この記事でわかること
- 「数字を入れるだけ」のはずの給与計算で、なぜつまずくのか。想定外という難所の正体
- 契約後に後悔しやすい3つの失敗あるあると、その避け方
- 「サポートあり」の中身の見分け方と、30年の蓄積が効く場面。見落としやすい従量課金の落とし穴
選定で見るべき3点
- 最初の設定をスムーズに終えて、使い始められるか
- 自社の一番ややこしい給与パターンを、そのまま処理できるか
- 給与計算ソフト単体で判断せず、勤怠・労務の要件まで見てから決める
なぜこの3点なのかは、Section 02の「3つの失敗」で。
弥生株式会社 河内山 泰之氏
給与計算ソフト選びが、実は難しい理由
正直に言うと、給与計算ソフトの初期設定・運用は、前職で扱っていた経費精算の製品より圧倒的に難しいんです。
弥生給与 Next のプロダクトを担う河内山泰之氏は、そう打ち明ける。給与計算ソフトと聞くと、勤怠の数字を入れれば自動で計算してくれる、シンプルなソフトを思い浮かべる人は多い。だが、数多くの導入現場を見てきた河内山氏の見立ては逆だ。その難しさがどこにあるかを知ることが、ソフト選びの分かれ目になる。
きれいなケースだけを計算できるソフトなら、いくらでもある。難所は、その外側にある。
難しいのは、想定外のほうです。月の途中の入退社、さかのぼっての修正。実務は、そういうことの連続なんです。
どれも、数字を入れればソフトが自動で片づけてくれる、とはいかない。しかも想定外は、ソフトの中だけで終わらない。
掘ってみると、就業規則自体が正しく書かれていない、ということもあります。そうなると社労士に依頼することになり、話がどんどん広がってしまうんです。
給与計算ソフトを1本入れるだけのはずが、いつのまにか社労士を呼ぶ話になっている。給与計算の難しさは、想定外の多さと、その広がり方にある。
各社の機能比較表を並べれば、法改正対応やサポートの有無といった項目は横並びで確認できる。だが差はそこから先——導入後に想定外が起きたときに、それを支える知見とサポートがあるかどうかに出る。比較表で候補を絞ったら、次はそこに載らない項目でデモに臨む番だ。
中小企業の約58%は、まだ給与計算ソフトを導入していない
給与計算ソフト 未導入
約58%
従業員100名未満の中小企業のうち、給与計算ソフトを導入していない割合
未導入企業の対応手段
74.1%
未導入企業のうち、給与計算をExcel等で行っている割合
※1 「中小企業の給与・勤怠・労務管理の実態調査2025」(弥生株式会社調べ)
会計から続く会社が、30年かけて積んだもの
弥生は、会計ソフトで長年、中小企業のお金まわりを支えてきた。その延長線上に給与・勤怠・労務のソフトを揃え、目指す姿として「中小企業の道筋を照らす存在」を掲げる。給与計算ソフトの提供は、30年を超える。
その年月は、機能の並びに表れている。
デスクトップ製品時代のご要望から積み上がった機能が、ふんだんに含まれているんです。今のIT企業なら省くようなものも、残っています。
新しいソフトは、感度の高い層の声を集めて機能をつくる。だが河内山氏に言わせれば、その層は世の中では少数派だ。今の業務を守りたい人、昔からのやり方を変えたくない人のほうが、実際には多い。新規の顧客獲得のために足した機能ではなく、つまずいた人の声で足した機能だ、というのが弥生の説明である。
給与計算ソフトの導入で起こりがちな3つの失敗
給与計算ソフト選びで、あとから悔やみやすいのはどこか。河内山氏は、数多くの導入検討を見てきた立場から、その代表的なパターンを3つに整理する。
失敗1 — 契約したものの、初期設定で挫折する
システムとマニュアルだけ渡されて、あとはご自身でどうぞ、という形がよくあります。ただ、就業規則や手当のルールを給与計算ソフトの設定用に翻訳しないといけない。
会社ごとに異なる就業規則や手当のルールを、担当者自身が設定画面へ「翻訳」していく。ここではソフトの知識だけでなく業務の知識もいる。力尽きれば、使われないまま契約だけが残る。にもかかわらず、検討段階でここを確認する人は少ない。
最初の設定を誰がどう支援してくれるのか、困ったときに業務がわかっている人に相談できるのか、というところまでは、意外と確認されないんです。
