独特な動きで夕暮れどきにバサバサと飛び回るコウモリは、見た目が不気味なだけでなく、家に棲み着かれると糞尿や騒音などの害を引き起こします。コウモリの危険性やうまく撃退する方法を知って、効果的なコウモリ対策を講じましょう。
コウモリは哺乳類なの?
コウモリは空を飛ぶため、鳥類と勘違いされることも多いですが、「卵でなく赤ちゃんを産む」「皮膚が毛に覆われ、歯が生えている」という特徴から哺乳類に分類されます。
コウモリがいたらどうする?
コウモリの嫌がる臭いを含んだ忌避剤で撃退しましょう。 手軽に使用できるスプレータイプや、コウモリが生息している場所に置く錠剤タイプがあります。
コウモリが哺乳類である三つの理由
コウモリは空を飛ぶことができるため、鳥類に間違えられやすいですが、実は哺乳類です。哺乳類の定義とともに、コウモリの生態や習性について解説します。
コウモリは卵でなく赤ちゃんを産む
コウモリは「脊椎動物亜門・哺乳綱・コウモリ目」に属する哺乳類です。哺乳類と鳥類には子供の産み方に大きな違いがあります。
鳥類はまず卵を産み、孵化することで出生する「卵生」ですが、哺乳類は母親のお腹の中で子供を育てて出産する「胎生」です。
日本で多く見られるアブラコウモリは、生まれてから10カ月もたてば繁殖ができるようになり、1回の出産で2~4頭の子供を産みます。生まれた赤ちゃんは母親から母乳を与えられ、やがて巣から巣立っていきます。
その過程は哺乳類のほかの動物や人間にも共通している点でしょう。
皮膚は毛に覆われている
コウモリの皮膚には多くの毛が生えていますが、鳥類も羽毛に覆われており、どちらも毛という意味では同じように見えます。ただし鳥類の羽毛と哺乳類の体毛には大きな違いがあるのです。
哺乳類の体毛は角質層で構成されています。つまり皮膚の組織が変化したものです。対して鳥の羽毛はケラチンと呼ばれるタンパク質で構成されています。ケラチンは人間も持っている成分ですが、鳥のケラチンとは異なる性質です。
コウモリの体毛は成り立ちから見ても、ほかの哺乳類と共通の特徴を持っており、鳥類とは明らかに違う生物だといえます。
歯が生えている
決定的な違いとしては、コウモリは歯が生えているのが特徴です。鳥類は歯を持たない代わりに、硬いクチバシや「砂嚢(さのう)」という食べたものをすり潰す器官があります。
種類によって本数は異なるものの、コウモリの口を開けると歯をすぐに確認できるでしょう。日本でよく見られるアブラコウモリは、大きな牙のような犬歯が目立ち、ほかに門歯、臼歯が見られます。
西洋の吸血鬼のモチーフにもなっている吸血コウモリは、獲物に噛み付いて血液を吸うために、犬歯や門歯は鋭く伸び、逆に臼歯は退化しているのが特徴的です。
コウモリはなぜ空を飛べるのか
コウモリは哺乳類の中で唯一、空を飛べる生物です。モモンガやムササビも空を飛んでいるように見えますが、グライダーのように滑空しているだけで、自力で飛び上がることはできません。コウモリは鳥のように、自由に空中を移動できます。
コウモリが自在に羽ばたける謎は、長く解明されていませんでしたが、近年の研究で肩の動きに秘密があることが判明しています。鳥の羽根にあたる「飛膜」と呼ばれる部位の特殊な筋肉により、コウモリは空中で身体をコントロールできるのです。
夜に外出するとどこからともなくコウモリが飛んでくる場合がありますが、あの独特な身体の動きや飛行の軌道は、コウモリだけの特殊な身体の構造が可能にしています。
身近にいるのはどんなコウモリ?
