この記事でわかること

  1. 製品を絞り込む前に、まずやるべきこと
  2. 導入検討の目安となる規模感と新規導入・リプレイスで見るべき観点
  3. 導入後に定着させるために、デモのときに確かめるポイント
  4. SFA・CRMは国産と外資で何が違うか

インタビュイー・プロフィール

長島 崇斗(ながしま・たかと)|株式会社ジーニー セールス&マーケティングプラットフォーム事業部 マーケティング部 Sales DXグループ マネージャー。アパレルの専門学校を経て、店頭の販売員としてキャリアを始める。未経験からWebマーケティングに転じ、2023年にジーニーへ。GENIEE SFA/CRM のマーケティングを担当する。

「SFA・CRMの選び方」と検索すると、以下のような項目が出てくる。

言っていることはわかる。しかし、具体的にどのように進めていいかがわからない。

まずは導入前の検討の進め方について聞いてみた。

SFA・CRM選びは、絞り込む前に相談する

絞り込む前に先に各社に相談してしまうことが大事です

もちろん、売り込みたいから早く会いたい、という話ではない。理由は、SFA・CRMという製品の性質にある。

SFA・CRMは、他のソフトウェアと比べてビジネスモデルごとに提供の形が変わるので、絞り込む際の比較観点を先に相談しちゃった方が早いんです

SFA・CRMは、扱う商材や商談のフローが違えば、必要になる機能も設定も変わる。自社の場合はどうなるのかを各社に聞いてみないと、比較表に並んでいる項目が自社にとって重要かどうかも判断できない。

だから、絞り込むための観点を、ベンダーやコンサル、コンシェルジュといった知見のある人に相談するのが早いということだ。

GENIEEのロゴが入った壁の前に立つ長島崇斗氏

GENIEE SFA/CRM のマーケティングを担当する長島氏

条件が決まらなければ、検討にAIは使えない

現代なら、必要な機能などが決まっていればAIに製品候補を絞らせることもできる。長島氏はそれ自体を否定しない。ただし、と続けた。

AIだと抜け落ちる観点がたくさんあるので、注意が必要です

条件が決まったあとで、製品の候補を機械的に絞るのはAIの得意分野である。しかし、長島氏が指摘するのはその手前の段階のことだ。

AIに相談する際の「条件」は、自社の課題を認識していることが前提になる。その見立てがずれていると、求めていた回答は返ってこない。

たとえば、社内の名刺管理の体制が整っておらず、名刺管理機能が必要だという条件に行きついたとする。しかし、名刺を「なくさないように管理する」ことと、名刺から得られる情報を「営業に活用する」ことでは、必要な製品がまるで違う。前者なら名刺を取り込み管理する機能があればいいが、後者なら、取り込んだ情報をどう活用するかまで設計できる製品が要る。

単純に「名刺管理ができるSFA」をAIで調査するだけでは、自社の課題を解決できる製品が見つかるとは限らないということだ。

GENIEEのロゴが灯る、ジーニー本社の廊下

取材はジーニー本社で。エントランスから会議室へ続く廊下

だから、製品を検討する前に自社の課題と必要な要件を固めることが重要だ。

しかし、AIを駆使したとしても、自社だけで課題解決に必要な条件や比較軸を決めるのは難しい。そういう意味でも、やはり検討を始める前に知識を持った人に相談することが重要である。相談先は、製品を提供している各社でもいいし、複数の製品を扱う比較サイトでもいい。もちろん、ジーニーも導入相談の窓口を設けている。

余談だが、長島氏はもともと、アパレルの専門学校を出て店頭に立つ販売員だった。服を買いに来た人は、何か欲しいものがあって店まで来ている。ただ、それが何なのかを本人が言葉にできているとは限らない。だから、いかに顧客のニーズを聞き出すかが重要になる。その経験は「お客様の悩みを理解して言語化し、提案するという点で現在の仕事と似ている」と振り返る。

SFA・CRMは、要件を言葉にしづらい製品だ。会計や労務ツールと違って標準的なルールがなく、企業ごとに営業プロセスや管理したい項目が異なる上、運用イメージが湧きにくいためだ。だからこそ、知見を持った人と一緒に、課題や必要な要件を整理しながら比較検討することが、本当に必要な製品を選ぶためには大切である。「絞り込みで悩む前に、相談してほしい」という長島氏の言葉は、アパレル時代の経験があってこそのアドバイスである。

国産と外資、どちらを選ぶ?