だから、選定でまず見るべき1点目は最初の設定をスムーズに終えて使い始められるかだ。初期設定を支援する体制があるか、その支援が基本料金に含まれるのか、追加料金なのかを確かめたい。弥生は導入時の立ち上げを支援する専任チームを置き、この支援をベーシックプラン・ベーシックプラスプランの基本料金に含めている(製品によっては有償オプションの場合もある)。最初の工程こそ最もつまずきやすいと、わかっているからだ。
「最初の設定を誰がどう支援してくれるのか」
そもそも、マニュアルを読みながら画面を2つ並べて見比べる作業は、それ自体が根気の要る仕事だ。しかも河内山氏が見てきた現場には、サポートサイトがどこにあるのかわからない、メールの見方がわからない、という人も少なくないという。
製品側の工夫もある。弥生給与 Next は開くと「やることリスト」が表示され、示された順に進めれば給与業務が動き出す。マニュアルに戻らなくても、製品だけを見ていればとにかく先へ進める。とはいえ、就業規則や手当を設定へ翻訳する難所そのものが消えるわけではない。入口をやさしくする工夫と、詰まったときに支える知見・サポート。その両方に弥生が力を入れているのは、給与計算ソフトが簡単そうで実は難しいと、誰よりも知っているからだ。
失敗2 — 数カ月後、想定外のケースで手作業に戻る
2つ目は、導入から数カ月後に表面化する失敗だ。デモで見せられるのは、汎用的で、きれいなケースの計算である。想定外のケースが牙をむくのは、そのあとだ。
「うちもこれができるんだ」と導入するのですが、実際の業務は想定外の連続です。自分たちでは解決できずに手作業に戻る、ということを複数見てきました。
崩れるのは、初めての想定外が起きた日だ。だから見るべきは標準機能の一覧ではなく、自社の一番ややこしい給与パターンをそのまま処理できるか。デモの場に、自社で一番面倒な例を持ち込んでしまうのが早い。
ただし、想定外を選定時にすべて洗い出すことはできない。だからこそ河内山氏は、想定外への対応を製品の機能とサポートの両輪で語る。
製品の対応とサポート、その両輪が強みだと思っています。ソフトの機能だけで戦っているわけではない、というのが弥生らしさかなと。
「ソフトの機能だけで戦っているわけではない」
比較表に並ぶ「サポートあり」の一行だけでは、実態までは読めない。メールを送ればメールだけが返ってくるものもあれば、チャットボットが応対し、そこに時々、人が混ざるものもある。同じ「サポート」でも、実態はまったく違う。河内山氏が価値を置くのは、応対チャネルよりも給与という業務そのものを深くわかっている人に相談できることだ。
弥生で最終のエスカレーション先に座っているのは、サポート歴20年以上のベテラン社員だ。弥生給与 Next ができるはるか前から、20年以上、現場のエスカレーションを受け続けてきた人たちが控えている。
河内山氏が差として挙げるのは、解決の速さだ。質問の文面から「このお客様はこういう意図だ」というところまで読み解いて現場に返してくるので、ざっくり聞いても答えが返ってくる。問い合わせのたびに状況を一から説明し直す手間が要らない、ということでもある。
失敗3 — 給与の要件だけで選び、勤怠・労務が合わない
給与計算ソフトの検討は給与担当が主導しがちで、勤怠・労務は後回しになりやすい。河内山氏によれば、導入の順番も、まず給与、次に勤怠、最後に労務が多いという。実際、冒頭の実態調査でも導入率は給与計算41.6%に対し勤怠管理28.1%、労務管理13.8%と、給与から離れた工程ほどデジタル化が手つかずで残っている(※1)。だが給与・勤怠・労務は、連携させることで、業務全体をより効率化できる。給与を起点に検討が進みやすいことが、3つ目の失敗につながる。
デジタル化は給与で止まりやすい。伸びしろが最も大きいのは労務管理
※1 「中小企業の給与・勤怠・労務管理の実態調査2025」(弥生株式会社調べ)。数値は各業務のソフト導入率
給与の要件は丁寧に見る人でも、勤怠・労務のほうは「ついているから」という理由だけで、深く確かめずにセットで決めてしまう。問題が出るのは、そのあとだ。
いざ使うと、勤怠の締めのルールや申請の流れが自社に合わない。そこだけ別のシステムに変えると、結局、継ぎはぎになってしまうんです。
