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個人事業主のアルバイト収入は確定申告を!計算方法・手順を解説

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最終更新日: 2023年04月20日

個人事業主でもアルバイトの給与収入や副収入がある人もいるでしょう。そのようなアルバイトで得た収入に関しては、どのように税務申告をすればよいのでしょうか。

本記事では、アルバイトをしている個人事業主の方向けに、自動的に徴収されている源泉徴収についての詳しい解説から、わかりにくい年末調整について、そして個人事業主は年末調整をする必要があるの?まで、確定申告の情報をお伝えします。

この記事を監修した税理士

安田亮公認会計士・税理士事務所 - 兵庫県神戸市中央区元町通

 

個人事業主がアルバイトをしたときの源泉徴収

個人事業主がアルバイトで大切な源泉徴収
個人事業主がアルバイトで大切な源泉徴収

空いた時間にアルバイトをしている個人事業主の方もいるでしょう。個人事業主が本業とアルバイトを掛け持ちしている場合、確定申告はどうしたら良いのか迷う場合もあるでしょう。

そんな方に個人事業主がアルバイトをした際の確定申告の仕方をご紹介します。

アルバイトの源泉徴収【基本】

アルバイトの源泉徴収とは

源泉徴収とは、アルバイト先がバイト料を支払うとき、毎月の収入金額に応じて所得税を天引きすることを言います。

所得税はその年1年間の収入に対してかかる税金のため、アルバイトの場合は、その年の総収入は12月31日にならないとわかりません。また、年末に1年分の税金を一度に払うのは負担がかかるものです。

そのため、毎月の収入金額から概算で出した所得税を天引きしておくのです。あくまで概算による税金の前払いのため、多かったり、少なかったりすることも考えられます。そこで後で精算(年末調整)をする必要があるのです。

所得税は1年間の収入が103万円以下の場合はかかりません。つまり月平均85,000円だと所得税はかからない計算になっており、実務上の取り扱いラインとして社会保険料控除後の金額が88,000円未満かどうか(以下同様)という基準が設けられています。

バイト代が毎月全て同じ金額とは限りません。88,000円以内の月もあれば、90,000円の月もあるでしょう。たとえ1年間の収入が103万円以下であっても、その月のバイト代が88,000円を超えれば源泉徴収されます。

年間でバイト代が103万円以下になると予想される場合でも、源泉税は1ヶ月ごとの給与額で計算します。扶養家族がいない方は月88,000円以上であれば源泉所得税を徴収されることになります。

■給与所得者の扶養控除申請書の記載

給料をもらって仕事をしている人は、メインとなる勤務先1社にのみ「給与所得者の扶養控除等(異動)申告書」を提出します。

給与から源泉所得税を差し引くとき、会社の給与計算担当者は「給与所得の源泉徴収税額表」をもとに税額を計算しますが、扶養控除等申告書を出した人を「甲」、出していない人を「乙」と分類し、「甲」の人は税額表の「甲」欄、「乙」の人は「乙」欄を見ながら計算します。

現在の法律では、収入が増えるほど税金が高くなる仕組みになっているため、「乙」扱いの収入に対しては税額表で高い税率が設定されています。バイト料が月額8万8000円未満の場合、「甲」扱いのバイト先なら税金はかかりませんが、「乙」扱いのバイト先では3.063%の税金が課されます。

また会社は「甲」については年末調整をしますが、「乙」については、年末調整は行なわれません。

■給与の源泉所得税の計算方法

給与の源泉所得税額を求めるためには以下のステップで計算していきます。

  1. その月の給与を確定させます。残業代や手当などを計算し、社会保険料を差し引いた後の金額が、源泉所得税額を求める基準となります。
  2. 給与所得の源泉徴収税額表を参照します。税額表は毎年変わるため、必ず最新のものを利用しましょう。また、給与所得の源泉徴収税額表には、「月額表」と「日額表」の2種類があります。月給制の場合は月額表、日給制・週給制の場合は日額表を利用しましょう。
  3. 源泉徴収税額表には、「給与所得者の扶養控除等(異動)申告書」を提出した社員が適用となる「甲欄」と、提出しない社員が適用となる「乙欄」があります。そして、日雇いなどの従業員が適用となるのは「丙欄」です。

