この記事でわかること
- 「安さ」だけでPOSレジを選ぶと陥る落とし穴
- POSレジ選びで見落とされがちな「データのつながり」という視点
- スマレジが大切にする「データを囲い込まない」という考え方と、その活かし方
「スマレジ」の看板の前に立つ、執行役員の杉本聡介氏
POSレジは「まずは無料で」「できるだけ安く」と選ばれがち。もちろん、それが悪いわけではない。ただ、人手不足やキャッシュレス化が進むなか、POSレジは単なる会計機から、売上・在庫・顧客の情報が集まる「店舗経営のデータの入口」へと役割を変えつつある。だからこそ、価格だけで選ぶと、あとで困ることがある。
話を聞いた杉本聡介氏は、もともとアパレルの販売員。店頭で大きなレジを打っていた、レジを「使う側」の出身だ。2013年にスマレジへ入り、いまも営業の現場に立つ。販売の現場と、POSを提供する側。その両方を知る人物である。
その杉本氏が挙げた選び方の軸は「データ」だった。ポイントは2つ。「データがきちんとつながって残るか」と、スマレジが大切にする「データを囲い込まない」という考え方だ。
安さで選ぶと見落とす「データの分断」
POSレジ選びで、まず確認したいのは次の3点だ。
まず押さえる、選び方の3つの視点
時間軸で考える
今ほしい機能だけでなく、将来やりたいこと(多店舗展開・リピーター施策など)も見据える。機能は多ければいいわけではなく、自店に必要なものを優先する
新規開業なら
期限も予算も限られる。まずは今必要な機能を、過不足なくそろえる
乗り換えなら
まず「なぜ変えたいのか」をはっきりさせる。今できていることは続けられるか。そのうえで、変えたい理由(他システムとの連携やEC刷新など)を本当に解決できるか
ここまでは、いわば当たり前の確認事項だ。杉本氏がそれ以上に念を押すのが、多くの人が見落とす「データの分断」だった。
「安く」始めると、データが引き継げなくなる
無料や低価格のサービスは、開業直後の「まず会計できればいい」というニーズには十分なこともある。だが、お店が育って「もっとデータを活用したい」と別のレジに乗り換えたとき、それまで使っていたサービスにたまったデータは、基本的にそのまま引き継げない。過去のデータを新しいレジに取り込む機能は、多くの場合、標準では用意されていないからだ。
他社さんを使っていた期間のデータは、結局Excelやアナログで管理しなきゃいけなくなる。データの連続性を考えると、もったいないんです
結果として、乗り換え前のデータはExcelや紙で別に管理するしかなくなる。たとえば売上や客数を過去とくらべたくても、「その頃は別のレジだったから」とExcelを開くことになり、手間が増える。安さの裏で失いかねないのが、この「データのつながり(連続性)」だ。
「安さ」で選ぶと、データが途切れる
安さだけで選ぶと
途切れる
「今ほしい機能」だけで選ぶ。開業直後は足りるが、育つほど物足りなくなる。
データが分断- 開業してデータがたまる
- 半年〜1年で物足りなくなり乗り換え
- 前のデータは引き継げない
- 過去の数字はExcel・紙で別管理に
スマレジなら
つながる
将来まで見据えて選ぶ。データが1か所に残り続ける。
データが連続- データが1か所にたまり続ける
- 乗り換えによる分断が起きにくい
- 過去とつなげて見られる
- 将来の分析やAI活用にそのまま使える
落とし穴は、レジとキャッシュレス決済のあいだにもある。POSレジとキャッシュレス決済端末が連携していない場合、レジで入力した金額を決済端末にも入力する「二度打ち」が発生し、入力ミスや締め作業の手間につながることがある。スマレジはキャッシュレス決済も自社で提供していて、レジと連携しているため、この二度手間が起きにくい。
レジを"使う側"だった経験から、現場の目線で選び方を語る杉本氏
スマレジが大切にする
「データを囲い込まない」という考え方
なぜスマレジは、これほど「データ」にこだわるのか。同社はビジョンに「販売データの保有量で日本一」を掲げる。商取引に関わるすべてのデータを蓄積しながら、自社でデータを囲い込まない。店舗の"資産"としてオープンにし、店舗経営に活かしてもらう考えを徹底している。
自社のデータを、他のシステムからも使えるようにする