SFA・CRMを調べ始めると、必ずといっていいほど外資系の大手製品が目に入ってくるはずだ。これら大手外資系製品をベンチマークに、比較検討を進めるケースが多いだろう。

では、GENIEE SFA/CRMをはじめとする国産製品との違いはどこに出るのか。

まずは、日本の商習慣や自社の営業フローに合わせたきめ細やかなサポート体制があるかどうかです

繰り返しになるが、SFA・CRMは他のソフトウェアと比べて、ビジネスモデルごとに提供の形が変わる。言い換えれば、他のソフトウェアよりもサポートが重要になる製品だ。日本の営業現場に寄り添った手厚い初期構築サポートや伴走支援を強みとしていることが多く、導入・定着のハードルを下げやすい特徴がある。

推進担当者の目線から見ると、サポート部分は大きな違いがあります

GENIEE SFA/CRMの場合は、自社のスタッフがサポートを担う。有料ではあるが、初期の項目設計やフローの設定はジーニー側で行い、勉強会の開催もある。そうすることで、本当に必要な機能の精査や導入、定着がスムーズに進むという。

また、国産製品の方は、大手外資系製品よりも価格が抑えられていることが多い。

低価格でありながら外資系製品と同水準の機能を備え、加えて手厚いサポートも受けられる。

では大手外資系製品の強みは何か。

長島氏が挙げたのは、導入実績の豊富さと信頼性だ。

SFA・CRMは、導入期間もコストも比較的負担が大きい製品だ。だからこそ、導入実績やプロダクトに対しての安心感を重視する企業も多い。

大切なのは、事前情報や評判だけで短絡的に判断するのではなく、各社にしっかり話を聞き特徴を把握したうえで、何を重視したいかによって慎重に判断することである。

図 1分かれ目

国産と外資系の主な特徴

国産の特徴

  • 国内スタッフなどサポートが充実
  • コストが外資に比べて抑えられる

外資系の特徴

  • 導入実績が豊富
  • 知名度などの信頼性がある

取材での発言をもとに編集部が整理。特定の製品の優劣を示すものではない

そもそもSFA・CRMは自社に必要か?

ここまで「まず相談を」と書いてきたが、その前に検討すべき問いがある。

そもそも自社は、SFA・CRMを導入する必要があるのか。

長島氏はGENIEE SFA/CRMの導入を勧める目安として、以下のように語っていた。

目安は営業管理ツールを使う人たちが、10名以上いるお客様ですね

営業の人数ではなく、SFA・CRMを使う人の数で数える。理由は、このツールの性質にある。

情報管理と共有のためのツールなので、共有された情報を受け取る人が多ければ多いほど、効果が相乗的に広がります

利用者が多いほど効果は大きくなるが、10名以上であれば導入の価値をより感じられる規模だという。

新規導入かリプレイスかで、観点が異なる

同じ「SFA選び」でも、初めて導入する会社と、いま使っているものから乗り換える「リプレイス」では、検討の観点が異なると長島氏は言う。

図 2入口が2つある

新規導入かリプレイスか

新規導入 リプレイス
現状 Excelやスプレッドシートなど、何らかの形ですでに管理している すでにSFA・CRMがあり、足りないものがはっきりしている
検討軸 いまの管理をSFAに移して、どこまで楽になるか。トータルの費用対効果 いまの製品における不満・不足を埋められるか
注意点 自社の課題を明確にする いま使えている機能が一部落ちるのを許容できるか

取材での発言をもとに編集部が整理

新規導入の場合は、Excelやスプレッドシートで管理しているケースがほとんどだ。そのため、いまExcelでやっている管理をSFAに移して、どこまで楽にできるか、トータルした費用対効果はどうか、といった点が問われる。

リプレイスの場合は、いまの利用している製品における不満や不足が基準になる。ただし、製品を乗り換えると、いま使えている機能の一部は使えなくなるかもしれない。現在利用している製品からリプレイスした時に、どのようなメリット・デメリットがあるかの整理が重要になる。

