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個人事業主が家賃を経費にする方法~ 家事按分の仕訳を理解しよう

最終更新日: 2021年07月15日

個人事業主が自宅で仕事をしている場合、家賃を経費として計上できるのか?

賃貸の場合、持ち家の場合、それぞれ経費の計上方法について、迷っている方も多いことと思います。

この記事では個人事業主が自宅の家賃を経費に計上する際の家事按分と仕訳方法について解説します。さらに自宅が持ち家の場合、経費にできる支出を一つ一つ確認します。

家賃以外でも家賃と同じように一部を経費にできます。経費の計上漏れを防いで節税につなげましょう。

この記事の監修税理士

菅野歩税理士事務所 - 宮城県仙台市宮城野区

 
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家賃は経費にできる?

家賃は経費にできるかについて解説します
家賃は経費にできる?

自宅の家賃は経費になります。ただし経費にできるのは仕事に使用している部分のみです。以下詳細を見てみましょう。

事務所の家賃の場合、自宅の家賃の場合

まず個人事業主が自宅とは別の場所を仕事用として賃貸し、仕事をする時以外は利用しないケースを見てみます。この場合は事務所の家賃は全て仕事をするために支払っている(以下、事業用と言います)ため、全額が経費になります。

一方で事務所を借りずに自宅で仕事をしている場合、自宅の家賃の一部が事業用ですので事業用の部分のみ経費になります。

事務所を借りている人であっても、事務所に加えて自宅でも仕事をしている場合は自宅分の家賃の一部を事業用として経費にすることができます。

自宅家賃を経費にするための家事按分とは?

このように経費になるのは事業用の部分だけです。事業用とプライベート部分(家事部分)の割合を決め、費用をこの割合で按分することを家事按分と言います。自宅の家賃を経費にするためには、家賃を家事按分して経費にできる金額を計算する必要があります。

家事按分の計算方法

家賃の家事按分
家事按分の計算方法

家事按分の計算方法について具体例を見て行きましょう。

【家賃の按分方法①】使用している面積で按分

自宅の一室を仕事用として利用している場合などには、仕事部屋の面積の割合で按分すると合理的に計算できます。

計算例

  • 家賃1ヵ月10万円
  • 自宅はリビング含めて3部屋、全部で60㎡。
  • 仕事用専用の部屋は1部屋15㎡

この場合は15㎡÷60㎡=25%が事業用に使った割合です。このため100,000円×25%=25,000円が経費となります。

【家賃の按分方法②】使用した時間で按分

次に事業用に使用した時間で按分する例をご紹介します。

部屋が1部屋しかない、又は特に事業用の部屋として分けておらずいろいろな部屋で仕事をしている場合など、部屋の面積で分けることが難しいこともあります。そんな時は事業を行っている時間の割合で按分することも合理的です。

計算例

  • 家賃1ヵ月10万円
  • 1日のうち9時間、1ヵ月で20日間事業に使用している
  • 1ヵ月30日とする

事業に使用している時間は、9時間×20日=180時間。1ヵ月は24時間×30日=720時間なので180÷720=25%が事業用に使った割合です。このため100,000円×25%=25,000円が経費となります。

【家賃の按分方法③】割合を出すのが難しい場合

事業用の部屋や時間をどうしても明確に分けきれないこともあるかと思います。

この場合は最終手段として、割合をだいたいの感覚で出すということも考えられます。ただしこの場合事業割合が50%を超えると経費として認められるのは難しいと判断される可能性が高いので注意が必要です。睡眠時間を考えると一日の半分以上仕事をしているとは実質的に考えられないからです。

ただし計算方法があった方がはるかに合理性を主張しやすいので、極力上記①、②のような方法で見積もり、算式を根拠として残すべきでしょう。

家賃の勘定科目と仕訳方法

家賃の勘定科目と仕訳方法を解説します
家賃の勘定科目と仕訳方法

実際の仕訳の勘定科目と計上方法を見てみましょう。家賃は通常「地代家賃」として計上します。仕訳の計上方法には家賃を1か月単位で家事按分する方法と1年分の家賃をまとめて家事按分する方法があります。