症状は勤怠側だけではない。労務のほうでも、提出された書類がうまく読み込めない、といったことが起きる。そして給与の設定はもう終わっているから戻せず、勤怠だけを別の製品に差し替えることになる。だから見るべき3点目は給与計算ソフト単体で判断しないことだ。勤怠管理・労務管理の要件にも、最低限は目を通してから決める。
どこに重心を置くかは会社による。夜勤や複雑な報酬体系がある医療・介護なら勤怠を、手当の多い会社なら給与を、と特性に応じて重点を変えたい。共通して効くのは、いま一番時間を取られている工程はどこかから逆算する視点だ。それが勤怠の集計なら、給与計算ソフト単体を比べても答えは出ない。
3つの失敗を裏返すと、選定で見るべき3点になる
失敗 01
初期設定で挫折する
契約後にシステムとマニュアルだけ渡され、就業規則や手当を設定に「翻訳」する工程で力尽きる。使われないまま契約だけが残る。
見るべき点 01
最初の設定をスムーズに終えて、使い始められるか
初期設定を支援する体制があるか。その支援は基本料金に含まれるのか、追加料金なのか。
失敗 02
想定外で手作業に戻る
デモで見たきれいなケースは動く。だが月の途中の入退社やさかのぼり修正といった想定外が起き、自力で解決できず手作業に戻る。
見るべき点 02
自社の想定外ケースで破綻しないか
標準機能の一覧ではなく、自社の一番ややこしい給与パターンを持ち込んで試す。
失敗 03
勤怠・労務が合わない
給与の要件は丁寧に見るのに、勤怠・労務は「ついているから」で決めてしまう。締めのルールや申請の流れが合わず、継ぎはぎになる。
見るべき点 03
給与計算ソフト単体で判断しない
勤怠・労務のDX化もあわせて検討し、自社の業務要件に合うかまで確認する。
そのまま使える|商談・デモで聞く7つの質問
- 最初の設定は、誰がどこまで支援してくれますか
- その支援は基本料金に含まれますか、追加料金ですか
- 自社で一番ややこしい給与パターンを、この場で処理してもらえますか
- 勤怠の締めルールと申請の流れは、自社のやり方に合わせられますか
- 従業員が◯名になったとき、月額はいくらになりますか
- 従量課金の対象は何ですか(給与計算1件ごと/明細1通ごと/オプションの人数上限)
- 会計への連携は、どこまで自動でできますか
「専門家がいない現場」を見てきた人
3つの失敗はどれも、専任のIT担当がいない現場で起きている。その現場を、河内山氏は職を変えながら見続けてきた人である。
河内山氏は、小学校教員を5年務め、コンサルティング会社を経て、経費精算の製品を扱うSaaS企業でカスタマーサクセス(導入後の定着支援)に携わった。畑違いに見えるキャリアを、それでも本人は一本の線で捉えている。
一気通貫しているのは、「専門家がいない現場で、新しい仕組みを定着させる」というところです。これはずっとやってきたなと思っています。
教員時代、コロナ禍で学校のICT化の責任者を任された。詳しい人だと思われた理由が、すでにその現場を物語っている。
Ctrl+C(コピー)とCtrl+V(貼り付け)が使える。ただそれだけの理由で「君こそICTを推進するにふさわしい」と白羽の矢が立ったんです。
全教員にタブレットが配られた。当初の利用率は5%程度。配られた端末は、本人いわく「完全に置物」になっていた。
配るだけでは使われない。つまずく場所を一つずつ潰し、研修し、翌日の授業でそのまま使える形まで落とし込む。それでようやく、利用率は90%まで上がった。
今思えば、専任のIT担当がいない中小企業のデジタル化と、構造は同じだったんです。
その視点のまま、前職では顧客の定着支援にあたった。だが今度は、別の壁に突き当たる。
ここを変えればどれくらいのお客様が救われるかは、分かっているんです。でも、その声をプロダクトに返す経路に、大きな穴があると感じていました。
営業の側からではなく、プロダクトの側から顧客の課題を解く。2024年10月に弥生へ移った理由はそこにあり、導入が難しい給与計算領域を支える意義にも共感している。
「自分が新しい仕組みを定着させてきた現場と、構造は同じ」
もうひとつ — 料金にも、同じ形の落とし穴がある
比較表に並ぶ月額は、どれも似たような数字に見える。ところが製品によっては、給与計算1件ごと・明細1通ごとの従量課金が別に乗る。しかも契約直前に判明することもある。
見るべきは入り口の基本料ではなく、自社の人数と運用で、毎月いくらになるかだ。人数を入れて計算し直すと、順位が入れ替わることがある。
