この記事でわかること
- 機能表を開く前に決めておくこと。選定でまず見るのは「何を解決したいのか」
- 安さで決めた会社が「導入したのに使われない」に行き着く仕組みと、サポート体制の見極め方
- 同じ業界・規模の事例の使い方。16のプロダクトと、AIの答えを左右する人事データの真価
人事評価システムの選定で見るべきポイントの詳細は、Section 02「価格の安さで選んだ会社が見逃す盲点」で。
「企業はますます人なり」
「こんにちは!」
HRBrainのオフィス(東京都港区)を訪ねると、すれ違う従業員から次々と声をかけられる。受付から会議室まで、短い廊下を歩くあいだに何度も挨拶を受けることになった。
「Power to the people(企業はますます人なり)」
受付にも掲げられている、同社のパーパスだ。訪問して早々に、従業員へのパーパスの浸透と、後ほど触れることになるHRBrainのプロダクトの根底にある思想を垣間見た気がした。
エントランスの壁に刻まれたパーパスとCORE VALUES。受付から会議室までの短い廊下に、これらが掲げられている
迎えてくれたのは、マーケティング部を統括する石井久博氏。
どんなにプロダクトやシステムが優れていても、人の成長とともに企業の成長があると思っています
金融、製菓、ゲーム、SaaS。業種をまたいで、最後にHR領域へ
この言葉を語る石井氏は、1年前(2025年8月)まではHRとはかけ離れた領域に身を置いていた。新卒で入ったのは金融機関。次の製菓会社では、誰もが知るテーマパークで売られる菓子を開発した。その後は銀行、ゲーム会社、SaaS企業と、マーケティングを渡り歩いてHRBrainにたどり着いた。
最後の自分のキャリアとして、「人」にちゃんと向き合おうと思ったのが、HRBrainへの入社を決めた一番大きなきっかけでした
帝国データバンクの調査では、人手不足を理由にした倒産は2025年度に441件と、3年連続で過去最多を更新している。正社員が足りないと答えた企業は50.6%。採用でどうにかする、という前提そのものが崩れかけている。
労働人口が減っていくこと自体は、「日本がどう足掻いても」止められない。石井氏はそう見ている。だとすれば、今いる人がいかに育ち、力を出せるかどうかで差がつく。人こそが日本の課題の根幹にある、というのが石井氏の考えだった。
入社は2025年9月。ここから先は、システムを売る側になった石井氏に、人事評価システムの選び方を聞いていく。
機能比較表上では見えにくい
「公平公正性」と「柔軟性」
比較表上、プロダクトの機能自体は正直言ってどの会社と並べてもそんなに優劣はないんじゃないか、というのが結論
人事評価システムを並べても、比較表上ではどれも似ている――。
では、いったい何を見ればいいのか。石井氏は、機能の比較表だけを見るのではなく、人事評価の際に必要になる「公平公正性」や「柔軟性」がそのシステムで実現できるかを見なければならないと言う。
声の大きい上司や、直近の印象に左右されない評価
「HRBrain 人事評価」が選ばれる理由について、石井氏は「評価のブレを防ぐ仕組み」を挙げる。
評価の現場では、「声が大きい上司の意見に全体が引っ張られる」「評価直前に目立った人が高く評価されがち」といった偏りが起こりやすい。「HRBrain 人事評価」では部署や等級軸で対象者をマトリクス表示し、直感的に評価を調整できる画面を備えている。評価の平均値や標準偏差などの統計指標も可視化され、評価者特有の「甘辛傾向」や部署ごとの偏りを数値で可視化することで、感覚に頼らない適切な調整判断を促す仕掛けだ。
AIや分析機能を組み込むことで、半期や1年を通じた公平・公正な評価分析を可能にし、評価分布を可視化できるようにしている。
単にデータを集約するだけでなく、評価の偏りを防ぎ、公平性を担保できる点が評価されている。
営業とマーケティングでは、評価すべき項目が違う
営業とマーケに、同じ評価シートは使えない
石井氏が「HRBrain 人事評価」の特徴としてもうひとつ具体例を挙げたのが、カスタマイズ性だ。同じ会社の中でも、例えばマーケティング部門と営業部門では追う目標が違い、評価すべき項目も違う。
組織ごとに、それぞれの目標設定ができるという柔軟性を持っています
全社で1つの評価シートに揃えると、どこかの部門にとっては的外れな物差しになる。かといって部門ごとにExcelで分けると、人事側で部門を横並びで見ることができない。部門ごとに項目を変えられて、各部門の評価シートを並べられる。この両立が必要になる。
こうした細かい対応が積み上がった理由を、石井氏は一つのことに帰す。