家賃を1か月単位で家事按分する方法

家賃月額100,000円、経費として計上できる金額が25,000円、家事分が75,000円である上記の例で実際の仕訳を見てみます。

家賃を1か月単位で家事按分する方法では、毎月家事按分をした結果を仕訳で計上します。実際の仕訳例は、下記になります。

支払った時

借方 金額 貸方 金額
地代家賃 100,000円 現金預金 100,000円

家事負担分振替

借方 金額 貸方 金額
事業主貸 75,000円 地代家賃 75,000円

この仕訳を毎月計上し、1年間通して地代家賃として計上される金額は25,000円×12ヵ月=300,000円となります。

1年分の家賃をまとめて家事按分する方法

1年分の家賃をまとめて家事按分する方法を見てみます。こちらは家事按分の仕訳は一年間分をまとめて行う方法です。

実際の仕訳例は、下記になります。

まずは家賃を支払うごとに毎月下記の仕訳を計上しておきます。

借方 金額 貸方 金額
地代家賃 100,000円 現金預金 100,000円

1年間通して地代家賃として計上される金額は100,000×12ヵ月=1,200,000円となっています。

しかし事業用は25%なので、家事分である75%分を事業主に振替をする必要があります。この仕訳を年末に一本入れます。

借方 金額 貸方 金額
事業主貸 900,000円 地代家賃 900,000円

この結果、1年間通して地代家賃として計上される金額は1,200,000円-900,000円=300,000円となります。

どちらにしても結果は同じなのですが、1か月単位で家事按分する方法は、毎月事業に費やす時間が異なるなどの理由で毎月の家事按分の比率が異なる場合にやり易い方法です。また毎月リアルタイムで記帳をして年間の所得の予測を見たい場合に有効です。

一方1年分の家賃をまとめて家事按分する方法は家事按分の仕訳を年に一度計上すれば良いので、事務処理的に楽です。

家賃に関する費用の仕訳方法

家賃に関連する費用の仕訳方法を解説します
家賃に関連する費用の仕訳方法

ここで家賃に関連する費用の支出について、仕訳の方法、経費になるかどうかについてご説明します。

敷金

敷金は入居時に支払いますが、通常は退去時に返還されます。ただし退去時に原状回復費用と差し引きされて返金されることが多い金銭です。

このため敷金を支払っただけでは基本的に返金されるため経費にはなりません。

敷金を20万円支払った場合、支払時の仕訳は以下になります。

借方 金額 貸方 金額
敷金 200,000円 現金預金 200,000円

退去時に原状回復費用を3万円差し引かれて残金が戻ってきた場合、返金時の仕訳は以下になります。

借方 金額 貸方 金額
現金預金 170,000円 敷金 200,000円
修繕費 30,000円

もし事務所ではなく自宅兼仕事場の場合で事業割合が25%だった場合は、修繕費として経費計上できるのは30,000円×25%=7,500円になります。このため家事分75%部分を振替する仕訳が追加で必要になります。

借方 金額 貸方 金額
事業主貸 22,500円 修繕費 22,500円

礼金

礼金は敷金と違って返金されることのない金銭です。このため経費になるのですが、20万円以上の場合は繰延資産として支出時にはまず資産計上します。そして5年間で均等償却します。

例えば25万円の礼金を支払った場合は、毎年25万円÷5=5万円が経費となります。

支払った年度の仕訳

借方 金額 貸方 金額
地代家賃*  50,000円 現金預金 250,000円
長期前払費用 200,000円

翌年以降4年間の仕訳

借方 金額 貸方 金額
地代家賃* 50,000円 長期前払費用 50,000円

*繰延資産償却の科目を使うこともあります

契約期間が5年よりも短く、更新時に継続的に礼金を支払うような場合は、契約期間で償却することも可能です。

こちらも、もし事務所ではなく自宅兼仕事場の場合で事業割合が25%だった場合は、経費として計上できるのは25%部分だけになります。このため家事分75%部分を振替する仕訳が追加で必要になります。

借方 金額 貸方 金額
事業主貸 37,500円 地代家賃 37,500円

【個人事業主の持ち家】経費にできないもの

個人事業主が持ち家を経費にできないものについて解説します
個人事業主が持ち家を経費にできないもの

ここまで自宅を賃貸しているケースを検討してきましたが、次に持ち家の場合についてご説明します。持ち家の場合は家賃の支払はありませんが、不動産の購入費用を始めとしていろいろと支出があります。この中で経費にできない部分についてご説明します。

名義人が親の場合、配偶者の場合

まず持ち家の名義人が個人事業主本人ではなく親や配偶者の名義であるケースを考えます。

自分名義でないと全て経費にできないと考えられるかもしれませんが、そんなことはありません。ただし「同一生計親族間」のやり取りに対して経費の特別ルールがありますので注意が必要です。

