「ナガミヒナゲシ」は淡い赤色の花を咲かせる、ケシ科の一年草です。繁殖力が強く、ほかの植物の成長を妨げる成分を放出することから「生態系に影響を与える植物」とみなされています。
この記事ではナガミヒナゲシの特徴や毒性、駆除方法など、繁殖を防ぐコツも紹介します。
ナガミヒナゲシとは?
植物名 | ナガミヒナゲシ |
学名 | Papaver dubium |
科名 / 属名 | ケシ科 / ケシ属 |
原産地 | 地中海地方 |
開花期 | 4月~5月 |
花の色 | 淡赤色、オレンジ |
樹高 | 15~60cm |
特性 | 一年草(越年草) |
ナガミヒナゲシはケシ科・ケシ属の植物です。地中海沿岸地域の外来種で、1961年に初めて東京都世田谷区で確認されました。道路沿いにも花を咲かせるため、一度は見かけたことがあるのではないでしょうか。
丸みのある淡赤色の花を咲かせる
ナガミヒナゲシは和名で「長実雛芥子」と表記します。「雛」には「小さくてかわいらしい」という意味があるように、ナガミヒナゲシは丸みのある淡赤色の花を咲かせるのが特徴です。
花径は2~5cmほどで、花びらは4枚が基本です。大きな円筒形の雌しべの中心には、たくさんの小さな雄しべが放射線状に伸びており、「かわいらしいポピー」といった印象を抱くでしょう。
ロゼット状の葉を付ける
ナガミヒナゲシは根際から円形状に広がる、タンポポのような「ロゼット状」の葉を付けます。葉は羽状に深く裂けており、およそ20㎝ほどの長さにまで達するのが特徴です。
すらりと細い茎に付いた葉が風にそよぐ姿は、まさに「可憐」という言葉がぴったりです。
ヒナゲシとの違いは花の大きさ
普段よく耳にするケシ科の植物といえば「ヒナゲシ」ではないでしょうか? ヒナゲシもナガミヒナゲシと同じケシ科・ケシ属に属する外来種で「虞美人草(ぐびじんそう)」とも呼ばれます。
見た目はよく似ていますが、両者は花や実の大きさが若干異なります。ナガミヒナゲシはヒナゲシよりも花が小さめで、実が細長い形状をしているのが特徴です。
花言葉は3つ
ナガミヒナゲシの花言葉は「なぐさめ」「癒し」「平静」の3つです。
ナガミヒナゲシの属するポピー(ケシ科)は、ギリシャ神話に登場する豊穣神のデメテルと深い関わりがあります。彼女がポピーの花を摘んで心を癒したことから「なぐさめ」という花言葉が生まれました。
ナガミヒナゲシは種子が多く繁殖力が強い
ナガミヒナゲシは繁殖力が強く、開花後の未熟な種にも発芽能力があるとされています。
アスファルトの多い都会の道路脇でも群れて咲き、種子は風やタイヤに運ばれて生息範囲を広げていくのです。
花後に実を付けて種を蓄える
ナガミヒナゲシは毎年4月~5月ごろに花を咲かせ、花後には大きさ2㎝程度の細長い実を付けます。ナガミヒナゲシの「ナガミ(長実)」は、長身の実を付けることに由来しているのです。
実の中には砂のように細かい種が入っており、成熟が進むにつれて柱頭の隙間から種がポロポロとこぼれ落ちることで、生息地を広げていきます。
1株にできる種子の数は約16万粒以上
ナガミヒナゲシの1株にできる実の数は約100個です。1個の実には約1,600個の種が内包されているため、1株からはおよそ16万粒以上もの種が取れる計算になります。
種は、秋に発芽するものと翌春に発芽するものに分かれます。春に発芽したナガミヒナゲシはやや小ぶりですが、種の発芽力は衰えることがありません。開花直後の未熟な種にも発芽力があります。
可憐でかわいらしい花ですが、繁殖力が強い「雑草」としての一面も持ち合わせているのです。
街中でよく見るのは車のせい?
ナガミヒナゲシは関東地方から瀬戸内海沿岸地方を中心に、日本全国へ分布範囲を広げています。道路沿いや交差点の信号付近に咲いているのをよく見かけるのではないでしょうか?
