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社会保険料を決定する「標準報酬月額」決定方法をわかりやすく解説

最終更新日: 2020年01月06日

企業に勤めるサラリーマンやOLの多くの方は、毎月の給与から健康保険料や厚生年金保険料等の社会保険料が控除されています。その社会保険料の金額がどのように決められているのか疑問に思ったことはありませんか?社会保険料は「標準報酬月額」を元に算出されており、給与額や住んでいる地域によって保険料額は異なっているのです。

標準報酬月額とはどのようなものなのか、また、どのように決定されるのかを具体例を用いながら分かりやすく解説していきます。

社会保険の標準報酬月額とは

社会保険の標準報酬月額とは
社会保険の標準報酬月額とは

標準報酬月額とは、社会保険料を決定するために区分(等級)ごとに設定されている金額で、被保険者毎の報酬に応じて決定されます。この見出しでは、標準報酬月額と社会保険料の算出の仕方を具体的な数字を用いながら分かりやすくご紹介致しまします。

社会保険料を決定する「標準報酬月額」

まず、会社が加入している社会保険の団体を確認してみましょう。一般的には、多くの中小企業は全国健康保険協会(協会けんぽ)に加入しています。また、大企業であればご自身の会社の健康保険組合に加入しているケースが多いでしょう。

今回は、協会けんぽのホームページに掲載されている社会保険料額表で標準報酬月額を確認します。

保険料額表 出典:協会けんぽ

上記の表は、協会けんぽの東京都の平成31年4月分からの健康保険・厚生年金保険の保険料額表です。毎月の社会保険料や保険給付の計算をするときにこの標準報酬月額が用いられており、従業員が会社から受ける報酬をいくつかの等級に区分した仮の報酬月額に当てはめて決められています。

東京都以外の地域の保険料額表は以下の協会けんぽのページから確認できます。

平成31年度保険料額表(平成31年4月分から)|協会けんぽ

標準報酬月額は等級で区分されている

標準報酬月額は、現在、健康保険が50等級、厚生年金保険は31等級に区分されています。報酬月額の欄より自身の報酬月額を確認し、該当する等級の月額に料率をかけて健康保険料額と厚生年金保険料額をそれぞれ求めていきます。

例. 給与352,000円の場合の標準報酬月額の算出方法

352,000円は、保険料額表に当てはめると報酬月額350,000円以上370,000円未満なので、標準報酬月額は、健康保険25等級、厚生年金保険22等級の360,000円

報酬の対象となるもの

標準報酬月額の算定のもととなる報酬は、従業員が労働の対価として受取るものを言います。現金だけでなく、現物で支給される食事や住宅などもこの対象です。

【報酬の対象となるものとならないもの】

報酬の対象となるもの 報酬の対象ではないもの
現金で支給されるもの
  • 基本給(月額、時給、日給等)
  • 諸手当(残業手当、通勤手当、家族手当、住宅手当、役付手当、勤務地手当等)
  • 賞与、決算手当等(年4回以上支給されるもの)
  • 恩恵的に支給するもの(結婚祝金や病気見舞金等)
  • 公的保険給付(傷病手当金、休業補償給付等)
  • 臨時的に受取るもの(大入袋、退職金、解雇予告手当等)
  • 実費弁償的なもの(出張旅費、交際費等)
  • 年3回まで支給される賞与など
現物で支給されるもの
  • 通勤定期券、回数券
  • 社宅
  • 食事、食券
  • 被服(勤務服でないもの)
  • 食事(本人からの徴収金額が現物給与の価額の2/3以上の場合)
  • 社宅(本人からの徴収金額が現物給与の価額以上の場合)
  • 制服や作業服など

年3回以下支払われる賞与は標準賞与額

報酬の対象となるものとならないもので記載したように、年3回以下の賞与は標準報酬月額の算定対象とはなりません。賞与分の社会保険料を求める場合は、賞与総額から千円未満を切り捨てた額を「標準賞与額」に保険料率をかけて社会保険料額を求めます。

また、この標準賞与額には健康保険と厚生年金でそれぞれ上限が設定されており、健康保険は年度の累計額573万円(毎年4月1日から翌年3月31日までの累計)、厚生年金は1か月あたり150万円(同月内に2回以上支給されたときは合算)が上限です。なお、産休育児休業の保険料免除期間に支払われる賞与も健康保険の年間累計額に含まれます。

【賞与に係る社会保険料の求め方】

  • 健康保険料=標準賞与額×保険料率
  • 厚生年金料=標準賞与額×保険料率

※年4回以上の賞与は、標準報酬月額の算定対象となりますので、ご注意ください。

社会保険料の計算方法

上記で紹介した標準報酬月額に健康保険と厚生年金保険の料率を掛けることで、社会保険料を計算します。なお、被保険者が40歳以上の場合、介護保険料も健康保険料と合わせて支払うことになるため、健康保険料率が高くなります。