図 3選定の順番

SFA・CRMの選定の進め方

01

導入を検討するかを判断する

目安は営業管理ツールを使う人が10名以上。新規導入とリプレイスでは検討観点が異なる。

02

自社の課題を整理する

営業プロセスのどこに課題があるか。課題が不明瞭だと、適切な絞り込みができない。

03

絞り込む前に相談する

ビジネスモデルごとに提供の形が変わるため、課題に紐づく機能の情報と絞り込みの観点を各社から集める。

04

デモで「自社で活用できそうか」を確かめる

決め手は活用イメージが湧くかどうか。ここで期待値のズレを減らす。

05

定着させる

定着しない理由は、極論すれば入力の手間にある

長島氏が1本の流れとして語ったものではなく、取材中の別々の発言を編集部が並べたもの

最後の決め手は、定着イメージがもてるかどうか

各社に相談し、候補となる製品をいくつか絞り込んだ後、最後はどのような基準で導入する1社を決めるのか。

最後に必ず確認すべきなのは、自分たちが活用するイメージが湧くか、ちゃんと使えて定着できるイメージがもてるか、だと思います

GENIEE SFA/CRMでは、提案の際に顧客専用のデモ環境を作って共有している。実際の環境を触ってみて、利用するイメージが湧くかどうかを選定の基準にしてもらっているとのことだ。

つまり、デモで確かめるべきなのは、求める機能の有無や使い方だけではなく、自社の営業がその画面で毎日どのように活用するかを具体的に想像できるかどうかであるということだ。

図 4失敗の生まれる場所

期待値のズレは、どこで生まれるか

提案

提案の過程で、どうしてもミスコミュニケーションが生まれる

対策

早めに相談し、擦り合わせる時間をとる

デモ

機能の確認に終始する

対策

顧客専用のデモ環境を作り込み、自社で活用できるイメージを確かめる

導入後

当初の要件が実際にはできなかった、という食い違いが表に出る

対策

ここで気づいても戻せない。だから前の2段で潰す

取材での発言をもとに編集部が整理

「導入後に使われない」を防ぐために

デモで利用イメージを想像しないまま導入した際に起きるのが、「期待値のズレ」である。当初はこういう要件だと思っていたのに、実際に触ったらできなかった、という食い違いだ。

使いづらく、情報の入力がされない。データがたまらない。だから経営者が見たいデータが出てこない。最終的に「求めていたものと違った」となる。

「期待値のズレ」が起きると、時間もお金もかけて導入したのに、現場で定着しないのである。

これは弊社に限らず、SFA・CRMの導入の現場でもっとも起こり得る失敗ケースです

口頭や文字での説明だけでは、提案の過程で実際の機能と顧客のイメージの相違がどうしても生まれてしまう。だからこそ、顧客とイメージをすり合わせながら、時間をかけてデモを作り込んでいくプロセスが重要である、と長島氏は言う。

図 5使われなくなる道筋

SFA・CRMで入力されないことによる負の連鎖

01

入力されない

02

データがたまらない

03

経営者が見たい数字が出てこない

04

「これじゃない」となる

05

使われなくなり、Excelに戻る

取材での長島氏の説明をもとに編集部が整理

入力のハードルを、いかになくすか

自社のビジネスモデルにはどの形が合うか、営業組織にとって何が使いやすいか、など細かく検討しても、「これまでExcelでやってきたから、Excelのほうが便利だ」と現場に定着しないケースがある。

定着しない一番の理由は、「入力の手間」だという。

だからGENIEE SFA/CRMは、使い勝手をよくするのではなく「入力の手間そのものをなくす」という方向に舵を切った。

具体的には、商談を録音したデータをもとに、AIが指定のフォーマットに沿って整理し、SFA・CRMへの入力までを対応する。商談音声の文字起こしや議事録だけでなく、受発注の条件や納品日といった内容までAIが精査し、入力をしてくれる。

営業が入力をしなくても、会議で話した内容がSFA・CRMに格納され、情報が蓄積されていく仕組みだ。

これにより、営業担当者が入力作業から解放されて商談などのコア業務に集中できるだけでなく、入力漏れを防いで正確なデータを蓄積・分析できるというメリットがある。

笑顔で話す長島崇斗氏

AI台頭により、SFA・CRMはどう変わる?

