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オオアワガエリは夏秋の花粉症の原因かも!基本知識と対策を解説

最終更新日: 2024年06月28日

夏から秋にかけて花粉症状が現れた場合、「オオアワガエリ」が原因かもしれません。小動物のエサとして利用価値のある外来種ですが、日本国内の在来種や人間に対してはさまざまな影響を与えます。オオアワガエリの特徴と、効果的な除草方法を解説します。

オオアワガエリとは?

オオアワガエリ

「オオアワガエリ(大粟返)」は、空き地や畑地でよく目にする多年草の雑草です。ブラシのように長い穂が特徴で、エノコログサに間違えられることも少なくありません。

オオアワガエリには他にどのような特徴があるのでしょうか?

全国に分布する多年草

オオアワガエリは、イネ科アワガエリ属に属する多年草です。ヨーロッパ原産で、 明治時代の初期に牧草として北海道に移入されました。別名を「チモシー」といい、ウサギや小動物のエサとしても利用されています。冷涼・多湿の土地を好む植物ですが、日本での分布範囲は北海道から九州までのほぼ全国地域です。

オオアワガエリは、50~130cmほどの長い茎に、直立した円柱形の花穂を付けるのが特徴です。繁殖期は6~8月で、道端・空き地・河川敷・畑地などのあらゆるところに根を張ります。

「生態系被害防止外来種リスト」に指定

オオアワガエリは日本の生態系などに被害を及ぼす恐れのある外来種として、「生態系被害防止外来種リスト」に名前が挙がっています。耐寒性があるうえに繁殖力が強いため、希少植物が生息する国立公園や自然草原に侵入し、生態系を破壊する恐れがあるのです。

ただ、家畜の飼料としての利用価値が高いため、適切な管理を行いながら産業に役立てる「産業管理外来種」という位置づけにされています。

参考:環境省・農林水産省 生態系被害防止外来種リスト

猫じゃらしと呼ばれるのは「エノコログサ」

オオアワガエリによく似た植物に「エノコログサ」があります。「猫じゃらし」の名で親しまれるイネ科・エノコログサ属の一年草で、北海道から九州までの平野に幅広く自生します。

エノコログサの特徴は、立ち上がるように上に伸びる茎と、子犬の尻尾のような形の花穂です。穀物の粟(あわ)の原種ともいわれており、食用ではありませんが食べることもできます。

素人の場合、オオアワガエリとエノコログサの見分けは難しいでしょう。エノコログサは花序に多数の毛が突き出ているのに対し、オオアワガエリには細かい毛がありません。よく見ると、ざらざらとしたブラシのような穂をしています。

オオアワガエリによる花粉症

鼻炎の女性

オオアワガエリは茎先に円柱形の花穂を付けるのが特徴です。花は小さくて目立ちませんが、花粉症を引き起こす原因になっています。花粉の飛来時期や飛来パターンを予測し、花粉症の防止に役立てましょう。

花粉が飛散する時期

地域によっても異なりますが、オオアワガエリの花粉は6~8月ごろに飛散します。夏から秋にかけて花粉症の症状がみられる場合は、オオアワガエリまたはカモガヤが影響していることがほとんどでしょう。

スギやヒノキなどの「樹木花粉」は飛散距離が長いのに対し、オオアワガエリやカモガヤなどの「草木花粉」は飛散距離が短いのが特徴です。そのため、生育エリアに近づかない限り、花粉の影響は少ないともいわれています。

オオアワガエリの花粉症状

オオアワガエリの花粉では「くしゃみ」「鼻水」「鼻詰まり」「かゆみ」「目の充血」といった症状が現れます。

とりわけイネ科花粉は、スギ花粉よりもアレルギー結膜炎の症状が出やすい傾向があるようです。花粉に接触した場合は湿疹や赤みなどの皮膚症状が出るケースもあるため、皮膚が弱い人は注意しましょう。

6月ごろに風邪症状が長引くときは、オオアワガエリやカモガヤなどのアレルギーである可能性が高いでしょう。気になる人は医療機関でアレルギー検査を受けることをおすすめします。

参考:たくゆう耳鼻咽喉科クリニック 院長ブログ

花粉・食物アレルギー症候群「PFAS」

「PFAS(Pollen-Food Allergy Syndrome)」とは、花粉症に合併する食物アレルギーのことです。

花粉症の人が特定の食物を口にすると、唇・口・喉などに「かゆみ」や「イガイガ」などの不快感を覚える場合があります。これは花粉症の原因物質と類似した物質が、食物中に含まれているためです。

オオアワガエリとの関連が報告されている食物には、オレンジ・キウイ・スイカ・ジャガイモ・トマト・ピーナッツ・メロン・セロリ・タマネギなどがあります。

参考:大人の食物アレルギー 花粉-食物アレルギー症候群とは?|栄養管理科コラム|新百合ヶ丘総合病院

オオアワガエリの花粉症状を抑える方法

マスクを付ける女性

オオアワガエリの花粉症対策は、スギやヒノキなどの花粉を防ぐ方法とほぼ変わりません。花粉を「付着させない」「家に持ち込まない」を徹底するのがポイントです。アレルギー性疾患の既往歴がある人は早めに医療機関を受診しましょう。