給与所得者の扶養控除等(異動)申告書は、アルバイトを始めてから最初の給与計算が行なわれる前までに提出する書類で、所得税の課税区分を決める重要な役割を担っており、これを提出することで「配偶者控除」「扶養控除」「障害者控除」「寡婦(寡夫)控除」「勤労学生控除」といった控除を受けることができるようになります。

扶養控除申告書の内容に変更が生じた場合は、所得税の再計算が必要になるため、当年分の年末調整時に訂正の上、再度提出します。

また、扶養控除申告書の提出がなければ、所得税額の計算の際、源泉徴収税額票の額面が高い「乙欄」で計算することになり控除が受けられなくなります。そのため、扶養控除申告書の提出が年末調整を行なう上で大切となっているのです。

給与所得の源泉徴収税額表(月額表)

令和5年分 給与所得の源泉徴収税額表(月額表)
給与所得の源泉徴収税額表(月額表)参考:国税庁

給与所得の源泉徴収税額表(日額表)

令和5年分 給与所得の源泉徴収税額表(日額表)
給与所得の源泉徴収税額表(日額表)参考:国税庁

扶養控除の申請

令 和 5 年 分  給与所得者の扶養控除等(異動 ) 申 告 書
給与所得者の扶養控除等(異動 )申告書 参考:国税庁

源泉徴収額は、あくまで概算のため、それぞれの生活事情に応じた所得控除は考慮されていません。そのため、本来その人が納めるべき所得税を、再計算する必要があるのです。源泉徴収額と正しい所得税額を比較し、給与を受け取った人が税金を多く払っていた場合は差額を返金し、不足している場合はその分を徴収します。

給与所得者の扶養控除等(異動)申告書は、扶養している配偶者や親族がいることを申し出る書類です。この書類を提出することで、配偶者控除や扶養控除、障害者控除を受けることができます。

扶養控除申請書を提出した場合

扶養控除申告書を勤務先に提出する人は、一般的には会社員や公務員などですが、パートやアルバイトを含む非正規の従業員も提出が可能です。提出時期は、新しく就職した際には最初の給与が支払われる前までに、継続して働いているのであれば前年度の年末調整の際に扶養予定者などを記載して勤務先に提出します。

会社は従業員から提出された扶養控除申告書を元に、毎月の給与から天引きで所得税の源泉徴収をしていきます。

扶養控除申請書を提出しなかった場合

しかし、年末調整が雇用主に義務付けられないこともあります。それは、年末調整の実施日までに従業員が「給与所得者の扶養控除等(異動)申告書」を提出しなかった場合です。この場合、その従業員に年末調整前の源泉徴収票を渡し、翌年2月から3月に実施される確定申告で個人として所得税を納めてもらいます。

アルバイト先で年末調整をせずに、確定申告をする

年末調整とは、基本的にパートやアルバイトも含めて会社に雇用されている人が対象で、年末の給与支払い時に所得税の過不足の調整を行なうことをいいます。確定申告は所得のある全ての人が対象ですが、パートやアルバイト先で年末調整を行なっていれば、確定申告は基本的に必要ありません。

ただし年末調整を済ませていても、副収入がある人や医療費控除を受けるには確定申告が必要です。

また、2,000万円を超える収入がある人も確定申告が必要となります。

事業所得と給与所得を合わせた税額の計算方法

事業所得と給与所得を合わせた税額の計算方法
事業所得と給与所得を合わせた税額の計算方法

事業所得とは、事業で得た収入から必要経費を引いたもので、個人事業主の所得税は、この事業所得をもとに計算されています。給料の収入は給与所得とよばれ、収入金額から会社員の必要経費とみなされる給与所得控除額を差し引いた金額となります。これらを合わせた税額の計算方法はどのようなものなのでしょうか。

個人事業主の経費

個人事業主として確定申告をするにあたって、頭を悩ませるのは経費の計上です。特に、自宅を仕事場にしている場合や、仕事とプライベートで銀行預金口座を分けていない場合、日常生活にかかった費用と事業を行なうためにかかった経費の区別がつきにくく、判断に迷うことも多いでしょう。