ジーニーグループは、AIに大きく力を入れている。グループ会社のJAPAN AIは2023年設立で、「AIで持続可能な未来の社会を創る」をパーパスに掲げる。

もちろん、先述の通りGENIEE SFA/CRMにもAIが組み込まれている。

「AIで何ができるのか」――導入観点の変化

AIの台頭により、SFA・CRMの機能に関する問い合わせの内容が変化したという。

AI議事録は機能として入っているのか。など、AIによる機能の変化を気にする顧客が増えている。

しかし、AIの台頭によるSFA・CRMの機能のアップデートは、表面的な部分に過ぎないと長島氏は話す。

AIの台頭により、機能はもちろんアップデートされたが、それ以上に「手入力の負担から営業を解放し、『溜まったデータをどう営業戦略や顧客理解に活かすか』というデータ活用の思考へシフトさせた」という本質的な変化があるという。

グループ会社にJAPAN AI株式会社を持ち、常にAIと向き合い続けるジーニーだからこそ「複雑なデータ操作をせずとも自然言語で即座に高度な商談分析や最適アクションの抽出ができ、常に最先端のAI技術をSFA/CRMへスピード感をもって実装・提供」ができるということである。

手ぶりを交えて説明する長島崇斗氏

SFA・CRMの未来の形

AIの台頭による「SaaS is Dead(SaaSの死)」が議論を呼んでいる。この流れを汲み、SFA・CRMという製品の枠組み自体が薄れていくのではと質問してみた。

AIで管理ツールなどを作れる時代になってきているので、極論私たちがSFA・CRMを提案しないようになるかもしれないと思っているんですよ

長島氏は、「SFA・CRMという製品自体を提供する機会は近い将来失われるかもしれない」と一定の理解を示した。しかし、自分たちが提供しているのは、「SFA・CRM」ではなく営業・顧客管理の環境やそれによる業務の効率化やそこから生まれる価値そのものであると話す。

提供する物が「SFA・CRM」ではなく、「AIによって作られた、顧客ごとに最適化された環境」に変わるかもしれないが、提供したい価値はこれからも変わらないということだ。

取材の最後に、長島氏はこう言った。

ユーザーが、自分で答えを見つけられる。そのお手伝いができれば

AIの発展により、効率性、利便性は格段に向上した。しかし、SFA・CRMを提供する企業として、提供すべき価値・解決すべき課題は変わらない。

ジーニーが掲げるのは「誰もがマーケティングで成功できる世界を創る」というパーパスだ。

長島氏は、同社の理念に共感して入社を決めたという。

私がマーケティングのキャリアを形成していく中で、一言一句たがわず思ってたことだったんですよ

アパレル経験からSaaSを提供する企業のマーケティング担当へ。業界も業種も違うが、一貫しているのは「徹底した顧客目線」だった。

長島氏の根底にある「顧客理解」の精神は、同社のプロダクト思想・理念としても体現されていると感じた。

GENIEEのロゴの横に座る長島崇斗氏

「ユーザーが、自分で答えを見つけられる。そのお手伝いができれば」

取材・文 / 東條 健

撮影 / 高原マサキ

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Company Profile

株式会社ジーニー

アドテクノロジーを起点に、マーケティングSaaSを展開する。営業管理・顧客管理ツール「GENIEE SFA/CRM」のほか、MA・広告プラットフォーム・BIをシリーズで提供している。Business Purpose に「誰もがマーケティングで成功できる世界を創る」を掲げる。2023年にはグループ会社の JAPAN AI を設立し、SFA/CRM と生成AIの接続を進めている。

設立
2010年4月14日
資本金
100百万円(連結・2026年3月末時点)
従業員数
816名(連結・2026年3月末時点)
代表者
代表取締役社長 工藤 智昭
本社
〒163-6006 東京都新宿区西新宿6-8-1 住友不動産新宿オークタワー6階
上場
東京証券取引所グロース市場(証券コード6562)
主要サービス
「GENIEE SFA/CRM」「GENIEE MA」「GENIEE SSP」「GENIEE DSP」「GENIEE BI / GENIEE DATA CONNECT」ほか

出典

※1 GENIEE SFA/CRM のスタンダードプラン 1IDあたり月額3,450円(税別)および最低利用期間1年は、同社公式サイト「料金プラン」(https://chikyu.net/price/、2026年9月時点)による。

※2 導入企業6,300社は、同社公式サイト(https://chikyu.net/、2026年9月時点)の表記による。

※3 株式会社ジーニーの設立・資本金・従業員数・代表者・本社所在地・上場市場・主要サービスは、同社公式サイト「会社概要」(https://geniee.co.jp/company/outline/、2026年9月時点)による。

※4 ジーニーのパーパス「誰もがマーケティングで成功できる世界を創る」および JAPAN AI のパーパスの引用は、両社公式サイトによる。