿健康被害救済法一般拠出金申告書」を記入します。納付の際は、申告書下段の領収済通知書(納付書)を用います。また、確定保険料が昨年支払った概算保険料よりも少ない場合で、還付を希望する場合は「還付請求書」も提出します。新規で事業を開始した事業所の場合は、保険関係が成立した日から10日以内に「労働保険関係成立届」と保険関係が成立した日から50日以内に「労働保険料概算保険料申告書」を提出します。また一括有期事業のうち、建設の事業については、「一括有期事業報告書」と「一括有期事業総括表」も合わせて提出します。林業の事業については、「一括有期事業報告書」を提出します。

労働基準監督署・労働局

申告書の2枚目【事業主控え】に受付印が必要な場合は、申告書を労働基準監督署または労働局へ提出します。その後、申告書と領収済通知書(納付書)が返却されますので、金融機関へ持参し納付します。また、労働基準監督署または労働局への申告書の提出は郵送でも可能です。郵送の場合は、返信用封筒(切手貼付)の同封が必要です(申告書控えに受付印が必要な場合)。

金融機関・郵便局

金融機関・郵便局では申告書の受付と保険料の納付が同時に行えます。労働基準監督署または労働局の受付印が必要でない場合は、金融機関・郵便局が便利です。ただし、納付金額がないときや口座振替をご利用の場合は、金融機関・郵便局への申告書の提出はできません。また、第2種、第3種の特別加入の場合、納付と同時に申告する場合は申告書の提出が可能ですが、添付書類は金融機関で提出できません。

社会保険・労働保険徴収事務センター(年金事務所内)

全国の年金事務所内に設置されている「社会保険・労働保険徴収事務センター」においても申告書の受付を行っています。ただし、特別加入保険料の申告は受け付けていませんのでご注意ください。

労働保険料を口座振替納付する場合

労働保険料の納付方法としては、金融機関・郵便局で直接納付する以外に、口座振替が利用できます。メリットも多く、ぜひご活用いただきたいと思います。なお、口座振替の手続きは簡単ですが、申し込み期限がありますので、はやめのお手続きをお勧めします。

労働保険料の口座振替納付とは?

労働保険料および一般拠出金の納付には、口座振替納付が利用できます。事前に銀行口座を登録しておくことで、自動的に口座から労働保険料が振り込まれます。

労働保険料を口座振替納付するメリット

労働保険料の口座振替納付をするメリットとしては、以下の4点が挙げられます。

・保険料納付のために、毎回金融機関の窓口へ行く手間や待ち時間が解消される

・納付の忘れや遅れがなくなり、延滞金を課される心配がない

・手数料がかからない

・保険料の引き落としに最大2か月ゆとりができる

保険料の分割納付をする場合、最大3回に分けて納付できますが、各回に納期限が設定されています。口座振替の場合は、通常の納付期限から最大2か月ゆとりができます。

労働保険料等の口座振替納付の申込手続き

口座振替納付の申込手続きは以下のとおりです。

①申込用紙を以下から入手

 ・労働基準監督署または労働局の窓口

 ・厚生労働省のホームページからのダウンロード

  口座振替の申込について|厚生労働省

②金融機関の窓口に申込用紙を提出

 分割納付の各期に間に合わせるためには、申込締切日が次のように決まっています。

 一括納付または分割納付の第1回目向け: 申込締切日 2月25日

 分割納付の第2回目向け:申込締切日 8月14日

 分割納付の第3回目向け:申込締切日 10月11日

毎回、引き落とし日(口座振替納付日)の約3週間前に引き落とし予定がハガキで送られてきます。また、引き落とし後、約3週間で引き落とし結果がハガキで送られてきます。

その他の労働保険料の納付方法

その他の労働保険料の納付方法
その他の労働保険料の納付方法

労働保険料の納付方法には、様々なパターンがあります。「一括納付or分割納付」×「窓口納付or口座振替納付or電子納付」の組み合わせで、合計6つのパターンがあります。ここからは、分割納付と電子納付についてさらに詳しく解説していきます。

労働保険料を分割納付する場合

概算保険料が40万円(労災保険か雇用保険のどちらか一方の保険関係のみ成立している場合は20万円)以上の場合、又は労働保険事務組合に労働保険事務を委託している場合は、原則として下記のとおり、労働保険料の納付を3回に分割する事ができます。各回の納付期限は次のとおりです。

分割納付1回目(第1期): 7月10日 

分割納付2回目(第2期): 10月31日 (※11月14日)

分割納付3回目(第3期): 1月31日 (※2月14日)

労働保険事務組合に事務委託している場合は、納付期限は(※)になります。

労働保険料を電子納付する場合

労働保険の手続きは、電子申請および電子納付ができます。労基署や金融機関に出向く工数を削減でき、会社にいながら何時であっても行うことが可能ですので、大変おすすめです。