マスクやメガネで体内に入れない

花粉は「体内に入れないこと」が基本です。外出時はマスクやメガネを必ず着用しましょう。

マスクは顔にしっかりフィットするものを選びます。「マスクは大きいほうが効果的」と思われがちですが、隙間から花粉を侵入させないという点では、顔の形に合ったジャストサイズのものが理想です。立体型であれば、顔への密着度はさらに高まるでしょう。

内側にガーゼや化粧用のコットンを1枚挟むことで、花粉をシャットアウトする効果がさらにアップします。

目のかゆみがひどい人は、高密着のフードが付いた「花粉症用のメガネ」を着用しましょう。近年は花粉を最大98%もブロックする、優れたアイテムが登場しています。

病院を受診して早めの対策を

花粉症対策は症状が出る前に行いましょう。花粉症によるアレルギー性鼻炎は、いったん症状が出ると、鼻の粘膜がどんどん敏感になっていきます。

通常、治療は症状が出てから行うのが基本ですが、毎年のように花粉症で悩まされる場合は、医療機関での「初期予防治療」が受けられるケースがほとんどです。花粉の飛来前に予防をすれば、症状の重症化を防げるでしょう。

また症状が悪化した場合は、できるだけ早く医療機関を受診しましょう。放っておくと頭痛・だるさ・鼻詰まりなどで、日常生活に支障が出る可能性があります。

参考:環境省 花粉症環境保健マニュアル2019年改定

庭に生えたオオアワガエリは除草で対策

原っぱに立つ女の子

庭や所有している畑に繁殖したオオアワガエリには、「除草剤」や「防草シート」が効果的です。花粉症予防の観点からいえば、夏前に防除を完了させておくのが理想でしょう。

石原バイオサイレンス「ワンサイドP乳剤」

石原バイオサイエンス 除草剤 畑作用除草剤 ワンサイドP 500ml | amazon
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イネ科の雑草全般に高い効果を発揮する、葉茎処理型の除草剤です。一年草イネ科雑草はもちろん、シバムギキ・シュウスズメノヒエなど、防除が難しい多年草イネ科雑草にも大きな効果があります。

有効成分「フルアジホップP」は、雑草の成長点や節部の分裂組織に作用し、周辺細胞を壊死させるのが特徴です。葉茎や根部から吸収されると、雑草の体内に素早く行き渡り、じわじわと効果を発揮します。

葉茎を狙って散布をすれば、豆類・いも類・野菜などの広葉作物にはほとんど影響を与えません。散布後の降雨で効果が低下しないのもメリットです。

日産化学「ポルトフロアブル」

日産化学工業 除草剤 ポルトフロアブル 水和剤 500ml | amazon
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有効成分「キザロホップエチル」を含む葉茎処理タイプの除草剤です。葉茎から吸収された成分は、繁殖の元となる地下茎へと移動していきます。キザロホップエチルには、イネ科植物の酵素の働きを阻害する作用があります。イネ科以外の植物の酵素には影響しないため、ほかの作物には比較的安全性が高いといえるでしょう。散布機による全面散布も行えます。

多くの除草剤は生育の進んだ雑草には効果が落ちるとされていますが、本製品は一年生イネ科雑草の「10葉期」まで使用が可能です。除草作業スケジュールに余裕ができるのは大きな利点でしょう。

デュポン「防草シート プランテックス(旧ザバーン)」

デュポン 防草シート ザバーン 125BB 0.5×20m | amazon
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除草剤は、今ある雑草に対しては高い効果を発揮しますが、雑草の種が飛来すれば、毎年除草作業に追われることになります。植物の光合成に必要な太陽光を遮断する「防草シート」を併用して、雑草の生育を抑制しましょう。

特に生命力旺盛なイネ科植物は、シートを突き破ることがあるため、耐久性の高さを重視して選ぶ必要があります。デュポンの防草シートは、極太繊維と特殊熱圧着の4層構造です。遮光性・耐久性に優れており、強害雑草の生育を長期間抑制します。パークチップや砂利の下地にも使用が可能です。

オオアワガエリの花粉症は早めの受診を

錠剤

オオアワガエリは牧草や小動物のエサとしては利用性がありますが、在来種の生態系を脅かす上に、花粉症状を引き起こす厄介な植物です。庭や畑地で繁殖しているのを見かけたら、開花前に除草剤で駆除するのが好ましいでしょう。

また、エノコログサとよく似ているため、つい摘み取ってしまいたくなりますが、近づいたり触ったりするのは禁物です。目のかゆみや鼻水などの花粉症状が出たら、早めに医療機関を受診しましょう。