じゅうたんのように美しい芝が広がる庭に憧れる人は多いものです。何かと手間のかかる天然芝ではなく、人工芝マットを選択するのも一案でしょう。導入を検討する人に向けて、その種類や選び方、施工方法、手入れの仕方について解説します。
そもそも人工芝とは?
芝を敷くとなると「天然芝」か「人工芝」のどちらかを選択することになりますが、「やっぱり天然芝がいいのかな?」と考える人が少なくありません。
しかし人工芝には天然芝にはない利便性や特徴が備わっており、家庭に採り入れるのにも適しているのです。
天然芝に比べ手入れが少ない人工芝
人工芝はナイロンやポリエステルといった合成樹脂を原料として、人の手によって作られた芝です。敷いてからの手入れがほぼ不要な点で、高い人気を集めています。
葉の長さにもいろいろなタイプがあり、丈によって見た目の印象や感触が違います。用途や目的によって適したものを選べるのです。
「ショートパイル」は長さが5~10mmの人工芝です。パターゴルフをプレイしたり、寝転んで芝の心地よさを味わったりする場合に適しているでしょう。
「ロングパイル」は40mm以上のものを指し、クッション性に優れています。小さい子どもやペットを遊ばせるのにも安心です。
人工芝の耐久性
その名のとおり人工であるため、一度敷いたら葉が伸びたり生え替わったりすることはありません。したがって使用年数が重なるほどに摩耗し、劣化が進むのは仕方のない点です。耐久性については価格や性能によっても異なりますが、一般的に見て7~10年だといえます。
サッカーのピッチなどスポーツ用の人工芝は、長いパイルを使い、密集させるように作ることで、上からの圧力を跳ね返す仕様になっています。くわえてクッション材を充填することで摩耗を防ぎ、耐久性を高めているのです。
一般の家庭で用いるタイプには、それほどの耐久性能は備わっていません。激しい運動をすることは前提にしておらず、耐久性はさほど高くない代わりに手頃な価格で購入できます。
人工芝マットの種類
一口に人工芝マットといっても、その種類はさまざまです。素材や形状、芝の長さによって雰囲気は大きく異なります。
用途に見合ったタイプを選ぶためにも、種類の違いを理解しておくことが肝心です。
パイルの素材が異なる
「パイル」とは天然芝でいえば葉や茎にあたる部分を指します。パイルの主な素材には3種類ありますが、それぞれに見た目や質感、耐久性に違いがあるのです。
「ナイロン」の特徴は肌触りの柔らかさと、手頃な価格面にあります。素材そのものに柔軟性があるため、下地の形状にフィットして、きれいに張れる点も魅力です。
「ポリプロピレン」を使用したタイプは、優れた耐久性に特徴があります。もともとポリプロピレンには、硫酸のような極めて強力な科学製品向けの容器にも用いられるほどの強固さがあるのです。
耐久性の高さからテニスのコートやサッカーのピッチにも採用される素材です。
「ポリエチレン」は耐久性、見た目、価格などを総合的に判断したときに、最もバランスのよい素材といえるでしょう。そのため家庭でも多く採用されるタイプです。
耐水性もあり、水を弾きカビを防ぎます。耐候性も高く、紫外線にも強さを発揮するのです。高性能を備えながら価格が手頃であるため、高い人気を誇っています。
パイルの形状
「クリンプ型」は縮れた形状がクッション性につながっています。人工芝の多くは緑色と茶色のパイルを混ぜて自然な風合いを演出していますが、クリンプ型は茶色用として使用されることが多いタイプです。
「フラット型(I字型)」は大量生産がしやすいため、リーズナブルな価格設定を可能にします。柔軟性があるため肌触りがよいですが、形が平坦なため芝が倒れやすい面が難点です。
対して「V字型」は倒れにくさを備えています。基盤に接する断面をV字に折り曲げていることで、上からの衝撃に強く、しっかりと直立を維持できるのです。
「C字型」はV型が持つ肌触りのチクチク感を解消するために、断面をなだらかなカーブにしています。触った感触もソフトで弾力性があり、倒れにくく耐久性にも優れた形状です。