10年間お客様の声にずっと耳を傾け続け、ニーズに一つひとつ応えているところが一番大きいと思っています
そしてこの「使いやすさ」は、人事部だけの話ではない。評価をつける管理職と、つけられる従業員。全従業員が評価時期に必ず触るシステムなので、どちらかが面倒だと感じた瞬間に、評価は「ただの作業」となり形骸化してしまう。
「公平公正性」と「柔軟性」は、
商談で何を聞けば確かめられるか
公平公正性
- 声の大きい部門の意見に、全体が引っ張られる
- 評価の直前に目立った人が、高く評価されがち
- 評価者ごとに、甘辛の幅がある
評価の分布と、評価者ごとの偏りを数値で見られるか。
柔軟性
- 部門によって、追う目標が違う
- 全社で1枚に揃えると、的外れな物差しになる
- 部門ごとにExcelで分けると、横並びで見られない
部門ごとに評価項目を変えたうえで、人事が横並びで見られるか。
価格の安さで選んだ会社が見逃す盲点
では、システムを選ぶときに、何をしくじるのか。石井氏がお客さまの声を営業を通じて聞く話で一番多いのは、意外なほど単純なところだった。「コストだけで選ぶと、大きな失敗をする」ということ。
安さで選んだことによって導入後のサポートが全く無いということもある
コストが重要な判断材料であることは、石井氏も認める。問題は、それを最優先事項に置くことだ。人事評価システムは、契約したその日から評価に使えるものではない。セットアップからデータ移行等、使いはじめる前に越えなければならない工程があり、そこでサポートがないと「使える」までにはならない。
また、最初の3カ月だけ手厚く、それを過ぎると外注やチャットだけに切り替わる製品もある、と石井氏は言う。人事のデータを扱う製品で、導入した後のサポートがないとどうなるか。セットアップが終わらないまま、契約だけが残り、そのまま使われずにやめてしまう。そういう例が非常に多い、というのが石井氏が社内から聞く話のひとつだ。
導入後の課題1位は「定着しない」
HRBrainの自社調査でも、導入後の課題として「業務フローへの組み込み・定着化」が34%、「人事評価の運用がやりづらい」が33%で上位に並んでいる。
導入後につまずくのは、機能ではなく運用だった
導入後の課題 — 最も多い
「業務フローへの組み込み・定着化」 34%
導入後の課題 — 2番目に多い
「人事評価の運用がやりづらい」 33%
つまり
つまずくのは、機能ではなく運用
※ HRBrain自社調査(2020年・n=500)。導入後に感じる課題として挙がった項目のうち、回答の多かった上位2つ。比率はいずれも回答者500人に対するもの
では、なぜ運用に乗らず、定着しないのか。石井氏が指摘するのは、人事データの散在により、運用前の「データ移行」でつまずき、スタートラインにすら立てていない企業が多いという現実だ。
これは共有Excel、これはローカルフォルダで保存、というように、データが散在しているんです
まず散らばったデータを集め、そこからシステムに入れられる形に整える。この、何もない状態から使える状態にもっていくところに、一番手がかかるのだ。
機密性の高い人事データは、社内で分担できない
そしてこの工程は、「誰でも担当できる作業」ではない。
人事データには機密性がある。人事の情報は、社内でも閲覧できる人が限られている。そのため、人事業務を社内で簡単に分担することができないのだ。
人事が本来、本質的に向き合うものに対して時間が割けていないという点は、課題としてずっとありますね
人事の中でしか扱えない情報が多いため、多忙な人事にとってシステムの導入やデータの移行は大きな負担となってしまう。
だから「システムとマニュアルを渡すので、あとはご自身で」という売り方は、人事に対してはとりわけ効かない。機能表の「サポート:あり」という1行だけでは、電話対応の有無なのか、初期設定の代行まで含むのか、いつまで続くのかが見えない。そして人事のシステムでは、この1行の中身が導入の成否を分ける。
人事の情報は、社内でも閲覧できる人が限られている
サポートはいつまで? 契約前に確認する
HRBrainが力を入れているのが、設定代行と呼ばれるサービス(BPaaS)だ。散在したデータの整理から初期設定までを代わりに引き受ける。日々の相談窓口であるカスタマーサクセスに加えて導入初期を支える体制をとることで、「導入したのに使われない」が一番起きるゼロからイチだけを切り出して任せられる。
3ヶ月したら「はい、さようなら」ではなくて、しっかりとお客様に寄り添う体制をもっています
そしてカスタマーサクセスのサポートも、導入している限り続く。
