アシダカグモは家に現れるクモの中でも最大級のサイズを誇ります。不気味な外見とは裏腹に、ゴキブリなどの害虫の食べてくれる益虫として有名です。
アシダカグモによる人間への健康被害はある?
アシダカグモによる人間への健康被害はありません。
アシダカグモの駆除は必要?
アシダカグモは放置しても問題ありません。気持ち悪いという場合には、家から追い出すようにしましょう。
アシダカグモとは?どんなクモ?
「アシダカ軍曹」の異名をもつゴキブリハンター
長い脚を持つ「アシダカグモ」は、屋内に現れる最大級のクモです。インパクトのある外見をしているので、はじめて見た人の多くが驚くことでしょう。
不気味な印象がありますが、結論から言えばアシダカグモは「放置しても問題ない」虫です。この記事で紹介する内容の、概要を見てみましょう。
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ゴキブリを退治してくれることに敬意を表す人からは、「アシダカ軍曹」というあだ名で呼ばれることもある、天然ゴキブリハンターです。
まずは、アシダカグモの生態と特徴を解説していきます。
南西の地域に分布
アシダカグモはほぼ世界中に生息しています。日本でも生息していますが、もともとは存在しなかった外来種です。
1800年代後半ごろに長崎県で見つかったアシダカグモが、日本で初めての例とされています。
現在は、おもに九州や四国、福島より南の地域などに生息。逆に北海道や東北、また石川県より北の、冬に雪が降るような寒冷地では確認されません。
家屋に住み着くクモの一種
日本には家屋をすみかにするクモが約50種類いますが、アシダカグモはその中でも最大級の大きさを誇ります。
白・灰・褐色の毛が生えており、全体的には灰褐色の見た目をしているので、白い壁やウッド調の床にいる場合は、見つけやすいでしょう。
一般的によく見るイエグモ(ハエトリグモ)が1年くらい生きるのに対し、アシダカグモの寿命は約3年以上。個体によっては7年以上も生きることも。何度も超冬するため、数年にわたって家に出没する可能性がある虫です。
また、アシダカグモの産卵シーズンは初夏。産まれた幼体は10回ほど脱皮を繰り返し、約2年をかけて成体へと成長していきます。
かなり臆病な性格をしていて、近寄るだけで逃げてしまうことも。また壁を叩いたときの振動や大きな音にも、敏感に反応します。無理に刺激を与えると噛まれることがあるので、見つけたらそっとしておくか、慎重に外へ逃がすのがよいでしょう。
徘徊性のクモ
クモといえば糸で罠をはって、餌(エサ)になる虫をとらえるイメージがありますが、アシダカグモは巣を糸でつくらない「徘徊性(はいかいせい)」のクモです。
日中は納屋や家屋の物陰に潜み、夜に獲物を狙うために活動をはじめます。
「蜘蛛の巣」を作らないとはいえ、徘徊性のクモも糸を出すことができます。徘徊性のクモが使う糸は「しおり糸」と呼ばれ、高いところから降りる際は減速のために活用したり、卵を守るために糸で包んだりと、いろいろな場面で使われるのです。
産卵時期の初夏には、卵が詰まっている「卵嚢(らんのう)」を抱えながら移動しています。
体長10cmを超える個体もいる
アシダカグモの胴体は小さいですが、名前の通り脚が長い特徴があります。広げた状態で10cmを超える個体も少なくありません。長いだけでなく太さもある脚を持つので、不気味な印象を受けた人を多いでしょう。
またオスとメスとで胴体のサイズに違いがあり、成虫のオスが1.5~2.5cmで、メスが2.5~3cmほどです。
これに脚の長さを加えることで10cmを超え、人間の手のひらを覆うほどのサイズ感になります。
アシダカグモが益虫だと言われる理由
巨大で不気味なアシダカグモは、心理的に受けつけにくいために「不快害虫」と言われることがあります。
しかし実は毒性は持っておらず、人間やペットに実害をあたえる「衛生害虫(えいせいがいちゅう)」でもありません。
むしろ反対に「アシダカグモは衛生害虫を食べて駆除してくれる」という特性から「益虫(えきちゅう)」として知られているのです。
人間の害になるとしても「こちらから手を出したときに噛む」くらいなので、トータルで見ればアシダカグモが家にいるメリットのほうが大きいでしょう。
ゴキブリを退治する