また、健康保険料と厚生年金保険料(、介護保険料)は、会社と労働者で半分ずつ負担します。

例. 東京都の会社に勤務する報酬月額が45万円のAさん(42歳)の社会保険料

会社は協会けんぽに加入しているものとします。

報酬月額が450,000円だと、標準報酬月額は440,000円なので、

健康保険料(介護保険第2号被保険者)=440,000円×11.63%×1/2=25,586円・・・①

厚生年金保険料 =440,000円×18.300%×1/2=40,260円・・・②

①と②を合計した額である65,846円を会社とAさんそれぞれが負担します。

標準報酬月額が決定、変更される時期

標準報酬月額が決定、変更される時期
標準報酬月額が決定、変更される時期

社会保険料を算出するための標準報酬月額は、以下の4つのタイミングで決定や見直し、改定が行われます。

  1. 入社をしたとき「資格取得時決定」
  2. 毎年7月に行われる「定時決定」
  3. 給与に大幅な変動があったとき「随時改定」
  4. 産前産後休業者・育児休業者が職場復帰後に給与に変動があったとき「産前産後休業・育児休業終了時改定」

では、それぞれを詳しく解説していきましょう。

毎年7月の「定時決定」

従業員が実際に受けている給与額とすでに決められている標準報酬月額に大きな差がないか、毎年1回、4月から6月に支払われる3ヶ月間の給与を対象に標準報酬月額を見直し決定することを「定時決定」と言います。

報酬月額の算定方法

手順①:4月~6月に支払われた給与額を集計する。

例えば、月末締め翌25日に支給される場合、4月支払の給与は3月労働分となります。たとえ3月労働分であったとしても、4月に支給された給与で算定していく支払日ベースです

手順②:支払基礎日数が17日以上ある月を確認。

4月から6月で勤務した日が17日以上ある月が対象となり、17日未満は対象外となります。パートタイマー等の短時間労働者(4分の3要件を満たす短時間労働者)の場合は、17日以上あればその月を対象としますが1月もない場合は、15日以上の月が対象となります。

手順③:対象となる月の給与額の合計をたし、対象となった月で割り報酬月額を出す。

4月から6月の3ヶ月が全て対象となれば3で割り、対象となる月が2か月しかなかった場合は2で割ります。

手順④:手順③でもとめた報酬月額を等級表に当てはめ、新たな標準報酬月額を求めます。

定時決定の一般的な例を用いて、具体的な算定方法を分かりやすく解説致します。

例.  協会けんぽに加入している東京都の会社

4月の報酬月額:基本給30万+交通費1万円+残業手当5千円=315,000円

5月の報酬月額:基本給30万+交通費1万円+残業手当3万円=340,000円

6月の報酬月額:基本給30万+交通費1万円+残業手当0円=合計310,000円

報酬月額=(315,000+340,000+310,000)÷3≒321,666円 ※1円未満の端数は切り捨て

標準報酬月額は、健康保険が23等級、厚生年金が20等級の32万円です。

定時決定の手続き方法・適用期間

手続き用紙 健康保険・厚生年金被保険者報酬月額算定基礎届
届出期間 7月1日~7月10日まで
提出先
  • 管轄の年金事務
  • 健康保険組合
  • 厚生年金基金

※組合と基金は加入している事業所のみ

適用期間  9月~翌年の8月まで

入社の時の「資格取得時決定」

会社に入社した時など、社会保険に加入して被保険者となるタイミングで「資格取得時決定」を行います。1ヶ月あたりの給与額を計算し、「健康保険・厚生年金被保険者資格取得届」に記入して提出しますが、月給以外の年収や時給、日給で支払われる方も1ヶ月分の給与見込額を計算し標準報酬月額を算出しなければなりません。

資格取得から5日以内に資格取得届を年金事務所に提出します。また、会社が健康保険組合に加入している場合には、健康保険組合へ提出をします。厚生年金基金に加入している会社も基金へ提出する必要があります。

なお、資格取得時決定の適用期間は、資格取得したタイミングによって異なるので注意が必要です。

資格取得時決定の手続き方法・適用期間

手続き用紙 健康保険・厚生年金被保険者資格取得届
届出期間 入社してから5日以内
提出先
  • 管轄の年金事務
  • 健康保険組合
  • 厚生年金基金

※組合と基金は加入している事業所のみ

適用期間
  • 1月〜5月に入社し取得した場合➡︎その年の8月まで
  • 6月〜12月に入社し取得した場合➡︎翌年の8月まで

※ともに随時改定や産前産後終了時、育児休業終了時改定が行われるまで適用される

給与の額に変更があった時の「随時改定」

定時決定により決定された標準報酬月額は、原則として1年間適用されますが、給与額に大きな変動があった場合には「随時改定」を行います。次の3つの条件に全て該当した場合、随時改定の手続きを行わなければなりません。逆に、1つでも該当しばければ届出の必要もありません。

