梅雨の時期になると美しい花を咲かせるアジサイ。ガーデニングでの人気も高く、古くより人々に愛されてきた植物です。
しかし、いざ育ててみると「花がうまく咲かない」「アジサイが大きくなりすぎてしまった」などの悩みを抱えている方も多いのではないでしょうか?
- アジサイの花付きをよくしたい
- アジサイの樹形をきれいに整えたい
- アジサイ剪定の時期や方法を知りたい
そんな方のために、この記事ではアジサイの正しい剪定時期や方法、剪定のポイントなどを徹底解説します。アジサイの剪定方法を知って、キレイな花をつけるアジサイを元気いっぱいに育てましょう。
剪定前にアジサイの特徴を知っておこう
梅雨の時期に開花するアジサイは、雨に濡れる姿がもっとも美しい花のひとつです。曇り空に青や紫のアジサイが鮮やかに映え、どんよりとした気持ちがパッと明るくなるでしょう。アジサイを剪定する上で知っておきたい基本情報を解説します。
▽アジサイの育て方を丸ごと紹介している記事はこちら
アジサイの基本情報
植物名 | アジサイ (紫陽花) |
学名 | Hydrangea macrophylla |
科名 / 属名 | アジサイ科 / アジサイ属 (ハイドランジア属) |
原産地 | 日本 |
開花期 | 6月~8月 |
花の色 | 青、水色、紫、ピンク |
樹高 | 30cm~2m |
特性 | 落葉性 |
アジサイはアジサイ科アジサイ属(ハイドランジア属 )に属する「落葉低木」です。東アジアや北アメリカを原産地とし、日本では6月~8月頃に花を咲かせます。
アジサイの花は「両性花」と「装飾花」で構成されています。両性花はアジサイの中央にある細かな部分です。「完全花」とも呼ばれ、雄しべと雌しべの機能を有します。
装飾花は花びらのように見える外側の部分で、アジサイの「萼片(がくへん)」にあたります。雄しべや雌しべが退化しているため、生殖能力はありません。
アジサイの剪定時期は夏と冬の年2回
アジサイの剪定は夏と冬の年2回、適切な時期に実施するのが大切です。
アジサイの一般的な剪定は「花後」と「休眠期」の2段階で行われます。それぞれ「夏剪定」「冬剪定」と呼ばれており、剪定のやり方や目的が若干異なります。
【夏剪定】花後の剪定は7月が適期
花の種類や環境によっても異なりますが、アジサイの開花時期は6月頃です。翌年の花付きを良くするための剪定は「花後の剪定(夏剪定)」といわれ、アジサイの花が終わる7月下旬頃までに行います。
アジサイの花の終わりは、次のようなタイミングで判断するとよいでしょう。
- 花びらのように見える「萼片 (がくへん)」が裏返ったとき
- 「萼片 (がくへん)」が色あせてきたとき
花後の剪定は、遅くても8月中に済ませておくのがベターです。アジサイは秋になって気温が低下し始めると「花芽形成(分化)」を開始します。秋が深まってから剪定を行うと、せっかくできた小さな花芽を切ってしまう危険があるので注意しましょう。
【冬剪定】休眠期の剪定は11月~3月が適期
大きくなったアジサイを小さく整えるための剪定は、休眠期の11月~3月に実施します。
アジサイの休眠期は11~12月で、11月頃から葉を落とし、12月になると枝のみの姿になります。一見、枯れたように見えますが、内部では来年の開花に向けた準備が着々と進んでいるのです。
休眠期の剪定は樹形のバランスを整えるのが目的です。混雑した枝を取り除けば風通しがよくなり、「害虫の発生」や「病気」の予防にもつながります。
アジサイを剪定するメリット
アジサイの剪定は次のようなメリットが期待できます。
- 翌年以降の花付きが良くなる
- 大きくなりすぎた樹形を小さくできる
「剪定」は樹木の不要な枝を切り落とす作業のことで、形を整えたり、風通しをよくしたりする目的があります。剪定を実施して、アジサイの健康的な成長を促しましょう。
翌年以降の花付きが良くなる
アジサイの剪定をすると、翌年以降の花付きが良くなります。
アジサイは秋になると枝の葉の付け根の部分に花芽を付けます。アジサイはその年に伸びた新しい枝には花芽を付けない習性があるため、花芽が付いているのは「前年伸びた枝」です。
つまり、その年に伸びた枝に花芽が付くのは「翌年の秋」、その花芽が開くのは「翌々年」ということになります。剪定によって、生育に必要なエネルギーが花を咲かせる枝にピンポイントに届くようになり、より大きく美しい花が咲くのです。