アシダカグモはゴキブリを主食としています。そもそも外来種で、日本にやってきた理由は「ゴキブリ駆除のために、江戸時代に輸入された」という説もあるほど。
そのため家でアシダカグモを見かけたら、家に潜むゴキブリを食べてくれている可能性があります。「ゴキブリは、アシダカグモが住む家と分かれば撤退する」といわれるほどです。
逆に言えば「アシダカグモがいるということは、ゴキブリがいる」ということです。
ゴキブリは排水口などを通って家に侵入してくるため、雑菌や細菌を保有している場合があります。人間の食品に細菌が付着する可能性があり、衛生面の観点から早めの駆除が必要です。
毎年のようにゴキブリの被害に悩まされている人は、アシダカグモをあえて駆除せずに放っておくのもひとつの手段です。アシダカグモが退治するおかげで、徐々に害虫の数を減らしてくれるでしょう。
ハエや蛾(ガ)、蚊(カ)なども捕食してくれる
見た目に反してアシダカグモは素早く、「衛生害虫」をエサとしてくれる頼もしい益虫です。
衛生害虫とは、病原菌を媒介するものや、吸血など直接的に人間に害を与える生物です。たとえば蚊やダニ、ハエなどが代表格ですね。
ハエは、一生に約500個もの卵を産み落とし、放置すると急激に増殖する恐れがあります。代表的な種類の「イエバエ」は、生ゴミから発生するため、夏場はキッチンを飛ぶ回ることも多いです。
アシダカグモはゴキブリ以外にも、ハエや蛾(ガ)、蚊(カ)、ハサミムシなどの「動く昆虫」を食べてくれます。言わば「害虫バスター」のような虫なのです。
ネズミを捕食することも!?
飲食店や農業用の倉庫などが近くにあると、ネズミを見かける機会も多いのでは?アシダカグモは、ネズミを捕食することもあると言われています。
ネズミは様々な菌・ウイルスを保有しています。ネズミの糞尿を放置したり、噛まれたりすることで健康被害にあう場合があります。
もし本当にアシダカグモがネズミを駆除してくれるなら、かなり有益ですよね。
これについては様々な説がありますが、「成虫の大きなアシダカグモなら、自分より小さいネズミを食べる」ことがあるそう。またアシダカグモを飼育している人が「エサとしてヤモリを与えてみた」という例もあり、実際に捕食しているようです。
ただしこの捕食行動は、すべてのアシダカグモに当てはまることではありません。ネズミなどの大きい生物を食べるかどうかは、個体によってバラつきがあります。
あくまでアシダカグモの主食ではないので、ネズミが出たときにはきちんと人間の手で駆除したほうがよさそうです。
人間への健康被害は?
あらゆる害虫を食べるアシダカグモですが、基本的に人を噛んだり、害を与えたりすることはありません。
では、アシダカグモを家に放しておくことで、何か被害があるのでしょうか。
人に害を与えない
前述した通り、アシダカグモは人に対しては直接的な被害を与えることはありません。アシダカグモの主食はゴキブリやハエで、人を襲うことはないので心配は無用です。
アシダカグモは夜行性のため日中は陰で息を潜め、日が沈むころから活動をはじめます。そのため、仕事から帰宅した際に部屋の隅をコソコソと動くところを見かけた人も少なくないでしょう。
もちろん手で触れたり、突いたりすれば反撃してくる場合もあります。噛まれないように、余計なちょっかいは出さないようにしましょう。
アシダカグモは巣を作らない
天井や部屋の隅にあるクモの巣は家の印象を悪くさせる原因になりますが、アシダカグモは糸で巣をつくることはありません。アシダカグモは動き回ってエサを見つけ、捕食する徘徊性のクモだからです。
このことから、家の中でクモの巣を見つけた場合は、アシダカグモではなく別の種類のクモによる可能性が高いです。不快に感じる人は、対象のクモを見つけ出す必要があるでしょう。
巣をつくるクモとして、華奢(きゃしゃ)な脚が特徴の「イエユウレイグモ」や小柄な「ヒラタグモ」が挙げられます。
かなりキレイ好き?消化液には殺菌効果がある
アシダカグモに限ったことではありませんが、クモの消化液には強い殺菌効果があります。
クモがエサを食べるときは、「化液を相手に注入して、溶かしながら体液を吸う」という方法です。そのため捕食したあとの食べカスが病原菌になる心配が、あまりありません。
またクモは、この消化液を使って自分の脚を手入れしています。移動範囲も壁や天井なので、人間の食べ物を踏みつけることもありません。
そのためアシダカグモがいることによって衛生面に不安が出る可能性は、かなり低いと言ってよいでしょう。
