会社設立時には、事業目的を登記しなければいけません。法人の登記には商号や住所の他、事業目的を設定する欄があるためです。
しかし、「定款に記載する事業目的とはどう違う?」「事業目的通りの事業をしなければ法律違反となるの?」と法人登記時の事業目的の決め方に対して疑問や不安を持っている人も多いのではないでしょうか?
事業目的は事業の実態や将来像に合わせて適切に設定することが必要です。この記事を読んで、適切な事業目的を登記できるようになりましょう。
この記事を監修した税理士
しんこう会計事務所 - 愛知県名古屋市中村区
事業目的とは
そもそも事業目的とは何のためにあるのでしょうか?
法人登記で事業目的を設定しなければならないのは、登記という誰でも閲覧できるものを第3者が見て「この会社は何をしている会社なのか」を分かるようにするためです。まずは事業目的の概要について詳しく解説します。
何をしている会社なのかを示すもの
事業目的とは、法務局へ法人登記をする際に必要な登記事項です。「事業目的は定款に書かれているのでは?」と思っている人も多いでしょう。しかし、定款は誰でも見れるものではありません。
会社は公共性の高い社会的に評価される存在ですので、誰でも閲覧可能なところに事業目的を登記する必要があるのです。
また、事業目的によって会社が対外的に評価され、事業目的が原因で銀行融資を断られてしまうこともよくあります。事業目的はしっかりと決める必要があるのです。
適法性、営利性、明確性を満たすように書く
対外的に信用される会社になるために事業目的は以下の3つの性質を満たしている必要があります。
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適法性とは事業目的が法律に違反していないということ。公序良俗に反するものや犯罪行為などを事業目的にすることはできません。
明確性とは事業目的が客観的に明確なものであるということ。事業目的を見た人が理解できないような、あまりにも専門的な言葉を事業目的とすることはできません。一般の人が事業目的から事業の内容が明確に分かるようなものにする必要があるのです。
営利性とは事業目的が利益を生み出すものである必要があるということ。株式会社とは利益を生み出すことを目的にしているものです。ボランティアなどの非営利性の事業目的を設定することはできません。
また、事業目的に使用できる文字は日本語(ひらがな・カタカナ・漢字)だけです。例えばPC、WEBなどのアルファベットは使用できません。コンピューターやインターネットなどの文字に置き換える必要があるので注意しましょう。
事業目的の書き方
事業目的の書き方は特に詳細な決まりがあるわけではありません。現在の事業内容を登記してもよいですし、今後手掛ける可能性のある事業内容を登記することもできます。
ただし、事業目的は適法性明確性を満たす必要があるので、あまりにも適当な事業目的を登記するわけにはいきません。失敗しない事業目的の決め方はどのようなものなのでしょうか?
同業他社の事業目的を参考にしてみよう!
事業目的を決める際に、まずは同業他社の事業目的を参考にするのがよいでしょう。事業目的は「何を書いていいか」「どこまで踏み込むのか」が素人には判断が難しいからです。
他社の事業目的は以下の方法で見ることができます。
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同業他社のホームページに事業目的が掲載されていない場合には、登記を見ることで事業目的を知ることができます。悩んでいる時はまず同業他社の事業目的を見てみましょう。
今後、手掛ける事業も含めておく!
事業目的を決める際に重要なことは「今後手がける予定のある事業も含めておく」ことです。事業目的に反する事業を行うことは民法違反になるので、登記していない事業を営む際には変更登記の手続きが必要。
将来的に手間やコストがかかってしまうことになるので、会社設立時から将来手がける予定の事業は事前に事業目的として登記しておいた方がよいでしょう。
【前各号に付帯関連する一切の事業】を含めましょう!