「ウェーブ型(W字型)」は断面をW字のようにより複雑にすることで、さらにしなやかな触感を得られます。最高級の「ダイヤモンド型」は菱形の断面を持ち、チクチクした感覚を抑えつつ、弾力と柔軟性を備えたタイプです。
パイルの長さ
10mm以下の長さのものは軽量で、使いやすさが魅力です。工事現場などで一度にたくさん使用する際に使用されます。
10~15mmはゴルフのパットの練習用に適した長さです。適度なクッション性も備えていることから、キッズスペースや短期イベントにも使用されます。
20mmのタイプは十分なパイルの丈がありながら価格もそう高くなく、家庭にも採用しやすいでしょう。掃除もしやすく扱いやすい点でも人気があります。
芝の丈が長くなるほど価格は上がる傾向にありますが、25~30mmは「20mmだとやや物足りなさを感じる」という場合に適した長さです。
35mmクラスになるとリアルな感覚にあふれ、密度やクッション性も申し分ありません。さらに40mm以上ともなるとあらゆる面で高性能な人工芝で、プロの試合も開催するような野球場や競技場に採用されます。
芝の裏面についても確認
人工芝はパイルを基礎となる生地に縫い付けて製造します。地面に接するのは基礎となる生地なので、裏面の素材によって耐久性などに差が生じてくるのです。
庭に敷くならば「SBRラテックス仕上げ」「ウレタンコーティング仕上げ」のどちらかが主流です。
SBRラテックスはポリプロピレンをベースに、合成ゴムを加工したものです。適度な通水性があるため、水はけもよく、カビの発生も抑えます。
ウレタンコーティングはその名のとおり、裏面にウレタンをコーティングすることで硬度を高める工法です。強度が増すことでパイルが抜けにくくなり、耐久性がアップします。
人工芝マットの選び方
パイルの素材や形状の違いによってさまざまな種類がある人工芝ですが、実際に選択するとなると迷いが生じる人は多いでしょう。
そこで選び方のポイントを3つの視点から解説します。
ロールタイプかパネルタイプで考える
広い庭に敷くならロールタイプをおすすめします。継ぎ目を少なくして見た目を整えやすいことに加え、設置する作業も効率的に行えるタイプです。
幅も1m・2mと違ったサイズがあるので、庭の広さに応じて適切な幅を選べます。カットもしやすくなっていて、曲線に合わせたり、隙間なくぴったりと敷いたりすることも容易です。
設置する範囲が限定されていれば、パネルタイプが適しています。ベランダやバルコニー、ペット用の小屋での使用にはうってつけの仕様です。
既成のマットをひとつずつ並べつなげていくだけで簡単に施工できる点が、最大の特徴でありメリットといえます。手軽さに加え、敷いた後の浮き上がりを防止しやすいという利点もあるタイプです。
人工芝を使う目的で考える
パットの練習をしたいというユーザーに適しているのはショートパイルです。一般的なグリーンを再現できます。
寝転んで子どもやペットとじゃれ合うような時間を楽しみたいなら、15mm程の長さが向いています。芝の風合いを感じながら心地よく過ごせるでしょう。
子どもが野球やサッカー、ダンスなどの練習をする家庭なら、20mm以上の長めのパイルを選びたいものです。クッション性が運動時の体への衝撃を軽減します。
見た目や芝丈で考える
庭に足を踏み入れることは少ないものの美しい景観を作りたいということであれば、クッション性や耐衝撃性はあまり重要ではありません。丈が15cm程度のクリンプ型・フラット型の混合タイプが向いています。
パイルの密度や形状は、外見にも大きく影響するものです。より青々と育った芝の質感にしたいのであれば、より長さがあり、V字・C字の形状をしたパイルが高密度に敷かれているものを選びます。
さらにリアルさを求めるならば、複数の色を使い、あえて色ムラを演出したタイプを導入しましょう。天然芝が枯れた草も含んでいるように、茶色なども活用しながら、ナチュラルなビジュアルを追求したタイプもあります。
