事業承継は会社や経営者ごとに様々な課題があります。贈与税や相続税などの税制や自社株の評価方法など、専門性の高い知識も求められるでしょう。
事業承継は専門としている税理士に依頼することが賢明とされています。そこでこの記事では、事業承継の税理士費用の相場を詳しく紹介。
また改正された事業承継税の特例など、事業承継についても徹底解説します。
この記事の監修税理士
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事業承継とは?
事業承継とは具体的にどのような意味でしょうか。事業承継と言っても、譲る財産の種類によって対応が異なり、財産以外にも気を付けなければならない点があります。
事業承継の税理士費用についてはあとでじっくり紹介するとして、ここでは基本的な事業承継について解説します。
事業承継とは?
事業承継は、経営者の高齢化や死亡により、その事業に関する経営権や資産などを後継者に受け継ぐことを指します。
事業承継を進めるときの注意点
円滑な事業承継を実現するためには、一般の贈与・相続よりも事前準備を十分に行っていたかどうかが重要となります。代が変わる際に会社に影響が出ないように気を付けなければなりません。
特に会社を受け継ぐ後継者の育成には時間がかかりますので、会社を経営するために必要な知識と経験を計画的に身に付けてもらう必要があります。また後継者に資金的な余裕がなければ贈与税や相続税の納税に備えなければなりません。
このように人と財産の承継に時間がかかることに注意しましょう。
【2019年最新】事業承継税制の特例とは?
事業承継税制は、事業承継する際に、後継者が負担する贈与税や相続税が猶予又は免除される制度です。これまでの事業承継税制(一般措置)よりも対象範囲などを広げた事業承継税制(特例措置)が設けられ、活用しやすくなっています。
事業承継税制の特例のメリット
この特例の最大のメリットは、要件を満たせば、先代の経営者から後継者への承継の際。贈与税・相続税の納税が猶予され、さらに後継者が死亡した際にはその贈与税と相続税が免除される点です。
一般的に自社株の株価は高くなりますが、この特例を活用することでスムーズな会社の譲渡を実現できます。
一般措置と特例措置の違い
特例措置では、一般措置よりも優遇されており、納税の負担が軽くなっています。ただし、特例承継計画を2023年3月31日までに都道府県知事に提出し確認を受けなければなりません。対象となる贈与・相続の適用期限も2027年12月31日までと期間が限定されています。
最初の特例承継計画の提出から、継続して代表者であること、株式等の保有をしていることなどの要件を満たす必要があり、一定期間ごとに継続届出書を提出します。
このように事前の計画策定など、満たさなければならない要件は多いですが、要件を満たせば、次のような一般措置とは異なるメリットがあります。
<特例措置と一般措置の違い>
特例措置 | 一般措置 | |
事前の計画策定 | 平成30年4月1日から令和5年3月31日までに提出 | 不要 |
適用期限 | 平成30年1月1日から令和9年12月31日までの贈与・相続等 | なし |
対象となる株数 | 全株式 | 総株式数の最大2/3まで |
対象となる株数 | 全株式 | 贈与100%、相続80% |
後継者 | 複数の株主から最大3人の後継者 | 複数の株主から1人の後継者 |
対象となる株式数の制限撤廃や納税猶予割合の引上げなどが主な違いであり、メリットとなります。
なお、贈与税(相続税)の申告期限までに、納税が猶予される贈与税額(相続税額)と利子税の額に見合う担保が必要となります。
(この制度の適用を受ける非上場株式等の全てを担保として提供した場合には、納税が猶予される贈与税額(相続税額)及び利子税の額に見合う担保の提供があったものとみなされます。)
事業承継の種類とそれぞれのメリット・デメリット
事業承継には大きく分けて3種類あります。後継者の有無や経営者の考え方、会社の状況などを考慮し選びことになります。
どの方法を選ぶかによって税理士に支払う報酬が変わってきますが、負担する報酬額よりそれぞれのメリット・デメリットを理解し、ふさわしい方法を選択することが大切です。