データをオープンにする、というのが会社の思想なんです。会計ごとに蓄積する販売データを自分たちの中だけで抱え込むのではなく、他のシステムとうまくつなぎ合わせる。そうすることで、顧客が本当に得たい情報まで届く
たとえば、店頭とネット通販の売上を同じ利用客のものとしてまとめて見たり、在庫を店舗とECで一元管理したりできる。これを支えてきたのが、長年公開してきた「API」だ。APIとは、外部システムとデータや機能を連携するための"つなぎ口"のこと。おかげで、EC・会計・在庫管理などのシステムと、スムーズにつなげてきた。
その延長にあるのが「アプリマーケット」だ。スマホのアプリストアのように、外部の開発会社がつくった拡張機能を、お店が必要なものだけ選んで追加できる。スマレジ本体にない機能も、ここで補えるので、自店に必要な細かい作り込みにも対応できる。
同じ飲食店でも小売でもアパレルでも、顧客によってオペレーションも、やりたいことも全然違う。1社1社にジャストフィットするものを、スマレジだけで叶えられるわけではないんです
もともとデザイン会社として始まった同社は、UI/UX(画面の見やすさ・使いやすさ)にもこだわる。
「1社からの1億円より、1万社からの1万円」という考え方
スマレジの思想の核にあるのが「圧倒的な汎用化」だ。大口の顧客から「お金を出すから、うちだけの機能を作って」と求められても、ほかの9,999社に不要な機能なら、基本的には作らない。とはいえ、ただ要望を断っているわけではない。
その1社が欲しい機能の裏には、その業種・業態における問題点や『こうした方がいい』というあるべき姿があるんです。他の会社も、直接その機能は必要じゃなくても、似たような悩みは絶対にある。それを噛み砕いて、特定の会社が要望した機能を、他社でも使える汎用化した機能としてリリースする
1社だけの特注はしない。代わりに、その要望をほかのお店でも使える形に磨いて、全店に届ける。データを囲い込まないことと、機能を特注せず、汎用的に磨くこと。この2つは、同じ考え方の表と裏だ。だからこそ、スマレジのデータは他のシステムとつながりやすく、機能は一部の大口ではなく、無数のお店に行き渡る。「お店を元気に、街を元気に!」というミッションは、こうした姿勢に表れている。
「1社からの1億円より、1万社からの1万円」。個社の要望を、広く使える機能へ
1社の個別要望
大口から「お金を出すから、うちだけの機能を作って」と求められる。ここで特注に応じる企業の戦略が多い。
本当の課題を抽出
その要望の裏にある、業種・業態に共通する課題を見抜く。似た悩みは、ほかのお店にも必ずある。
全店で使える機能に
磨き直して、どのお店でも使える標準機能として提供。1社の声が、1万社の財産になる。
スマレジが向くお店、向かないお店
向き・不向きを、杉本氏はフラットに語る。最も力を発揮できるのは、明快だ。
データをちゃんと使って経営判断したい、複数店舗を一元管理したい。そういう意欲のある店舗・事業者が、いちばんフィットします
ここで効くのも「圧倒的な汎用化」だ。特定の業種に作り込むのではなく、どんな業態でも使える土台にしている。だから「データを経営に活かしたい」という一点が合えば、業種を問わず力を発揮する。小売・アパレル・サービス業はもちろん、居酒屋やカフェ、券売機を使うラーメン店・牛丼店まで幅広い。
「無理に売らない」。だから向き・不向きがはっきりしている
無理に勧めないお店
維持
コストを最小限にしたい。いまのやり方で足りている。
コスト最優先- レジ機能・キャッシュレスだけで十分
- 常連中心で顧客管理の必要を感じない
- いまのビジネス規模で満足している
最も力を発揮するお店
成長
データを経営に活かしたい。これから広げていきたい。
データ経営志向- データを使って経営判断したい
- 複数店舗を一元管理したい
- これから広げたい・伸ばしたい
スマレジのショールーム、小売から飲食まで、業態を問わず実機を試せる
杉本氏は、向かないお店についても正直に語る。
本当にレジ機能だけ、キャッシュレスだけできればよくて、コストを1円もかけたくないというお店は、他社さんを選ばれます。常連さんだけで、オーナーが顧客の顔も名前も覚えていて、データで顧客管理する必要がない。いまのビジネス規模で満足している。そういうお店に、無理に入れてもらう必要はないと思っています