天然芝と人工芝の違い
ここまでは人工芝に関する概要を解説してきました。中には「天然芝と比較したときの違いがよくわからない」という人もいるかもしれません。
そこで天然芝についても掘り下げながら、人工芝のメリットを考えてみましょう。
天然芝の特徴
天然芝とは「芝草」という植物によって作る芝生を意味しています。「芝生」は草の名称ではなく、芝草が生い茂る状態を指す言葉なのです。
通常は1種類の芝草を用いるものですが、場合によってはいくつかの種類を混ぜ合わせて芝生にすることもあります。豊かな景観を醸成したり、天候や病害虫に強くなったりするというメリットがあるのです。
「日本芝」と「西洋芝」の2つが代表的な種類です。高温多湿に耐性があるため国内での育成に向いている日本芝に対して、西洋芝は寒さに強い性質といえます。
天然芝と人工芝の違いについて
手入れの行き届いた天然芝は、フカフカとしたソフトな感触が魅力です。寝転ぶと土や草の香りがただよい、心地よい気分にしてくれます。裸足で歩いても天然の草の柔らかさで刺激がなく、気持ちよく過ごせます。
人工芝は人の手によって作られるものなので、天然芝ほど自然を感じることはできません。また天然芝は季節ごとに表情を変えるため、芝生の状態から四季を感じられます。
人工芝でナチュラルな景色を望む場合、複数のパイルの色を用いたタイプを選ぶなど、配慮すべきポイントがあるのです。
人工芝にするメリット
天然芝が持つ自然な風合いや奥深い景観には及びませんが、人工芝には数多くのメリットがあります。
最も大きな利点は手間がかからない点でしょう。一定の状態に育つまでに労力が必要な天然芝と違って、基本的には施工してしまえば済んでしまいます。
日光や水の量、水はけなど天候や状態によってコンディションが変わる天然芝ですが、人工芝なら環境に左右されることなく、美しい芝生を実現することが可能です。
病害虫に関する心配も必要ありません。芝の様子を常に確かめたり、虫よけや感染症を予防したりという手間をかけなくて済むのです。
人工芝マットの施工方法
人工芝を敷くにはどのような作業が必要になるのでしょうか?施工方法について解説します。
施工場所の基礎整備
まず必要な作業が基礎整備です。地面が荒れた状態のままだと、敷いた後に支障が出ます。それゆえ施工場所をきちんと整備することが大切です。
地面から生えている草を刈り取り、木の根や石など地表に凹凸を生むものを除去します。
障害となるものを取り除いたら、次は土を平坦にならし固める作業です。地面が斜めになっていたり柔らかすぎたりすると、仕上がりの質が低下してしまいます。
仮敷きして範囲を確かめる
続いて仮敷きですが、これは人工芝を敷く範囲を確かめるために行う作業です。
ロールタイプの場合サイドに耳が付いている仕様であれば、1目盛分を切っておくときれいに仕上がります。耳がないタイプでも巻き始めと巻き終わりの両端を1~2cmカットしておきましょう。
準備ができたら施工する範囲に順番に敷いていきます。その際には最終的にぴったりと敷けるように、壁際には余裕を持たせておくことが大切です。
人工芝マットを範囲に合わせて切る
仮敷きが終了したら余分な人工芝のカットです。施工範囲にぴったりと収まるように切断していきます。
途中で障害物がある場合や壁に接する面などでは、端の部分を切りすぎると、隙間ができてしまう場合があります。そうなるとリカバリーは困難なので、慎重さが求められる作業です。
切る部分にマジックなどで線を引き、カッターを用いて線に沿ってカットします。その後、障害物に合わせて押し込むように敷いてから、手でパイルをかき分けるようにほぐしましょう。
人工芝のジョイント部分を整える
続いてジョイント部分を整えます。人工芝を敷くとどうしても継ぎ目ができてしまいますが、いかにわかりにくくするかが重要です。
仮敷きするとマットが重なり合っている部分ができます。そこを真っ直ぐに切断し、ぴったりと継ぎ目を合わせていくのです。