また、増えた細枝や枝をきれいに整理すると「風通し」がよくなり、株全体がリフレッシュされるというメリットもあります。
大きくなりすぎた樹形を小さくできる
アジサイの剪定を行えば、大きく育った樹形を小さくすることも可能です。
アジサイは生育が旺盛な植物のため、剪定をせずに放っておくとどんどん大きく生長していきます。花の位置が高くなり、鑑賞には適さない状態になってしまうでしょう。枝があちこちに伸びると、樹形が崩れていくのも避けられません。
「冬剪定」で枯れた枝や混み合っている枝を切り落として姿を整えるほか、大きくなりすぎた場合は株元近くでバッサリと切る「強剪定」も効果的です。翌年の花は咲かなくなってしまいますが、大きくなったアサガオのサイズ感を小さくて可愛らしい姿に戻すことができます。
アジサイの剪定方法
アジサイの剪定は切る枝を見分け、適切な位置でカットするのが重要です。誤って花芽を切ってしまうと翌年に花が咲かない原因になってしまうので注意しましょう。
アジサイの正しい剪定を実施できれば、翌年以降の花付きがグッとよくなりますよ。
準備するもの
- 剪定ばさみ
- 軍手
アジサイの剪定には一般的な園芸に使用される剪定ばさみがあれば十分です。また万が一のケガを防ぐためにも、軍手の準備があると安心して作業できるでしょう。
花後の剪定方法
花後の剪定は「剪定する枝」と「残す枝」を選択するのがポイントです。
剪定の対象になるのは「その年に花が咲いた枝」です。中でも、「伸び過ぎたもの」や「伸びる方向がよくないもの」「枯れているもの」はカットしておくとよいでしょう。
「その年に花が咲かなかった枝」は翌年開花するので、そのまま残しておきます。
園芸用語では、葉が茎に付く部分を「節」といい、アジサイの場合は上から1節・2節・3節と数えます。カットする場所は、花茎の2節下のところです。樹高が高い株であれば、3~4節下でカットしてもよいでしょう。
休眠期の剪定方法
「休眠期の剪定」では乾燥して白っぽくなった枯れ枝や不要な枝をカットしていきます。
花後の剪定でカットした部分のすぐ下の葉を見ると、葉の付け根に小さな花芽があるのを確認できるはずです。2回目の剪定では、花芽を落とさないように、その上の部分だけをカットします。
花芽がどこにあるのか分からなければ、むやみにカットしないのが賢明です。花芽の下で切ってしまうと、花が咲かなくなってしまうので注意しましょう。
アジサイの強剪定とは?
「花後の剪定」と「休眠期の剪定」のほかに、「強剪定(きょうせんてい)」という3つめの方法があります。作業の目的と具体的な手順について確認しましょう。
強剪定の目的
アジサイは放っておくと、枝が木の幹のように大きく太くなります。アジサイの強剪定は、大きく育ち過ぎた株をコンパクトに、かつ見栄えよくするのが目的です。
また強剪定とは「剪定の際に枝を長く切り取ること」を指します。園芸用語のひとつで、アジサイの剪定に限ったものではありません。強剪定の対義語は、枝を少しだけ切る「弱剪定(じゃくせんてい)」です。
枝を根元近くまで落とす強剪定は、アジサイにとっては大きな負担となります。強剪定をした翌年は、花が咲かないケースがあることも頭に入れておきましょう。
強剪定の方法
アジサイの強剪定では、すべての枝元から20~30cmの位置にハサミを入れます。根元から1~2節の脇芽の上にハサミを入れるのがよいとされていますが、根元付近には葉がないため、実際は節を確認しにくいです。
強剪定は「花後」に行うのが基本です。秋が深まってから強剪定を行うと、花芽を落としてしまい、翌年に花がまったく付かなくなってしまいます。花を少しでも多く咲かせたいときは、花芽ができる前に剪定を行いましょう。
アジサイ剪定の注意点
アジサイの剪定は「花芽」を切らないように気を付けなければなりません。花芽を落としてしまうと、花がまったく咲かない年も出てきます。またアジサイには毒が含まれている可能性があることも覚えておきましょう。
花芽を切り落とさないように注意しよう
剪定時に花芽を切り落とすと、翌年や翌々年の花が咲かなくなります。花芽を切り落とさないように慎重にハサミを入れましょう。
アジサイの花芽は「枝と葉の付け根」にできます。夏剪定の後、カットした部分の下の芽が伸び、新しい枝になります。