個人事業主が経費として計上できるもの・できないもの具体例や、自宅の一部を事務所にしている場合の「家事按分」(ある支出がプライベート用と事業用の双方が混ざったものである場合、事業で使用する比率分のみを経費に計上すること)をご紹介します。

  • 【個人事業税】個人事業税は全額必要経費に算入可能。固定資産税に関しては業務で使用している部分のみを必要経費計上できる
  • 【配送に関わる備品】 引越しの際に使用するダンボールやガムテープなど経費計上が可能
  • 【水道光熱費】 事務所兼自宅となっている場合、事業所として使用している分を按分して経費計上する
  • 【通信料金】 事業で使用した割合に応じて経費計上が可能
  • 【旅費交通費】 業務で使用した電車代・タクシー運賃・駐車料金
  • 【修繕費】 建物の修繕や通常の維持管理、原状回復ということであれば、経費計上が可能
  • 【消耗品費】 プリンター用紙やインク、事務用品や工具など、取得価額が10万円未満のもの又は使用可能期間が1年未満のものについては経費計上が可能

他にも広告宣伝費、接待交際費などが、一般的な経費と計上できるものとなります。

事業所得、給与所得の税率と控除額

アルバイト収入は勤務先との契約形態によって次のように区分されます。

  • 時給制などの雇用契約=給与所得
  • 完全出来高制などの請負契約=事業所得

所得金額の計算方法

給与所得

給与収入-給与所得控除額

給与所得控除は、給与所得の必要経費に相当するもので、年間の給与収入に応じた概算額で計算するのが特徴です。

■事業所得

収入金額-必要経費-青色申告特別控除(10万円または55万円、65万円)

必要経費を実際の負担額で計算するのが特徴です。また、2023年現在の給与所得控除額は次の通りです。

給与等の収入金額

(給与所得の源泉徴収票の支払金額)

給与所得控除額
1,625,000円まで 550,000円
1,625,001円から1,800,000円まで 収入金額×40%-100,000円
1,800,001円から3,600,000円まで 収入金額×30%+80,000円
3,600,001円から6,600,000円まで 収入金額×20%+440,000円
6,600,001円から8,500,000円まで 収入金額×10%+1,100,000円
8,500,001円以上 1,950,000円(上限)

(出典:国税庁)

個人事業主の納税額の計算例

個人事業主の納税額の計算方法を考えてみましょう。納める税金の中でも、所得税は年間収入から必要経費などを差し引いた「所得」に対して課される税金です。 基本的には最も金額が多くなり、事業主にとってのメインになる税金です。

所得税の計算式

収入 − 必要経費 − 各種控除 = 課税所得金額
課税所得金額 × 税率 − 課税控除額 − 税額控除額 = 所得税額

■例:本業でエステサロンを営んでおり、副業として生花店でアルバイトをしている場合
エステサロン=「事業所得」
飲食店のアルバイト=「給与所得」

事業所得と給与所得はともに総合課税に該当するため、それぞれの所得を算出し、それから合算して所得の総額を求めます。この金額をもとに所得税額を計算します。

  • 事業所得の計算方法(エステサロンの売上高を700万円、必要経費を300万円と仮定)
    収入金額(=売上高/700万円)-必要経費(300万円)=事業所得(400万円)
    ※青色申告特別控除額は考慮していません。
  • 給与所得の計算方法(アルバイトの収入を120万円と仮定)
    収入金額(120万円)-給与所得控除額(55万円)=給与所得(65万円)
  • 総所得金額の計算方法
    事業所得(400万円)+給与所得(65万円)=総所得金額(465万円)

これはほんの1例ですが、納税額の計算は、上記のように求めることができます。

個人事業主のアルバイト掛け持ちした際の確定申告の方法

個人事業主のアルバイト掛け持ちした際の確定申告の方法
個人事業主のアルバイト掛け持ちした際の確定申告の方法

これまで個人事業主がアルバイトをした際の源泉徴収、扶養控除の申請、税額の計算方法などを見てきました。本業に加えてアルバイトを掛け持ちした際の確定申告の方法を見ていきましょう。確定申告=難しくてややこしいと思われがちですが、必要な書類を用意し、手順を追って進めていけば、初めての人でも記入していくことは可能ですよ。