制度が変われば、システムの設定も変わる。人事のシステムは、一度立ち上げたら終わりではなく、常に更新していくものだ。導入時から導入後もサポート担当者の伴走が必要なのは、そのためだ。この体制が、顧客満足度の高さにつながっている、というのが石井氏の自負だった。
検討段階で確かめておきたいのは、「サポートあり」と書かれているかどうかではない。初期設定を誰がどこまで代わりにやってくれるのか。それは基本料金の中か、追加料金か。そして支援はいつまで続くのか。この3点は、機能表の行にはまず出てこない。
機能表を見るよりも知っておくべきこと
人事評価システムの導入を通じて、自分たちが何を実現したいのか、というところが一番大事なんじゃないかなと思っています
安いから、機能が豊富だから、という理由で導入した結果、本来やりたかった業務のかたちが実現できない。
そうならないためにも、同じ業界や規模の会社が、実際にどう使っているかを知っておく必要がある。それが比較表の外にある判断材料だ、と石井氏は言う。
商談をしていただく中で、同じ業界の事例はどうなのか、という具体事例を提示します
実際に使っている企業のレビューや事例は、機能表よりも情報量が多い。自社と近い業種・規模の会社がどこでつまずき、何に効いたのかがわかる。
3つの失敗を裏返すと、選定で見るべき3点になる
失敗 01
コストを最優先に置く
安いから、機能が豊富だからという理由で決めた結果、本来やりたかった業務のかたちが実現できない。
見るべき点 01
何を解決したいかを先に決める
複数の評価軸を持ち、コストはそのうちの1つとして位置づける。
失敗 02
導入した後のサポート体制を確かめない
最初の3カ月だけ手厚く、その後は外注やチャットに切り替わる。セットアップが終わらないまま契約だけが残る。
見るべき点 02
初期設定の代行範囲と、サポート期限
誰がどこまで代行するのか。基本料金に含まれるのか追加料金なのか。いつまでサポートしてくれるのか。
失敗 03
機能表と表示料金で決める
機能の優位差はほとんどなく、表示料金は標準価格の参考値にすぎない。並べても差がつかない。
見るべき点 03
同じ業界の会社が実際にどう使っているか
事例とレビューで導入後のイメージを掴む。
HRBrainがプロダクトを16に分けている理由
人事の業務は、評価だけで終わらない。採用、入社の手続き、勤怠、給与、育成、福利厚生なども、人事業務として挙げられる。
HRBrainがプロダクトを16まで増やしてきたのは、1つの課題ごとに、1つのプロダクトを用意した結果だ。どの人事課題からでも受け入れられるように、多くの間口を開いている。
必要なものが必要な分だけ提供できるっていうところが、非常に大きいですね
1つの課題に、1つのプロダクト
16もの課題への間口が開かれている
人事評価
タレントマネジメント
社内版生成AI Brain
スキル管理
組織診断サーベイ
パルスサーベイ
ストレスチェック
360度評価
労務管理
採用ソリューション
勤怠管理
ワークフロー
福利厚生
AIチャットボット
ラーニング
WorkSuite
※ プロダクト数は取材時点での石井氏の発言による。緑の枠は本記事の主題である人事評価
1つのプロダクトで多くの課題をまとめて解決しようとすると、どうしても1つずつが浅くなるだけでなく、UI・UXをも毀損してしまいかねない。逆にプロダクトを課題ごとに分けていれば、その課題の細かい要望まで作り込めるし、UI・UXもシンプルなままに保てる。石井氏が「一つ一つのプロダクトに一歩一歩向き合える」と言うのは、そういう意味だ。
お客様にとって、一つのプロダクトでベストなものをちゃんと提供していく
1つの課題の深さにこだわった結果、プロダクトの数が増えた。導入する側から見れば、課題が明確なほど話は単純になる。「評価を回したい」なら人事評価だけ、「エンゲージメントを向上させたい」ならサーベイだけ、と必要な機能だけ導入すればよく、今困っていない領域のものは必要ない。
10年分の要望が、解像度になる
では、その「深さ」はどこから来るのか。
お客様のご意見をプロダクトに反映するためには、我々としても学習しなくてはいけないので、そこで解像度も上がっていく
顧客の要望を製品に反映するには、その要望が出てきた背景まで理解しなければならない。理解しないと、直すべき場所が決まらない。結果として、直すたびに作り手側の解像度が上がっていく。
1つの課題に、1つのプロダクト。16という数は、深さにこだわった結果だという
2年後に別の課題が出たとき、乗り換えずに済むか
「プロダクトを分けている」構えが、発注者にとって効いてくるのは導入したあとだ。たとえば、最初に人事評価だけ入れた会社が、翌年「従業員のエンゲージメントが気になるからサーベイもやりたい」と考えたとする。このとき「HRBrain 組織診断サーベイ」を追加するなら、従業員はすでに使っているアカウントとログイン画面のまま、追加された機能を使いはじめられる。