親族内承継
親族内承継は、現在の経営者からその子などの親族に事業を承継することです。
親族内承継のメリットは、早い段階で後継者を決め、事業承継の課題である後継者育成に時間を割くことができる点です。長期的な育成が可能となれば、社内での信頼関係は構築しやすくなり、親族であるために、取引先との関係も継続しやすくなります。
一方、デメリットとして、相続人が複数いると、後継者を決めにくい点が挙げられます。後継者によっては不和が生じることがあるため、後継者だけでなく他の相続人との話し合いが重要なります。
親族外承継
親族外承継は、親族以外の取締役や従業員等に事業を承継することです。
親族外承継のメリットは、後継者の候補者が多くなることから、後継者としてふさわしい人を探しやすい点が挙げられます。勤続年数が長い後継者であれば、育成や社内外との関係性構築はできているため、様々な点で合意が得られやすくなります。
一方、デメリットは、個人債務保証の手続きで問題が発生する可能性がある点です。事業承継の際には、現在の経営者が負っている個人債務保証も引き継ぐ場合、借入先の銀行等との手続きが必要となります。
M&Aによる会社譲渡
M&Aは、会社を外部へ譲渡する方法です。
M&Aのメリットは、会社の売却により利益を得ることができる点です。個人の相続における納税資金として活用することができます。
一方、デメリットは条件に合う譲渡先を見つけるのが難しい点です。譲渡価格だけでなく、従業員の雇用についての交渉が必要となります。
事業承継の流れ
事業承継の一般的な流れを確認します。税理士に相談すれば事業承継計画を立て、アドバイスをもらいながら手続きを進めることになります。しかし、費用に見合う計画になっているのかを確認するためにも、一般的な事業承継の流れは把握しておいた方がいいでしょう。
会社・経営者の現状の把握
事業承継をするにあたり、会社の現状や経営者としての立場を把握し、後継者へ伝える下準備をしなければなりません。
会社の経営状況のなど数字で評価できる場合は伝えやすいですが、社風や将来の方向性、経営者としてこれまで歩んできた道のりなど後継者によっては伝わりにくい内容もあるでしょう。
後継者教育
後継者を立派な経営者として教育することは大きな課題でしょう。親族であれば早くから社員の一員として働くことで、他の社員や取引先との信頼関係を築くことができます。またあえて他社で勤めてもらい、視野を広げることも考えられます。
ある程度社会人としての成長が見られたら、経営者としての教育が必要となりますので、時期を見て少しずつ経営者としての立場や考え方を伝えていきましょう。
社員への説明と理解
後継者の教育と並行して、なるべく早くしておかなければならないのが社員への説明と理解です。少しずつ後継者の人柄や仕事の仕方を浸透させ、業務に支障をきたさないようにしなければなりません。
代表権の承継
代表権の承継は、後継者教育に目途ができる、社員の理解が深まるなど、状況を見ながら少しずつ譲ります。最初は現在の経営者とともに舵をとる方がスムーズでしょう。
株の承継
代表権と合わせて、会社の所有権も譲らなければなりません。後継者に自社株の大半を譲るには、譲渡や生前贈与、相続、種類株式の発行があります。
将来の相続税の負担を考え、生前贈与を活用し、納付金の準備をするなど、対策の仕方は多岐に渡ります。他の相続人への配慮も必要です。
債務保証の承継
銀行から借り入れる際、現在の経営者が会社の連帯保証人となっている場合、債務保証の承継も考えておかなければなりません。銀行の信頼を得るためには、交渉を重ねながら、場合によっては会社の経営状況を改善させる必要があります。
税理士に依頼した時の事業承継の料金相場
税理士に事業承継について依頼したときの料金相場を紹介します。税理士の報酬は法律で決められているわけではなく、事務所ごとに自由に設定しています。
専門性の高い分野での依頼となりますので、下記料金表を参考に、料金とサービス内容を十分照らし合わせて選んでください。
事業承継における税理士の報酬相場
事業承継における税理士の報酬は、おおむね次のとおりです。会社の組織を変更して、相続に備える場合には、計画の複雑さや難易度によって料金が異なります。