アシダカグモは「見かけても放置」がおすすめ
アシダカグモは家に現れるクモの中でも最大級のサイズであることから、その見た目に恐怖心を抱く人も少なくありません。
ただ前述した通り、アシダカグモが人を噛むことは滅多にありません。また人に害を与えず、糸で巣をつくることありません。反対にゴキブリ、ハエ、カなどの代表的な害虫を食べてくれます。
そのため、ゴキブリやハエの被害に悩まされている人は駆除せずに放っておくのがベターです。
ここからは、アシダカグモを放置することで得られるメリットをより詳しく解説していきます。
家にいるとメリットは大きい
ここまで紹介してきた通り、アシダカグモは家に現れる害虫たちを食べてくれるうえに、人には害を与えないので、総合的に考えるとメリットの方が大きいです。
そのため不気味な外見を気にしないという人は、駆除はせずに放置しておくとよいでしょう。
アシダカグモは夜行性です。お昼の時間帯に見かけることはほとんどありませんが、夕方頃から活動を始めます、そのため、寝る前のお風呂や夜中のトイレの際に見かけて、驚くことがあるかもしれません。
また、アシダカグモはエサを求めて家に侵入してきます。つまりアシダカグモが家にいるということは、家にエサとなるゴキブリやネズミが存在が高いということです。
部屋でアシダカグモを見つけた際は、まずは害虫の退治を優先するほうがベターでしょう。食料がないと分かれば家から姿を消してくれるので、エサになる害虫がいなくなればアシダカグモも姿を消します。
どうしても無理なら殺さずに追い払う
アシダカグモは益虫ですが、インパクトがある外見をしているので嫌悪感を抱く人や、パニックになる人も少なくないでしょう。
毎晩のようにアシダカグモに脅かされている場合は、無理せずに家から追い払うことを考えましょう。直接手で触ることはせずに、ホウキやちり取りといった掃除道具を有効的に活用して、窓や玄関から追い払うのがおすすめです。
ただ家にゴキブリ・ハエ・ネズミなどの害虫がいると、追い払ったアシダカグモが戻ってくることがあります。
どうしてもアシダカグモを寄せ付けたくない場合、まずは害虫対策を優先して行うのがよいでしょう。
人間になつく?購入して飼育する人も
最強のゴキブリハンター「アシダカ軍曹」と称される、アシダカグモ。なかには、購入して家で飼おうと考える方もいるようです。
ゴキブリを狩ってほしいなら「放し飼い」になるでしょうが、そうではなくケースの中に入れてエサを与えているうちに、可愛らしく感じてくるようです。
なつきはしないが、人に馴れる
クモ全般は、基本的に人間になつくことはありません。しかし人に馴れていくので、飼育することはできます。
アシダカグモはかなり臆病な性格で、小さな音や振動にも敏感に反応する生き物です。夜になって人の気配が落ち着くと、壁や天井などを伝って活動しはじめます。
もし飼育するなら、人に馴れるまで時間をかけて待つのが大事です。危害を加えないことが分かれば噛んでこないので、エサやりなどで馴れさせていきます。
時間が経てば、手乗りさせることも可能です。クモなどの節足動物が好きな方には、たまらない瞬間かもしれませんね。
アシダカグモの購入方法、飼育方法は?
アシダカグモは、一般にあまり流通はしていません。購入するとしたら、ネットオークションなどを探すとよいでしょう。
おおよそ1,500~3,000円程度の値段でゲットできます。売主によって、巨大な1匹のアシダカグモから、数匹セットになっているアシダカグモまで、さまざまな出品があります。
ケースに入れて飼育するなら、土を敷き詰めて、小さい容器などを使って水場を作りましょう。
クモは肉食なので、エサになるのは生きている虫です。コオロギやゴキブリなどの生き餌をペットショップで購入するか、森林へ行って捕まえてきましょう。
エサを食べないときは、脱皮する兆候かもしれません。放っておいて、ストレスを与えないようにしましょう。また、卵嚢(らんのう)を抱えているときにも、1カ月ほどエサを食べなくなります。
アシダカグモの卵は300個?まさに「蜘蛛の子を散らす」
「蜘蛛の子を散らす」という慣用句をご存じでしょうか。これは「大勢の人が、四方八方に散って逃げる」という意味です。
アシダカグモはこの慣用句の語源とも言われ、卵嚢(らんのう)のなかにはなんと300個もの卵が詰まっています!