そのひとつ下の葉の付け根に「翌年の花芽」ができるため、下までバッサリと切らないように注意しなければなりません。
鉢植えのアジサイは剪定後に植え替えよう
鉢植えのアジサイは定期的な「植え替え」が必要です。生命力が旺盛なため、放置しておくとすぐに根詰まりを起こしてしまいます。
植え替えのタイミングは1~2年に1回、「花後の剪定の後」が基本です。夏の間に剪定と植え替えを行うことで、翌年の花を咲かせるエネルギーが温存できます。開花時期の植え替えは花にストレスがかかるので避けましょう。
一方、鉢植えのアジサイを地植えにする場合は「休眠期」が理想です。根を傷つけないように、作業は慎重に行いましょう。
アジサイの毒に気を付けよう
アジサイの葉・茎・花などには有毒成分が含まれており、口に入ると嘔吐・めまい・顔面紅潮などの「中毒症状」が出るおそれがあります。
成分はまだ明らかになっていませんが、一部のアジサイからは青酸配糖体の陽性反応が出ているようです。また、嘔吐性アルカロイドの「フェブリフギン」が含まれているという報告もあります。
アジサイの剪定で中毒になることはありませんが、アジサイの葉や花を利用する際はくれぐれも口に入らないように注意しましょう。
アジサイの種類
アジサイは世界に数千種類もの品種があるといわれています。主に日本で流通しているのは「ホンアジサイ」という種類です。日本でよく見かける3つのアジサイの特徴を紹介します。
ホンアジサイ
「ホンアジサイ(本紫陽花)」は日本人がイメージする「典型的なアジサイ」です。
日本原種の「ガクアジサイ」を改良した園芸品種で、全体が手毬のように丸みを帯びているのが特徴です。ボリュームがあるため、華やかで見ごたえがあるでしょう。色は白・青・紫・赤色などで、土壌の成分によって色が変化します。
日本を原産国とし、ヨーロッパで品種改良されたものは「セイヨウアジサイ」と呼ばれています。
ガクアジサイとの違いは両性花がなく、装飾花のみで構成されている点です。種を取るのが難しく、通常は挿し木をして増やします。
カシワバアジサイ
「カシワバアジサイ(柏葉紫陽花)」は、北アメリカ東部が原産です。葉っぱが柏の葉のように5~7に裂けていることから、「柏葉 (カシワバ)」と名付けられました。
色は「白」で、花は「ピラミッド形」または「円錐状」の独特の形状をしています。
通常のアジサイは土壌によって花の色が変わりますが、カシワバアジサイは基本的に色が変わりません。品種によって「八重咲き」と「一分咲き」があります。
株が大きくなりやすいため、鉢植えよりも地植えに適しているでしょう。
ガクアジサイ
「ガクアジサイ(額紫陽花)」は日本や中国、台湾、北アメリカが原産国です。日本では、愛知県・和歌山県・高知県・伊豆半島・房総半島などの海岸地帯に自生します。
両性花の周りに咲く装飾花が額縁のように見えることから「額紫陽花」という名が付けられました。
花びらのように見える部分は「萼」で、中央にある両性花の雄しべと雌しべが種子をつくります。ホンアジサイと同様に、土壌の成分によって花の色が変わるのが特徴です。
ガクアジサイは種からも増やせますが、家庭では苗から育てるのが一般的です。
色ごとに異なるアジサイの花言葉
アジサイの花言葉は色によって異なります。オーソドックスな青色のアジサイは「忍耐強い愛」、ピンク色は「元気な女性」、白は「寛容」です。花言葉に合わせた色のアジサイを贈るのもよいでしょう。
また、小さな花が寄り添って咲くことから、日本では「団らん」や「家族」の象徴ともされています。
一方で、「移り気」や「無常」といったマイナスの花言葉もあります。一部のアジサイは土壌の成分によって花の色が変化するのが特徴です。元の花の色はアントシアン由来の「ピンク色」ですが、土壌にアルミニウムが混じっていると青に変化します。
アジサイの剪定方法を覚えて上手に育てよう
花姿の美しいアジサイを育てるには「花後の剪定」と「休眠期の剪定」の2回の剪定が欠かせません。剪定の最大のポイントは「タイミング」と「カットする位置」を間違えないことです。
アジサイは気温が下がると花芽を分化させ、休眠に入る準備を始めます。花後の剪定は、花芽ができる前に早めに済ませるのが理想です。
休眠期の剪定は花芽を切ってしまうおそれがあるため、不安な人は剪定を控える選択肢もあるでしょう。剪定のコツをつかむと、毎年美しいアジサイを咲かせることができます。