経営計画 | 20万円~ |
自社株の評価 | 10万円~30万円 |
組織再編の計画 | 20万円~220万円 |
※組織再編の計画は合併などの種類によって異なります。
事業承継税制に関する税理士の報酬相場
事業承継税制は、事前の計画策定だけでなく、贈与や相続が発生し、無事に希望通りの事業承継ができるまで続きますので、項目別に分かれています。贈与と相続で大きな違いはなく、おおむね次のような報酬相場となっています。
「贈与契約書」「取締役会議事録」の作成 | 10万円~20万円 |
経済産業局への認定申請 | 30万円~70万円 |
納税猶予申請・担保提供 | 20万円~30万円 |
経済産業局への報告書作成(1回) | 10万円 |
税務署への継続届出書(1回) | 5万円 |
※「贈与契約書」「取締役会議事録」の作成は、贈与税のみの手続きになります。
事業承継の業務を税理士に依頼するメリット
事業承継の業務は専門性が高く、経験豊富な税理士の協力なしでは手続きを進めることが難しいことがあります。
事業承継について税理士に依頼する場合、コンサルティング費用がかかりますが、その費用に見合う大きなメリットがあります。税理士に依頼するメリットをまとめます。
節税効果が期待できる
事業承継により自社株を後継者に譲渡すると、自社株の評価額は高額になるため、後継者は贈与税や相続税を課せられる可能性があります。この税負担を軽減するために、税制を詳しく理解している税理士に相談します。
M&Aに関して有用なアドバイスをもらえる
近年、これまで続けてきた事業を次世代に譲りたいが、後継者不足で諦めてしまうケースが目立ちます。だれか引き継いでもらえる人が身近にいればいいですが、そう都合よく、業界に詳しい人もいないでしょう。
後継者がいない場合、M&Aで会社を譲渡する方法がありますが、譲渡先を探し条件交渉するためには経験豊富な税理士の協力がなくてはなりません。出来るだけ期待通りに譲渡できるよう有用なアドバイスをもらうことができます。
事業承継における税理士を選ぶポイント
事業承継のコンサルティング内容は多岐に渡るため、税理士選びが重要となります。税理士の費用も気になるところですが、費用だけで決めてしまうと後悔することになるかもしれません。
ここで紹介する税理士を選ぶポイントを参考に税理士を絞り込んだ上で、料金や手数料を比較しましょう。
税理士が多く在籍している事務所
事業承継の業務は、一般的な税務処理に加え、最新税制への適用の可否、法人税や所得税など他の税への影響など様々な視点から問題がないか確認しながら進めていきます。
少数の税理士事務所の場合、対応が難しいことがありますので、税理士が多く在籍し、役割分担をして専門性を高めている事務所がいいでしょう。
他の専門家との連携が強い
事業承継の場合、税制の理解や運用だけでなく、法的根拠を満たしているか、社内でどのように社員への理解をしてもらうか、M&Aであれば譲渡先を探し、条件交渉をどのようにしていくかなど、多岐にわたるため、複雑になる程、複数の専門家が必要となります。
税理士だけでなく、弁護士や社労士、不動産鑑定士、M&Aアドバイザーなど他の専門家との強い連携も重要となります。
得意分野が相続税、資産税の税理士
税理士と言っても、必ずしも相続税や資産税を得意とする人ばかりではありません。特に事業承継は幅広い知識と経験が必要となりますので、相談する内容について専門性を有しているかどうかがポイントとなります。
話しやすく、相性が合う税理士
知識や経験が豊富でも、親身になって相談に乗ってもらえるかどうかも重要です。話しやすく、相性のいい税理士であることに越したことはありません。また承継内容の秘密保持、事業内容への理解などを通した信頼関係も重要となります。
最新の税制をしっかりと理解している税理士
税制は毎年、創設されたり、改正されたりします。最新の税制により、事業承継の流れや方法が変わることがありますので、税制をしっかり理解している税理士にお願いしましょう。
税理士コメント
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