家の中でよく見るイエグモ(ハエトリグモ)が、20個くらいの卵を産むのと比べると、圧倒的ですね。
アシダカグモの卵が孵化(ふか)すると、幼体はひとまとまりに固まっています。この状態を団居(まどい)と呼びますが、団居に刺激を与えると一気に四方八方へバラバラに散るのです。この様子は、まさにそのままの意味で「蜘蛛の子を散らす」状態ですね。
また孵化してしばらく経つと、親離れするときに「バルーニング」という行動をします。幼体がそれぞれ草木にのぼり、糸を垂らした状態で風に吹かれます。この糸を切ることで、風に乗って飛び、別の地域へ散っていくのです。
想像すると、少し気持ち悪いですね。なかには「航空機や、沖合の船にクモの糸が引っかかる」という事例も。こうして分布がどんどん拡大していくのですね。
似ている種類の「コアシダカグモ」とは?
アシダカグモに似ている種類のクモで、「コアシダカグモ」というものがいます。
違いをまとめると以下のようになります。
アシダカグモ | コアシダカグモ |
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コアシダカグモは、基本的に屋外の森林で見かける種類ですが、まれに家の中でも発見されます。
種類こそ違いますが、どちらもゴキブリや蛾を捕食するなど、ほとんど同じだと思っても問題ありません。つまり益虫にかわりないので、家に出たのがコアシダカグモだったとしても放置して大丈夫ということです。
アシダカグモを駆除したいときの対処法は?
アシダカグモは大きなメリットを持っていますが、どうしても外見が苦手な人は無理せずに駆除を検討するのも手段です。
駆除方法を紹介するので、実践してみてはいかがでしょうか。
殺虫スプレーを使って駆除
虫の駆除といえば、オーソドックスで確実な方法として「殺虫スプレー」を思い浮かべますよね。
クモ用の殺虫スプレーを使うと、アシダカグモだけでなく、イエユウレイグモやヒラタグモなどを駆除できます。またアシダカグモは巣を作りませんが、巣作りするクモが糸を張るのを防ぐ忌避効果(予防効果)も。
ただし、クモにスプレーをしてから絶命するまでに、2分くらいかかることもあります。その間に逃げてしまったり、スプレーに驚いて隠れてしまったりすることもあるので注意しましょう。
また殺虫スプレーは、「卵」に対して効果がありません。糸に包まれた白い卵を見つけた際は、ティッシュで取って潰したり、ゴミに出したりしましょう。
原因をなくす!部屋の掃除・ゴキブリ駆除など
部屋を不衛生にしていると、ゴキブリ・ハエ・ネズミなどが住み着く原因となります。そして、その害虫を求めてアシダカグモが家に入ってくるのです。
エサとなる害虫の発生を抑えない限り、アシダカグモの根絶は難しいでしょう。そのため、まずは部屋を掃除して清潔に保ったり、ゴキブリなどエサになる虫を駆除したりするのがオススメです。
例えばゴキブリは生ゴミやダンボール、髪の毛などをエサとしています。害虫を寄せ付けないためには、部屋の掃除とこまめなゴミ捨てが欠かせません。
ゴキブリ用の粘着トラップ
ゴキブリが粘着トラップに捕まっていると、エサとして狙ってきたアシダカグモが捕獲されていることがあります。
アシダカグモが家に出る時には、ゴキブリが住んでいる可能性も高いので、1度に駆除できたら一石二鳥ですね。
ただしゴキブリが巣を作っている場合には、すべての個体を駆除することが難しいので、何度も再発する可能性があります。捕っても捕ってもゴキブリやアシダカグモが出るなら、害虫駆除業者に依頼するのがオススメです。
【まとめ】アシダカグモと上手に共生しよう
おどろおどろしい見た目をしているアシダカグモですが、ゴキブリやハエ、蚊(カ)や蛾(ガ)などの害虫を食べてくれる益虫です。
その上、人を噛んだり健康被害を与えたりする心配も少なく、消化液で脚などを殺菌しているので、家に住まわせることのメリットが多い虫といえるでしょう。
しかしアシダカグモの見た目に恐怖を感じる人は、無理に放し飼いをしていても精神的によくありません。アシダカグモを家から追い出したい場合、エサとなる害虫を駆除したり、害虫が湧かないように部屋を清潔にキープしたりすることを心がけましょう。
また、害虫駆除業者に依頼するのもひとつの手段です。相見積もりをとったり、サービスを比べたりして、自分が納得できる業者を見つけるようにしましょう。
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そのため、業者を選ぶ際は1社だけではなく、複数の業者に見積り依頼を取りましょう。比較して慎重に選ぶことが、業者選びのポイントのひとつです。
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