HR領域の課題に対して、どこから入ってきたとしても対応ができるところは強みですね
システムを乗り換える際に発生する作業コストは、データの移行だけでは終わらない。現場が操作を覚え直す手間が毎回のしかかる。人事のシステムは全従業員が触るので、この手間は人数分だけ膨らむ。同じ管理画面のまま他のプロダクトを追加できるかどうかは、機能表には出てこないが、2年後の手間を左右する。
AI時代、人事評価は何が変わるか
人事評価の前段には、必ず目標設定がある。ところがAI時代の今、期初に置いた前提が期の途中で崩れて、適切な目標設定を行うことが難しくなっているのではないか。評価の精度を上げる話をする前に、評価の基準となる目標が崩れている。
これは人事評価システムを選ぶ以前の問題ではないか。
人事評価の前段にある目標設定こそ、今難しくなっている
石井氏はまず「目標設定は期中であっても合理性があれば柔軟に変えるべき」と前置きしたうえで、HRBrainはそこへのソリューションも備えていた。目標設定そのものを、AIが支える。
抽象度が高い曖昧な目標ではなくて、定量的に示される、定性的でも根拠があるようなものをサジェストしてくれる機能を持っています
立てた目標に対して、AIが助言する。「営業活動を頑張る」のように抽象的なままだと、「新規商談を月20件創出する」のように定量的に測れる形に書き直すよう提案してくれる。目標が測れる形になれば、設定する側にも評価する側にも同じ意味で伝わる。
汎用AIには真似できない「人事データ」という真価
機能はAIですぐ作れる時代になった。ある会社が揃えたものを、別の会社が真似て出すこともできる。だとすれば、差はどこで生まれるのか。少し意地の悪い問いを向けると「セキュリティを無視すれば、外側はおそらく作れる」と認めた一方で、システムの本質の話へと移った。
それを会社の経営や人事戦略に活かせるものにするには、人のアイデアだったり、プロダクトや思想みたいなものがないとかなわない
HRBrainが掲げるスローガンは「人事に、AIというもう一つの脳を。」だ。2026年4月に提供を始めた社内版生成AI「Brain」は、その具体形として挙がった。ただ、社内の規定を読んで答えるだけなら、汎用のAIに書類を渡しても似たことはできる。差が出るのは、その先だという。
「Brain」では問い合わせてきた従業員の属性を識別し、その人物に最適化された回答を社内規程から導き出す。さらに社内の女性管理職割合の集計や、新規プロジェクトに必要なスキルを持つ人材の抽出といった高度な分析までこなす。これらはHRBrainに蓄積した人事データを基盤としているからこそ実現できる価値であり、外部の汎用AIでは同じようにはいかない。
意思決定は人がやる
AIは、あくまで1つのツールとして使う。そのうえで、意思決定は人がする。
人事評価システムの選び方に戻れば、話は1つにまとまる。機能でも価格でも差はつかない。差がつくのは、自社の課題をどれだけ深くわかっている相手かだ。
ただし、それを見極めるには、こちらが何を解きたいかを先に決めていなければならない。決まっていないと、どのベンダーの話も同じくらい正しく聞こえてしまう。次の商談の前に、「うちは何を解決したいのか」を1行で書けるか。比較表を開くのは、そのあとでいい。
1時間の取材で石井氏が何度も戻ってきたのは、この一点だった。
「カメラの前で笑顔になるの、難しいんだよね(笑)」
取材・文 / 東條 健
撮影 / 岩切 卓士
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株式会社HRBrain
人事領域におけるあらゆる業務課題の解決と、人的資本の最大化を支援するクラウドサービス。タレントマネジメント、評価管理、労務管理、ラーニング、サーベイなどの機能を通じて、人材データの一元管理・活用を実現し、戦略人事の推進と経営の意思決定を支援する。
出典
人手不足倒産の件数は帝国データバンク「人手不足倒産の動向調査(2025年度)」(2026年4月9日公表)、正社員の不足感は同「人手不足に対する企業の動向調査」(2026年4月16〜30日調査・有効回答1万538社/2026年5月19日公表)による。
導入後の課題の比率は、HRBrainの自社調査(2020年・n=500)による。出典:HRBrain公式サイト。
顧客満足度は、ITreviewカテゴリーレポート「人事評価システム部門」(2026 Summer)による。出典:HRBrain公式サイト。