例えば配偶者(夫)名義の持ち家に個人事業主(妻)が住み、妻がそこで事業をしているケースを考えてみます。この場合妻が夫に家賃をいくばくか支払って、それを経費にすることはできません。家賃だけでなく光熱費などの経費についても同様です。

なぜなら夫婦は同一生計親族(お財布が一緒)であり、その場合はお互いに金銭をやり取りしても経費や収入にならないことになっているからです。これが「同一生計親族間」のやり取りに対しての経費の特別ルールであり、同一生計間での利益操作を排除する趣旨です。

ただしそうすると妻は何も経費として計上できないように見えますが、そうではなく夫名義のものでもそのまま妻の経費にすることができます。もちろん経費にできるのは事業割合のみです(持ち家に関連する支出のうち経費にできるものについては次の項で詳しく解説します)。

そして配偶者だけでなく名義が親の場合でも、親が同一生計親族に当てはまる場合には同様です。当てはまらない場合は第三者と同じ扱いになり、家賃を支払っていればその分の事業割合が経費になります。

住宅ローン返済中の場合

次に自分名義の持ち家で住宅ローンの返済中である場合に、経費にならない支出について解説します。

まず住宅ローンの返済金額の内、元本部分については経費にはなりません。借入金の返済のため経費ではないからです。一方住宅ローンの返済金額の内、金利部分については経費となります(次の項でも記載します)。

そして住宅ローン減税を受ける場合には特に注意が必要です。住宅ローン減税は居住用部分を対象としています。事業用の割合が50%を超えると住宅ローン減税を全く受けられなくなり、50%以下でも事業割合部分については住宅ローン減税を受けられません。ただし事業割合が10%以下の場合には全額住宅ローン減税を受けることができます。

住宅ローン減税は減税金額が大きいので、事業割合を高くして経費を計上するよりも節税効果が高い場合が多くあります。どちらが有利かを事前に検討することをおすすめします。

【個人事業主の持ち家】経費にできるもの

個人事業主が持ち家を経費にできるものについて解説します
個人事業主が持ち家を経費にできるもの

次に個人事業主が持ち家に関連する支出のうち経費にできるものについてご説明します。

減価償却費

まずは減価償却費です。建物については時の経過によって価値が減少するため、減価償却費として経費計上ができます。ただし事業割合部分のみです。

計算方法は「減価償却費=建物の取得価格×耐用年数の償却率×事業割合」で算定します。耐用年数については耐用年数表で確認します。

参考:国税庁の耐用年数表

例えば2,000万円の建物を購入し、25%を事業用として利用している場合を考えます。この建物の耐用年数が仮に47年(償却率0.022)としますと、20,000,000円×0.022×0.25=110,000円が一年分の経費となり、翌年以降も47年間経費として計上できます。

購入後しばらくして事業を開始した場合には、事業供用した時点の建物の評価額として未償却残高を計算します。

未償却残高=建物の取得価額-建物の取得価額×0.9×旧定額法の償却率×経過年数

耐用年数はその資産の1.5倍に相当する年数で計算します。年数に1年未満の端数があるときは、1年未満の端数は切り捨てます。業務の用に供されていなかった期間に係る年数に1年未満の端数があるときは、6月以上の端数は1年とし、6月に満たない端数は切り捨てます。

参考:国税庁タックスアンサーNo.2108

固定資産税

持ち家の場合固定資産税の支払が発生し、事業割合部分については経費として計上できます。勘定科目は租税公課を使用すると良いでしょう。

住宅ローンの金利分

上記で出てきた住宅ローンの金利分についても事業割合部分のみ経費にすることができます。

減価償却費だけでなく固定資産税など持ち家に関連する経費については、もし住宅ローン減税を受けるために事業割合をゼロにしてしまった場合は計上できません。

家賃関係以外で経費にできる費用一覧

家賃関係以外で経費にできる費用をご紹介します。
家賃関係以外で経費にできる費用一覧

次に家賃以外で経費にできる費用についてまとめます。事業割合に応じて経費に計上できるので、計上漏れのないように確認しておくと良いでしょう。

共益費

賃貸物件の場合、家賃とは別に共益費を支払うこともあるかと思います。共益費も家賃と同様に扱い、事業割合に応じて経費になります。

光熱費

電気代、ガス代、水道代の光熱費も、事業割合に応じて経費になります。家賃と異なり事業割合を決定するのが難しいかもしれません。使用回数や使用時間を考慮して決定していくことになりますが、考え方としては、もし事業をしていなかったら電気代、ガス代、水道代がどの程度減るかどうかという観点で見ると合理的です。