参考までに、弥生給与 Next は給与計算の対象人数が増えても基本料金は変わらない設計だ。給与計算1件ごと・明細1通ごとの従量課金は乗らない。弥生が行った実態調査では、ソフト未導入企業の導入への懸念は「利用コストが高そう」が26.2%で最多だった(※1)。人数を入れて試算すると差が出やすいのは、この構造による。ただしWeb給与明細・勤怠管理などのオプションと基本利用人数の扱いは別立てのため、オプションの人数上限は確認しておきたい。
給与・勤怠・労務・会計が「一続き」になると、何が変わるか
3つ目の失敗が示していたのは、給与だけを切り取って考えることの危うさだ。では、弥生が給与・勤怠・労務を一連の業務としてつなぐことにこだわるのはなぜか。出発点は、現場のシンプルな事実だという。
現場で、給与計算だけをやっている人は、ほとんどいらっしゃらないんです。総務や経理と兼務されていたり。
勤怠を締め、給与を計算し、明細を配り、算定基礎届のような手続きをする。実務は、この一続きでできている。問題は、それを別々のツールで回したときに生まれる「継ぎ目」だ。
ツールがバラバラだと、その継ぎ目、特にCSVの受け渡しが出てきます。そうすると、ミスと属人化の温床になってしまうんです。
月末に、勤怠のCSVを書き出して給与ソフトに読み込ませる。継ぎ目とは、この手作業のことだ。弥生給与 Next が弥生勤怠 Next・弥生労務 Next と従業員データを一元化しているのは、この手作業そのものをなくすためだ。
一度入れた従業員情報がAPI(システム同士をつなぐ仕組み)でそのまま流れる。例えば30人の異動があっても、片方のソフトで入力し、もう片方で入れ忘れる、といった二重管理の事故が起きにくい。同じデータが業務の流れに沿って自動でついていくのが「つながる設計」の実利だ。弥生給与 Next は弥生勤怠 Next・弥生労務 Next と、初めから連携する前提で設計されている。
工程は同じ。違うのは工程と工程の「継ぎ目」だけだ
受け渡し
二重入力
そのまま流れる
一度きり
一続き
どちらも工程は同じ4つだ。違うのは継ぎ目だけ。CSVの受け渡しと従業員情報の二重入力——この2つが、ミスと属人化の温床になる。「つながる設計」の実利は、機能の多さではなく、この継ぎ目を最初からなくしている点にある。
給与のその先、会計まで一続きにする
給与は、計算して支払ったら終わりではない。その数字を会計に取り込み、仕訳を起こすところまでが、ひと続きの仕事だ。
弥生会計 Next につないで、会計側で仕訳を起こして業務を終えるところまでいける。人事労務専業の各社との違いは、ここにあると思います。
給与から会計への連携は取材時点(2026年7月)で対応が始まったばかりで、今後の強みの一つになる、と河内山氏。会計ソフトを自前で持つにはノウハウがいる。会計と給与を長年並行してやってきた会社だからこそ、バックオフィス全体を一続きにできる、というのが弥生の立ち位置だ。少人数の会社ほど会計まで一人で担うことが多く、この「一続き」の効きは大きい。
一続きになる相手は、社内だけとは限らない。顧問の社労士や税理士に相談しながらソフトを決める会社は多い。そのとき、先生の側が使い慣れているかどうかは、比較表に載らないのに効いてくる判断材料になる。
士業の方が事業者に提供しやすいシステムにもなっています。
弥生には、給与計算の代行を請け負う士業向けのプランがあり、顧問先ごとのテナント管理までできる。
会計・販売・青色申告から弥生給与 Next まで。オフィスに並ぶ弥生の製品
AIで給与計算はなくなる? いま選ぶ基準として考えたいこと
AI搭載をうたうソフトが増えるなか、いま選ぶソフトはこの先も使えるのか。業務ソフトとは、人が画面を開いて操作するものだった。河内山氏は、その前提そのものが変わると見ている。
業務ソフトの使われ方は変わる
これからはAIエージェントが人の代わりに業務を進めて、必要なデータを業務ソフトから参照しにいく、という形になると思います。
これは作り手の予測というだけではない。AIに直接データを渡して扱えるようにしてほしい、という要望が実際に顧客から出てくるようになったという。弥生もAIとソフトをつなぐ標準的な接続への対応を重要テーマと位置づけ、開発に着手している。
それでも「人が確認する」がなくならない理由