道路沿いに群生するのは、車のタイヤや人の足によって種が移動するためといわれています。
種がこぼれ落ちるのは、ちょうど梅雨にあたる6月ごろです。雨で濡れたタイヤや靴裏に種がくっ付き、道路沿いのあちこちに落下するのです。
ナガミヒナゲシの種は0.7~0.8mmの腎形をしており、表面にハチの巣のようなくぼみがあります。表面が滑らかな種に比べると、タイヤや靴底に付きやすいといえるでしょう。
ナガミヒナゲシの毒性
ナガミヒナゲシには毒性成分が含有されており、見つけた際には注意が必要です。
全国に生息地を広げている現在は「生態系等に大きな影響を与える外来植物」として、各自治体からも危険性が周知されています。
アルカロイド性の有毒成分に注意
ナガミヒナゲシにはアルカロイド性の有害物質が含まれています。害虫や動物から身を守るための植物毒のため、素手で茎を触ったり折ったりすると、手がかぶれるおそれがあります。
またケシの未熟な実から取る乳汁には、法規制されているモルヒネやコデインなどの「アヘンアルカロイド類」を含んでいますが、ナガミヒナゲシはアヘン成分を含んでいません。
法的な危険性はないものの、身体に影響を及ぼす植物毒には注意するようにしましょう。
他の植物を枯らすアレロパシー活性が強い
ナガミヒナゲシは「アレロパシー活性」が強いのも大きな特徴です。アレロパシーとは植物が放出する物質の一部で、ほかの植物の生育を阻害したり、害虫や動物を寄せ付けないようにしたりする性質があります。
ナガミヒナゲシの発生場所は道路沿いが中心ですが、農地や花壇への侵入も確認されています。庭に生えている場合は植栽に影響を及ぼす可能性があるので、見つけたら早急に駆除するようにしましょう。
注意を呼びかける自治体も
現在、ナガミヒナゲシは国の駆除対象となる「特定外来生物」や「生態系被害防止外来種(要注意外来生物)」には指定されていません。しかし、多くの自治体では「在来植物の生育に影響を与える可能性がある」として注意を促しているのが実情です。
埼玉県においては、希少植物を脅かす外来種をまとめた「埼玉県レッドデータブック2011植物編」にナガミヒナゲシがリストアップされています。
自宅での栽培も可能ですが、鉢植えにして雑草化しないように育てるなど、慎重に扱う必要があるでしょう。
ナガミヒナゲシの駆除方法
繁殖力の強いナガミヒナゲシは、放置しておくとあっという間に群生化してしまいます。
実のない時期に刈り取るのが好ましいですが、実のある時期は種をこぼさないように丁寧に駆除しましょう。
最適な除草時期は冬
ナガミヒナゲシの駆除に最適な時期は、花茎が伸長する前の冬です。春の開花後に実ができてしまうと、除草時に種がこぼれ落ちて繁殖を広げてしまうおそれがあるため、開花前に対策を取るのが大切です。
ナガミヒナゲシは秋に発芽し、冬の間は背の低い草姿で過ごします。地面近くに放射線状に生えているロゼット状態の葉を目印にするとよいでしょう。
また冬に駆除できなかった場合は、開花後の結実前に引き抜くのが理想です。もしも実を付けてしまった際は、実が成熟する前に早めに駆除しましょう。
手作業で丁寧に引き抜くのがポイント
ナガミヒナゲシの除草は、手作業で根っこから丁寧に引き抜くのが重要なポイントです。未熟な種子にも発芽力があるため、実を付けている場合は慎重に行うようにしましょう。種がこぼれてしまうと、雑草化を助長して翌年の春にたくさんの花を咲かせることになりかねません。
ナガミヒナゲシは比較的簡単に抜き取れるので、焦らずゆっくりと除草を行いましょう。
しっかり包んで捨てる
駆除後は種がこぼれないようにしっかり包んで「燃えるごみ」として捨ててください。ビニール袋の口は堅く結び、運んでいる途中に隙間からこぼれないようにしなければなりません。また仮に袋が破れても種が飛ばないように新聞紙に包んでおくと安心です。
また自治体によっては「燃えるごみ」と「草木類」を分けて回収するところもあります。詳しくは住んでいる自治体のHPを確認しましょう。
除草時の注意点
ナガミヒナゲシは種をこぼさないようにする以外に、植物毒に注意する必要があります。普通の雑草を抜く感覚で駆除すると手がただれてしまう可能性もあるので、しっかりとした対策を取るようにしましょう。
除草機や鎌などの使用は避ける
ナガミヒナゲシの群生は駆除するのに時間も労力もかかります。鎌や除草機を使えば広範囲の駆除もあっという間に終わりますが、刈り取らずに根こそぎ引き抜くのが基本です。
鎌や除草機を使うと、ナガミヒナゲシの茎が左右に大きく揺れて実がこぼれ落ちるおそれがあります。抜いても抜ききれない場合は、刈らずに「除草剤」を使いましょう。
作業時は必ずゴム手袋や軍手を着用する
ナガミヒナゲシを引き抜くときは、必ずゴム手袋や軍手を着用してください。ナガミヒナゲシの茎や葉には植物毒である「アルカロイド」が含まれています。
除草中にアルカロイドを含む黄色い汁が手に付くと、皮膚の弱い人はかぶれやただれを起こしてしまいます。作業中に足や腕に汁が付着する場合もあるため、露出の少ない格好で作業を行いましょう。
手で抜いても生えてくる場合の対処法
ナガミヒナゲシは車の往来が多い道路脇やアスファルトの隙間など、普通の植物では生息できないような過酷な環境でも生え抜きます。
「抜いても抜いても生えてくる・・・」というときは「除草剤」や「防草シート」を使いましょう。
除草剤で駆除する
ナガミヒナゲシは、雑草と同様に「除草剤」で駆除ができます。ただし、除草剤をまくとほかの草花も枯れてしまうおそれがあるため、最終手段として使うのがベターです。
除草剤をまく最適なタイミングは「実を付けていない時期」です。「ロゼット状態」のときに駆除してしまえば、種こぼれの心配がありません。結実している場合は種に触れないように慎重に作業を実施しましょう。
防草シートを敷いて予防する
せっかく駆除をしても、外から種が飛んできて根付いてしまっては元も子もありません。外からの飛散は「防草シート」を使って防止しましょう。
防草シートとは太陽光を遮断して、植物の発芽・生育を抑える専用のシートです。遮光性が高いだけでなく、植物の芽が突き破れない「貫通抵抗力」を有しています。
除草後に防草シートを敷いておけば、種が飛来してきても根付く心配がないでしょう。
ナガミヒナゲシの防除は適切な方法で
オレンジ色の可憐な花を咲かせるナガミヒナゲシは、手ごわい外来種の一種には見えません。
知識のない人が種を持ち帰ってしまうと、庭の花壇がナガミヒナゲシで埋め尽くされてしまうかもしれません。
駆除する際は種をこぼさないようにするのが鉄則です。ひとつの実には1,000粒以上の種が詰まっており、靴の裏やタイヤに張り付いて分布範囲を広げていきます。
抜いても抜いても生えてくる場合は除草剤を使うか、業者に除草をお任せするのが賢明でしょう。
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