事業目的を決める際には「前各号に付帯関連する一切の事業」を含めることをおすすめします。
前述したように、事業目的外の事業を営むことは民法違反となりますが、「前各号に付帯関連する一切の事業」という事業目的を入れておくことで、新たに始める事業が他の事業目的に関連するものであれば法律違反にはなりません。
「前各号に付帯関連する一切の事業」という文言1つあるだけで、事業目的に幅がかなり広くなりますので、法人登記の際には必ず入れておくようにしましょう。
事業目的の注意点
事業目的を決める際には以下の点に注意しなければなりません。
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事業目的を決める際に失敗しないように注意点について詳しく理解しておきましょう。
誰でも閲覧が可能
会社の登記は登記簿謄本を取得すれば誰でも閲覧することが可能です。銀行や企業は、新規で取引する企業については商業登記簿謄本を取得して「どんな企業なのか」を調べることが往々にしてあります。
商業登記簿謄本に記載された事業目的は誰でも閲覧でき、常に社会の目に晒されていることを意識して、社会的な評価を下げないような内容にする必要があるのです。
たくさん書きすぎるのもNG
事業目的はいくつでも設定することができますが、あまりにも多く書きすぎるのはNGです。あまりにも多くの事業目的を記載すると「この会社は何をしている会社なのかわからない」というネガティブな評価になってしまうことが多いのです。
例えば事業目的が1つか2つであれば、誰が見ても「この会社は〇〇をしている会社」とわかります。しかし、目的が多いと複雑で実態が分かりづらいです。事業目的は7つを超えると商業登記簿謄本が2枚になってしまいます。
できる限り商業登記簿謄本が1枚になるように、事業目的は7つ以内とした方がよいでしょう。
許認可が必要な業種は注意!
飲食業や建設業などは許認可が必要な業種です。このような許認可が必要な業種は、その事業を定款で事業目的としていないと許認可が降りないことが少なくありません。
このため、許認可が必要な業種はあらかじめ定款と登記で当該業種を事業目的としておかないと、いざ事業開始のために許認可を得ようとした時に許認可が下りないことになってしまいます。
事業目的に記載し忘れることがないように十分に注意しましょう。
事業目的の実例
事業目的の実例をご紹介します。事業目的は業種によって異なります。自社の業種から最も近い事業目的が何なのかを、以下の実例から参考にして下さい。
もちろん下記に記載されていないものでも問題ありませんが、一致するものがあれば事業目的として問題なく使用することが可能です。
サービス業の場合
サービス業は多岐に渡ります。サービスごとに事業目的をみていきましょう。
物品貸借
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情報サービス
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娯楽
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個人サービス・結婚・人材
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専門サービス業
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その他の事業サービス業
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不動産業の場合
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農業の場合
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建設業
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製造業
製造業もいくつか業種が細分化されています。
食品製造
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一般機械器具・金属製品
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コンピュータ<電子計算機>関係
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その他
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販売業
販売業も業種ごとに事業目的が分かれています。
飲食店
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医薬品・健康器具
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各種商品・その他
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金融・保険・投資業
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労働省派遣業
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その他
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会社設立後の事業目的の変更や追加について
会社設立後に事業目的は変更することが可能です。しかし、事業目的を変更するためには費用がかかります。また、罰則はないものの事業目的に違反した業務を行うことは好ましいことではありません。
事業目的は最初から今後変更する必要がないものを設定するのがベストです。後から事業目的を変更する手続き、違反した場合のリスクなどについて詳しく解説します。
事業目的の変更には、登録免許税がかかる
前述したように、事業目的に記載されていない事業を行う場合には変更登記を行うことが必要です。そして事業目的の変更登記の手続きには登録免許税3万円のコストがかかります。
後から不要なコストを支払わなくてもいいように、設立時に将来のことを含めて事業目的を決めておく必要があるのです。
事業目的に違反した場合は?
事業目的の違反しても会社法には罰則の規定はありません。しかし民法では、「会社が事業目的に違反する行為を行った場合には、その行為は無効」とされています。
そのため、事業目的外の事業によって利益を得た場合には、その利益は不当な利益と取引先などから訴えられて、原状回復などの義務を負ってしまう可能性はゼロではありません。
このようなリスクを排除するためにも「前各号に付帯関連する一切の事業」を事業目的に含めておくことと安心です。
監修税理士のコメント
しんこう会計事務所 - 愛知県名古屋市中村区
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事業目的例でも紹介したように、事業目的は1つの業種の中でも多岐に渡り、オリジナルの事業目的を設定することもできます。
また、事業目的外の事業を行うことによって民法上のリスクを負うことになってしまい、後から変更登記や定款の変更をするにも費用がかかるでしょう。
このようなリスクは会社設立時に設立手続きを税理士に依頼することによって排除しましょう。
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この記事の監修税理士
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