ただし、給与・労務はAIが全部を肩代わりできる領域ではない、と河内山氏は言い切る。支給日は動かせず、期日までに必ず終わらせなければならない。理由は「責任の構造」にある。
給与は1円のミスも許されず、実態は会社ごとに驚くほど多様で、就業規則の解釈や、休業時の社会保険の扱いのような判断が随所に入るんです。
つい先週も、ある会社の給与業務を見せてもらったという。そこで目にしたのは、「1つの処理を3人で確認する」といったように、工程ごとに確認人数まで決められた業務設計だった。効率だけを考えれば、明らかに無駄である。
間違わないため、というよりも、責任をちゃんと取るため、という意図が強いんです。最終的に結果に責任を持つのは人。この構造はなくならないと見ています。
「最終的に結果に責任を持つのは人。この構造はなくならない」
では、AIに何を任せるのか
だからこそ弥生が目指すのは「AIか、人か」ではない。
作業は基本、AIに任せていい。ただ、判断と確認はやっぱり人に委ねるべきだと思っています。そうやって、安心して回せるプラットフォームにする必要がある。
その形は、すでに一つ動いている。労務の疑問に、根拠となる出典を添えて答える「弥生のいつでも労務相談AI」だ。——そんなもの、汎用の生成AIに聞けば済むのでは。そうぶつけると、河内山氏が挙げたのは、先の「責任の話」だった。
複数人で確認する現場と、根拠を示すAIは、同じ論理の上にあると思っています。確認の人数まで決めるのが責任を取るための設計なら、AIに求められるのも答えそのものではなく、担当者が責任を持って確認できる材料です。だから労務相談AIは、回答に必ず根拠となる出典を示すようにしています。
労務相談AIはHRbase社との提供で、社会保険労務士や弁護士などの専門家が監修した資料と、公的機関の一次情報をもとにAIが回答する仕組みだ。事業者は示された根拠を見て、自分で判断する。AI時代の「中小企業の道筋を照らす存在」とは、答えを出してしまうことではなく、人が判断できる材料をそろえて渡すことだ。
蓄積を土台に、AIと人と専門家で止められない業務を回し切る
Past
蓄積
会計ソフトは約40年、給与計算ソフトは30余年。現場の想定外に応えてきた知見が、製品づくりやサポートの品質、人材育成に生かされている。
Now
つながる設計
勤怠・給与・労務・会計を従業員データの一元化でつなぐ。CSVの受け渡しと二重入力という継ぎ目をなくし、正しいデータが積み上がる土台をつくる。
Future
AIと人と専門家
作業はAIに任せ、判断と確認は人が担う。AIとソフトをつなぐ標準的な接続に対応し、AIの回答は専門家が監修した資料と一次情報を根拠に返す。
AIがどれだけ進んでも、3人で確認する現場はなくならない。最後に責任を取るのが人である以上、その手前にあるデータが間違っていれば、確認する意味もなくなる。選ぶべきは、いま搭載機能の数がいちばん多いソフトではない。数年後、AIと人が組んで業務を回す時代まで、正しいデータを積み重ねていける相手かどうかだ。
「AIは我々もかなりコミットしていきたい領域です」。取材の最後にそう言い添えた
注記・出典
※1 本文中の導入率・未導入率など(給与計算ソフト未導入 約58%/未導入企業の74.1%がExcel等で対応/導入率 給与計算41.6%・勤怠管理28.1%・労務管理13.8%)は、「中小企業の給与・勤怠・労務管理の実態調査2025」(弥生株式会社調べ。全国の従業員100名未満の中小企業の経営者・人事担当者1,000名/調査期間2025年2月28日〜3月2日)による。出典:弥生株式会社プレスリリース(2025年3月27日)
取材・文 / 東條 健
撮影 / 野口彈
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弥生株式会社
中小企業・小規模事業者向けの業務ソフト(会計・給与計算・勤怠管理・労務管理等)およびクラウドサービスの開発・販売・サポートを手がける。弥生シリーズの提供開始(1987年)以来「パソコンや会計の初心者でも簡単で使いやすいソフトを低価格で提供する」という考え方を掲げ、2025年に刷新したミッションでは「中小企業を元気にすることで、日本の好循環をつくる。」を掲げ、目指す姿として「中小企業の道筋を照らす存在」を表明している。