例えば電気代の事業割合をもし90%とした場合、事業を止めたら本当に電気代が今の1割になるような事業なのかどうかよく検討しましょう。

通信費

通信費も事業割合に応じて経費になります。電話代やインターネットの通信料が該当しますが、利用時間などの合理的な割合で家事按分しましょう。

例えば携帯電話を事業のみで使用することが考えられます。この場合は100%事業用としても問題はないですが、もし保有する携帯が1台のみである場合は100%事業用にしか使わないというのは常識的には考え難いところですので、100%全額を経費にする時は注意が必要です。

駐車場代

車を事業でも使用している場合、月極の駐車場代も事業割合に応じて経費になります。走行距離や使用時間に応じて車に関連する費用の事業割合を決定し家事按分し、地代家賃や賃借料といった勘定科目を使用して経費に計上します。

都度利用の駐車場代については、事業用かどうかが明確なことが多いでしょう。事業で使用した場合は100%経費になります。都度利用の駐車場代が家事按分の対象でない場合は月極の駐車場とは別の旅費交通費等の科目で分けて計上しておくと、家事按分の経費が集計し易く事務処理上楽になります。

自動車関連費

ガソリン代、自動車税、車検代といった自動車関連費用についても事業割合に応じて経費になります。月極の駐車場と同様に車に関連する費用の事業割合を決定しその割合で経費に計上します。

勘定科目としては自動車税は租税公課で処理することが多いですが、他の自動車関連費を「車両関連費」等の科目に集約しておくと、家事按分対象が集計されて事務処理上楽になります。

また事業割合が自動車関連費用の中で異なると整合性が取れないので統一しておきましょう。

家賃を経費にした時の注意点

家賃を経費にした時の注意点について解説します
家賃を経費にした時の注意点

最後に家賃を経費にした場合の注意点についてご説明します。

証明できるものを保存する

家事按分の比率によって経費の金額が変わってきます。比率が合理的なものであると主張するために、証明できる根拠をしっかり残しておくことが必要です。

時間が経つと、どのように決定したか忘れてしまいます。面積であれば部屋の見取り図を保存した上で計算根拠を残し、時間であれば事業の時間を何時間と見積もったかなどの根拠を残しておきましょう。

青色申告・白色申告の違いを理解する

青色申告と白色申告では、法令上家事按分の規定が違います。このため経費の計上金額に違いが大きく出てくると思う方もいらっしゃると思いますが、結論として実務上は変わりません。

白色申告の場合は法令上(所得税法施行例第96条)は、「主たる部分」が事業に必要な経費で、かつ事業割合を明確に区分できるものを経費として計上できることになっています。

一方で青色申告の場合は取引の記録等に基づいて事業割合を明確に区分できるものを経費とするとあり、「主たる部分」についての記載がありません。

通達によると「主たる部分」は50%を超える部分かどうかで判定することになっています。このため事業割合が50%を超えないと経費にならないようにも思えますが、所得税基本通達45-2では50%以下でも事業割合を明確に区分できるなら経費になるとの記載があります。このため実務上は白色申告でも事業割合が明確に区分できれば経費に計上することができます。

明確に区分できなければ青色でも白色でも経費に計上できないので、家事按分については合理的な根拠を基にして計算過程を残しておくことが重要です。

監修税理士コメント

菅野歩税理士事務所 - 宮城県仙台市宮城野区

家事按分の基準の決定には、合理性や客観性が必要です。 その基準については根拠を明確にしておき、具体的に説明できるように準備しておきましょう。
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このように自宅の家賃を経費に計上するには家事按分が必要で、家事按分には明確な根拠づくりや残し方が重要になってきます。また家賃以外にも経費にできる費用がいろいろとあるので、経費の計上漏れがないようにしたいところです。

しかしご自身で判断するには不安な点も出てくるかと思います。そんな時は税理士に相談することをおすすめします。税理士のサポートを受けることで、安心して節税することができます。

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この記事の監修税理士

菅野歩税理士事務所 - 宮城県仙台市宮城野区

仙台市宮城野区岩切に事務所を構える税理士の菅野歩と申します。日々の経理業務、会計・税務業務など経営者の皆様のニーズに合わせた適切なサポートを全力で行い、わかりやすくご説明させていただきます。
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