随時改定の条件

  1. 基本給などの固定的賃金または給与体系の変更があった
  2. 給与の変動が変動月以後3ヶ月間引き続き、勤務した日数が17日以上あった
  3. 現在の標準報酬月額に2等級以上の差が生じた

上記の3つの条件に該当した場合には、「被保険者報酬月額変更届」をすみやかに提出します。

随時改定の手続き方法・適用期間

手続き用紙 被保険者報酬月額変更届
届出期間 すみやかに
提出先
  • 管轄の年金事務
  • 健康保険組合
  • 厚生年金基金

※組合と基金は加入している事業所のみ

適用期間
  • 1月〜6月に改定した場合、その年の8月まで
  • 7月〜12月に改定した場合、翌年の8月まで

※再び固定的賃金等に変動があれば再度、随時改定の対象となります。

産休及び育休後の改定

産前産後休業・育児休業のそれぞれから職場復帰した被保険者が、休業に入る前と復帰後の給与額に変動があった場合に被保険者の申出により事業主経由で届け出るのが「産前産後休業・育児休業等終了時改定」です。下記の2つの条件にいずれにも該当した場合に改定の対象者となります。

改定対象の条件

  1. 産前産後休業もしくは育児休業に入る前の従前標準報酬額と休業開けの標準報酬月額に1等級以上の差が生じる
  2. 各休業終了日の翌日の属する月以後3ヶ月のうち、少なくとも1ヶ月における「報酬の支払いの基礎日数」が17日以上であること

産前産後休業・育児休業終了時改定の手続き方法・適用期間

手続き用紙 産前産後休業終了時報酬月額変更届・育児休業終了時報酬月額変更届
届出期間 すみやかに
提出先
  • 管轄の年金事務
  • 健康保険組合
  • 厚生年金基金

※組合と基金は加入している事業所のみ

適用期間
  • 1月〜6月に改定した場合、その年の8月まで
  • 7月〜12月に改定した場合、翌年の8月まで

標準報酬月額の保険者算定とは?

社会保険 標準報酬月額
保険者算定とは?

保険者算定とは、定時決定や随時改定などの決定方法では標準報酬月額を算定するのが困難な場合や著しく不当である場合、保険者が算定する金額を標準報酬月額とするものです。ここでは、どのような場合に保険者算定になるのかや算定方法について解説していきます。

3月以前の報酬が遅れて支給された場合

給与の遅延などは労働基準法で禁止されていますが、現実には会社事情などにより遅延が発生するケースがあります。このような場合に3ヵ月の平均給与を算出することができません。

定時決定のために平均給与を算出する4月、5月、6月に給与の遅延があった場合は、遅延がなかった1ヵ月、2ヵ月の報酬額の実績により推定して決定されます。

休職で通常より低額の報酬が支給された場合

定時決定のために報酬月額を算出する4月から6月の間に休職により通常の賃金より低い賃金を得ていた場合、低い賃金の月を含めて報酬月額を算出すると標準報酬月額も低くなってしまいます。このため、3ヵ月とも休職だった場合は従前の報酬月額により算出し、休職が1ヵ月や2ヵ月だった場合には当該月を除いて報酬月額を算定します。

月の途中入社の場合

4月から6月のいずれかの月の途中に入社した場合は、入社月の給与が通常の月に比べて低い場合があります。この場合も、通常の月に比べて報酬が低い月は含めずに標準報酬月額を算定します。

3ヵ月間の平均額と年の平均額に2等級以上の差が生じる場合

定時決定のために平均給与を算出する4月から6月にかけて繁忙期だったり、もしくは業務がない時期だったりする場合、その時期だけ極端に給与が多かったり少なかったりすることになります。このような場合で、年の平均額と2等級以上の差が生じていた場合は、年の平均額を標準報酬月額とするケースがあります。

まとめ

標準報酬月額を求めるとき、対象となる報酬なのかそうでないのかを確認しなければなりません。さらに、年に1回は標準報酬月額を見直す定時決定があり、他にも給与が大きく変動した場合などの条件に該当した際には標準報酬月額を改定しなければなりません。事前にしっかりと条件や内容を確認しておきましょう。

この記事を監修した社労士

ドラフト労務管理事務所 - 大阪府大阪市東成区

鈴木圭史社会保険労務士 1974年生。大阪府出身。ドラフト労務管理事務所代表社会保険労務士/働き方改革推進支援センター相談員。人材派遣会社の本社勤務後、大阪玉造に事務所を設立して12年目を迎える。同一労働同一賃金や労務問題の改善に尽力。派遣法(派遣先均等均衡・労使協定方式)が専門で派遣元責任者講習の講師を担当。
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