年度更新については、申告書を電子申請した場合のみ電子納付をすることができますが、電子申請していない場合であっても、延納(分割納付)を申請した場合の第2期分以降については電子納付ができます。なお、2020年4月から、特定の法人を対象にこの電子申請が義務化されます。特定の法人とは、資本金、出資金等が1億円を超える法人等です。

対象となる手続きは、継続事業を行う事業所が提出する年度更新に関する申告書と増加概算保険料申告書です。なお、年度途中に保険関係が成立し、50日以内に申告書を提出する場合は対象外です。将来的には小規模事業所も対象になってくると予想されますので、今のうちから電子申請の準備を始めてはいかがでしょうか。電子申請、電子納付をするためには、まずは電子証明書を取得し、その後電子申請アプリケーションをインストールします。詳しくは、厚労省のホームページをご参照ください。

労働保険関係手続の電子申請について|厚生労働省

労働保険料納付に関する疑問を解消!

労働保険料納付に関する疑問を解消!
労働保険料納付に関する疑問を解消!(画像提供:polkadot_photo/Shutterstock.com)

労働保険料納付に関して、特に質問の多い内容についてQ&Aを記載しました。年度更新にあたり疑問点がある場合は、どうぞご参考になさってください。また、厚労省のホームページでも、よくある質問についてQ&A集が掲載されていますのでご活用ください。

年度更新よくある質問|厚生労働省

労働保険料を延納できる?

労働保険料は延納(分割納付)できます。詳しくは「その他の労働保険料の納付方法」で紹介していますので、ご参照ください。なお、10月1日以降に成立した事業については、延納が認められませんので、成立した日から3月31日までの保険料は一括して納付することになります。なお、有期事業であっても、事業の全期間が6か月を超え、かつ概算保険料の額が75万円以上のものは同様に延納(分割納付)ができます。また、延納(分割)回数で除した時に余りが生じたときは、最初の期分にまとめて納付します。

事業を廃止した場合も納付は必要?

保険年度の途中で事業を廃止し、保険関係が消滅した事業については、保険関係が消滅した日から50日以内に、確定保険料の申告および納付が必要です。すでに納付している概算保険料が確定保険料より多い場合は、還付請求書も提出します。また、別途「雇用保険適用事業所廃止届」も提出が必要ですのでご注意ください。

住所変更した場合の手続きは?

事業所の住所変更があった場合は、変更のあった翌日から起算して10日以内に「労働保険 名称、所在地等変更届」を労働基準監督署または公共職業安定所(ハローワーク)へ提出します(一元適用事業で労働保険事務組合に労働保険事務の処理を委託していないものおよび二元適用事業の労災保険分は労働基準監督署、一元適用事業で労働保険事務組合に労働保険事務の処理を委託して納付するものおよび二元適用事業の雇用保険分については公共職業安定所)。また、「雇用保険 事業主事業所各種変更届」を公共職業安定所(ハローワーク)へ提出します。申告書には新住所を記載し、領収済通知書(納付書)は書き換えずにそのまま使用します。

まとめ

労働保険料の納付方法は多種多様!やり方やメリット、条件を確認して、適した納付方法を選ぼう!

いかがでしたでしょうか。労働保険料の納付方法には様々な方法があることがお分かりいただけたかと思います。条件を確認したうえで、御社にとってベストな方法を選択し、確実な申告・納付をしていただければと思います。この記事が少しでもお役に立てたら幸いです。

この記事を監修した社労士

ドラフト労務管理事務所 - 大阪府大阪市東成区中道

社会保険労務士資格を取得後、人材派遣会社の本社勤務を9年経験。 その後、「問題を解決するためのドラフトを提案する」という理念を基に独立開業し13年目を迎える。前職の経験を活かし、派遣元責任者講習の講師を担当。派遣元・派遣先の双方の立場など派遣業界の仕組みを理解しての講義には定評がある。同一労働同一賃金・ハラスメントのセミナーも年間数十回実施。また、海事代理士事務所を併設することにより陸上労働者のみならず海上労働者の働き方改革にも従事している。 ●重点取扱分野 労務相談/過労等の疾病・過労死の労災申請・障害年金申請代理 派遣元責任者講習講師/労働局・労働基準監督署等の監査立会業務 派遣業・職業紹介業の許可申請業務 ●働き方改革推進支援センターアドバイザー/教えて!goo・Yahoo!知恵袋 認定専門家/経済産業省後援ドリームゲートアドバイザー。 ●ドラフト労務管理事務所 代表社会保険労務士 鈴木圭史 〒537-0025 大阪市東成区中道 JR玉造駅から東へ徒歩3分

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