ずれないように養生テープで固定してからカットするとよいでしょう。
仮敷きで人工芝が重なっているジョイント部分には、定規をあててカットします。隙間を恐れて余裕を持たせすぎてはいけません。施工後にマットが盛り上がる原因になるためです。
仕上げをして完成
仕上げとして、敷き詰めたマットの外周にU字型のピンを打ち込みます。30cm間隔で打つのがひとつの目安です。
壁際にピン打ちをする場合には、約1.5cm内側の場所で行います。U字のピンはマットの端と平行になるように打ちましょう。
ピンがパイルを挟んでしまわないように配慮しながら打ち、全て打ち込み終えたらピンの頭部にパイルを被せるようにして目立たなくします。
基本的には端だけで問題ありませんが、めくれや浮きが気になるならば繋ぎ目部分にも打っておきましょう。
人工芝マットの手入れ方法
天然芝と違って手入れに大きな手間がかからないことが人工芝のメリットです。
とはいえメンテナンスすることで、きれいな状態を維持できます。手入れの方法について紹介しましょう。
掃除機もしくはホウキで掃除
人工芝はパイルの隙間に砂やほこりがたまってしまいます。放置すると小さな子どもが寝転んだりペットが遊んだりしたときの衛生面が心配です。
清潔さを保つために、定期的に異物を取り除きましょう。掃除機で吸い取ると簡単です。壁際などの細かい部分には、ハンディタイプのバキュームクリーナーが活躍します。
電源が届かないといった場合には、ホウキで掃いてゴミを浮き上がらせる方法もあります。ブロアでパイルの隙間にたまった汚れを吹き飛ばすのもひとつの方法です。
ブラッシングで寝ている芝を起こそう
人工芝は使用しているうちに次第に芝が寝てくるものです。特に人がよく通る場所や、ものを置く機会が多い部分に起こりがちです。
パイルが寝てしまったマットは、見た目の印象が低下するとともに、心地よい手触りもなくなります。
パイルが倒れてしまった場合には、掃除で使うデッキブラシで、マットの表面をブラッシングしましょう。1本1本を起こすようにこすることで、パイルが立ってきます。
人工芝マットを敷いた後に注意点すべきこと
使用するにあたって気を付けておきたい点もあります。施工後に注意するべき点について解説しましょう。
車は駐車しない方がよい
さまざまな場所に敷ける人工芝ですが、車を停める場所への施工は避けた方がよいでしょう。
車両の重量はとても重たいうえに、ハンドルを切りタイヤが曲がることでさらに大きな負荷がかかります。その結果パイルがつぶれ、剥がれてくることもあるのです。
どうしても駐車スペースに敷くなら、タイヤの乗る部分だけはコンクリートを整備するといった対策をとる必要があります。
夏は芝生で火傷しないように注意
人工芝のパイルに用いる素材は、直射日光を受けると熱を蓄えるのが特徴です。特に夏場の日差しの下では、非常に高温になります。
その上を素足で歩くと火傷を負ってしまうケースもあるでしょう。足の裏の皮膚は比較的弱い部分なので、注意が必要です。
夏に人工芝で過ごすなら、事前に水を撒いて熱を冷ましておきましょう。
火気は避けること
「芝生の上でバーベキューを楽しみたい」という願いを持つ人は多いでしょう。しかし人工芝の上で火気を扱うのは厳禁です。
パイルの素材は熱に弱い性質があります。防炎性能を備えているので炎が燃え上がる事故は起きませんが、熱で溶けてしまうことは十分に考えられるのです。
火を使いたい場合にはタイルやブロックなどでコンロを使用する場所を設けるなど、工夫が求められます。
目的に合わせて人工芝マットで楽しい庭づくりを
美しい芝生に憧れる人にとって、人工芝はとても心強いパートナーです。育てる労力もメンテナンスの手間もほとんどかかりません。
数多くの種類がそろっているため、用途が広い点も魅力です。目的に合ったタイプを選んで、素敵な庭づくりを楽しみましょう。
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