源泉徴収票と必要な書類

個人事業主がアルバイトをして、給与所得がある場合の確定申告の手順について説明します。

■必要な書類

  • 源泉徴収票
  • 確定申告書

確定申告書第一表の書き方

確定申告書 給与所得と事業所得
確定申告書 第一表 出展:国税庁

手順

  • アルバイト先から源泉徴収票をもらう(確定申告の際に源泉徴収票の添付は必要ありません)
  • 確定申告書に事業所得と給与所得を分けて記入する
  1. 事業所得
    所得税青色申告決算書(白色申告は収支内訳書)を参照し、収入金額等と所得金額の「事業(営業等)」に記入します。
  2. 給与所得
    給与所得の源泉徴収票のうち、給与収入の「支払金額」と所得金額の「給与所得控除の金額」を参照し、収入金額等と所得金額の「給与」に記入します。
  3. 源泉徴収税額も忘れずに記入する
    基本的にアルバイト収入は源泉徴収税額を天引きして入金されるため、税金の計算の「源泉徴収税額」欄に忘れずに記入しましょう。源泉徴収税額は所得税の前払いであり、納付税額から控除できるためです。
    事業所得でも源泉徴収がすでに行われている場合は、合計金額を記入しましょう。

確定申告書第二表の書き方

所得の内訳
確定申告書 第二表 出展:国税庁

手順

  • 「所得の内訳」に事業所得と給与所得を分けて記入する
  1. 事業所得
    所得税青色申告決算書(白色申告は収支内訳書)を参照し、所得の種類を「事業」、種目を「報酬」など、支払い元、収入金額、源泉徴収されている場合は源泉徴収額を記入します。書ききれない場合は、別紙の所得の内訳書に記入しましょう。
  2. 給与所得
    所得の種類を「給与」、種目を「給料」など、給与支払い元、収入金額、源泉徴収税額を記入します。
  3. 「㊽源泉徴収税額の合計額」を記入します。

確定申告の提出方法

毎年3月15日の申告期限と納付期限までに確定申告書を提出し、納付する必要があります。税務署に直接持っていく他にも、郵送や、インターネットを使って行うe-Taxという方法もあります。一番便利な方法を選択し、期限までに提出しましょう。万が一、期限を過ぎてしまった場合のデメリットは次の通りです。

  • 提出期限より遅れて提出した場合:青色申告特別控除の最大額65万円が受けられない
  • 納付期限より遅れて納付した場合:延滞税などのペナルティーが課せられる

監修税理士のコメント

安田亮公認会計士・税理士事務所 - 兵庫県神戸市中央区元町通

乙欄で支払いを受けた給料がある場合、かなり高い税率で源泉徴収されておりますので、確定申告を行なうと還付になるケースが多くなります。それを失念している方が一定数いらっしゃいますので、忘れずに確定申告するようにしましょう。自分で行なうのが大変そうな場合は、税理士に依頼することも検討しましょう。税理士費用を払っても得になるケースが多いと考えられます。

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アルバイトの働きもある個人事業主にとって、年明けから確定申告の準備に忙しいのではないでしょうか。また近年は紙での申告よりも、e-Taxを使う方が増えています。

e-Taxを初めてする場合、マイナンバーカードの登録など事前準備もあるため戸惑うことも多いでしょう。

確定申告の疑問やお悩みは、所轄の税務署でも相談を受け付けてくれます。ただ、記帳方法なども含めて、わからないところをわかるように教えてもらいたいのであれば、やはり税のプロである税理士に依頼するのがおすすめです。

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この記事の監修税理士

安田亮公認会計士・税理士事務所 - 兵庫県神戸市中央区元町通

安田亮(公認会計士・税理士・1級FP技能士)1987年香川県生まれ、2008年公認会計士試験合格、2010年京都大学経済学部経営学科卒業。大学在学中に公認会計士試験に合格。大手監査法人に勤務し、その後、東証一部上場企業に転職。連結決算・連結納税・税務調査対応等を経験し、2018年に神戸市中央区で独立開業。所得税・法人税だけでなく相続税申告もこなす。