無理に売り込まない。その線引きの潔さもまた、データを本気で活かしたい顧客にこそ応えたい、というスマレジの姿勢の表れだ。
AI時代も、強みは「データを囲い込まない」こと
AI時代に、POSレジの役割はどう変わるのか。スマレジはすでに、売上や客数などの過去データから日報をAIに書かせる「AI日報」を備えている。人が書いていた日報をAIに任せ、人は「決める」ことに集中する。ためた販売データを、次の一手の判断に生かす狙いだ。
※「AI日報」はプレミアムプラスプラン以上でご利用いただけます。
人がやらなければいけなかったことを、AIに任せられる。それが来店予測や、在庫の適正化につながっています
杉本氏が「AIと相性がいい」と語るのも、この「データを囲い込まない」考え方だ。これからは、お店が自分たちでAIを使い、欲しい仕組みを手軽につくれる時代になる。たとえば「売れ筋から自動で発注する仕組み」を、AIを使ってユーザー自らつくるイメージだ。ただし、そうした仕組みも、レジのデータを自由に取り出せないと叶わない。データを外に出さない(連携出来ない)設計のレジでは、せっかく蓄積した販売データも活用できないのだ。
今まで私たちがやってきたオープンデータの思想は、AIと相性がいい
「データを囲い込まない」という一貫した姿勢が、AI時代にこそ効いてくると語る杉本氏
「AIによって、POSレジなどを含めたSaaSはいらなくなるのでは」という議論もある。杉本氏の答えは、それを恐れることではなく、「AIとうまく共存する存在」になることだった。
AIで作ったサービスやシステムに、私たちのデータを渡して、加工して使ってもらうこともできる。新しくスマレジのようなサービスをAIでゼロから作っても、結局はデータが分断される話につながってしまうんです
自分たちでPOSのような仕組みをAIでつくるのは簡単ではない、とも杉本氏は言う。
POSレジは単純な計算機だと思われがちですが、軽減税率等の柔軟な税率への対応や、国際的なセキュリティ基準を遵守したキャッシュレス決済サービスの継続的な運用、免税制度などの特殊な販売方式への対応もあります。このように、レジを取り巻く環境や法整備が刻々と変わる中で、ミスの許されない対応が求められることなどを考えると、一気に置き換わることは考えにくいです
AIの台頭で環境が目まぐるしく変わり、経営判断も難しくなる時代。それでもぶれない、スマレジの考え方とは何か。杉本氏は「圧倒的な汎用化」と、「お店を元気に、街を元気に!」というミッションを挙げ、「お店がいかに便利に使えるか」に尽きると語った。
AIやテクノロジーとなると、3歩4歩先の未来をイメージして打ち出すのが得意な会社もあります。でも私たちは、今お店を運営している人たちの『半歩先』の機能を提供し続けている
この「半歩先」とは、3歩4歩先ではなく、現場がいますぐ使える一歩手前の実用的な機能を指す。この姿勢は、同社が大切にしてきた考え方だ。無人店舗から古着屋、アイスクリーム屋、お菓子屋まで——規模も業態もさまざまな現場に、その便利さを地道に届けていく。
地味で派手さはないんですけど、ずっとやってきている。それが、会社の土台なんです
POSレジ選びで確かめるべきは、目先の安さや機能の数ではない。将来データを分析したり、AIで活用したりする場面で効いてくるのは、この「データ」だ。データが途切れずに残り、他のシステムからも使える——そんな1台を選べるかどうかが、数年後のお店の景色を変える。
取材・文 / 東條 健
撮影 / 宮村次郎
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株式会社スマレジ
「お店を元気に、街を元気に!」をミッションに掲げ、クラウドPOSレジ「スマレジ」を中核に、POSレジ・キャッシュレス決済・勤怠管理などのデータを一元化する店舗経営プラットフォームを展開。ビジョンに「販売データの保有量で日本一」を掲げ、アクティブ店舗数56,719店舗、累積取引金額14.5兆円超(2026年4月末時点)。オープンAPIやアプリマーケット、AI日報など、データドリブンな店舗経営や業務の効率化を支援している。
出典
アクティブ店舗数・累積取引金額・資本金は、株式会社スマレジ提供の数値(2026年4月末時点)による。
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