約1000種類あるといわれるコウモリですが、日本ではどのような種類が見られるのでしょうか。最もポピュラーなアブラコウモリの特徴をはじめ、ペットとして飼えるのかなど、気になる疑問点を解説します。
家屋を住処とする「アブラコウモリ」
アブラコウモリは北海道以外の全国に棲息する、日本の代表的なコウモリといえます。頭胴長は41〜60mm、前腕長は30〜37mm、尾長は29〜45mm、体重は5〜10gです。黒褐色から暗灰褐色の体毛に覆われ、黒っぽい見た目が印象的でしょう。
アブラコウモリは山間部など自然環境には棲息しません。専ら家の屋根裏や高速道路の橋脚の隙間など、身を隠しやすい場所を好むのが特徴的です。
日没後に活動を開始し、多いときには100頭を超える集団をつくる場合もあります。主に昆虫を食べ、7月初旬に出産を行い、寿命はオスで3年、メスで5年ほどです。
コウモリはペットとして飼える
嫌悪感を持つ人が大半と思われるものの、中にはコウモリをペットにしたい人もいるかもしれません。しかしコウモリを勝手に捕まえてくるのはNGです。「鳥獣保護法」により野生のコウモリの捕獲や飼育は禁止されています。
無断で捕獲した場合は、1年以下の懲役または100万以下の罰金、捕獲して飼育もしくは販売や譲渡をした場合は、6カ月以下の懲役または50万以下の罰金と厳しい内容です。
ペットにしたいからといって勝手に捕まえるのは絶対にやめましょう。ただし怪我をしているといった理由により、一時的に保護することについては許可されています。
ペット用として販売されているコウモリであれば、もちろん飼育しても問題はありません。どうしてもコウモリを飼いたい場合には、ペットショップで入手するようにしましょう。
素手で触るのはNG
海外においてはコウモリはウイルスを媒介する生き物として知られる存在です。「狂犬病」や「エボラ出血熱」にような死に至る恐ろしい伝染病も、コウモリが原因といわれています。
日本にいるコウモリからこれらの病気を発症した例はないものの、未知の病気を媒介する可能性も否定はできません。またウイルス以外でもダニやシラミなどの虫が棲み着いているため、素手で触るのは絶対に控えましょう。
特にマダニは日本でも死亡例がある「SFTSウイルス」を保有している可能性があり、非常に危険です。生きているコウモリはもちろん、死骸にも菌や寄生虫が残っている場合が多いため、触らないようにしましょう。
コウモリが家に棲みつくデメリット
家の天井裏などを好むコウモリは、いつの間にか大量に棲み着いている可能性があります。コウモリが大量に発生するデメリットについて、代表的な二つの被害を説明しましょう。
糞害に悩まされる
コウモリで最もやっかいなのは「糞害」といえます。コウモリは食べたものを消化するまで45分しかかからず、糞尿の回数が多いのが特徴です。
家の屋根裏にアブラコウモリの集団が棲み着くと、大量の糞尿によって木材が腐り、天井が抜けてしまう場合もあります。ひどい悪臭が部屋に立ち込めるケースも考えられるでしょう。
さらにコウモリの糞は乾燥すると、エアロゾルとなって空気中を舞います。これを人間が吸い込んでしまうと、さまざまな感染症を引き起こすため危険です。
ダニやノミも含まれているため、アレルギーを発症する可能性もあるでしょう。コウモリの糞害は衛生的にも深刻な問題なのです。
羽音で睡眠が妨害される
コウモリの鳴き声は超音波のため、通常は人間には聴き取れません。ただし危険を察知して威嚇する際には、「キィキィ」「チチチチ」といった音を出す場合があります。この声はネズミの鳴き声にも似ているため、区別がつきにくいでしょう。
鳴き声と同時に「バサバサ」という羽音がしたら、コウモリだと判断できます。コウモリが羽ばたく音は大きいため、天井裏に大量のコウモリが棲み着いていると、夜間に音がうるさくて眠れないという被害に繋がりかねません。
家にコウモリがいたらどうする?
考えたくない事態ですが、家に大量のコウモリが棲み着いたら、どのように対処すればよいのでしょうか。主な方法と専門業者に依頼するメリットについて紹介します。
嫌いなもので撃退する
コウモリが嫌いなものはいくつか知られていますが、どれも大きな効果は見込めないといわれます。たとえば磁石や超音波発生器はコウモリが飛ぶ際に利用する超音波を乱すとされていますが、実際にはほとんど影響を与えられません。
比較的有効なのがコウモリの嫌がる臭いを含んだ忌避剤です。手軽に噴射できるスプレータイプや、コウモリのいる場所に置く錠剤タイプがあります。スプレータイプは使いやすいものの持続時間が短いため、錠剤と併用するのがおすすめです。
薬品を使っていったんコウモリを追い出したら、再び侵入しないよう入口を塞ぎましょう。ただアブラコウモリは数cmの隙間があれば侵入できるため、完璧に侵入経路を塞ぐのはそう簡単ではありません。
業者に駆除を依頼するのが安全
コウモリは法律で保護されており、無断で捕獲や殺傷はできません。棲み着く場所も天井裏の隙間など、たどり着くのが難しい場所です。たとえ居場所を突き止めても、糞尿だらけの場所で作業するのは危険を伴います。
コウモリの駆除はプロの業者に依頼するのが最適な方法です。専門業者なら一般には手に入らない器具や薬品を駆使して、効果的にコウモリを追い出してくれます。作業後の清掃や除菌・消毒についても、安心して任せられるでしょう。
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コウモリは空が飛べる唯一の哺乳類
コウモリは空を飛びますが、分類上は哺乳類です。暗褐色の毛に覆われており、獲物に噛み付くための鋭い歯を持っています。日本には数種類のコウモリが棲息していますが、家の天井裏などに棲み着くのはアブラコウモリです。
大量発生すると糞尿や騒音など、人間の生活に被害を与えます。コウモリは鳥獣保護法で守られており、勝手に捕獲や殺傷をすると罰せられます。素人が駆除するのは難しいため、専門の業者に依頼するのが得策でしょう。
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